香川大学の教員として知っておきたい用語集

シラバスに関する用語

シラバスに関する用語
シラバス

各授業の目標と内容、授業方針、テキストと参考図書、授業計画、成績評価の方法、 教員との連絡方法などを記した文書。「学習指導、学術情報、事務連絡、法的契約」など様々な性 格をもつべきものとされる。とりわけ、① 教員と学生の相互契約としてのシラバス、② 学生に教室外での学習の手がかりを与えるシラバス、③ 授業の進行にあわせて加筆修正していくシラバス(=ゴーイング・シラバス)、④ ウェブ・シラバスの充実、などの点を中心に各大学が取組みをおこなっている。香川大学全学共通科目では、平成29 年度よりシラバスがウェブ化された。

オフィス・アワー 授業内容に関する学生の質問や相談に応じるために、教員があらかじめ指定しておく相談時間・面会時間。たとえば「月曜 13:00~15:00 ○○研究室」などとシラバスに明示する。本来、この時間帯なら事前のアポイントメントなしに受講生は遠慮なく来てよろしい、 という性格のもの。

e ラーニング
(イー・ラーニング)

コンピュータやインターネットなどの情報技術を使って作成・準備した教材によって受講者が(授業時間中または時間外に)学習する形態。学習効果の向上、自学自習の手助け、多様な学習機会の提供、分散キャンパス問題の解消、ピア・レビューや授業改善への利用などの目的で、各大学で実験的な取組みが進んでいる。もともとは、アメリカで、広大な土地での一般人も含めた授業をどうするかという課題のために盛んになった動き。香川大学全学共通科目でもすでに e ラーニング科目が開講されている。
GPA =
Grade Point Average
評価に応じて与えられるポイントに単位数を乗じたものを合計し、 それを、履修登録単位数で割った数値。学生毎に算出される。香川大学では「秀」4点、「優」3 点、「良」2点、「可」1点、「不可」0点と定める。24単位登録し、秀を4単位、優を4単位、 良を8単位、可を8単位とった学生の GPA は、(4×4+3×4+2×8+1×8) ÷24=2.17 となる。より厳密な成績評価のために、また、ただ単位を取ればよいという学生の意識を改め学習 意欲を向上させるために、この方法を導入する大学が増えてきている。
授業外学修

大学設置基準では「1単位の授業科目を 45 時間の学修を必要とする内容をもって構成することを標準」とすると定められている。15 回の授業時間だけでは、2時間(*)×15=30 時間にしかならないため、残りの 15 時間を授業外学修として担保する必要がある。つまり、授業の予習復習を行うようすすめなければならないのだが、香川大学全学共通科目では、シラバスに「自学自習のためのアドバイス」等を記載し、その内容を授業計画に組み込むようにしている。
(*)実質 90 分の授業時間を制度上2時間として計算している。

クォーター(型科目) 1年を前期の前半、後半、後期の前半、後半に分けること。前期あるいは後期の前半、後半単位で実施される科目をクォーター型科目という。

教職員の職能開発に関する用語

教職員の職能開発に関する用語
FD =
Faculty Development

教授団の能力開発、教員開発。「個々の大学教員が所属大学における種々の義務(教育・研究・管理・社会奉仕等)を達成するために必要な専門的能力を維持し、 改善するためのあらゆる方策や活動」:B. C. Mathis の定義(*)。本来はこのように広い概念だが、近年一般には、「授業内容の改善」「教える技術や方法の向上」(=狭義の FD)の意味で使われることが多い。大学設置基準の改正によって、「大学は、当該大学の授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施するものとする」とされ、平成 20 年度より FD 実施は義務化された。
(*)一般教育学会編『大学教育研究の課題』(玉川大学出版部、1997 年)p.253 から孫引き。

SD =
Staff Development
大学職員の能力開発のこと。平成 20 年度より FD 実施は義務化されたが、その内容が「授業の内容及び方法の改善」に限定されていたこと、授業に直接携わる教員が念頭に置かれ、その他の職員(学長等の執行部、事務職員、技術職員等)が対象として想定されていないこと等が課題とされた。そのため、平成 28 年度の大学設置基準の改正によって、「大学は、その教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため、職員を対象とした、必要な知識及び技能を習得させ、並びにその能力及び資質を向上させるための研修の機会を設けるほか、必要な取組を行うものとする」と、事務職員だけでなく、教員や技術職員も含む「職員」を対象とした、幅広い領域における研修、取組の実施が義務化された。

