DRI能力を育成するための基盤的教育

DRI能力を育成するための基盤的教育の目的は、より多くの学生にDRI能力を身につけてもらうことです。そのために、全学共通科目の主題において「はじめて学ぶDRI」(2019年度以降)、「課題探求ベーシックス①~③」(2019年度以降)、そして「人を動かすロジカルコミュニケーション」(2020年度以降)という新たなDRI能力育成科目が開講されています。

授業紹介

ここでは、新たに開設した5つのDRI能力育成科目についてご紹介します。

  • はじめて学ぶDRI(全学共通科目・主題科目、第1クォーター、第3クォーター、1年生から受講可能)

    「はじめて学ぶDRI」の授業の目的は、DRIを地域活性化にどのようにいかせるか、考え、説明することができるようになることです。この授業は、DRI教育の入門の役割を担い、DRIイノベーター養成プログラムの必修科目にもなっています。授業は、次のような流れで進んでいきます。

    シラバスはこちら(はじめて学ぶDRI【イ】) 
    シラバスはこちら(はじめて学ぶDRI【ロ】) 

    1. グループで地域課題を確認し、その解決策を考えます
    2. D・R・I それぞれの専門家が、D・R・I を地域活性化にどのようにいかせるかを説明します
    3. グループで、最初に考えた地域課題の解決策をDRIの観点から捉え直し、新たな解決策を考えます

    2023年度の授業

    受講者数は1クォーターでは84人、3クォーターでは72人で、合計156人でした。今年度も人数にばらつきがあるものの、すべての学部から学生が参加していました。 

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                             グループワークの様子 

    各グループは、次のような地域課題に取り組みました。

    若者が戻ってくる街づくり​/商店街の活性化​/待機児童の問題​/男性の育児休業取得率が低いこと​/地域共生社会の構築​/地域医療の現状と解決策​/地域活性化につながる避難施設づくり​/香川県の人口減少と過疎化​/小豆島の人口減少と移住者/徳島県の山間部における過疎化問題​/淡路島の空き地問題と労働力不足​/離島における交通弱者の問題​/西興部村のPR活動促進​

    受講者の感想
    • DRIというものがどんなものであるかを理解することができた。地域課題の解決をテーマとして実際に自分でDRIの思考法を実践できてよかった。他学部の生徒と交流する機会ができたため新鮮な感じがした。考える視点がそれぞれ異なったため刺激的だった。レポートやパワーポイントなど様々な経験を積めてよかった。(医学部1年生)
    • 大学に入ってからの初めてのグループワークメインの授業が「はじめて学ぶDRI」で良かったなと率直に思いました。今までにも何か現状で起こっている問題に対する解決策を考える活動はしてきたのですが、今回DRIについて学んだことで新たな思考のプロセスを身につけることができ、問題解決の切り口が増えました。今後、大学生として様々なことを学ぶ過程で必ず役に立つはずだと思っています。(法学部1年生)  
    • 実際に具体的な地域課題を考えていくとデザイン思考、リスクマネジメント、インフォマティクスとは何かを具体的に理解することができた。また、DRIの観点を用いた解決策は一時の表面的な解決策でなく長期にわたり、改善していき、次第に良くなっていくような解決策に自然となっていくのが非常に良いと感じた。また、現代に適した、そして現代ならではの考えを積極的に取り入れることができているということも、地域課題について考えているときに強く感じた。せっかく学んだDRIをこれからも生かしていきたいと思う。(教育学部1年生)
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    • 2019年度
    • 2020年度
    • 2021年度
    • 2022年度
  • 差別とマイノリティ(全学共通科目・主題科目、第2クォーター、1年生から受講可能、課題探求ベーシックス①)

    「差別とマイノリティ」は、「課題探求ベーシックス①」にあたります。この授業の目的は、日常から距離をとる態度、自分の中にある決めつけや思い込みから距離をとる態度を身につけることによって、マイノリティの人びとが抱えている問題を自分自身と関連づけて考察することができるようになることです。このことは、デザイン思考との関係でいうと、共感の技法を身につけることと同様です。

    シラバスはこちら(差別とマイノリティ

    この授業では、LTD話し合い学習法(Learning Through Discussion)という小グループによる話し合いを中心に学習を進める技法を使います。LTD話し合い学習法は、課題文の予習と、予習をもとにした授業でのグループワークによって構成されています。課題文の予習は、筆者の主張を理解するという共感の技法を学ぶ手段にもなります。また、予習をもとにした授業でのグループワークは、他の受講者の主張を理解するという共感の技法を学ぶ手段にもなります。

