2020年7月30日、香川大学瀬戸内圏研究センター、株式会社かもめや、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社は、香川県三豊市詫間町須田港と粟島港間において、自動で飛行する小型無人航空機(ドローン)を用いて、遠隔診療(オンライン診療)実施のためのモバイル心電計と治療のための処方薬を配送する実証実験を実施しました。(図1)

1.ドローン導入の実証実験に至った背景
 香川県は日本で一番狭い県ですが、24の有人離島があり、離島での医療をいかに維持するかが大変重要な課題となっています。香川県全体をみますと、香川大学医学部附属病院をはじめ医療機関が充実しており、県民にとって大変めぐまれた医療環境にあります。
 しかしながら、24の有人離島においては、診療所のある離島は半数以下の10島で、その他の島は医療機関が全くない状況にあります。
香川県では、こうした県内の医療格差を是正する目的で、2003年から「かがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)」を導入しましたが、離島にはなかなか普及していないのが実情でした。ところが、2018年に、遠隔診療が「オンライン診療」として正式に認められ、さらに、今回の新型コロナウイルス感染症の流行を契機として、遠隔医療の普及する環境が急速に整いつつあります。

2.実証実験の内容
 ドローン(シングルローター型)(写真4)を、三豊市詫間町須田港から片道約4キロにある粟島港にむけて飛行し、医療機器などに見立てた物資の配送を行いました。
 粟島の住民が動悸、不整脈の症状を訴え診療所を訪れた場合を想定しました。正確な診断をするために、モバイル心電計を須田港からドローンで粟島に配送し診療所に届け、次に、採血した試験管を島からドローンで須田港に運ぶというもので、さらに心電図波形から遠隔で心房細動と診断されたため、血液凝固を抑制する薬DOAC(エリキュース)をドローンで診療所に届け、薬剤師からオンラインで服薬指導を行うというものです。
 ちょうど同日、詫間小学校の5年生(約70人)が、校外学習(デイキャンプ)で粟島を訪れており、ドローンの着陸を歓声を上げて見守りました。ドローン着陸後、離島での遠隔医療とドローンによる物流配送について、小学生(「未来の科学者」)たちに説明しましたところ、大変熱心に耳を傾けていました。(写真6、7)

なお、国土交通省による令和2年度スマートアイランド推進実証調査業務に応募していましたところ、幸い採択されました。今回報告した粟島におけるドローンと遠隔医療のプロジェクトをさらに進め、社会的課題、技術的問題を克服し、今後日本全体の離島・へき地の医療の改善に取り組みたいと考えています。