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自分らしく輝ける未来へ
人生100年時代、「学び」は次の扉を開く鍵 可能性に満ちた未知の大海原へ、ワクワク漕ぎ出そう。高校を卒業したばかりの川原さんと、第2の人生を選んだ出射さん。 2人の新入生がフレッシュな思いを、筧学長との対談で語りました。

学問の前では誰もが平等

川原 この春に経済学部に入学しました。香川大を選んだのは、学生プロジェクトなどが盛んだからです。言われたことだけやっていれば楽でいいやと思っていた私が高校で文化祭委員を務め、自分で考えて物事を進めていくのは楽しいと気づいたことをきっかけに、香川大でもそういうプロジェクトに関わりたいと思いました。生まれ育った香川で将来働くために、観光地域振興コースで新しいことを学ぶつもりです。

出射 私は3月まで川原さんが在籍していた高松高校で校長を務め、4月から工学研究科安全システム建設工学専攻の博士後期課程に進学しました。現役大学生の頃は地震工学を学び、香川県で数学教員として36年間、教育委員会で教育行政も14年間経験しました。高松高校では「総合探究」という探究活動を中心的に行い、高校生が自分なりに興味を持ったテーマで研究を進めていく授業を実施。退職を機にどういう方向で人生を歩むか考えた時、高校と大学の連携が叫ばれる中で、自分もキャリアを生かして関われるのではないかと思ったのがきっかけの一つです。もう一つは、香川大が四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構を中心に四国の防災研究の拠点であることです。経験を生かした地域貢献ができるのではないかと期待しています。

 2人の話を聞いて、率直に大変うれしく思いました。私が理事を務めていた2016年頃から経済学部の大幅な改組計画が始まって、今の形になったのが18年。3学科制から1学科5コースになり、学生さんは入学して1年半経ってから本当に行きたいコースを選ぶシステムになりました。香川県はまだ発掘されていない観光資源のポテンシャルが高く、観光はこれから伸びる分野で、観光地域振興コースも学生さんの希望が多いコースの一つです。川原さんのように高校の時から香川大の取り組みを知って来てくれたのは大変喜ばしいですね。また出射さんのように、キャリアを築いた後で進学されるケースは香川大においてまだ少ない。これから増やしたいと思っていた折、期待の新入生です。出射さんと川原さんは年齢が親子くらい違いますが、博士課程と学部生の違いはあるものの2人とも学問の前では平等、やりたいことがあるかどうかですね。

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多分野の知識が 視点を豊かにする。
今の若者に必要なのは「未知を恐れず飛び込んでいく力」 苦労も不安もいつしか自信に。何事も楽しんでしまえばいい!

分野を横断した研究が 新たなアイデアを導く

川原 サークル活動にも参加してみたいし、資格や受験資格がもらえる授業もあって、いろんなことに挑戦できる環境が香川大の魅力だと感じています。まだZoomでしか活動できていませんが、学生主体の地域活性化プロジェクトに関わりたくて、最近「盆栽ガールズプロジェクト」に入ったんです。
 2代前の盆栽ガールズに教えてもらって、私もコケ玉盆栽をつくりましたよ。今も学長室に飾ってあります。盆栽そのものは他県の方が有名ですが、原料としての黒松盆栽の出荷量は香川が日本一なんでしょ?材料を香川で生産しているのにプロダクトは他県の方が有名というパターンは工業製品にも多く、知名度が低いのが悩みどころです。川原さんには頑張ってもらわないとね。
出射 私は退職の時、「今までは川が流れて河口にたどりついたようなものだが、大学に入った瞬間大海原に放り込まれたかのようで、先がまったく見えない。どう切り拓いてどういう航路を進むかを自分で選択できるワクワク感がある」と生徒たちに伝えました。私の「四国における災害に強いまちづくりはどう在るべきか」という大きなテーマにおいて、香川大はさまざまな専門家もいらっしゃるし、香川大の魅力をフル活用して、どういう航路を進んでいくかを見定めたいですね。
 若い人たちは先が見えない社会で「君たちは大変だ」とよく脅されるけど、道が決まってたら面白くないじゃないですか。どうなるかわからない社会を切り拓いていく力こそ、今の若い子に求められている。もともと、これからを支える人材をどう育成していくかは大学・高校のミッションです。自分がやりたいことを通じて、若い世代に「どういう学びをしていくべきか」を伝えるチャンスがあるのではないか、大学院生の立場から高大連携に取り組めるのではないかと期待しています。そういう自由な環境こそ、私が香川大が魅力的だと思う点です。
 高大連携は香川大にとってまだ課題の多いテーマですから、ぜひお力添えをいただきたい。地質や地震がご専門の前創造工学部長・長谷川修一先生は、ライフワークが「讃岐ジオパーク」です。四国、讃岐の地がどうやってできたかを辿る話で、たとえば屋島の変わった形もジオパークの中で説明がつきます。土器川は下から水が湧いている川らしいけど、底が真砂土というサラサラの砂で、きれいな水がうどん文化の元になったという話もある。川原さんが興味を持っている観光も、経済学だけでは学べないことが多く、瀬戸内海や四国がどうやってできたかといった知識が入るだけで、切り口がすごく豊かになる。それがまさに新研究科でやりたいことの一つなんです。
 出射さんは「大海に放り込まれたような感じ」、何が起きるかわからないけれど、それを恐れずワクワクして飛び込めば新しい発見が得られるとおっしゃった。私の大学院時代を思い出しても、自分で研究テーマを見つける不安や苦労は、最終的に大きな自信になりました。社会に出ても、求められるのは答えが見つからないところに飛び出して行ける人ではないでしょうか。
出射 ジオパークは私も研究テーマの一つで、中学生・高校生たちとうまくコラボできると面白くなると考えています。大切なのはアイデアをいかに出していくか、勉強して基礎を学ぶ中で、次のステップをどう考えていくかだと思うんです。
 大学の先生方は学術活動をしているうちにどんどん狭いところに入り込みがちで、「狭い学問領域に閉じこもって一般市民のためになっていない」と世の批判を受けたりもします。反省を踏まえて「いろんな分野の人たちが一つのテーマで話し合う」機会を持てば、そこから新しいアイデアが湧いてくるはず。新研究科の開設で先生方の横のネットワークを豊かにする狙いはもちろんありますし、その中には学生も含まれます。先生方の研究の視野も広がるでしょう。新研究科開設に当たって各学部の先生方が議論を重ねる様子を見ていても、ずいぶんイメージが共有化されてきました。異分野の意見が融和するようになって、いい傾向だなと思います。
 

