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香川県の直島町で、香川大生が主体となって運営する「和cafeぐぅ」が20周年を迎えた。
学生が入れ替わるなかで、ひとつの活動が20年も続いてきた背景には何があるのか。
今回は、和cafeぐぅで活動する大平さん、則包さん、直島町長、香川大学長が集い、20年の歩みを振り返ってもらった。

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アート、産業、暮らしが重なる島
学長 読者の中には、直島について詳しく知らない方もいるかもしれません。改めて、直島の特徴について教えていただけますか。
町長 直島は瀬戸内海にある小さな島で、面積は8平方キロ弱です。100年以上前に三菱マテリアルの製錬所ができ、企業城下町として発展してきました。人口が最も多かった昭和30年代には7,800人ほどいましたが、現在は2,900人を少し切るくらいです。その後、昭和63年にベネッセの先代が直島に来られ、アートの力で地域を元気にする取り組みが始まりました。しだいにホテルや美術館ができ、今の「アートの島」としての直島につながっています。直島は、製錬所を中心とした産業と、アート・観光という二つの柱で成り立っている島です。昨年は1,128,000人ほどが訪れています。離島の港でこれだけの数は、全国でも上位に入ると思いますよ。
学長 産業とアート、二本柱で島を支えているわけですね。

華やかさの裏側にある離島の現実
学長 直島には、世界的な観光地としての華やかな面と、離島としての課題の両方があります。人口減少や高齢化の課題は、観光客が増えたからといってすべて解決するわけではありません。そうした二面性の中で、若い人が地域に関わることには大きな意味があるのではないでしょうか。
町長 おっしゃる通りです。直島はアートや観光で注目される一方で、離島であることに変わりありません。船に乗らなければ来られない。昨年はオーバーツーリズムも実感しました。フェリーの積み残しもあり、それを自治体だけで解決するのは簡単ではありません。
則包 瀬戸内国際芸術祭の時期は、本当に人が多かったです。私たちは普段、朝8時ごろのフェリーに乗って来るのですが、長い列ができていて、朝の便でも積み残しになりかねない状況でした。観光地として多くの人が来ることと、島で暮らす人の生活とのバランスの難しさを感じました。
大平 座学では分からないことを自分が活動する中で実感できる環境です。地域課題を遠いものではなく、自分の目で見て考えることができるのはぐぅの活動があるからです。

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20年続いた理由は、地域とのつながりにある
学長 さて、本題に入りましょう。会社でもお店でも、20年続けることは簡単ではありません。学生主体の活動がこれだけ長く続いてきたことについて、お二人は率直にどう感じていますか。
則包 大平さんと私が入って3年目になりますが、活動していくうちに本当に地域の方々に支えていただいていることを痛感することが多くて。お店に寄ってくださったり、交流会のときにいろいろ助けていただいたり。それがなければ、続けられなかったと思います。
大平 先輩方が築いてきた基盤もありますし、町役場の方や地域の方が会ったときに声をかけてくれるんですね。それが私たちにとってすごく支えになっていて。長い年月の中で積み上げてきた信頼があるんだなと感じます。
学長 見知らぬ土地で活動している学生にとって、地域の人が気にかけてくれるというのは心強い。具体的にどんな交流の場があるのですか?
町長 年に2回交流会を開いています。学生と、直島の民間団体「うぃ・らぶ・なおしま」の方々、行政の方など、多いときで80人ほどが集まります。春は送別会、夏は一緒に海ホタルを採取したり、花火大会のブースに出店したり、ね。
則包 交流会のおかげで、普段なかなか会えない方とも話すことができます。一緒にご飯を食べながら、たわいもない会話をするなかで新しいつながりが生まれることもあります。もしそういう機会がなければ、学生がただ島に来て活動しているだけになってしまっていたかも。地域の方と関われるということは、とても大きな意味があると思います。

地域、大学、拠点。土台があるから魅力が生まれる
学長 20年続いてきたのにはいくつかの条件があると思っているんです。一つは、高松から日帰りできる立地。もう一つは、万が一の事故やトラブルの備え、古川先生をはじめとした指導・管理体制。そして、週末はいつも開いているという常設の拠点。この三つが揃っていたことが大きかったと思いますね。
町長  本当にそうですね。立ち上げ時は、食器ひとつ集めるのにも苦労していたと聞いています。いろいろな方にお願いしながら、なんとか始めた活動が、気がつけば20年続いている。私から見ると、学生さんたちは孫のような存在。何かやりたいと言ってくれたら、応援したくなるんですよね。
学長 せっかくなので、お店のことも紹介してもらえますか?
則包 創業当時から続く看板メニューが「直島☆のりのり丼」です。直島産の海苔をたっぷり使った丼で、島の素材をそのまま味わっていただける一品です。観光客の方にも大人気です。
大平 グローバル化へも配慮していて、宗教や文化によって食べられないものがある場合の対応マニュアルも作って、メンバー間で引き継ぎをしています。韓国からの留学生が加入して、積極的に英語や韓国語で話しかけてくれる場面も増えています。

