DRI能力を育成するための基盤的教育

DRI能力を育成するための基盤的教育の目的は、より多くの学生にDRI能力を身につけてもらうことです。そのために、全学共通科目の主題Bにおいて「はじめて学ぶDRI」(2019年度以降)、「課題探求ベーシックス①~③」(2019年度以降)、そして「人を動かすロジカルコミュニケーション」(2020年度以降)という新たなDRI能力育成科目を開設しました。「はじめて学ぶDRI」はDRI教育における入門の役割を担い、「課題探求ベーシックス①~③」は課題探求の方法を学ぶ授業であり、そして「人を動かすロジカルコミュニケーション」はDRI教育のベースとなるロジカルコミュニケーションに関する授業です。

授業紹介

ここでは、新たに開設した5つのDRI能力育成科目についてご紹介します。

  • はじめて学ぶDRI(全学共通科目・主題B科目、第1クォーター、第3クォーター、1年生から受講可能)

    「はじめて学ぶDRI」の授業の目的は、DRIを地域活性化にどのようにいかせるか、考え、説明することができるようになることです。この授業は、DRI教育の入門の役割を担い、DRIイノベーター養成プログラムの必修科目にもなっています。授業は、次のような流れで進んでいきます。

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    1. グループで地域課題を確認し、その解決策を考えます
    2. D・R・I それぞれの専門家が、D・R・I を地域活性化にどのようにいかせるかを説明します
    3. グループで、最初に考えた地域課題の解決策をDRIの観点から捉え直し、新たな解決策を考えます

    2020年度の授業

    受講者数は、131人でした。当初1クォーターのみの開講でしたが、受講希望者数が多かったため3クォーターにも追加開講し、1クォーターでは74人、3クォーターでは57人が受講しました。今年度も人数にばらつきがあるものの、すべての学部から学生が参加していました。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響で遠隔授業となり、グループワークではなく、各自で地域課題に取り組みました。

    各自が取り組んだ地域課題をいくつかご紹介します。

    商店街における商業施設の衰退/地域の魅力の認知度の低さ/雇用の減少と地域外への若者の流出/少子化や晩婚化による出生率の低下/香川県での男性の育児/不登校の児童生徒の増加/地域の医療格差/農業人口の減少・農業の衰退/伝統工芸をはじめとした日本のものづくりの衰退/空き家の増加/地域の災害対策とその問題点/コロナ禍において稼ぐ地域をつくる

    受講者の感想
    • 本講義によって、問題解決能力が向上したように感じています。受講前は、地域社会の抱えている問題という大きな問題に対して、自分ができることは何であろうかという視点で考えていました。しかし、受講後は、本当に効果が見込まれると思われる策を何点か考え、その中で、自分ができることを考えるというように変わっていきました。(法学部1年生)
    • 講義を通して地域活性化についての考えを深めることできました。具体的な地域課題の解決策を講義前と後に考えることで、よりDRIという観点を理解するとともに、DRIから物事を捉えることの重要さを感じることができました。これから様々な経験を通してもっとDRI能力を身につけていきたいと考えています。(経済学部1年生)
    • DRIは、現在でも多くの場面で地域問題を解決するために活用されていて、これから先もっと増えていくと思われます。また、DRIは、地域活性化以外にも、多くの場面で有効になるものだと思います。大学卒業後、どのような道に進んだとしても、この3つをよく理解し、活用していけるようになれば、自分の大きな力になると思います。(農学部1年生))
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    • 2019年度
  • 差別とマイノリティ(全学共通科目・主題B科目、第2クォーター、1年生から受講可能、課題探求ベーシックス①)

    「差別とマイノリティ」は、「課題探求ベーシックス①」にあたります。この授業の目的は、日常から距離をとる態度、自分の中にある決めつけや思い込みから距離をとる態度を身につけることによって、マイノリティの人びとが抱えている問題を自分自身と関連づけて考察することができるようになることです。このことは、デザイン思考との関係でいうと、共感の技法を身につけることと同様です。

