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逆境が生んだ新しい大学祭
2020年11月23日、FM香川でのラジオ生放送とインターネット配信によって、香川大学祭をオンラインで開催。

大学も学生もそれぞれが
大学祭の配信を考えていた。

—— 今回の経緯を教えてください。

新型コロナウイルスの影響で、2020年は4月以降すべての授業をリモートで行うこととし、サークルや部活動も休止となりました。8月ごろから徐々に制限を緩和したものの、例年11月に行われる大学祭については開催が危うい雰囲気のまま。一方でオンライン会議のメリットが分かってきたり、他大学の学生が大学祭の代わりに動画配信を行った事例を見たこともあって、「香川大もオンラインで大学祭をやれないだろうか?」と投げかけてみたのです。

島村 僕たち実行委員は、例年6月には始まる大学祭の準備を7月になっても進められない状況でした。とはいえ、サークルや部活動の最後の舞台として大学祭に挑む学生も多いため、練習や交流が制限されていたとしても、大事な発表の機会まで中止にはしたくないという思いもあったのです。実行委員の間でも「オンラインで生配信したい」という声は上がっていました。ただ、知識も経験もなく諦めかけていたのが実情です。そんな矢先に、大学側からの提案があり、実際にチャレンジできる運びとなりました。

—— FM香川による運営のサポートはどのように決まったのでしょうか?

鶴川 私たちの番組内に香川大学の皆さんのご協力をいただいているコーナーがあり、その交流の中で大学祭の状況を伺いました。長年続いてきた大学祭が中止になるのは寂しいので、ラジオという舞台をぜひ使ってくださいと申し出たのがきっかけです。

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マニュアルも前例もない初めて尽くしのチャレンジだった。

——まったく新しい試みだったわけですが、どのような発見がありましたか?

島村 これまでは70回以上続くなかで受け継がれてきた運営のノウハウがありました。今回は何のマニュアルもなく、企画書も一から作り直しです。自分たちが前例を作る立場になったわけです。例えば、例年はパンフレットへの広告掲載を条件に企業などへ協賛をお願いしていましたが、今年は紙のパンフレットは配布できません。代わりに、香川大の大学祭としては初めてWebサイトへのスポンサー広告掲載を行いました。
鶴川 実はFM香川としても初めてのこと尽くしでした。プログラムは全体で7時間。局外からこれだけ長時間の生中継をするのも、ラジオとインターネットで同時配信するのも初の試みだったんです。手探りのスタートで正直なところ不安も募りましたが、島村さんをはじめ香川大の関係者の皆さんが真剣かつ緊張感をもって準備を進めてくださったので、次第に「これなら上手くいく」という確信が持てるようになりました。
島村  配信プログラムの準備では、FM香川さんの力を借りて、これまで何時間も使っていた企画の台本を限界まで削ぎ落とし、尺を短くする苦しい作業がありました。こうして、要点を絞りコアを残す技術を学べたのは大きな収穫でしたし、来年以降にも必ず活かされるでしょう。本番の配信を振り返っても、テンポよく濃密で、観やすいコンテンツに進化していたと実感しています。

オンラインだからこそ
距離が近づく。

——オンライン配信ならではのメリットを感じられたポイントはなんでしょうか。

脇田 例年、僕たち医学部生は本学の大学祭と別の日程で小規模な「医学部祭」を開催してきました。農学部、創造工学部も別開催しています。今年の医学部祭は中止かと考えていたところに合同開催の声がかかり、初めて全学部の共同祭になったわけです。医学部は他学部とキャンパスが離れているせいか、地理的にも心理的にも距離を感じてきましたが、オンライン開催になったことで初めて、一体感を味わうことができました。
島村 これまで全学部のコラボ企画がなかったのは「わざわざ他のキャンパスから集まってもらうのも悪いな」という理由もあったと思います。その点、オンライン大学祭で4キャンパスの全学部がひとつのステージに立って、ひとつの大学祭を作り上げたことには大きな意義がありました。

脇田 僕自身、やれる仕事は全部やろうという気持ちで、医学部も含めたミスキャンパス企画の司会を務めさせていただいたほか、医学部祭で毎年恒例の大喜利企画をプログラムに組み込んでもらったので、伝統を守りつつ新しい試みにも挑戦できました。

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オーディエンスの幅が広がり
予期せぬ出会いも。

——開催後の反響はいかがでしたか?

島村 学内からは感謝の声が多かったです。特に入学時からずっと学生同士の交流機会が少なかった1年生は、スタッフとしての参加にも積極的でした。また、ラジオはネットとは違って、偶然知人が聞いていたりと、予期せぬ出会いがあるのが新鮮でした。
鶴川そう思っていただけて嬉しいですね。大学祭当日は普段と違う長時間のプログラムを放送したにも関わらず、FM香川の常連リスナーの方々からは、予想以上にたくさんの好意的なメッセージが届きました。
脇田 学生のほとんどがアカウントを持っているTwitterでも配信コンテンツが観られたのですが、これまでだと「大学祭は医学部に関係ない」という認識だった人たちも、多くが興味を持ってくれたようでした。
 Facebookの投稿には、OBから「遠方在住なので配信を観られて嬉しいです」といった声がありました。YouTubeの再生数も多く、チャンネル登録者数が倍増しています。学部紹介の動画なども相乗効果で再生数が増えました。大学の魅力を知ってもらうきっかけにもなってうれしい限りです。

新しい「伝統」を作り
未来を切り開く。

——これからの大学祭はどのような姿を目指すのでしょうか。

 オンライン配信は学生のありのままの姿を伝えるとても良い機会になりました。ただ、誰でも観られる以上さまざまな配慮や制限も必要になります。今後、新型コロナの流行が沈静化すれば、学生が好きなように時間を使うステージと、気合いを入れた配信の両方を楽しめるハイブリッドな試みがあってもいいかもしれませんね。
鶴川 このコロナ禍で大学祭を成し遂げたのは、本当に素晴らしいことだと思います。今回のノウハウを引き継いでいけば、香川大学にしかできないオリジナルの大学祭に進化していくのではないでしょうか。
脇田 もしまた、これまで通りの大学祭が開催できたとしても、今回できた繋がりや一体感は大切にしていきたいと思います。
島村 今回7時間の生放送と配信を経験したことで、来年以降もオンライン大学祭をやれる自信が付きました。また、伝統はただ単に守ればいいのではなく、良い部分は残しつつ、新しい変化を取り入れることが重要です。このことを次回以降に引き継ぎながら、今回のテーマに掲げた「NEO~NewEraOdyssey~」な大学祭を作るための選択肢を増やし続けていけたらと思います。

——皆さま、ありがとうございました。