SPOD

「四国地区大学教職員能力開発ネットワーク(Shikoku Professional and Organizational Development Network in Higher Education)」の略称。四国地区の 32 の国公私立大学・短期大学・高等専門学校によって構成されている。質の高い教育を提供するため、4県に位置する「ネットワークコア校」を中心に、加盟校が協力・連携して、教職員の能力開発(FD・SD)につとめている(香川大学もコア校の一つ)。ネットワークによって資源共有が可能になり、加盟校は、 単独の組織ではなしえなかったプログラムやサービスを享受することができるようになった。

 

カリキュラムに関する用語

カリキュラムに関する用語
教養教育

日本の大学における教養教育は、戦後、米国の大学のリベラルアーツ教育をモデルに一般教育として始まった。人文・社会・自然の諸科学にわたり豊かな教養と広い識見を備えた人材を育成することが目指されたが、担当教員にその理念が十分に伝わっていないことや学生にもその内容が高等学校教育の焼き直しに映ること等が問題視された。それらの問題を踏まえ、1991年の大学設置基準の大綱化により、授業科目の区分や卒業要件単位数の定めなどの取り扱いが弾力化されたが、相変わらず教養教育の軽視は続いているとされる。なお、上述の理念に基づけば、 全学共通教育がすなわち教養教育を指し示すわけではないことがわかる。以下に示す、導入教育・転換教育、FYS、リメディアル教育等、従来の教養教育の範疇にとどまらず、全学共通教育が展開されている。

くさび型カリキュラム 新入生向けの専門教育+高学年向けの教養教育。「1年次生から少しでも専門分野を学びたい」「3・4年次生でも専門以外の広い分野にふれたい」という希望に応える ためのシステム。従来の、基礎を十分に固めてから初めて専門教育をという積み木型の教育理念への疑いや、教養課程と専門課程の断絶に対する反省から生まれてきた考え方。「教養教育と専門教育の有機的連携」(21 世紀の大学像と今後の改革方策について:大学審議会答申)をめざして、 各大学で様々なカリキュラムの工夫がおこなわれている。

導入教育・転換教育

どちらも高校と大学の接続に関して用いられる語。「導入教育」は、高校までの学習と大学教育とをスムーズにつなげるための教育。これに対して「転換教育」は、高校までの学習と大学教育とは根本的に違うことを意識させるという面に重点がある。学士課程における教育の質の保証、学力のバラツキや未履修問題、近年の大学生気質などを考慮したうえで、 有効な初年次カリキュラムを開発することが急務と考えられる。
FYS =
First Year Seminar 

初年次ゼミ。その大学の一員であるという自覚をうながし学業意欲を向上させるために、新入生向けにおこなう少人数授業。その主な目的はたとえば、① 大学教育の体感、大学生活への順応、② 討論や共同作業のマナーの習得、③ 基本的な読み書き能力の向上、④ 他専攻の学生や教員との交流、などとされる。「導入教育」と「転換教育」の両面をもつと考えられる重要な授業群。初年次生向けの各種プログラムやガイダンスも広く含めて、FYE = First Year Experience と呼ぶこともある。

リメディアル教育 

「補習授業」という言い方に含まれるマイナスイメージを避けるための用語。大学生の基礎学力の低下や、学部・学科間の学力差などが厳しく指摘されるようになって、脚光をあびるようになった。専門教育に不可欠な(特に理科系の)基礎知識、日本語の読解や表現、 英語などの分野を中心にカリキュラムが組まれていることが多い。卒業単位外の枠で実施している大学もある。ちなみにアメリカでは、準備不足の学生の才能、能力を発達させるというより広い意味をこめたディメロップメンタル教育という用語が用いられることが多い。

 大綱化 大学設置基準が 1991 年に改正され、従来の一般教育と専門教育の区分や、一般教育の科目区分(人文・社会・自然、外国語、保健体育)が廃止されたことを言う。細部に及んでいた縛りが外れ、カリキュラム編成の自由が与えられたのを受けて、各大学で教育課程や教育組織の変革が進み、多くの大学で教養部や一般教育課程の制度は崩壊した。設置基準大綱化の本来の意図がどこにあったにせよ、結果的にそのインパクトが教養教育をますます軽んじる傾向に拍車をかけたことは間違いない。
学士力  学士課程教育を終えた時点で学生が身につけておくべき力のこと。中央教育審議会の答申で用いられ、現在の大学教育のキーワードとなっている。この概念が強調される背景には、大学のユニバーサル化にともない、大学教育の力点が「何を教えるか」から「何ができるようになるか」へと移行したという事態がある。
 3つのポリシー ディプロマ・ポリシー(DP)、カリキュラム・ポリシー(CP)、アドミッション・ポリシー(AP)のこと。それぞれ、DP は「卒業認定・学位授与の方針」、CP は「教育課程編成・実施の方針」、AP は「入学者受入れの方針」に該当する。中央教育審議会のガイドラインでは、「三つのポリシーは、各大学が自らの理念を常に確認しながら、各大学における教育の不断の改革・改善に向けたサイクルを回す起点となるもの」とされている。
ナンバリング   授業科目に適切な番号をつけて分類することで、学修の段階や順序等を表し、 教育課程の体系性を明示する仕組みのこと。学生にとっては、授業の特性を一目で理解し、どの順番で何を履修すればよいのか把握する手助けとなる。また、大学にとっては、DP や CP と各授業科目との関連が明確になり、科目構成を検討する際の助けとなる。香川大学では、8つの要素(①水準、②分野、③DP、④提供部局、⑤対象学生、⑥特定プログラムとの対応、⑦授業形態、⑧単位数)、14桁の英数文字でナンバリングを行っている。
Cap(キャップ)制    履修登録科目数に上限を定める制度。上限という帽子をかぶせるという意味か。大学設置基準に従えば、2単位の講義の単位認定には、本来、授業時間 90 分以外にその倍の時間の教室外学習(予習復習)が必要である。したがって、単位制度を厳密化・実質化するなら、同じ学期にあまりに多くの科目を履修することはできないはずである。Cap 制と上の GPA とを組み合わせて、GPA の高い学生には登録単位数の上限を増やすなどの工夫もある。