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    この授業では、LTD話し合い学習法(Learning Through Discussion)という小グループによる話し合いを中心に学習を進める技法を使います。LTD話し合い学習法は、課題文の予習と、予習をもとにした授業でのグループワークによって構成されています。課題文の予習は、筆者の主張を理解するという共感の技法を学ぶ手段にもなります。また、予習をもとにした授業でのグループワークは、他の受講者の主張を理解するという共感の技法を学ぶ手段にもなります。

    2020年度の授業

    受講者数は、63人でした。新型コロナウイルス感染症の影響で遠隔授業となりましたが、Zoomを使い、LTD話し合い学習法を用いてグループワークを実施しました。グループの割り振りにはブレイクアウトルームの自動割り振り機能を使用し、毎回グループを変更することで、自分以外の様々な受講者の主張を理解することができる仕組みにしました。

    受講者の感想
    • 本授業を通して、自分の中に潜んでいた「差別する可能性」と初めて向き合えました。正直自分は差別なんてしたことないと思い込んでいたので、日常や常識に差別意識が根付いてしまっていることを本授業で初めて知りました。差別問題に対して自分のことを省みず、批判ばかりしていた自分を深く反省する良い機会でした。ディスカッションメインの授業形態だったため、様々な考え方に触れながら視野を広げることもできました。(法学部1年生)
    • これまでは、差別はしてはいけないことだ、と思っていました。しかし今回この講義で、課題文を読み、またグループワークを行うなかで、差別を他人事にせず差別をする可能性のある自分を受け入れていく考えを学び、自分自身の差別への考え方を見直すことができました。(教育学部1年生)
    • ただ課題文を読んでいったり、差別はいけないと理解したりするだけでなく、各章ごとに主張やその主張の背景、自分自身との関連付けを行い、それらのことについて話し合うという学習法で、今までとはまた違う方向から理解が進んだと感じました。差別を他人事とせず、常に自分の中にその問題を取り入れて、これからも真剣に考え、少しでも差別が少なくなる方向に持っていけるように私も行動したいと考えました。(医学部1年生)
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  • マイノリティのライフヒストリー(全学共通科目・主題B科目、第3クォーター、1年生から受講可能、課題探求ベーシックス②)

    「マイノリティのライフヒストリー」は、「課題探求ベーシックス②」にあたります。この授業の目的は、マイノリティの人びとの多様な人生を知り、マイノリティの人びとが抱えている問題を自分自身に関連づけて理解し、そしてマイノリティ問題の具体的な課題を発見・見つけだすことができるようになることです。このように人やモノ等に対する見方や考え方を再構築し、適切な課題を発見することは、デザイン思考の共感から課題発見にいたるプロセスにあたります。

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    この授業では、ジグソー学習法というメンバーごとに担当を決めて教え合う技法を使います。この技法では、自分に割り当てられた知識をグループのメンバーに教える責任が生じるため、受講者の主体的な授業参加が促されます。また、グループの他のメンバーが持っている知識を理解する必要があるため、他者が伝えたいことを聴き理解するために必要な能力も身につきます。ちなみにもともとジグソー学習法は、異文化間の対立を克服するために開発された技法です。

    2020年度の授業

    受講者数は、64人でした。新型コロナウイルス感染症の影響で遠隔授業となりましたが、Microsoft Teamsを使い、ジグソー学習法を用いたグループワークと、課題発見を行うグループワークを実施しました。まず、ジグソー学習法を使ってマイノリティの人々のライフヒストリーを教え合ったのですが、事前に必要な数のチャネル(会議等をすることができます)と呼ばれる小グループを作成し、ジグソー学習法を行いました。
    つぎに、各グループで取り組みたいマイノリティ問題を決め、そのマイノリティの人々のライフヒストリーを調べ、それらのライフヒストリーをもとにして具体的な課題を発見しました。それぞれのグループにチャネルを割り振りその機能を利用して、各自で調べてきたレポートファイル等をグループで共有したり、学生が自由に投稿や会議の機能等を使うことで授業外でもメンバー同士で意見交換をしたりすることができました。
    なお、各グループで取り組んだマイノリティ問題は、性的マイノリティに関する問題、隔離された病いに関する問題、ハンセン病問題、同和問題、知的障害者に関する問題、人種問題、海外に住む日本人に関する問題でした。