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「学び」で切り拓く 100年の人生計画

 出射さんのように退職した方はもちろん、30~40代で大学院に入る方もどんどん受け入れたいんです。いろんな年代の人がキャンパスで一緒に過ごし、今こうして3人で喋っていてもあまり違和感がないのが大学のいいところです。
 川原さんは18歳、同世代やもっと下の世代の平均寿命は世界で105歳くらいになり、日本人はさらに長くて半数の人が107歳まで生きると言われています。100歳以上生きて当たり前になる時代。私の予想では、たくさん労働もしなくてよくなると思うんです。1週間に15~20時間働いて稼いで、残りの時間をどうするかとなると、生きがいを見つけ、自分の人生設計をしっかり考えないと息切れする。「社会の役に立っている」と思えるのが幸福だとすれば、どうやって社会に役立つかの基盤が必要です。30~40代で大学院へ行こうか、ということにもなってくるでしょう。
 将来の香川には外国人も増えているだろうし、香川大が年齢も国籍もさまざまな人たちが一緒に、活気のあるキャンパスで、面白いことを議論する場を提供できていたらいいですね。人口減は避けられませんが、人は少ないけれどちゃんとご飯を食べられて、長い時間労働しなくてもお金が稼げて、面白いことをする人たちがたくさんいる、そんな状況でなくてはいけません。コロナ禍で考え方が変わっているのはチャンスでもあり、国立大学をはじめとする全国各地の地方大学に、面白いことをしようと人が集まっていれば大丈夫だと思っています。
出射 私は退職後だけど、リカレント教育において、もう少し若い世代が早い段階で「人生100年時代に次の仕事、ステップアップをどう図るか」を意識した学びを求めていけば、社会が変わると思います。30~40代でセカンドキャリアのために大学に行くとか、人生のいろんな道を選択する中で、学びをどこに求めるかが重要です。今の現役世代は仕事で精一杯でなかなか難しいけど、世界中でそういうことがどんどん進んでいますね。学びが次のステップにつながっていくのは間違いない。そういう意味で、大学の位置付けにはこれから大きく差がついてくると思います。
 香川大には専門の学問分野以外に「〇〇デザイナー」という様な分かり易い別称をつけられる先生が増えています。出射さんの場合は都市計画を考えるまちづくりデザイナーといったところでしょうか。社会の仕組みをデザインするソーシャルデザイナー、メディアデザイナーなど、これから生まれる新しい職種にどんどん対応できれば、15年周期くらいで名刺の肩書が変わっていくのが当たり前になるんでしょうね。出射さんは1つの仕事をずっと追求する時代だったし、私ももともとは病院の中に閉じこもって仕事をしていればそれでよかったけれど、そういうわけにはいかなくなりました。川原さん、なんだか大変なことになってきたと思ってる?
川原 頑張らないと…(笑)
出射 楽しんだらいいんじゃないかな。

川原 「将来こうなりたいから頑張ろう」ではなくて、将来の選択肢を増やすためにも視野を広く持って、資格も含めていろんなことに手を出して、経験を積んでいこうと思います!