Message~香川大学へようこそ~

新入生の皆さん、香川大学を代表して心から歓迎いたします。

皆さんがこれから4年或いは6年間学ぼうとしている香川大学は、風光明媚な瀬戸内海に面し、古戦場の屋島、ミシュラン三つ星の栗林公園、金毘羅さんなどの名所旧跡が多く、温暖な気候で災害も少なく、また、美味しいものもたくさんあり、都会の人達が羨むほど環境に恵まれています。このような環境下で過ごす皆さんにとって一番の幸せは、自由に使える自分の時間を持てることです。漫然と時を過ごすか、はっきりとした目的をもって毎日を過ごすかは皆さん次第ですが、卒業時には過ごした時間の質によってはっきりと差が出ます。

幸町キャンパス内に咲く桜

成人への成長過程で、大学時代ほど一生に影響を及ぼす時はありません。自分の描いた将来像に近づくための学修や技術の修得、成功や失敗・挫折など、様々な経験が皆さんを鍛えてくれます。人生の友、師、生涯忘れられない書物に出会うこともあるでしょう。

一方、本学には約200名の留学生が在学しています。彼らとの交流の場を積極的に活用して、異文化に接し世界は広いことを実感してください。英語や中国語を学修することで海外留学への道も開かれています。私は皆さんに視野を広げ、あらゆることに関心を持って欲しいのです。そして、時には学長室に来てその経験を話してください。

学長閑話(メールマガジン第195号 2015.02)

今年の1月にタイ・チェンマイ大学の創立50周年記念式典と卒業式に招待され、参加しました。記念式典にはタイ王室王女様がご臨席され緊張しましたが、温かい雰囲気でタイ国民や大学関係者が如何に王室を尊敬し大切にしているかを肌で感じました。タイの方は手を合わせて相手に挨拶され、礼儀を重んじるお国柄です。市内には、多くの自動車が走っていますが、警笛は殆ど聞かれず、王女様の車列が通過するまで何時間でも静かに待っていました。タイと日本の国民性は良く似ていると改めて感じました。 タイ・チェンマイ大学
過日、ドナルド・キーン先生の“日本文化は世界の勝者になった”という記事を読みました。しかし、それは氏の、IT・経済などの発展ですべて満たされ便利な時代になった今、日本人が伝統を忘れつつあるという警告も含めたメッセージでもあります。

私の子供の頃は、ひもじい毎日で食べる事ばかりを考えていましたが、向こう三軒両隣仲良く、貧しくても家族団欒の時間がありました。いじめやいたずらもありましたが、何かルールのようなものがあり、一定以上は歯止めがかかっていました。現在はITの普及でバーチャルな世界にのめりこみ、現実と自分の夢想する世界の区別がつかなくなっているようにも感じられます。日本人の古来より誇れる礼節を重んじる心、勤勉さ、仕事の正確さ、思いやりやおもてなしの心など、全て良き文化がすたれて来ているように感じます。キーン氏がいう日本の第二芸術(文学・美術・建築などに対しての、能・茶・書道・俳句・川柳・琴・尺八など)を愛する人々がその気質を引き継ぎ、それが日本の美意識を支えていると言われますが、楽観はできません。

人材育成を使命とする大学は、日常の学修以外にも、日本人的心の修養の場でもありたいと願います。

学長閑話(メールマガジン第194号 2015.01)

2015年を迎えた。年末年始の暴風雪はむしろ旧年の憂さを吹き飛ばし、新鮮な気持ちで新年を迎える事が出来た。昨年は四国八十八ヶ所霊場開創1,200年にあたり、心も新たに4回目の結願をさせていただいた。ご本堂大師堂に参拝しお経をお納めした後、樹齢数百年の杉林の静寂荘厳な境内を巡っている時、心の静謐は癒し以外の何物でもない。大木を抱き過ぎし年月を思う時、小さい自分の存在に恐れおののく。 四国遍路の様子
?愛媛県大三島大山祇神社で乱世の刀剣・鎧(国宝)の展示品を鑑賞したが、樹齢1,600年でも青々と天に向かって伸びる御神木“楠”を目の前にすると、人間の過去の営みのはかなさに比して、生命力に満ちた自然の偉大さを改めて思い知らされた。別の大木断面の展示では、年輪が繊細な自然の流れを無言で示していた。年輪は毎年の天候で変わり、厳しい環境では密に、成長に適した年は太めに刻まれ、過ぎし年月の自然環境を示すという。様々な弧を描いて刻まれた年輪に触れてみると、森羅万象を一瞬も立ち止まる事もなく先に進める“時”の不思議さに今さらながら思いいたる。天地創造から現在まで休む事もなくヒトを含めた動植物の生から死までを見届けた“時”とは何なんだろう。その様な感慨の中、自分のこれまでの
人生を振り返り、自分の年輪はどうであったかを考えさせられる。ヒトは個々の精進や努力によって年輪の姿を変える事が出来るかもしれない。

新年はどの様な年輪になるか、そのような事を思い巡らす年初めである。

学長閑話(メールマガジン第193号 2014.12)

地方大学の学生は面白い(2)