    受講者の感想
    • マイノリティについて、だけではなく、考え方や捉え方まで学んだ、有意義な講義でした。また、ジグソー法という勉強法を知ることができたこともよかったです。グループワークをすることで、多くの考え方を知ることができ、また多様性の重要性も捉え直すことができました。「最終的に発表する」という共通の目的もあり、グループのメンバー全員がマイノリティについて懸命に調べ、考え、話した時間でした。(経済学部1年生)
    • この授業を受講し、マイノリティの人々の人生を知ることが出来ました。特に印象に残ったことは、グループワークです。ライフヒストリーを学ぶだけでなく、グループワークを通して、コミュニケーション能力の向上につながり、これからの大学生活に大いに役立っていくと感じました。また、この授業を受講し、より自分に関連付けて理解することの大切さを学ぶことが出来した。(法学部1年生)
    • この授業では、様々なライフヒストリーに触れるため、ここで学んだ共感し問題定義する方法は、どのようなマイノリティ問題を考えるうえでも通ずることだと思いました。この授業を通して、何のマイノリティ性もないと思っていた自分にも、本当はマイノリティな部分があるということを気付けて良かったです。(創造工学部1年生)
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  • 社会デザインとマイノリティ問題(全学共通科目・主題B科目、第4クォーター、1年生から受講可能、課題探求ベーシックス③)

    「社会デザインとマイノリティ問題」は、「課題探求ベーシックス③」にあたります。この授業の目的は、共生社会について理解したうえで、マイノリティの人びとの視点に立ち、マイノリティの人びとが生きやすい社会のためのアイデアを出し、共感という技法にもとづいて社会をデザインできるようになることです。このことは、デザイン思考におけるデザインのプロトタイピングおよび検証のプロセスを身につけることと同様です。

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    この授業では、少人数グループによる課題解決型学習=PBL(Problem Based Learning)の技法を用います。課題を解決する過程で、基礎的な知識だけでなく、応用できる知識や知識を応用する力を身につけることができます。また、少人数グループなので、グループワークでは主体的な関与が必要となり、コミュニケーション能力を育成することができます。

    2020年度の授業

    受講者数は、52人でした。新型コロナウイルス感染症の影響で遠隔授業となりましたが、Microsoft Teamsを使い、少人数グループによる課題解決型学習=PBL(Problem Based Learning)の技法を用いたグループワークを実施しました。まず、各グループで取り組みたいマイノリティ問題を決め、各自で調べたことや共生と社会についての学びをいかし、マイノリティの人々が生きやすい社会デザインについて発表しました。受講者をチャネルと呼ばれる小グループに振り分けることで、チャネル内でファイル共有やコミュニケーションを行うことできます。これらの機能を利用して、各自で調べてきたレポートファイル等を共有したり、学生が自由に投稿や会議の機能等を使うことで授業外でもメンバー同士で意見交換をしたりすることができました。
    つぎに、それぞれの発表に対して、他のグループのメンバーがコメントをしました。Teams内で、アンケートや投票等ができるMicrosoft Formsを使用し、それぞれのグループ発表に対して他のグループメンバーがコメントをし、それらを全体で共有しました。最後に、これらのコメントをもとにして、改めて社会デザインを考えるレポートを作成しました。
    なお、各グループで取り組んだマイノリティ問題は、性的マイノリティに関する問題、障害者に関する問題、路上で暮らす人に関する問題、人種問題でした。

