香川大学 創造工学部 造形・メディアデザインコース
教授 大場晴夫
プロダクトデザイン
インタラクションデザイン
2018/07/04 掲載

発明の概要

 平成30年度全国発明表彰で特別賞となる「朝日新聞社賞」を受賞した本発明は、NFC (Near Field Communication)をはじめとする近距離無線通信手段と、Wi-Fiなどの高帯域の無線通信手段を組み合わせ、ユーザが接続したい機器どうしをタッチさせるとNFCによる通信が開始し、さらに実際の接続をWi-Fi などに引き継ぐことで、ユーザの簡単な操作で無線通信接続の確立を可能としたものです。相手にタッチするという直感的な操作とワイヤレスの制御が一致しているため、利用者にIPアドレスや機器IDを意識させない、ユニバーサルデザインを実現しました。

機器間接続の図

発明の背景

 Wi-Fi や Bluetooth、携帯ネットワークなどさまざまな無線機能や、家庭内の LAN 環境が発達するにつれ、機器間で通信を行いながら動作するアプリケーションが増えてきました。 しかし、目の前にある2つの機器を接続したいだけなのにその手順が面倒であったり、安全な接続を確立するのが、煩雑でわかりにくい問題がありました。 ソニー在籍中の2000年、研究者とデザイナーが協業したCSL インタラクションラボ(暦本純一,大場晴夫、綾塚祐二,松下伸行、Eduardo Sciammarella)において、この機器間接続におけるユーザーインタフェースの研究に取り組み、2001年に直感的で分かりやすいFEELというコンセプトを発表しました。

発明の成果

 本発明は、2008年にNFC フォーラムの Connection Handover規格としても国際標準化され、直感的な機器間接続技術として様々な製品に実装されています。また、シンプルで直感的に利用できるため、ユーザを問わないユニバーサルデザインを実現した製品の普及・発展に貢献しています。この発明は2017年に世界で発売された15億台に及ぶスマートフォンのほとんどに搭載されており、ペリフェラル、オーディオ、テレビ、プリンター、カメラなど多くの機器との接続が可能です。

様々な無線機能搭載家電の図

発明が生まれたきっかけ

 2000年当時、ペンで液晶に直接インプットすることが当たり前になる時代を予想し、デスクトップPCの液晶画面を寝かせてペンで直接描くことができるVAIO LXの商品コンセプトを企画し、そのデザインも担当していました。このとき、携帯やPDAにある写真をPCの画面に流れるように移動(転送)するデモをCSLの研究者達と遊びながら創ると、このデモが非常に好評だったのです。その後、試作検討を繰り返し、このアイデアを概念まで高め、広く展開することを願い特許出願しました。その後、社内でも普及に尽力しましたが、なかなか広がりませんでした。しかし2007年のスマートフォンの発売から急速に普及し、多くの機器で採用されるようになりました。今となっては時代が追いついてくれたような気がしています。

液晶画面PCの写真

今、お読みの本を教えてください

・コンセプチャル・アート 岩波書店 トニー・ゴドフリー著
・蒐集物語 中央文庫 柳宗悦著

本表紙イメージ

趣味・好きなこと

 民藝品やフォークアートが好きで少しずつ集めています。世界各地のマスクも好きで、アフリカのコートジボワールにも足を伸ばしました。4月に香川に移住してからは、伝統工芸士の方に金継ぎを習い始め、漆の世界を楽しんでいます。

民藝品