NEXT INNOVATION
― 香川大学発研究シーズ活用レポート 
vol.19

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デジタルツールの活用で
障害のある子どもたちが「自立」できる社会に

アプリを使いこなして、一人でできることが増えるほど、自分に自信が持てるようになる─。
教育学部・坂井聡教授は、そんな新しい障害者支援の在り方を模索しています。
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訓練ではなくツールを使おう
~知的能力に関係なく「できる」ようになれる~

 障害とサポートツールの関係は、眼鏡に例えることができます。視力が低いのも視覚障害のひとつですが、眼鏡があれば健常者と変わらない生活が送れますよね。それと同じで、適切なツールを使うことで、知的障害・発達障害のある人たちが生活しやすい環境をつくりたいと考えました。できないことを訓練だけで習得させようとするのは無理がありますが、知的能力に関係なく、適切なサポートがあればできるようになることも多くあります。

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 香川大学とソフトバンク株式会社(以下、「ソフトバンク」)が共同開発し、私のアイデアと知見を注いで完成したアプリ『アシストガイド』は、困りごとを抱える子どもたちが一人で行動できるよう、必要な作業や動作を視覚的に示して、すぐその場でできるようにするサポートツールです。
 特別支援教育の現場では、それまで紙の手順表を使っていましたが、見た目も使い勝手もスマートじゃないと感じていました。障害者にスマホは操作できないだろう、という先入観をも覆す、スタイリッシュでインパクトのある提案になったのではないでしょうか。

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ICTで環境を整える ~『アシストガイド』の誕生~

 私の研究室では、以前からソフトバンクと共同研究を行い、知的障害者の社会生活を支援するアシストスマホの開発に関わっていました。アシストスマホ端末の販売の終了後もサービスを継続してほしいというユーザーの声が多く、あらためてソフトウェアとして開発したのが、『アシストガイド』です。
 ソフトバンクの開発チームはシステムエンジニアが中心で、教育現場のことは専門外。ユーザーに求められているものについては、特別支援の知見と小学校長としての経験を踏まえて私の研究室がアイデアを出し、同じく教育学部の宮﨑英一研究室にも技術監修していただき、提案しました。

 2018年に開発が始まり、リリースは20年。ダウンロードすれば誰でも無料で使うことができ、幼稚園児・小学生は保護者が操作、中学生以上は自分で使える設計です。実証実験がメディアにも注目され、文部科学省の「GIGAスクール構想」推進に伴って小・中学生に一人1台ずつGIGA端末(教育でパソコンやインターネットを活用するために配布したパソコン、タブレット端末のこと)が配布される時期と重なったことも、普及につながりました。
 今後、26年3月には操作性向上のためのマイナーチェンジが予定され、サポートブックやサンプルなどすぐに役立つ機能が追加される見込みです。

 大学の附属校で実践するからこそ、教育を通じて地域と社会に貢献する大学であることを象徴する取組になったと、手応えを感じています。企業と教育学部の連携により、現場で役立つアイデアを企業と共に世に送り出す好例になりました。

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教室から地域へ ~広がる活用と自立の輪~

 アシストガイドの活用は全国の支援学校に広がり、附属特別支援学校でも、学校の活動だけでなく、SNS用の写真の撮り方、情報発信の仕方、デジタルマネーの使い方などを広く学んでいます。同校の校訓 “自立”とは、自分のことを尊厳ある人として認め、周囲にも認められ、サポートを得つつ自分らしく生きること。それまでできなかったことが一人でできたという成功体験は、本人の自尊心向上にもつながります。
 障害があってもアプリを使って自立を目指せるのが当たり前になれば、障害そのものに対する見方も少しずつ変化していくでしょう。その先に、みんなで助け合う社会の実現がきっと見えてきます。


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教育学部教授 
坂井 聡 (さかい さとし)

奈良県出身。金沢大学大学院教育学研究科修了。2013年から現職。
15年から学生支援センターバリアフリー支援室長、23年から教育学部附属特別支援学校長。
専門は自閉症のある人のコミュニケーション指導。

 

詳しい情報は、HPから確認できます
香川大学 産学連携・知的財産センター
https://www.kagawa-u.ac.jp/faculty/centers/23894/