    2023年度の授業

    グループワークでは、毎回グループを変更しました。これは、自分以外の様々な受講者の主張を理解するための仕組みでもありました。 

    受講者の感想
    • 自分はマイノリティの方々のことをある程度は理解していると思っていたが、実際は全くそんなことはなく知ったかぶりをしているだけなのではと思うようになった。この感情はこの講義を受けなかったら、絶対に持ちえない感情だと思うので、改めてこの講義をとってよかったと思った。また授業中のミーティングによって自分だけでは、思いつかなかった考えや意見を聞けてより学びが深まったように思う。(創造工学部1年生)
    • 色々な人と差別について議論できて、自分の見識を深めることのできる時間でした。この授業を通して差別に対する見方や捉え方がかなり変わったように感じます。街を歩いたり、情報に触れたりしても今まで抱かなかったような考えを抱いたりするようになったので、自分を一回り成長させられるような授業だったと思います。(医学部1年生)
    • 「差別」とは何かを改めて考える機会となり、自分が思っていたよりも身近に存在するものだということを理解することが出来ました。この授業で、自分の中にもマイノリティの人々に対する決めつけや思い込みを持っているということに気づくことが出来ました。また、「差別」を考えるうえで、自分との関連付けを行うことで深く理解するきっかけとなりました。また、グループ活動であったため、多様な人々の意見や考え方に触れあうことができ、自分の考えを深めるきっかけとなりました。予習は大変だったが、自己を深める良い機会になったと感じました。(教育学部1年生)
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  • マイノリティのライフヒストリー(全学共通科目・主題科目、第3クォーター、1年生から受講可能、課題探求ベーシックス②)

    「マイノリティのライフヒストリー」は、「課題探求ベーシックス②」にあたります。この授業の目的は、マイノリティの人びとの多様な人生を知り、マイノリティの人びとが抱えている問題を自分自身に関連づけて理解し、そしてマイノリティ問題の具体的な課題を発見・見つけだすことができるようになることです。このように人やモノ等に対する見方や考え方を再構築し、適切な課題を発見することは、デザイン思考の共感から課題発見にいたるプロセスにあたります。

    シラバスはこちら (マイノリティのライフヒストリー)

    この授業では、ジグソー学習法というメンバーごとに担当を決めて教え合う技法を使います。この技法では、自分に割り当てられた知識をグループのメンバーに教える責任が生じるため、受講者の主体的な授業参加が促されます。また、グループの他のメンバーが持っている知識を理解する必要があるため、他者が伝えたいことを聴き理解するために必要な能力も身につきます。ちなみにもともとジグソー学習法は、異文化間の対立を克服するために開発された技法です。

    2023年度の授業

    グループワークでは、各グループで取り組みたいマイノリティ問題を決め、マイノリティの方々のライフヒストリーをもとにして、具体的な課題を発見しました。なお、各グループで取り組んだマイノリティは、女性、性的マイノリティ、身体障害者、発達障害者、被差別部落出身者、貧困者、ユダヤ人、宗教2世者、在日外国人でした。

    受講者の感想
    • マイノリティとしての歴史や運動があったことやマイノリティに対する世界や日本の捉え方、考え方について広く知ることができました。問題を抱えているマイノリティの解決のためには、「相互理解」が一番重要なことではないかと考えました。今回、授業で扱った以外にもまだまだ多くのマイノリティがいると思いますが、相手のライフヒストリーなどを知ることで自分の中での偏見や意識の改善に努めていきたいと思いました。(法学部1年生)
    • 授業を受けて、自分が知らないマイノリティの方がたくさんいると分かった。そして、ライフヒストリーを知ることでより具体的に、課題となっていることが分かると学んだ。ライフヒストリーを知ることでその人の心情などもよく理解できるということも分かった。マイノリティについて詳しく知らないままでは、偏った認識を持ち続けてしまうかもしれないので、マイノリティについての正しい知識を知ることが大切であると分かった。(創造学部1年生)
    • マイノリティの抱える課題がどこにあって、どう対応していけばよいのか深く考えるきっかけになった。またグループ発表を通して、ただ調べるだけでなく調べたことを総括し、周囲に伝える訓練にもなった。自分が知ったことをわかりやすく周囲に発信することも、マイノリティ問題に対する解決の大きな糸口になると思う。客観的な歴史と主観的・具体的なライフヒストリーという2つの観点から見ることなど、そして3つのモードに分けて考えることは、課題を正確に認識するためにとても役立った。(教育学部1年生)
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  • 社会デザインとマイノリティ問題(全学共通科目・主題科目、第4クォーター、1年生から受講可能、課題探求ベーシックス③)

    「社会デザインとマイノリティ問題」は、「課題探求ベーシックス③」にあたります。この授業の目的は、共生社会について理解したうえで、マイノリティの人びとの視点に立ち、マイノリティの人びとが生きやすい社会のためのアイデアを出し、共感という技法にもとづいて社会をデザインできるようになることです。このことは、デザイン思考におけるデザインのプロトタイピングおよび検証のプロセスを身につけることと同様です。

    シラバスはこちら(社会デザインとマイノリティ問題)