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カフェを越えて島に溶け込んでいく
学長 ぐぅはカフェ運営にとどまらず、地域の活動にも関わっていますね。
大平 竹あかりの活動では、放置竹林を活用して夜の観光資源にできないかと考えました。役場の方に相談したところ、町長が休日に作業着で来てくださって、竹の伐採から手伝ってくださいました。
則包 花火大会の時にはブースを出店しました。地域のイベントに参加したり、地域の方と一緒に何かをつくったりする機会があることが、ぐぅらしさなのかなと思います。
町長 本当に直島に溶け込んでいると思います。単に学生が来ているのではなく、地域の一員として活動してくれている感覚があります。

第二のふるさととしての直島
学長 活動を通じて、お二人の価値観に変化はありましたか。
則包 私は香川で生まれ育ち、大学も香川で、就職も香川でする予定です。もともと香川が好きでしたが、直島で活動することで、香川にはこんなにいい場所があるんだと改めて感じました。人とのつながりが自分の人生に大きな影響を与えることも実感していて。同じ香川に第二のふるさとができたような感覚です。
大平 直島で活動するようになってから、香川を見る視点が変わりました。瀬戸内国際芸術祭もそうですが、ひとつの島だけでなく、島々がつながりながら地域全体の魅力をつくっていることを実感しています。
学長 大学は、学びの場であると同時に、社会に出る準備をする場としての役割があります。こうしたフィールドワーク的な活動は、その両方に関わっています。お二人は意識していないかもしれませんが、卒業後、社会人として働く時に必要なコミュニケーション力や主体性、課題を見つける力につながるはずです。

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和cafe ぐぅ
〒761-3110 香川県香川郡直島町本村836
営業日 土・日・祝 11:00~17:30(L.O.17:00)
メールアドレス(予約時はこちらから) 
naoshima.project85@gmail.com


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新たな挑戦に繋がる学び

若い人が来る場所には、未来がある
学長 ところで町長は、学生が地域に関わることをどのように捉えていますか。
町長 私は、「若い人が集える場所でなければ、地域の発展はない」と思っています。だから学生さんが直島に来て活動してくれることは、本当にありがたいこと。若い人が活動している姿が、島全体を明るくするんですよ。
学長 若い人が来たいと思える地域であることが、地域の未来につながるということですね。
町長  そうです。地元の人、学生、いろいろな人がつながっていくことが大切だと思います。

これからも、学生の「やりたい」を受け止める場所へ
学長 ぐぅはお二人にとってどんな場所ですか。
則包 カフェを運営するだけの場所ではありません。地域の人との関わりや、さまざまなプロジェクトとの交流を通して、自分自身が成長できる場だと思います。
大平 そうですね。「やってみたい」と声を上げた時、受け止めてくれる地域がある。直島とぐぅには、そんな魅力があると思います。このフィールドを活かすために「自分たちにしかできないことって何だろう」という問いを、後輩たちにも持ち続けてほしいです。
学長 これからの大学教育では、知識を得るだけでなく、自発的に動く力、人と関わる力がより大切になります。地域の中で学ぶフィールドワーク的な活動は、ますます重要になるでしょう。香川大としても、地域で働き、地域を支える人材を育てていくことが大切だと考えています。
町長 20年前、この地区には食堂もほとんどなかった。本当にぐぅしかない時代から始まって、ここまで来た。町長として、「直島は沈没させん」というのが率直な気持ちですが(笑)。アートもマテリアルも頑張ってくれている。そこにこれからも香川大の学生さんがいてくれることが、本当に嬉しいですね。
学長 20年続いた和cafeぐぅは、学生の挑戦を地域が受け止め、その経験が学生を育て、地域に新しい風を運んでいる。これからもこの場所が、学生の「やりたい」を形にする拠点であり続けて欲しいです。

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挑戦する学生と、ともに歩んだ20年
和cafeぐぅについて振り返れば、オープン延期や運営の混乱、コロナ禍による休業など、決して平坦な道のりではありませんでした。それでも20年にわたって活動が続いてきたことは、本当に素晴らしいことだと思います。それ以外のプロジェクトについて私にとって何より嬉しいのは、学生たちが楽しみながら成長し、地域の皆さんに可愛がられていることです。学生の「やりたい」という思いは大切ですが、それだけでは方向性を見失うことも。だからこそ私は、助言や目標という目印を示しながら、学生たちとともに歩んできました。学生たちの成長は、私の誇りです。

古川先生(w200.JPG経済学部教授
古川 尚幸(ふるかわ なおゆき)
香川県出身。大阪府立大学大学院工学研究科修了。2011年から現職。専門は商品学、環境・エネルギー問題、地域振興。