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香川大学 農学部応用生物科学科
助教   水田 圭祐
環境・農学 / 作物生産科学

1.自己紹介

20220607_104456.jpg香川大学農学部助教の水田圭祐です。農学部に所属していて苗字が「水田」なのでよく水稲の研究をしているのか尋ねられますが、専門は水稲の裏で栽培されるコムギの栽培研究です。コムギは皆さんも普段からうどんやパン、中華麺など様々なかたちで召し上がられていると思いますが、実は高品質とたくさん収穫する(多収)を両立することが極めて難しい作物です。また、コムギの栽培には水稲に比べて非常に多くの肥料が必要になります。肥料の施用量が多くなると、無機成分が地下水に溶け込み、河川や海洋へ流れ出やすくなり、環境負荷を高めてしまいます。これらの課題を栽培体系の改良によって解決し、低環境負荷・多収・高品質を全て同時に達成することを目標に研究しています。

2. 研究のきっかけや経緯

作業風景.jpg私が学生の時、西日本でパン用コムギ品種の発表・導入が相次ぎました。パン用コムギは西日本で広く栽培されている日本めん用コムギに比べて高い子実タンパク質含有率(≒グルテン含有率)を求められるので、これまで以上に多くの肥料を施用する必要がありました。しかし、ただ肥料を多く施用してしまうとコムギが生育途中に倒れる倒伏が発生してしまい、収量や品質がむしろ低下してしまいます。倒伏を防ぎつつ高品質と多収を達成するには、生育量に合わせて肥料を施用する可変型施肥体系が有効であると近年明らかになってきましたが、生育量を推定するために用いられる機器類は大規模なものだと導入に数百万円するのが一般的です。香川県をはじめとした小規模な農家ではこのような機器を導入するのはコスト面から非常から困難なため、スマートフォンやドローンを用いて安価に生育量を推定できないか現在挑戦中です。

3. 研究紹介と将来の展望

50m.jpgこれまでの研究成果として、通常の栽培体系に比べて窒素の吸収効率が高い「穂肥重点施肥法」を開発しました。穂肥重点施肥は、倒伏を防ぎつつ収量と品質を高い水準で両立するために有効な栽培体系ですが、圃場の条件や天候、栽培品種によって効果が異なることが課題となっています。このような条件による差を可能な限り減らすため、スマートフォンやドローンで撮影した可視画像を用いた生育診断とその診断結果をもとにした可変型施肥法の開発を行っています。将来的には、この栽培体系を利用することによって安価に低環境負荷・多収・高品質を達成し、持続可能なコムギ生産に寄与することができると考えています。

4. 最後に一言

私の研究室では、うどん用コムギ「さぬきの夢2009」はもちろん、主にパスタの原料として利用される「デュラムコムギ」のような一風変わったコムギの栽培や利用についても研究しています。コムギの生産から消費まで研究したい方はぜひ一緒に研究しましょう!