医学部臨床心理学科の教育理念

 香川大学医学部臨床心理学科は、①人間に対する高い倫理性と深い思考力をもった人間性豊かな心理援助者、②自ら課題を探求し、それを解決できる基本的な専門知識と技能、科学的思考力と共感的理解力を備えた心理援助者、③多職種連携・協働ができる資質を持ち、心理援助の実践を通して地域住民の福祉の充実発展に寄与すると共に、心理援助の発展に貢献する心理援助者を育成することを目指します。

医学部臨床心理学科の3つのポリシー

ディプロマ・ポリシー(卒業の認定に関する方針)

 香川大学医学部臨床心理学科では、その教育理念に基づき、心理学及び臨床心理学の体系的な知識、心理臨床における基礎的実践力とともに医学的素養を有し、援助的コミュニケーション能力を発揮して、医療・教育・福祉等の分野で多職種連携・協働ができる資質を持った心理援助者を育成します。本学科を修了し、本学が送り出す学士(臨床心理学)・21世紀型市民として身につけるべき能力・態度の到達基準は、次のとおりです。

①言語運用能力
*人間性を尊重した対人支援の態度を持ち、共感的コミュニケーションを実践することができる。
*クライエントや患者を中心にして、多職種と連携・協働しようとする態度を身につけている。
*国際的視野を持ち、世界標準の心理学・臨床心理学領域の研究に関する情報を収集することができる。

②知識・理解(21世紀型市民及び学士(臨床心理学)として)
*心理学・臨床心理学の基礎知識を有している。
*医療・保健、教育、福祉等の心理臨床の現場において、心理援助者が必要とする基礎的知識・技能を有している。
*心理援助者が必要とされる職場における心理援助者の役割を説明することができる。
*身体と精神が相互に関連していることを理解するとともに、心理援助者にとって重要な疾患、障害についての知識を有している。
*21世紀を生きる市民が必要とする幅広い教養を有している。

③問題解決・課題探求能力
*心理学・臨床心理学の学びの中、あるいは心理臨床の現場において、自ら問題点を見出し、解決することができる。
*心の問題に対して実証的な研究方法を適用することができる。
*積極性・向上心を持ち、自己主導型学習を実践することができる。

④倫理観・社会的責任
*心理援助者として倫理観・使命感・責任感を持ち、省察的態度をもって行動することができる。
*専門職として生涯にわたり研鑽に努める姿勢を持っている。
*法令・社会的規範を遵守し、社会の一員として行動することができる。

⑤地域理解
*地域社会における医療・保健、教育、福祉等の現状と課題に関心を持ち、心理援助者の専門的役割と関連付けて理解することができる。

カリキュラム・ポリシー(教育課程の編成及び実施に関する方針)

 香川大学医学部臨床心理学科は、卒業の認定に関する方針(ディプロマ・ポリシー)に示した人材を育成するために、全学共通科目(36単位以上)と学部開設科目(98単位以上、内訳は、専門基礎科目(19単位)、専門科目(79単位以上))から構成される教育課程を編成・実施します。卒業要件単位数は、134単位以上とします。進級に関する要件はありませんが、「臨床心理学基礎研究Ⅰ・Ⅱ」、「心理実習Ⅰ(心理支援実習)」、「臨床心理学研究Ⅰ・Ⅱ」、「心理実習Ⅱ(チーム医療実習)」及び「卒業研究」を受講するには、医学部が定める要件を満たすことが必要です。
 ディプロマ・ポリシーの各項目の達成は、以下に示す体系的教育をもって実現します。

①言語運用能力
 全学共通科目ではコミュニケーション科目によって基礎となる語学力向上を図ります。さらに、既習外国語のアドバンス科目を履修してさらなる語学力向上も可能であり、言語を通して国際的視野を持てるように準備します。情報収集の基礎技術については情報リテラシーによって獲得します。少人数の体験学習による演習科目、学内・学外機関・施設における見学・実習科目によって、人間性を尊重した対人支援の態度や共感的コミュニケーション能力、クライエントや患者を中心として多職種間で連携・協働できる能力を身につけます。

②知識・理解(21世紀型市民及び学士(臨床心理学)として)
 現代社会を生きる上での幅広い教養及び基礎的知識を獲得するために、全学共通科目の学問基礎科目を学びます。また、心理援助者に求められる基本的知識や理解を獲得するために、専門基礎科目及び専門科目を履修します。それらの科目は、心理学・臨床心理学を体系的に学ぶための心理系科目、医学の基礎についての医学系科目、社会福祉や関係行政に関する社会学系科目に分かれています。講義科目に加えて、演習科目や実習科目を通じて心理援助者が必要とする知識・技能を身につけます。さらに、教育の基礎に関する教育学系科目を自由科目として学べます。医学を心理学・臨床心理学と並行して学習することで、身体と精神が相互に関連していることを理解するとともに、心理援助者にとって重要な疾患や障害についての知識を習得します。見学・実習科目によって、さまざまな職場で、そこで働く多職種との間で連携・協働する心理援助者の役割について学習します。「臨床心理学基礎研究Ⅰ・Ⅱ」、「臨床心理学研究Ⅰ・Ⅱ」、「卒業研究」で、臨床心理学の知識・理解を統合的に活用する能力を培います。

③問題解決・課題探求能力
 全学共通科目の大学入門ゼミでは問題解決・課題探求の基礎的な方法を学びます。また、「心理学実験Ⅰ・Ⅱ」、「心理学統計法」、「心理学研究法」で、心の問題に対する実証的な研究方法(量的研究、質的研究)を身につけます。そして、演習科目や実習科目での体験を振り返ることや実習発表会等を通して、心理臨床に関する問題解決・課題探求能力を培います。さらに「臨床心理学基礎研究Ⅰ・Ⅱ」、「臨床心理学研究Ⅰ・Ⅱ」、「卒業研究」で、自らテーマを設定することにより問題解決及び課題探求する力を向上させます。