    この授業では、少人数グループによる課題解決型学習=PBL(Problem Based Learning)の技法を用います。課題を解決する過程で、基礎的な知識だけでなく、応用できる知識や知識を応用する力を身につけることができます。また、少人数グループなので、グループワークでは主体的な関与が必要となり、コミュニケーション能力を育成することができます。

    2023年度の授業

    グループワークでは、各グループで取り組みたいマイノリティ問題を決め、各自で調べたことや共生と社会についての学びをいかし、マイノリティの人びとが生きやすい社会をデザインしました。つぎに、それぞれの発表に対して、他のグループのメンバーがコメントをしました。最後に、これらのコメントをもとにして、改めて社会デザインを考えるレポートを作成しました。なお、各グループで取り組んだマイノリティは、性的マイノリティ、発達障害者、日本国内の民族マイノリティ、外国人移住者でした。

    受講者の感想
    • さまざまなマイノリティの人たちが抱えている問題やどう向き合っているのか、について実際に触れることができました。私が暮らしているこの環境や社会は、何不自由なく過ごしやすいと思っていても、マイノリティの人々にとってはまだまだ生きづらい環境であるということが非常にわかりました。多様性をや共生社会を考える上では、やはりマイノリティの人たちの声に耳を傾け、寄り添う姿勢が重要だと考えました。(経済学部1年生)
    • 第3Qの「マイノリティのライフヒストリー」授業時では、発見する事ができていなかった新たな課題を発見することができた。また、第3Q時の課題と今回の授業で発見することができた課題の解決策についてグループで考えることができた。今回の授業を通して、以前よりも自分達のグループが調べたマイノリティだけでなく、他のグループが調べたマイノリティについても理解を深めることができたと思う。今回の授業で学んだ考え方を大学の授業だけでなく、日常生活に応用していきたいと思った。(教育学部2年生)
    • この授業を受けて、自分も何らかのマイノリティであるかもしれないこと、自分が知らないマイノリティの方がおられるということがよく分かった。また、「こういう方はこう接するものだ。」などという型にはまった考えはあまりよくないということが分かった。そして、自分の中にある「規範」を他人に押し付けることは、時にその人を傷つけてしまうことがあるということも分かった。この授業を受けて、周りの方のことを一面的ではなく多面的に考えなくてはならないということが分かった。「共生する」ということの意味が、授業を受ける前より、深く理解できたと感じた。(創造工学部1年生)
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  • 人を動かすロジカルコミュニケーション(全学共通科目・主題科目、第4クォーター、1年生から受講可能)

    この授業の目的は、聴き手を意識しながら論理的で説得力のあるコミュニケーションができるための基本的な考え方を身につけることです。人に動いてもらう説得力のあるコミュニケーションを行うには、客観的な視点で物事を構造的に考え、伝えるといった論理的に考えるスキルと聴き手の感情にも配慮して伝えるスキルの両面が必要です。相手を動かすコミュニケーション能力は、デザイン思考を行うにあたっての土台となる能力ともいえます。

    シラバスはこちら(人を動かすロジカルコミュニケーション)

    この授業では、小グループによる話し合いを中心に学習を進めます。前半でロジカルコミュニケーションの基本を学び、ミニレポートを記載し発表を行うことで実践力を高めます。さらに、後半では、書籍(「人を動かす」)を用いながら、感情や非言語も含めた論理以外の観点も含めた人に動いてもらうためのコミュニケーション能力を養います。予習をもとにしたグループワークにより、他の受講者の主張を理解するという共感の技法も学ぶことができます。

    受講者の感想
    • この講義では、今まで考えもしなかったような考え方を身につけることができました。特に、ピラミッドストラクチャーを活用して構造化することにより、わかりやすく伝えることの重要さが印象に残っています。学んだことをこれからの生活においてどんどん活用し、人生の教訓としてもずっと心に秘めておきたいなと感じています。
    • 人と話すことが苦手だということを克服するために受講しましたが、最終的には論理的にコミュニケーションのコツというものを多く学べました。学んだことをこれから少しずつ実践出来たらと思っています。
    • 今まで伝え方が上手な人、人付き合いが上手く魅力的な人というのは、漠然とそういった天賦の才を備えているのだと思っていましたが、技術を持っていることやそのための知識があることがわかりました。クラスで学んだことをこころがけてスキルを磨いていきたいと考えています。
    • 今後、多くの人と関わり、話し合っていく機会が増えるなかで、役に立つ考え方を多く学びました。今後、教師という立場になると考えた際に、子どもたちの意見を真っ向から否定せず尊重しながら指導し、教壇に立つ際にもロジカルな話し方を意識していきたいと考えています。
    • この講義では、多くのグループワークもあり、「人とのかかわりかた」を重点的に学べたと思います。少し心理学的な内容も含まれていると感じ、とても面白かったです。今回の授業で学んだことをしっかりと身に着け、これからに生かしていこうと思っています。
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