6月9日(月)、香川大学経済学部において、駐日スウェーデン大使ステファン・ノレーン氏による講演会「気候変動との戦い---スウェーデンの場合---」(主催:香川県、(財)香川県国際交流協会、香川大学経済学部)が開催されました。
細川学部長による歓迎の挨拶につづいて、大使が、環境改善と経済成長の関係をより良いものとすることが政治の課題であると前置きして講演を始められまし た。
まず、京都議定書の基準年である1990年と比較して、2005年の時点でスウェーデンがどのくらいの二酸化炭素削減を達成したかについて数値を示され たあと、削減に効果のあった方策について、次のように説明されました。
第1に、1トンの二酸化炭素の排出量に対して100ユーロを課税する二酸化炭素税の導入(1991年)が挙げられる。これは、家庭部門に特に効果があり、排出量が半減した。一方で、二酸化炭素の排出量に比例して税金をかけ、他方では、その税収増を所得税の軽減に利用するという措置を取ったことが、ドラスティックな減量に導いた原因であった。第2に、石油燃料の代替として、再生可能エネルギーの供給を増加させた。これには、太陽光発電、風力発電、水力発 電、地熱発電、バイオ燃料が含まれるが、これらは、現在、スウェーデンのエネルギー供給全体の40%を占めるまでに至っている。2020年までに、これを 50%にまで高めることが目標である。第3に、排出権取引の導入が挙げられる。これは、京都議定書に盛り込まれている京都メカニズムの一つであり、EUに おける温室効果ガスの排出量の40%を占めるエネルギー・工業部門を対象としている。これら三つの方策により、スウェーデンは、2005年には、1990 年と比較して9%の二酸化炭素排出量削減と20%のGDPの増加を達成することができた。スウェーデンでは、これらの方策をさらに推し進めて、2020年における二酸化炭素排出量の削減目標の達成を目指している。スウェーデンの家庭部門における石油燃料の占める割合は、70年代の石油ショック時には80% であったが、現在では10%にまで減っている。その大きな要因は、地域熱暖房、断熱材の強化、エコカーの普及である。エコカーは新規車種の半分のシェアを占め、そのうちの半分が日本製である。
大使は、最後に、日本はクリーンテクの分野で貢献できると述べ、二酸化炭素削減の解決策はテクノロジーと経済的工夫にあるとして講演を終えられました。

会場となったE31講義室には、学生・教員を含め300名近くの聴衆が参加しました。講演内容がたいへん明快であり、また平野キャシーさんの通訳もたいへんわかりやすかったので、学生たちは最後まで講演に集中できたようです。講演後の質疑応答も活発に行われ、大使の回答にも熱がこもり、お忙しい日程の中、予定時間いっぱいまで時間を取っていただくことになりました。
7月上旬に洞爺湖サミットを控え、EUの中でも先進的な取り組みを進めているスウェーデンの具体的な削減政策を学んだことは、香川大学の学生が、日本の二酸化炭素削減問題を考える上で、大きな示唆を得た貴重な機会となりました。

講演風景

講演会「気候変動との戦い-スウェーデンのケース-」 講演会「気候変動との戦い-スウェーデンのケース-」

講演会「気候変動との戦い-スウェーデンのケース-」 講演会「気候変動との戦い-スウェーデンのケース-」

学長を表敬訪問

講演会に先立ち、大使夫妻は学長を表敬訪問されました。
駐日スウェーデン大使が学長を表敬訪問(香川大学記事)

メディア掲載情報

テレビ・ラジオ

「ゆうどき香川ニュース610」NHK 2008年6月9日(月) 18:32-
20:45から再放送
RNCニュース 2008年6月9日(月) 17:52-
ラジオNHKFM 2008年6月9日(月) 18:55-

新聞

「駐日スウェーデン大使 知事訪ね温暖化対策理解求める」 四国新聞 2008年6月10日
「自国のCO2削減紹介 スウェーデン大使が講演」 毎日新聞 2008年6月13日
「地球温暖化防止取り組み報告 スウェーデン大使香川大で講演」 山陽新聞 2008年6月16日
「環境と経済成長両立 スウェーデン大使講義」 朝日新聞 2008年6月18日