1.発表者
  永田  崇 (東京大学物性研究所 助教)
  片山 耕大 (名古屋工業大学 大学院工学研究科 助教/オプトバイオテクノロジー研究センター)
  今野 雅恵 (東京大学物性研究所 特任研究員)
  川鍋  陽 (香川大学医学部 講師)
  藤原 祐一郎(香川大学医学部 教授)
  古谷 祐詞 (名古屋工業大学 大学院工学研究科 准教授/オプトバイオテクノロジー研究センター)
  神取 秀樹 (名古屋工業大学 大学院工学研究科 特別教授/オプトバイオテクノロジー研究センター センター長)
  井上 圭一 (東京大学物性研究所 准教授)

2.発表のポイント
◆幅広い種類の藻類が光エネルギーを使ってイオンを輸送する、巨大イオンチャネルタンパク質「ベストロドプシン」を藻類が持つことを世界で初めて発見しました。
◆ベストロドプシンは光を捉えるロドプシン(注1)と、イオンを輸送するベストロフィン(注2)から成り、さらにベストロドプシン同士が集まることで大口径のイオンチャネルを持つ、巨大な複合体を形成することを発見しました。さらに光に応答してイオンチャネルが開き、陰イオンが輸送される一連のメカニズムを解明しました。
◆本成果は、光遺伝学(オプトジェネティクス、注3)分野への応用や、視覚再生医療、心疾患治療のための新たな分子ツールとしての利用が期待されます。

3.発表概要
東京大学物性研究所の井上圭一准教授、名古屋工業大学大学院工学研究科およびオプトバイオテクノロジー研究センターの古谷祐詞准教授、神取秀樹特別教授、香川大学医学部の藤原祐一郎教授らの研究グループは、イスラエルおよびドイツの研究グループとの国際共同研究により、海洋などの水圏環境に棲む幅広い種類の藻類が、太陽光で駆動しイオンを輸送する機能を有する、巨大なタンパク質を持つことを世界で初めて発見しました。
これは動物の視覚や植物の光合成といった既知のものとは異なった、生物による全く新しい太陽光の利用法の存在を明らかにしたものです。この新しいタンパク質は、我々ヒトをはじめとする動物のほか、微生物などが幅広く有する、光を感知するためのタンパク質である「ロドプシン」と、細胞の多様な場所でイオンを輸送するイオンチャネルタンパク質の一つである「ベストロフィン」の二つが融合した形の分子であり、新たに「ベストロドプシン」と名付けられました。
今後、このベストロドプシンは体の奥深くまで届く長波長光で駆動するという特徴を活かすことで、光で鬱病やてんかんなど脳神経が関わる疾患の発生原因を調べ、さらにそれらの治療法の開発が期待されている光遺伝学分野への応用や、視覚再生医療や光による心疾患治療のための新たな分子ツールとしての利用が期待されます。

本研究成果は、米国東部夏時間2022年6月16日にNature Structural & Molecular Biologyに掲載されます。

問い合わせ先
(研究に関すること)
東京大学物性研究所
准教授 井上 圭一(いのうえ けいいち)
TEL:04-7136-3230 E-mail:inoue@issp.u-tokyo.ac.jp

名古屋工業大学 大学院工学研究科/オプトバイオテクノロジー研究センター
准教授 古谷 祐詞(ふるたに ゆうじ)
TEL:052-735-5127 E-mail:furutani.yuji@nitech.ac.jp

名古屋工業大学 大学院工学研究科/オプトバイオテクノロジー研究センター
特別教授 神取 秀樹(かんどり ひでき)
TEL:052-735-5207 E-mail:kandori@nitech.ac.jp

香川大学 医学部
教授 藤原 祐一郎(ふじわら ゆういちろう)
TEL:087-891-2095 E-mail:fujiwara.yuichiro@kagawa-u.ac.jp

(報道に関すること)
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TEL:087-891-2008 E-mail:kouhou-m@kagawa-u.ac.jp

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