医学系研究科看護学専攻(修士課程)の教育理念

 香川大学大学院医学系研究科看護学専攻(修士課程)は、生命と人間の尊重を基盤とし、保健医療、福祉及び社会の諸変化に柔軟に対応できる人材を育成することを目的としています。具体的には人々のQOL(Quality of Life)の向上を目指した科学的、実践的な課題解決ができる能力を有し、グローバルな視野で看護学の発展と人々の健康に寄与する研究を遂行できる人材の育成を目指します。

医学系研究科看護学専攻(修士課程)の3つのポリシー

ディプロマ・ポリシー(修了の認定に関する方針)

 香川大学大学院医学系研究科看護学専攻(修士課程)では、その教育理念に基づき、高い倫理観を基盤として、看護学に関する高度な専門的知識と研究能力を備え、その社会的責任を自覚して国内外の広範な看護実践及び看護教育に携わる高度専門職者を育成します。
本研究科を修了し、本学が送り出す修士(看護学)の身につけるべき能力・態度の到達基準は、次のとおりです。

①専門知識・理解
*看護学に関する高度で実践的な専門知識と理論を理解・修得し活用できると共に、高度専門職者として幅広い知識と自らの専門性に立脚した見識を備えている。

②研究能力・応用力
*看護現象について、科学的・論理的思考に基づき研究を計画及び遂行する能力と共に、その成果を発信し議論できる能力を備えている。
*人々の健康に関連する諸課題の解決のため、研究や実践に基づいた専門的知識・技術の創造と開発に努め、看護学の発展に取り組むことができる。

③倫理観・社会的責任
*看護専門職者として高い倫理観を持った上で、高度専門職者として自律的に行動の選択を行い、人々の健康な生活の実現に貢献する。その社会的責任を自覚し、自己の行動について根拠をもって説明できる能力を備えている。

④グローバルマインド
*グローバルな視点で保健医療福祉及び社会の変化に柔軟に対応できる能力を備えている。

カリキュラム・ポリシー(教育課程の編成及び実施に関する方針)

《医学系研究科看護学専攻のCP》
 
 香川大学大学院医学系研究科看護学専攻(修士課程)は、修了の認定に関する方針(ディプロマ・ポリシー)に示した人材を育成するために、専門的研究の基礎となる知識の修得をめざした基盤科目(9科目18単位の中から5科目10単位以上を修得)に加え、3分野 10専門領域において、看護学の基礎的理論の知識を深める各[専門領域特論](3科目6単位)、自己の研究課題及び研究方法の明確化のための各[専門領域別演習](1科目4単位)と研究を遂行するための「特別研究」(10単位)から構成される教育課程を編成・実施します。なお、基盤科目の中には大学院教養科目が含まれており、「臨床科学」、「看護研究方法論1」、「看護研究方法論2」、「看護倫理学」及び「国際看護学特論」が該当します。指定された授業科目を履修することにより、養護教諭一種免許状取得者は専修免許状が取得できるようになっています。また多角的な意見を踏まえた研究計画書が作成できるように中間発表会があります。修了要件は、上記 30単位以上の修得と必要な研究指導を受けた修士論文の審査及び最終試験に合格することです。講義科目はシラバスに明示された多様な形式、研究科目は主及び副指導教員により、大学院生一人ひとりの研究テーマと研究時間に柔軟に対応して行われます。
 ディプロマ・ポリシーの各項目の達成は、以下に示す大学院教養教育科目を含む体系的教育をもって実現します。

①専門知識・理解
 1、2年次に配置された基盤科目により、看護の理論を学習し、またその教育方法及び管理に関する専門知識を理解・修得します。さらに、臨床科学に関する知見を深めます。引き続き開講する各看護学特論により、看護専門職者として活躍するために必要な幅広い専門の知識を身につけます。

②研究能力・応用力
 1年次前期の基盤科目の「看護研究方法論1及び2」により専門的研究実施の基礎的能力を修得します。後期には、専攻領域単位で行われる各専門領域別演習により自己の研究課題及びその研究方法の明確化を行い、研究計画書を作成します。多角的な意見を踏まえた研究計画書が作成できるように中間発表会で公開指導を受けます。さらに複数の教員の指導による「特別研究」において、自らの専門に関わる課題に対する研究を実施し、一定の結論を導き、これらを修士論文としてまとめることを通じて研究能力・専門応用能力を培います。

③倫理観・社会的責任
 1年次前期に開講される「看護倫理学」において、研究倫理、安全教育、情報リテラシー、知財など研究遂行にかかわる倫理だけでなく、看護専門職者として必要な看護倫理及び倫理的意思決定について系統的知識を身につけます。さらに「看護管理学」において、看護専門職者として法的責任を理解するとともに社会的責任について自覚し、看護実践の質向上に貢献できる能力を培います。

