香川大学農学部の市村和也教授を中心とした東京農業大学を含む共同研究グループ(香川大学、理化学研究所 環境資源科学研究センター、岩手生物工学研究センター、鳥取大学、東京農業大学、金沢大学、京都大学、石川県立大学)は、実験モデル植物のシロイヌナズナを材料に、植物病原細菌に対する免疫受容体遺伝子SMN1/RPS6が機能する際に、RNA品質管理による制御が重要であることを発見しました。
本研究は2019年10月に東京農業大学と香川大学の間に結ばれた連携・協力に関する協定に基づく連携研究の成果であり、東京農業大学の太治輝昭教授と同大学生物資源ゲノム解析センターの田中啓介助教が参画されています。これまでの大学生対流促進事業による短期受入れなどの教育連携に加え、研究面でも連携が進展しました。
本研究は、科学雑誌「Plant and Cell Physiology」オンライン版(2020年5月28日付)に掲載されました。
【研究成果の概要】
病原菌が感染していないにもかかわらず、あたかも感染が起こった時のように、防御反応が常に活性化する「自己免疫」が植物にも知られています。また、自己免疫が常に活性化すると成長抑制が起こり、植物は矮化(草丈が伸びないまま小型化)してしまいます。この現象は、植物の免疫制御メカニズムの異常により起こると考えられることから、植物の自己免疫を切り口に免疫制御の仕組みを解明する研究が行われました。
本研究では、常に矮性と自己免疫を示すシロイヌナズナの遺伝子組換え体をもとに、矮性を示さなくなった復帰変異体を単離し、原因遺伝子を同定しました。その結果、SMN2と名付けた原因遺伝子はRNAヘリカーゼをコードしており、核におけるRNAの品質管理機構に重要な核エキソソームの標的決定因子であることが分かりました。SMN2は、トマト斑葉細菌病菌の病原性因子HopA1に対する細胞内免疫受容体をコードする、同じ復帰変異体探索で先に同定されたSMN1/RPS6遺伝子 (Takagi et al., PCP 60: 778, 2019 「Plant and Cell Physiology」オンライン版)から生じる異常なRNAの分解を通して、SMN1/RPS6遺伝子の正常な発現に関わることが明らかになりました。以上のことから、植物病原細菌に対する免疫受容体遺伝子SMN1/RPS6が機能をする際に、SMN2が関与するRNA品質管理による制御が重要であることが明らかにされました。この研究成果は、植物の免疫と大きさのバランスを制御する仕組みの解明に役立つことが期待されます。
【原論文情報】
Momoko Takagi, Naoki Iwamoto, Yuta Kubo, Takayuki Morimoto, Hiroki Takagi, Fuminori Takahashi, Takumi Nishiuchi, Keisuke Tanaka, Teruaki Taji, Hironori Kaminaka, Kazuo Shinozaki, Kazuya Akimitsu, Ryohei Terauchi, Ken Shirasu, Kazuya Ichimura, “Arabidopsis SMN2/HEN2, Encoding DEAD-box RNA Helicase, Governs Proper Expression of the Resistance Gene SMN1/RPS6 and Is Involved in Dwarf, Autoimmune Phenotypes of mekk1 and mpk4 Mutants”, Plant and Cell Physiology, 10.1093/pcp/pcaa071「Plant and Cell Physiology」オンライン版
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東京農業大学と国立大学法人香川大学との連携・協力に関する協定締結に関するトピックスについてはこちらからご覧下さい。