産学連携とグローバル人材育成で地域活性化

長尾 地域活性化のためには地域産業の競争力を高めることが不可欠です。同時にグローバル化する社会に対応できる人材もますます求められています。これらの課題に対し本学が貢献すべき部分について、ご意見をいただけますでしょうか。

千葉 四経連からは地域の産業力強化と地域活性化に関して、三点ほど意見を申し上げたいと思います。
 第一は「産学連携による産業振興への貢献」です。地方創生の実現には、地域の特性、強みを生かして産業競争力を高め、魅力ある雇用を確保して、地方への新しい人の流れを作ることが必要です。香川大学の希少糖研究をベースにした産学連携は成功事例の一つですね。すでに希少糖関連のビジネスがいくつも生まれ、希少糖クラスターとでもいうべき産業集積が進んでいます。希少糖のように大学が独自性のある研究を極め、その成果を地域に還元することで新たな産業が生まれるという好循環を、これからも作っていただきたいと思います。
 また、四国には一般にあまり知られてはいないものの、シェア世界一や日本一の企業が百社近くあります。これらの企業の技術の蓄積と、香川大学の先端的な研究成果が融合して、その企業ならではの強みが強化され、今後四国の産業の振興や底上げにつながっていけばと思います。
 四経連では先般、経団連との間で「地域経済活性化に向けた連携協定」を結びました。連携協定を締結したことにより、四国の大学が有する知財の活用や共同研究などを、経団連の各企業と一緒になって進めていくチャンスが増えていきます。私たちとしては、大学のシーズを経団連の会員企業との間で仲介・紹介し、新たなイノベーションの創出に結びつけていけたらと願っています。
 第二は「人材育成と若者の地元定着」です。グローバルな視野と発想をローカルで展開できる人材はますます必要となってくるでしょう。世界と地域の両視点を持つ優秀な人材に、四国で就職し、四国で活躍してほしいという思いがあります。

 先ほどご紹介したアンケートで、四国出身の若者に「名称・事業内容を知っている四国の企業の数」を聞いたのですが、驚くべき回答でした。四国出身の若者の6割は、最大でも四国の企業を10社程度しか知らないのです(図5)。これではだめです。私たちは現在「四国のトップ企業」を紹介する冊子を作っています。できあがりましたら香川大学にもお配りします。大学でも学生に地元企業への理解を深めてもらう取り組みを行っていただけたらと願っています。
 同時に私たちも、香川大学にお役に立つことは協力したいという気持ちであります。その一つとして、地域マネジメント研究科で例年開講している公開講座「地域活性化と観光創造」(写真A)があります。これは四国ツーリズム創造機構※3と共同で観光人材育成のために行っているものです。会員企業から講師を招く「四経連チャレンジセミナー」もおかげさまで好評です。これからも大学のニーズをお聞きしながら実効性のある取り組みをしていきたいと考えています。
 第三は「地域活性化に向けた国への政策要望での連携」です。四経連は国に「産学官連携事業への支援」「大学の機能強化・魅力向上を目指した支援」さらには「大都市圏と地方との大学定員格差是正」などの要望を行っています。今、仮に四国の高校からの大学進学者全員が四国の大学を希望したとしても、入学できるのはその6割程度で、定員そのものの枠が小さいのです。こういう問題について、経済団体、大学、行政が連名で国に対して要望していくことも必要だろうと思います。
 この三点において、産業界と香川大学との連携をさらに上のレベルに進化させていきたいと考えています。

図5と写真A

※3 観光産業の振興、地域の活性化を目的に、官民一体となった「オール四国の観光推進組織」2009年設立