    受講者の感想
    • 「マイノリティのライフヒストリー」と本授業を通して、いろいろな課題がある中で、どのようにすればマイノリティに属していても周りを気にすることなく生きることができるのかを、しっかり考えることができたのではないかと思います。また、自分自身も何らかのマイノリティに属していることもあるかもしれないので、マイノリティ問題は他人事ではないということも実感しました。マイノリティ問題で一番大切なことは、「他人事」ではないと自分自身で理解し、自分だったら?という視点で考えることではないかと思います。(創造工学部1年生)
    • 差別やマイノリティ問題や共生に関する様々な考え方の多くが新鮮なものでした。また、カテゴリー化というものも、人を認識する際に切り離せないものであることを前提としたうえで、カテゴリー化をずらしてみるという考えが印象的でした。今までによく聞いた、倫理的な観点でただ差別をしてはだめ、とするのではなく、どう考えてみるかという具体的なものだったので興味深かったです。自分も普通に差別をしてしまっていることがあるように感じました。また、全体として、なんとなく差別問題を身近に感じました。(法学部1年生)
    • グループで様々な意見を出し合い、議論を深め、一つの解決策を導きだせたという経験から、課題を解決しようとする際に、多くの人の意見や考えを持ち寄り、多様な視点からから問題を見つめることの大切さを実感できました。マイノリティについて考える際に大切なことは、想像力を働かせることと、解決策をデザインする人同士の間や、解決策をデザインする人とマイノリティを抱える人との間のコミュニケーションを積極的にとることであると、この講義を通して学びました。また、誰かの気持ちを考えることを、日ごろから大切にしたいと思いました。(教育学部1年生)
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  • 人を動かすロジカルコミュニケーション(全学共通科目・主題B科目、第4クォーター、1年生から受講可能)

    この授業の目的は、聴き手を意識しながら論理的で説得力のあるコミュニケーションができるための基本的な考え方を身につけることです。人に動いてもらう説得力のあるコミュニケーションを行うには、客観的な視点で物事を構造的に考え、伝えるといった論理的に考えるスキルと聴き手の感情にも配慮して伝えるスキルの両面が必要です。相手を動かすコミュニケーション能力は、デザイン思考を行うにあたっての土台となる能力ともいえます。

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    この授業では、小グループによる話し合いを中心に学習を進めます。前半でロジカルコミュニケーションの基本を学び、ミニレポートを記載し発表を行うことで実践力を高めます。さらに、後半では、書籍(「人を動かす」)を用いながら、感情や非言語も含めた論理以外の観点も含めた人に動いてもらうためのコミュニケーション能力を養います。予習をもとにしたグループワークにより、他の受講者の主張を理解するという共感の技法を学ぶ手段にもなります。

    受講者の感想
    • ポイントを絞って話す、相手のことを考えるなど、相手にわかりやすく伝えられることのヒントを得て、話し方に変化が生じ、話すことについて自信が持てるようになりました。特に初回のクラスでの1分間での自己紹介のコツが印象に残っています。
    • 「人を動かす」の感想を話し合う中で、着眼点の違いに気づき、人と意見を交換することの大切さを学びました。
    • 講義を聞くだけでなく、班のメンバーとの話し合いで学びを実践し、他人の体験や考えを聞く等の学びを深める機会が多くあり、様々な気づきがありました。
    • クラスでの学びは、授業や学会でのレポート、プレゼンに限らず、日常生活に至るまで活用できるので、学んだことを積極的に実践していきたいです。

主題Bの実質化とDRI教育

主題B「現代社会の諸課題」は、現代社会が直面する諸問題をテーマとして、学生の課題発見、課題解決能力を育成する科目です。この主題Bは共通教育スタンダードのうち主として「③21世紀社会の諸課題に対する探求能力」に対応しており、これまでこのスタンダードにさらに沿うような授業改善や様々な工夫が試みられてきました。

時を同じくして本学では、DRI教育を全学的に展開させるという課題が追加されました。DRI能力育成科目のD科目(デザイン思考能力の育成に関する科目)では課題発見、課題解決能力も育成されます。全学共通科目として開講されている主題Bの課題発見・解決型授業を充実させることで、D科目の全学波及が進むと考えられています