④グローバルマインド
 1年次前期に開講される「国際看護学特論」では、文化の異なる諸外国の看護、その教育、実践、医療福祉政策における看護の役割について修得します。国際的視野に立って世界の看護・保健・医療・福祉の現状を理解し、柔軟に対応できる能力を培います。また、開設される全ての授業科目で適宜、英語文献を講読し、グローバルな視点に立って課題を探求できるスキルを培います。

 以上の学修成果の評価は、基本的に講義科目では修得した知識の理解度並びに説明能力により、研究科目では知識・専門的技術を応用して研究を計画・実施できる能力の総合評価により、厳格な成績評価(5段階評価、 GPAの活用)で行います。また修士論文は、本研究科の定める学位審査基準に基づき、本研究科で選出された審査委員(主査1名、副主査2名以上)により厳格な審査及び公開での修士論文発表会を実施し、学位論文としての合否判定を行います。


《医学系研究科看護学専攻助産学コースの CP》

 助産学コースでは、さらに高度助産実践能力、倫理的感応力、マネジメント能力、科学的な分析・研究能力を備えた助産師人材を育成することを目的に以下の教育課程を編成します。

1)ハイリスク妊娠分娩産褥・新生児に対応できる、専門的知識に裏付けされた高度助産実践能力の修得
 助産領域に関する基礎的専門知識と技術及びハイリスク妊産褥婦・新生児に関する知識と技術を修得し、その後の各臨地実習において、修得した知識・技術を活用して、周産期マタニティケア能力に加え高度助産実践能力の修得を目的とします。
 そのために、専門的知識と技術を用いて対象を理解し、問題を捉え専門職として問題解決できるための講義・演習・実習科目を 1年次前期から後期に設定します。
 授業科目として、専門科目(助産学)の「助産学特論Ⅰ(助産学概論)」、「助産学特論Ⅱ(リプロダクティブヘルスと権利)」、「助産学特論Ⅲ(周産期学婦人科学)」、「助産学特論Ⅳ(胎児学・新生児乳幼児学)」、「助産学特論Ⅴ(薬理・臨床検査学)」、「助産診断学Ⅰ(妊娠期)」、「助産診断学Ⅱ(分娩期)」、「助産診断学Ⅲ(産褥期、新生児・乳幼児)」「周産期ハイリスクケア」、「助産学実習Ⅰ・Ⅱ」を開設します。

2)周産期医療における高い倫理的感応力の修得
 女性のライフサイクル各期における様々な課題とその解決を学ぶ中で、女性の生涯にわたる支援能力及び倫理的感応力の修得を目的とします。
 そのために、基礎的な看護倫理についての知識を修得する「看護倫理学」を 1年次前期に基盤科目として配置しました。その後に、ハイリスク妊娠分娩産褥・新生児へのアセスメントケア能力や地域における母子支援を自律して行える能力を身につけるために、演習科目と実習を通して、助産師としての倫理的感応力と周産期における倫理的課題を解決できる能力を修得する科目を設定します。
 授業科目として、基盤科目の「看護倫理学」と、専門科目(助産学)の「助産診断学演習Ⅰ(妊娠期)」、「助産診断学演習Ⅱ(分娩期・産褥期)」、「助産診断学演習Ⅲ(新生児・乳幼児)」、「助産学実習Ⅰ・Ⅱ」を開設します。

3)自律して地域社会に貢献するための専門的能力とマネジメント能力の修得
 専門的知識に裏付けされた高度助産実践能力および助産管理能力を含めたマネジメント能力をもち、地域社会における医療・保健・福祉関係者等との多職種と協働連携して、地域における母子を包括的に支援し自律して地域社会に貢献できる能力の修得を目的とします。
 そのために、マネジメントに関する基本的知識を修得する「看護管理学」を設定し、その後、助産師に求められるマネジメント能力を修得する「助産業務管理学特論」、「医療福祉経営論」、「地域母子保健学特論」を設定しました。
 加えて、2年次前期に設定した地域の保健センターにおける「地域母子保健学実習」をとおして、地域の多様なニーズに対応した母子保健サービスについて理解し、専門職としての社会的責任と自律して社会に貢献できる能力を培います。
 授業科目として、基盤科目の「看護管理学」と、専門科目(助産学)の「助産業務管理学特論」、「医療福祉経営論」、「助産学実習Ⅲ(助産管理)」を開設します。さらに、応用力を高めるために、「地域母子保健学特論」、「地域母子保健学実習」を開設します。

