DRI能力を育成するための基盤的教育
DRI能力を育成するための基盤的教育の目的は、より多くの学生にDRI能力を身につけてもらうことです。そのために、全学共通科目の主題において「はじめて学ぶDRI」(2019年度以降)、「課題探求ベーシックス①~③」(2019年度以降)、そして「人を動かすロジカルコミュニケーション」(2020年度以降)という新たなDRI能力育成科目が開講されています。
授業紹介
ここでは、新たに開設した5つのDRI能力育成科目についてご紹介します。
- はじめて学ぶDRI(全学共通科目・主題科目、第1クォーター、第3クォーター、1年生から受講可能)
「はじめて学ぶDRI」の授業の目的は、DRIを地域活性化にどのようにいかせるか、考え、説明することができるようになることです。この授業は、DRI教育の入門の役割を担い、DRIイノベーター養成プログラムの必修科目にもなっています。授業は、次のような流れで進んでいきます。
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- グループで地域課題を確認し、その解決策を考えます
- D・R・I それぞれの専門家が、D・R・I を地域活性化にどのようにいかせるかを説明します
- グループで、最初に考えた地域課題の解決策をDRIの観点から捉え直し、新たな解決策を考えます
2021年度の授業
受講者数は、1クォーターでは72人、3クォーターでは109人で、合計181人でした。今年度も人数にばらつきがあるものの、すべての学部から学生が参加していました。
グループワークの様子
各グループは、次のような地域課題に取り組みました。
地域の魅力発信/中山間地域の地方創生/香川県における若者流出を防ぐ/人口減少による雇用先・労働力の不足/核家族の負担軽減/地域医療と高齢化/農業人口の減少と耕作放棄地の増加/空き家の増加/岡山県におけるシャッター街、空き家、空き店舗の改善/交通事故抑制
受講者の感想
- D・R・Iそれぞれの観点からアプローチして課題を設定し解決策を考えることで、物事に対するさまざまな視点を獲得することができたと思います。またグループ発表では他のグループの意見や考えを聞いて、自分たちにはなかったアプローチの仕方をしており新たな発見がたくさんありました。この授業で学んだことを他の授業や日常生活のなかで活かしていきたいと思います。(法学部1年生)
- DRIの観点を用いて課題解決に取り組んでみると、DRIの観点が無かった時とは全く新しい角度からも課題について見ることができ、より良い発表をすることにつながったと思う。このDRIの考え方は、これから社会人になっていくなかで応用できると思う。この授業では、いろいろな考え方を持った人が集まったグループ内でうまくコミュニケーションを取りながら、課題解決に向けて一緒に協力することも学ぶことができた。(農学部1年生)
- DRIについて学ぶ中で、日常における小さな問題や課題にも応用して用いることができると感じた。「誰がどんなふうに困っていて、どうなることを望んでいるのか」を明確にした上で解決策を多く出し、各リスクを考え、情報を得て、実行してみて、また考える。DRIには一時的なゴールはあっても、終わりはないものであると感じた。今後は、社会的な問題を解決するために、自分ができる小さな活動は何があるのかを考え、行動できるようになりたいと思う。(医学部1年生)
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- 2019年度
- 2020年度
- 差別とマイノリティ(全学共通科目・主題科目、第2クォーター、1年生から受講可能、課題探求ベーシックス①)
「差別とマイノリティ」は、「課題探求ベーシックス①」にあたります。この授業の目的は、日常から距離をとる態度、自分の中にある決めつけや思い込みから距離をとる態度を身につけることによって、マイノリティの人びとが抱えている問題を自分自身と関連づけて考察することができるようになることです。このことは、デザイン思考との関係でいうと、共感の技法を身につけることと同様です。
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この授業では、LTD話し合い学習法(Learning Through Discussion)という小グループによる話し合いを中心に学習を進める技法を使います。LTD話し合い学習法は、課題文の予習と、予習をもとにした授業でのグループワークによって構成されています。課題文の予習は、筆者の主張を理解するという共感の技法を学ぶ手段にもなります。また、予習をもとにした授業でのグループワークは、他の受講者の主張を理解するという共感の技法を学ぶ手段にもなります。
2021年度の授業
グループワークでは、毎回グループを変更しました。これは、自分以外の様々な受講者の主張を理解するための仕組みでもありました。