④倫理観・社会的責任
 全学共通科目の主題A「人生とキャリア」において21世紀型市民としていかに生きるかを学びます。「生命倫理学」、「臨床心理学概論」、「社会福祉論」等の講義科目と共に実習科目を通して、心理援助者における倫理観・社会的責任を身につけ、社会人としての役割を担うことを学び、さらに専門職として生涯にわたり研鑽に努める姿勢を培います。また、「公認心理師の職責(心理師実践職能論)」、「関係行政論(社会医学・関係行政論)」においては、心理臨床における倫理や関係法規について学びます。「人間性心理学」では、人間性の尊重と支援について学びます。

⑤地域理解
 全学共通科目の主題C「地域理解」で地域理解への動機づけがなされます。学外機関施設での見学や実習を通して、地域社会における医療・保健、教育、福祉、司法・矯正、産業領域等の現状と課題を学び、心理援助者の職務内容と関連付けて理解するとともに、心理援助者の地域コミュニティ活動の実際について学びます。

 以上の学修成果の評価は、講義科目では修得した知識と理解度を基本とした評価を実施し、演習・実験・実習科目では講義科目で修得した知識を心理臨床の現場に応用できる能力と援助的なコミュニケーション能力の習熟度を基本とした評価を実施し、卒業研究では課題の設定や解決の実践的能力を核とした総合評価を実施し、厳格な成績評価(5段階評価、GPAの活用)を行います。令和4 年10 月1 日以降は、シラバスに記載している方法によって、各授業科目の到達目標の達成度で評価します。

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アドミッション・ポリシー(入学者の受入れに関する方針)

 ◇入学者に求める学力・能力・資質等
 本学科は、「医学の素養を有した心理援助職」の養成を目指して医学部に設置されます。医師・看護師等の医療職の受験資格の取得を目的とした学科ではありませんが、心理学と医学を融合させ、さらに、保健医療分野を中心としながら、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働の各分野での実習・演習科目を含めたカリキュラムを展開し、保健医療に留まらず幅広い分野で、心理学的理解と支援に役立つ教育を行います。
 卒業後に取得可能な資格は、認定心理士、児童指導員(任用資格)、心理判定員(任用資格)です。職種としては、少年鑑別所法務技官(心理技官)、家庭裁判所調査官、児童相談所児童心理司、児童養護施設の児童指導員などが想定されます。加えて、本学科卒業後に心理系の大学院修士課程に進学し、課程を修了すれば公認心理師(国家資格)・臨床心理士(日本臨床心理士資格認定協会)の受験資格が得られます。本学科のカリキュラムには公認心理師の受験資格を取得するために必要な科目等を含みます。  
 これらを踏まえて、大学入学までに、以下のような学力・能力・資質等を備えている学生を求めています。

 ①知識・技能
*高等学校等における幅広い学習に裏付けされた知識・技能の総合力と学ぶ力
②思考力・判断力・表現力
*人間の心理を深く理解し支援するための論理的思考力や判断力,根拠に基づいた科学的思考力や批判的思考力
*多面的な視点から思考し,自分の考えを他者にわかりやすく伝える表現力
③主体性・多様性・協働性
*主体的に多様な他者とかかわり,他者の意見や価値観を尊重し相互理解に努めようとする協働性やコミュニケーション能力
*他者の気持ちを敏感に感じ取る感受性や共感的コミュニケーション能力
④関心・意欲・態度
*心理的援助に高い志と強い関心を持ち,継続して意欲的に課題に取り組むことができる能力
*人間尊重の態度や深く温かい眼差しを持ち,他者との関わりを通して,自己理解を深め,自らの潜在的な資質を成長させようとする意欲
*大学卒業後もさらに高度な心理的援助の実践力を身につけ,心理援助者として,地域に貢献し,社会に役に立ちたいという意欲
⑤倫理観・社会的責任
*人間の健康,適応,成長に関わる心理援助者として,また社会の構成員としての自覚と責任を持ち,自己が果たす役割や倫理観・社会的責任を理解できる能力

◇大学入学までに修得が期待される内容
 国語,英語,数学を中心とした高等学校の基礎学力を十分に身につけていることが期待されます。理科系科目では,生命や自然現象を科学的,論理的に理解するための幅広い知識の習得が,社会系科目では,人の生活の背景となる文化,歴史,社会に関して多様な視点から把握できる姿勢が期待されます。国語では,事実や情報をもとに自らの意見を論理的に構築し,表現したり,他者とのコミュニケーションを確立するための,英語では,英文教科書や学術論文の読解や論述,国際的な活動を行う上でのコミュニケーションのための,数学では,数的処理に基づいた論理的思考力や統計のための基礎的学力を身につけていることが期待されます。

◇選抜方法の趣旨
○一般入試
*前期日程
 臨床心理学を学ぶために必要な広範囲の基礎学力を大学入試センター試験により評価します。
 また,個別学力検査では,国語又は数学,英語,面接を課します。国語又は数学について,国語は考えを論理的に展開したり,文章にまとめたり,適切に表現できる能力を,数学は推理能力や論理的な能力を評価するため,文系と理系の学生を幅広く評価するため選択教科として実施します。英語は大学において,国際的なコミュニケーション能力を本格的に養うために必要となるために実施します。面接では,思考力・判断力・表現力,主体性・多様性・協調性,関心・意欲・態度,倫理観・社会的責任を評価します。