4)女性の生涯を通じたリプロダクティブヘルスの視点から、生理的、心理・社会的課題を探究し、女性のライフサイクルにおける健康問題や臨床場面の問題について分析できる能力の修得
 助産学コースで修得した基本的知識と高度助産実践能力を基盤に、助産師として生涯を通じた女性のリプロダクティブヘルスの視点から、対象者の生理的、心理・社会的健康課題を探究し、科学的根拠に基づき分析できる能力の修得を目的とします。
 そのために、現代社会において女性と家族が抱える様々な問題と課題をリプロダクティブヘルスの視点から明確にし、包括的・継続的な支援ができる能力を修得する講義・演習・実習科目を設定します。
 授業科目として、専門科目(助産学)の「助産学特論Ⅱ(リプロダクティブヘルスと権利)」、「助産学実習Ⅱ・Ⅲ」を開設します。

5)助産ケアの研究・教育者、および指導者としての能力を修得する
 将来にわたり助産ケアに関する新しい知見を活用するだけでなく、自ら研究を継続し、助産学の発展に寄与する研究者、および教育者や指導者としての基礎的能力の修得を目的とします。
 そのために、1年次前期に開設される科目により、関連する学問分野の論文を読む能力と研究を遂行するために必要な基本的知識について学びます。その後、自己の研究課題と研究方法について探究し、臨床や地域の問題を解決するための方法を科学的根拠に基づいて導き出せる能力を修得します。2年次からは「特別研究」として、指導教員および副指導教員の支援を受けながら「助産学」に関する研究を実施し、その成果を修士論文としてまとめます。
 授業科目として、基盤科目の「理論看護学」、「看護研究方法論Ⅰ・Ⅱ」、「看護倫理学」、「看護教育学」、「看護管理学」と「特別研究」を開設します。

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アドミッション・ポリシー(入学者の受入れに関する方針)

◇入学者に求める学力・能力・資質等
 大学院入学までに、以下のような学力・能力・資質等を備えている学生を求めています。

①知識・技術・理解力
*人間の各発達段階における全ての人とその家族のみならず、地域・社会をも対象にして健康問題からの回復若しくは健康の維持・増進、疾病予防、環境を健康に資するよう整備するために必要な学際的な知識と実践的技術・理解力

②思考力・判断力・表現力
*自らの論理的・科学的思考及び判断に基づき看護学に関する諸課題を説明できる表現力

③研究能力・応用力
*看護学に関する研究を遂行するために、看護現象を多様な角度から検討し、論理的に思考するクリティカルシンキングと問題解決のために必要な情報を収集する力・コミュニケーション能力といった基礎的技術・応用力

④探求心・意欲・態度
*看護学に関する専門的知識について学び、研究することに高い志・意欲・態度を持ち、創造的な探求心を表現できる能力

⑤倫理観・社会的責任
*人間の生命と尊厳の尊重を看護職者としての行動及び判断の基本とし、高い倫理観と豊かな人間性を備えているとともに、看護職の社会的責任を説明できる能力

⑥グローバルマインド
*看護学に関連する国内外の情報を理解する基本的言語能力及びグローバルな課題を地域的課題と比較・検討できる柔軟な発想力


◇選抜方法の趣旨
○一般選抜・社会人特別選抜
 一般選抜では、記述式の「英語」の学力試験により、国際的な情報を理解するために必要な基本的語学運用能力を評価すると共に、修学及び研究遂行に必要な思考力・判断力・表現力を評価します。「専門領域別試験」では、看護学分野に関する筆記若しくは口頭試験を実施し、その基礎的知識・理解力を評価するとともに、看護学の探求に必要な能力である論理的・科学的思考の資質を有しているか評価します。「面接」では、志望動機や研究に関する志向性を確認することにより、関心のある看護現象に対する基本的な知識及び自己の考えを適切に説明できる表現力と共に、広い視野で人々の健康問題に取り組む思考力・判断力・表現力と探求心・意欲・態度を評価します。また、看護職としての高い倫理観や豊かな人間性と看護職の社会的責任を説明できる能力を評価します。
 社会人特別選抜では、大学院受験資格を有し、かつ、看護師、助産師、保健師又は養護教諭の資格を有し、これらの実務歴がある者又は現在、実務を行っている者に対して行います。一般選抜で実施される試験と併せて「面接」において、経歴及び研究計画書に基づき、看護に関する知識・技能・理解力を確認し、思考力・判断力・表現力を評価すると共に入学後の研究意欲を有しているかを評価します。