高齢者から子どもまで、心の専門家として活躍する日々

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 取材日 2024年12月25日
 Kadai SALON(会報第5号)
 医療法人正心会永井循環器内科医院
 (公認心理師・臨床心理士)
 香川県内の小・中学校(スクールカウンセラー)
 生駒未於さん
 医学系研究科臨床心理学専攻 2022年修了)

 

 

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『Kadai SALON(会報第5号)』の誌面に掲載しきれなかったインタビュー記事をご紹介します!

現在のお仕事についてお伺いします
臨床心理学専攻を卒業後、公認心理師と臨床心理士の資格を取得し、現在は心臓リハビリテーションを専門とする病院で心理職として勤務しています。主な業務は、重度認知症患者デイケアでの集団療法、外来および入院病棟でのカウンセリングです。

公認心理師と臨床心理士の違いについて教えてください
公認心理師は国家資格、臨床心理士は民間資格です。臨床心理士は歴史のある資格ですが、今後は国家資格である公認心理師のニーズも高まると考えられています。

香川県内の小中学校のスクールカウンセラーもされているのですね
はい、教育委員会の会計年度任用職員として、高松市や土庄町の小中学校でスクールカウンセラーをしています。児童生徒・保護者との相談活動、先生方との情報共有やコンサルテーション、広報活動などを行っています。

勤務体系について教えてください
病院に週3日、学校に週2日勤務しています。非常勤で職場を掛け持ちしている形です。

高齢者と小中学生のカウンセリングで、難しさや苦労はありますか?
大学・大学院で高齢期の発達を積極的に学んでいたので、高齢者への心理援助が私の軸となっています。高齢者の中でも、認知症を抱えている方のお話を聴くときには、難しさよりも興味深さのほうが大きいと感じています。小中学生に関しては、学校生活の限られた時間の中で本人とかかわり、アセスメントしていくことが難しいです。幅広い年代を対象にしていますが、どちらも、一人一人が自分らしく過ごすためのサポートをするという点で共通しています。

高齢者の方とのカウンセリングで心がけていることはありますか?
認知症を抱えている方は、よく同じお話を繰り返されることがあります。それを「さっきも聴いたよ」と受け流すのではなく、繰り返されるエピソードにこそ、患者様の人となりやライフワークが反映されていたり、大切な思い出として新鮮なまま息づいていたりするのだろうととらえて、傾聴しています。ときには、時間をかけてじっくりとお話を伺うことで、同じようなエピソードにも新しい展開が生まれることがあり、興味深いと感じます

3年目を迎え、仕事の感想はいかがですか?
心理職は、心という目に見えないものを扱っていることもあって、実践の効果がはっきりと現れない場合があると思います。自分のかかわりが患者様に良い影響を与えているのか実感しにくいこともありますが、職場の方々からの理解や信頼に支えられています。

中学生や小学生とのカウンセリングで大変なことはありますか?
スクールカウンセラーとして勤務していると、先生方との連携が重要だと感じます。限られた時間で児童生徒の情報を共有し、サポートを考えていく必要があります。相談室で児童生徒の来談を待つのではなく、自分から授業や給食、休み時間に教室を訪問し、広く児童生徒の様子を観察したり、交流したりするようにしています。

今後のキャリアプランについて教えてください
スクールカウンセラーの仕事にもやりがいを感じていますが、高齢者への心理援助を軸に考えています。様々な領域に挑戦し、経験を積んでいきたいです。

心理師に向いている人はどんな人だと思いますか?
答えが1つではないこと、答えがなかなか見つからないことでも、それを抱え続けることができる人だと思います。

大学院で香川大学を選んだ理由を教えてください
香川県出身で、将来は地元で働きたいと考えていました。大学3年生の時に、日本老年臨床心理学会で香川大学の林智一先生とお会いし、香川大学医学部に臨床心理学専攻ができることを教えていただいたのがきっかけです。

林先生との出会いは偶然だったのですね
はい、偶然でした。高齢者の心理を研究している先生の元で学びたいと思っていたので、運命的な出会いでした。

大学院時代の思い出を教えてください
同期は5人で、少人数制で手厚い指導を受けることができました。同期とは仲が良く、よく食事に行ったり、卒業旅行に行ったりしました。

大学院時代は勉強以外に何かされていましたか?
附属病院小児科で、発達検査に関する業務をお手伝いさせていただきました。また、メンタルフレンドという、学校生活に悩みを抱えているお子さんの家庭訪問をする活動に参加したり、放課後児童クラブ、家庭教師のアルバイトをしたりしていました。休日には実家で家族と過ごし、趣味のピアノを楽しんでいました。

高齢者の心理に興味を持ったきっかけは何ですか?
祖父が好きでよく一緒に過ごしていたことと、大学のゼミで高齢期について学んだことがきっかけです。高齢者の心理は奥が深いと感じました。

大学の実習について教えてください
大学では精神科デイケア、学校現場での実習がありました。大学院では附属病院や精神科クリニック、適応指導教室、高齢者施設など、様々な領域の実習を経験しました。

大学院卒業後の進路は様々ですか?
はい、病院、児童相談所、少年鑑別所、博士課程進学など多岐にわたります。私は高齢者とかかわる仕事がしたかったので、特別養護老人ホームで生活相談員として1年間勤務した後、現在の病院に就職しました。

香川大学で学んだことが役立っていることはありますか?
大学院で高齢期に関する研究やライフレビュー、回想法について深く学んだことが、現在の仕事に役立っています。

大学入学時から心理の仕事を目指していたのですか?
大学3年生の時に高齢者の心理に興味を持ち、大学院に進学しました。心理学を学ぶうちに、仕事として心のケアに携わりたいと思うようになりました。

修士論文のテーマは何ですか?
特別養護老人ホームに協力いただき、高齢者と介護職員とのライフレビュー面接を実施しました。そして、ライフレビュー面接の過程を詳細に分析し、高齢者や介護職員の心理的変化、日常のケアへの影響、面接の実施における心理専門職のサポートの有効性などを考察しました。

現在も研究活動をされていますか?
昨年の日本老年臨床心理学会で実践報告を行いました。また、現在は修士論文をまとめ直して、大学の心理臨床相談室紀要に投稿しようと準備中です。

将来的に大学で研究したいという気持ちはありますか?
ライフイベントとの兼ね合いもありますが、研究意欲が高まれば大学に戻りたいという気持ちはあります。今は、現場で経験を積みたいと思っています

大学院時代の休日の過ごし方を教えてください
実家の犬と散歩したり、家族や友達と出かけたり、ピアノを弾いたり、読書をしたりして過ごしていました。

今後の目標を教えてください
高齢者医療や介護の領域で、心理職がより一層活躍できる社会にしたいです。高齢者とのライフレビューや回想法、カウンセリングなどを積極的に実践し、その成果を発信していきたいです。

生まれ変わったらどんな仕事をしたいですか?
やはり心理の仕事がしたいです。それほど心理の仕事に夢中なのだと思います。