受講者の感想
- 差別とマイノリティの授業を受けて1番大きく変化したことは、差別は常に自分も含めたあらゆる人の中に存在しているものだという認識が生まれたことだ。この認識によって、今まで感じていたことに違和感を持つことができた。今後もこの考え方を大切にしていきたい。(医学部1年生)
- この講義を通して、差別に対する関心が高まったように思う。これまで差別を自分と離れた特別なものとしてとらえてきたが、差別というのは日常的に当たり前に存在するものであって自分自身も差別に関わっているということを学んだ。相手を理解することの重要性を学ぶと同時に、本質的に理解するということの難しさを感じた。講義では、多くの人の意見を聞くことを通して、自分の差別に対する視点を広げることができたように思う。(創造工学部1年生)
- 自分の差別的気意識について気づかされた。この授業をとっていなければ多分一生気づくことがなかったと思う。同じ本の同じ章を読んでいても人それぞれ目の付け所は全然違っていて毎回の授業で、はっとさせられることがたくさんあった。自分の狭い視野を少しでも広げることができたように感じる。(法学部1年生)
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- マイノリティのライフヒストリー(全学共通科目・主題科目、第3クォーター、1年生から受講可能、課題探求ベーシックス②)
「マイノリティのライフヒストリー」は、「課題探求ベーシックス②」にあたります。この授業の目的は、マイノリティの人びとの多様な人生を知り、マイノリティの人びとが抱えている問題を自分自身に関連づけて理解し、そしてマイノリティ問題の具体的な課題を発見・見つけだすことができるようになることです。このように人やモノ等に対する見方や考え方を再構築し、適切な課題を発見することは、デザイン思考の共感から課題発見にいたるプロセスにあたります。
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この授業では、ジグソー学習法というメンバーごとに担当を決めて教え合う技法を使います。この技法では、自分に割り当てられた知識をグループのメンバーに教える責任が生じるため、受講者の主体的な授業参加が促されます。また、グループの他のメンバーが持っている知識を理解する必要があるため、他者が伝えたいことを聴き理解するために必要な能力も身につきます。ちなみにもともとジグソー学習法は、異文化間の対立を克服するために開発された技法です。
2021年度の授業
グループワークでは、各グループで取り組みたいマイノリティ問題を決め、マイノリティの方々のライフヒストリーをもとにして、具体的な課題を発見しました。なお、各グループで取り組んだマイノリティは、性的マイノリティ、ダウン症候群の人、1型糖尿病者、日本の貧困者、アイヌ民族、在日外国人です。
受講者の感想
- この授業を通して様々なマイノリティに関して触れることができた。マイノリティによって現状の認知度や歴史的背景が大きく異なることを学んだ。またグループワークを通じて、同じ問題に関しても他の方の様々な視点を知ることができた。(法学部1年生)
- この講義を通して改めてマイノリティについて深く考えることができた。カテゴリー化は必然的なものであるが、そうしたカテゴリー化がなされた人に対していかに向き合っていくか、各個人のそれぞれの生活の中に具体的にどのような課題があるのかを考えることが重要であると感じた。(法学部1年生)
- この授業を取った時はマイノリティについての知識や考えがあまりなかったのですが、この授業を取ったことによってそれが変わったことを感じています。班になって活動することで新しい人とのコミュニケーションをとることにもつながりましたし、私たちの班ではTeamsを用いて授業外でも話し合いや状況報告を行っていました。今までこのようなことはなかったので、新しい経験としてよいものとなりました。パワーポイントを用いたグループでの発表は初めてで緊張しましたが、私たちの班に対する感想を読んでみると私の発表した内容が書かれていることに対して自分の話が通じたんだと嬉しくなりました。(創造工学部1年生)
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- 社会デザインとマイノリティ問題(全学共通科目・主題科目、第4クォーター、1年生から受講可能、課題探求ベーシックス③)
「社会デザインとマイノリティ問題」は、「課題探求ベーシックス③」にあたります。この授業の目的は、共生社会について理解したうえで、マイノリティの人びとの視点に立ち、マイノリティの人びとが生きやすい社会のためのアイデアを出し、共感という技法にもとづいて社会をデザインできるようになることです。このことは、デザイン思考におけるデザインのプロトタイピングおよび検証のプロセスを身につけることと同様です。
