取材日 2025年12月22日
Kadai SALON(会報第6号)
創発科学研究科創発科学専攻1年
エクスペリエンスデザイン&アートユニット
渡辺悠斗さん

『Kadai SALON(会報第6号)』の誌面に掲載しきれなかったインタビュー記事をご紹介します!
ご出身と、これまでの音楽や部活動との関わりについて教えてください。
愛媛県新居浜市の出身で、新居浜西高等学校を卒業しました。もともとバイオリンを習っていて音楽が大好きだったのですが、中学校で合唱というものの存在を知り、それ以来ずっと合唱を続けています。大学では「香川大学合唱団」に所属しました。楽器も続けてはいるのですが、現在は合唱が活動のメインになっています。
香川大学の創造工学部(造形メディアデザインコース)を選ばれたのはなぜですか?
音楽だけでなく、美術や映画も好きでした。将来は「自分の関わったものが世に出て、形として残っていくようなクリエイティブな仕事」をしたいと漠然と考えていたんです。具体的なビジョンがあったわけではありませんが、国立大学でそうした分野を学べる場所を探していたところ、担任の先生に勧められたのがきっかけです。
実際に香川(高松)に来てみて、街の印象はいかがですか?
芸術が非常に盛んな場所だと感じています。瀬戸内国際芸術祭のオペラに関わらせてもらう機会もありましたし、有名な建築家が手がけた建物も多いです。「地方ならではの芸術の良さ」が溢れている、とても魅力的な場所だと思います。
学部時代はどのような学生生活を送られていましたか。
正直に申し上げると、3年生のゼミ配属までは「あまり真面目とは言えない学生」だったかもしれません(笑)。合唱団で指揮者を務めるなどサークル活動には没頭していましたが、学業の方には迷いがありました。デザインの難しさに馴染めず、将来やっていけるのか不安を感じていた時期がありました。
そこからデザインに熱が入った「転機」は何だったのでしょうか。
2年生の終わりの授業でカメラを買ったことがきっかけです。写真にのめり込み、「こういうものを作る人になりたい」と強く思いました。その後、映像機器の開発に関わられている先生のゼミに入り、業務用機器の展示会で衝撃を受けました。プロが使う機器の機能美とロマンに圧倒され、「これを自分でデザインしたい」という目標が定まりました。
もともとプロダクトデザインに興味があったのですか?
いえ、最初はゲーム業界のCGデザイナーなどをイメージしていました。しかし、理想と現実の違いに直面し、将来像が曖昧になった時期もありました。展示会での経験を経て、具体的に「プロダクトデザイナー」という職業を目指したいと決意が固まりました。
大学院に進学しようと思われた理由を教えてください。
ゼミの先生は、私の恩師だと思っています。3年生の時まで就職活動がうまく進んでいなかったこともありましたが、先生の手厚いサポートのおかげで「この環境で頑張り抜くことが自分にとって最善だ」と考え、進学を決めました。
現在取り組んでいる研究について教えてください。
喉のがんを摘出すると声が出せなくなってしまう患者さんのための、「電気式人工喉頭」というデバイスのデザインに取り組んでいます。これには「人前で使いたくない」といった心理的課題も多く、それを解決するのが研究の目的です。医学部附属病院の耳鼻咽喉科の先生方にも助言をいただいており、学部の垣根を越えた連携は香川大学の強みだと感じています。
なぜ「咽頭癌」の課題に着目したのですか?
2年ほど前に祖母が中咽頭癌になり、声を失う可能性を身近に感じたことがきっかけです。歌を続けてきた私にとって、声が出せない辛さは自分事のように感じられました。「声が出せないことが人生の輝きを奪うものであってはならない」という想いが私を突き動かしました。
今回、受賞された作品(デバイス)について詳しく教えてください。
従来の電気式人工喉頭は操作が難しく、見た目も「いかにも医療機器」という印象が強かったため、人前での使用に抵抗がある方もいらっしゃいました。
そこで私は、話すときに出る「自然なジェスチャー」をカメラで読み取り、手の動きに合わせて抑揚をつけて発声するシステムを提案しました。心理的なハードルを下げる、スタイリッシュな外観も追求しています。「医療にデザインの視点を」という提案を専門家に認めていただけたのは何より嬉しかったです。
学部時代に学んだことで、今に生きていることはありますか?
授業でのチームワークを通じて、コミュニケーション能力を徹底的に鍛えられました。もともとは人前で話すのが苦手でしたが、これが一番の成長だったと思います。また、社会課題を多角的に解決する「デザインのアプローチ」を学んだことで、視野が大きく広がりました。
ご自身はどこのパートを担当されているのですか?
バスパートの中でもバリトンという低い音域を担当していました。指揮者になり指導する立場になってからは、最初は手探りでしたが、実は声の出し方の本質はどのパートも同じだと気づき、自分なりの指導法を磨くことができました。
今後の進路やインターンシップについて教えてください。
卒業後は企業に入り、これまで培ってきたことを実践したいと考えています。プロダクトデザイナーは非常に狭き門です。インターンシップでは1週間で数ヶ月分の工程をやり遂げるため、徹夜になることもあります。実績が採用に直結する厳しい世界ですが、最後まで気を抜かずに挑戦し続けたいです。
香川大学での生活の中で、思い出の場所や味はありますか。
図書館の個別ブースや、仲間と過ごした部室棟が大切な場所です。食事は「阿部食堂」や「スーズカフェ」、うどんは「竹清」が断トツの美味しさだと思います。アルバイトでは結婚披露宴のスタッフなどを通じて、社会人の礼儀やコミュニケーションを学びました。
最後に、後輩へメッセージをお願いします。
早い段階からコンペなどに挑戦してほしいです。それが将来への大きな投資になります。また、何でもいいので没頭できる「オタク」的なものを見つけてください。一つのことに深く没頭できる力は、デザインの仕事においても不可欠なものだと思います。
