香川大学は香川県警察と連携して、2010年から万引き防止に関する調査や取組を実施してきました。その成果もあり、人口1,000人当たりの万引きの認知件数全国ワースト1位からも脱却し、ピーク時から大幅に件数が減少しています。しかしながら、2023年に万引きの認知件数が増加に転じたことから、今回、香川大学では最も効果的な万引き対策を検証するため、株式会社IC、東京海上日動火災保険株式会社、香川県警察の支援を受け、疑似的な万引き状況を作り出し、光や音、掲示物、声かけなどの対策のどれが最も心理的な効果があるかを検証した結果を以下のとおり公表します。こうした実験は全国初のものであり、今後の対策を考える上で非常に意義のあるものといえます。
内 容
香川県では、2010年から香川大学と香川県警察が連携し、全国に先駆けて未然防止のための店内声かけを提唱するなどの万引き防止対策を推進してきました。さらに、安全安心まちづくり推進店舗の認定やホスピタリティと防犯意識の向上を目指す店員教育の実施、セルフレジ万引き防止マニュアルの作成など独自の取り組みを行ってまいりました。今回は最も効果的な万引き対策を検証するため、大学生・大学院生を対象として、実店舗の特定箇所(万引きが起きやすいホットスポット)で疑似的な万引きを行わせ、光や音、掲示物、挨拶などの対策のどれが最も心理的な効果があるかを検証しました。実験では生理的反応(心拍変化)、行動映像、および感情状態などのデータを収集しましたが、速報的に自己報告の感情状態のデータの分析結果を公表いたします。
分析の結果、最も疑似的な万引き行為を躊躇させたのは、挨拶条件であることがわかりました。一方、仕掛け学などによって効果があるとされてきた防犯カメラのピント調整中のポスターや目のポスターなどの掲示物条件は疑似的な万引きを躊躇させないことが分かりました。光や音は気づいた人の半数近くを躊躇させることもわかりました。感情状態については、緊張―不安と混乱、抑うつ―落ち込みは店員の挨拶条件が最も喚起することがわかりました。疲労は光条件と音①(不安喚起)条件と店員の挨拶条件が喚起することがわかりました。これらの結果から、店員の挨拶が最も効果のある対策であり、一般に効果があると言われる光や音もある程度効果がある対策といえ、掲示物はあまり効果がないことがわかりました。
なお、実験中に誤って万引き行為と誤解されることがないよう、実験参加者、店舗関係者や他の客への事前周知・フォロー体制を整え、安全かつ法的に問題のない形で実施しております。実験に際して、特にトラブルも生じていないことも併せて報告いたします。今回の効果的な万引き対策を明らかにする実証実験は全国初のものであり、報道各社におかれましては、県民の皆様方への大学と警察の取り組みの周知をはかるべく報道のご協力をお願いいたしたく存じます。
※以下に分析結果のグラフを掲載しています。






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お問い合わせ先
香川大学 教育学部 教授 大久保智生
TEL:087-832-1530
E-mail:okubo.tomoo@kagawa-u.ac.jp