前回では、地方大学出身の学生は地域をプレートとして特異な潜在能力を持ち、社会で活躍する素養が涵養される事、また海を渡ってチャレンジする学生の事を書きました。

今回は、本学学生の高い意思と能力を再認識した最近の出来事についてです。それは、11月初旬に開催された本学卒業生を2年ごとにお迎えするホームカミングデーでの事です。今年は、学生が存在感を大いに高めたものとなりました。まず、総会では、学生3名により、昨年制定された学生憲章の披露があり、学歌斉唱とともにOB・OGの皆さんに感銘を与えました。特に、懇親パーティーは学生主催による手作り感満載で、司会、進行、催しものなど大いに盛り上げてくれました。OB・OGの皆さんに寄り添い、直接先輩後輩との交流の場を設ける配慮に、学長として本当に嬉しく有り難く思えました。先輩たちも直に後輩に接して、母校への思い入れもより深く、新たになったことでしょう。この様な志が、自発的に醸成されていることが何よりも嬉しいものです。

一方、大学祭のフィナーレイベントがサンポート高松大ホールで行われました。多くの学外者も参加する中、学生諸君の工夫と熱演で大いに盛り上がったことを彼らとともに喜びたいと思います。地域社会に目を向けた若者が、本学から出て来ている事を実感したイベントでした。
近ごろの若者は・・・やりますね。
第4回ホームカミングデーでよさこいを披露する学生/学長と学生スタッフの記念撮影

学長閑話(メールマガジン第192号 2014.11)

以下の文はある新聞出版社からの依頼原稿を、一部改訂・抜粋したものです。特に学生諸君に読んでほしいとの思いで再掲しました。

地方大学の学生は面白い(1)

“地方大学の学生は面白い”これは香川大学構想会議での学外委員の発言である。一般的に地方大学の学生は、おとなしい、真面目、素直という印象であるが、面接試験でユニークな発言や予想外の返答をする学生も多い。また、入社後、ある時期から見違えるように伸びる人材も地方大学出身者に多いという主旨であった。私の専門領域である医学医療の現場でも、ある時期や出来事を境に急成長する、いわゆる“化ける”人達を多く見てきた。

キャンパス風景
なぜ、地方大学に“化ける”人材が多くいるのか。それは、地域特有の気候、風土、伝統、文化、人情等の影響を受けて、一味違った魅力的な人材が育つ土壌がそこにあるからだろう。そして、当然地域の方々との顔の見える関係が構築され、心を通わせる経験(地域ぐるみの教育)が“化ける”素養として蓄積され、それが何らかの刺激に触発されて開花する可能性を高めていると思うのだ。

さて、社会が大学に求める役割の中でも、特に地方大学に求められるものとはどのようなものか。以下に私が思うその役割を述べてみたい。
まずは、国内外の舞台を問わず活躍できる多種多様な人材の養成である。グローバル人材の養成は、現代の社会的ニーズであり、地方大学でも種々工夫を凝らし、世界を視野に入れた教育を行っている。本学でも外国の大学と単位互換や相互派遣、滞在型の学生教育が行われているが、滞在期間が真のグローバル人材養成にとって十分な期間とは言えない。このため、平成25年度からスタートした特別教育プログラムの一つ、「グローバル人材育成プログラム」で、1年間の留学経験を積んでもらうなど、内向き志向の強い若者の関心を海外に向けさせようとしている。今夏から、英語コースで4名が留学しており、中国語コースでは1名がその予定である。指導に携わっている教職員に感謝し、学生諸君の努力に拍手を送りたい。小さい一歩ではあるが、若者の可能性と夢を継続して支援していきたい。 (次回に続く)

学長閑話(メールマガジン第191号 2014.10)

私が最近思い、感じる事などを書いてみたいと思います。

この9月中旬にハードスケジュールではありましたが、タイ・チェンマイ大学との合同シンポジウムとインドネシア・マカッサルのハサヌディン大学での6大学農学部大学院のシンポジウムに参加しました。

チェンマイ大学とは、各学部関係者の努力もあり、10年以上学術研究ならびに学生交流を行い、また交互に主催大学となりシンポジウムを開催し今回が第5回目となりました。一人でも多くの学生を参加させたいと思っていましたが、第3回の7名に対して39名の学生がタイの学生と交流出来ました。学生討論会では語学の壁で実力が発揮できなかった学生もいたようですが、そのような経験をする事が大切だと思います。参加した学生は、タイの学生の積極的な何かを学びたい、自分の意見を言いたいという姿勢と目の輝きに、刺激を受けたはずです。学生諸君には短期の海外経験ではありましたが、日常の学修では得難い何かを修得してくれたものと思っております。先日、その成果発表会も開かれました。人生の中で考え方やライフスタイルが変化する機会は誰も経験しますが、今回の外国人学生との交流がそのきっかけになってくれれば嬉しい限りです。
記念品交換/クロージングセレモニー
インドネシアのハサヌディン大学では、農学部大学院の学術連携が順調に進展しており、博士課程のジョイントディグリーの協定書のサインがありました。来年は香川大学がホスト大学になる事から、関係部署と相談しながら大学として準備をする方針です。両国の大学は"日本の大学は我々の手本です"とは言っていますが、追いつけ追い越せという気概がひしひしと伝わってきました。シンポジウムでの学生の真剣さと教員の高いモチベーションに大いに刺激された旅でした。 記念撮影

他年度のメッセージ