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この授業では、少人数グループによる課題解決型学習=PBL(Problem Based Learning)の技法を用います。課題を解決する過程で、基礎的な知識だけでなく、応用できる知識や知識を応用する力を身につけることができます。また、少人数グループなので、グループワークでは主体的な関与が必要となり、コミュニケーション能力を育成することができます。
2021年度の授業
グループワークでは、各グループで取り組みたいマイノリティ問題を決め、各自で調べたことや共生と社会についての学びをいかし、マイノリティの人びとが生きやすい社会をデザインしました。つぎに、それぞれの発表に対して、他のグループのメンバーがコメントをしました。最後に、これらのコメントをもとにして、改めて社会デザインを考えるレポートを作成しました。なお、各グループで取り組んだマイノリティは、性的マイノリティ、障害者、在日外国人でした。
受講者の感想
- 第3クォーターから引き続き受講させていただきました。マイノリティの人々のライフヒストリーを知るだけでなく、それに関して社会や自分たちがどう変われるかを考えることができ、とても有意義な時間でした。第3クォーターの時にも感じたように、「知る」ということはとても大切だと改めて思いました。また、マイノリティに関することだけでなく、情報の取り扱い方や、パワーポイントの工夫をはじめとするプレゼンの仕方など、いろいろなことを学ぶことができました。(教育学部1年生)
- 差今講義では、共生を目指してマイノリティ問題の具体的解決策を探した。第3クォーターのマイノリティのライフヒストリーの講義を受講していたので、個人に焦点をあてた問題点は理解することができていた。その上で、今回は共生の意味を細かく学び、モード毎に解決策を考えたことでより深くマイノリティ問題の現状を学ぶことができたと考える。(創造工学部1年生)
- 到達目標に向けて一連の講義が行われ、個人の課題やグループワークが行えて良かった。現代社会が持つマイノリティについて調べる良い機会になった。また、発表資料作成を通して、見やすく・分かりやすい資料作りも学ぶことができたように感じる。この経験は今後の大学生活で役立つと思う。(経済学部1年生)
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- 人を動かすロジカルコミュニケーション(全学共通科目・主題科目、第4クォーター、1年生から受講可能)
この授業の目的は、聴き手を意識しながら論理的で説得力のあるコミュニケーションができるための基本的な考え方を身につけることです。人に動いてもらう説得力のあるコミュニケーションを行うには、客観的な視点で物事を構造的に考え、伝えるといった論理的に考えるスキルと聴き手の感情にも配慮して伝えるスキルの両面が必要です。相手を動かすコミュニケーション能力は、デザイン思考を行うにあたっての土台となる能力ともいえます。
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この授業では、小グループによる話し合いを中心に学習を進めます。前半でロジカルコミュニケーションの基本を学び、ミニレポートを記載し発表を行うことで実践力を高めます。さらに、後半では、書籍(「人を動かす」)を用いながら、感情や非言語も含めた論理以外の観点も含めた人に動いてもらうためのコミュニケーション能力を養います。予習をもとにしたグループワークにより、他の受講者の主張を理解するという共感の技法も学ぶことができます。
受講者の感想
- 授業の雰囲気が非常に良く、とても話しやすい授業でした。日頃、積極的に発表することにない私も、自分の意見を多く伝えることができ、伝えることの楽しさを知ることができました。グループワークを通じて他学部の友人もできたことも嬉しかったです。
- 1分間での自己紹介のコツやピラミッド構造といった論理的な内容に加え、伝えられた相手がどのように感じるかを意識することの重要性といった感情面についても幅広く学べ、自分にとって今、学びたいと思っていたことが学べる授業でした。
- コミュニケーションに対する苦手意識を少しでも克服したいと思い、受講しました。初回から様々なコツが学べて、受講してよかったです。受講する前と後でコミュニケーションに対する気持ちの在り方が大きく変わり、意見を言うことに前向きになれました。
- 「人を動かす」という本に出会えたことが人生にとって大きな財産になりました。今後も定期的に、この本を読み返していきたいと思います。
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