アクティブラーニングに関する用語

アクティブラーニングに関する用語
アクティブラーニング

中央教育審議会の答申では、「学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」とされている。「発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である」と記載されている通り、非常に幅広い活動を指示す。背景としては、高等教育の大衆化によって学生の多様化が進んだことや、変化の激しい現代社会を生き抜く人材を大学で育てるべきだという社会からの要請が強くなっていることが挙げられる。
(*)中央教育審議会「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」用語集より抜粋

PBL 少人数グループによる課題解決型学習のこと。与えられた問題を解決するために知識を獲得する Problem Based Learning や、既習の知識を応用しプロジェクトを完成させる Project Based Learning が挙げられる。香川大学では独自に PBL を定義し、導入を進めている。『大学入門ゼミハンドブック』「PBL について」で具体的な内容が紹介されているので参照されたい。

クリッカー

教員と学生の双方向コミュニケーションを可能にするツールのこと。教員が提示した問いに対して、学生がレスポンスカードやスマートフォンを使って回答すると、その回答が下記の集計画面のように表示される。クリッカーを使えば、学生の理解度を確認しながら授業を進めることができる。また、学生の回答を保存できるので、国家試験や TOEIC 等の試験対策にも有効である。

協同学習・協調学習  仲間と共有した学習目標を達成するためにペアもしくは小グループで一緒に学ぶこと。学生の自由度が少ない教員主導型の学習を「協同学習」、学生の自由度が高い学生主導型の学習を「協調学習」と定義する論者が多い。いずれにしろ個人単位で学習した場合よりも内容がよく定着するといわれている。「協同学習」については、『大学入門ゼミハンドブック』「協同学習の技法」で具体的な技法が紹介されているので参照されたい。
 反転授業 授業外学習、いわゆる宿題と講義室での学びの内容を逆転させた授業のこと。従来、 講義室で行われていた知識の伝達を e ラーニング等の映像を通して行い、講義室では事前に学んだ知識について議論したり、課題を解いたりする。反転授業を使えば、知識の伝達量を減らさずにアクティブラーニングの技法を取り入れることができ、汎用的能力や知識のさらなる定着が期待される。

 

「評価」に関する用語

「評価」に関する用語
教員評価

大学教員が自己の活動を振り返ると共に、所属組織長等からの評価を受け、教育、 研究、社会貢献等の活動の改善に資するための取組みのこと。香川大学では、各教員は、教育・研究・社会貢献・運営の活動領域ごとに自己点検書及び活動実績書を提出し、教員の所属組織の長による評価を受ける。この評価結果は、各教員の教育研究等の質の向上や改善、評価結果に基づく助言・指導に活用されるとともに、処遇にも反映されている。

認証評価制度 すべての大学、短期大学、高等専門学校が、定期的に文部科学大臣の認証を受けた評価機関(認証評価機関)の評価を受ける制度のこと。2004 年度以降、7年以内ごとに評価をうけている。これまで、大学や学部を設置する際の審査はあったものの、その後、基準が守られているか等をチェックする仕組みがなかった。そこで、国は大学に自己点検・評価、改善を行うよう求め、その内容について第三者が検証するシステムを取り入れた。

中期計画・中期目標

国立大学が、法人化後、6年区切りでどんなことをめざし、どんなことに取り組むのかを示したのが、中期目標・中期計画である。中期目標は、文部科学大臣が、大学の意見を聞き、それに配慮したうえで、大学が6年間に達成すべき事項を定めたもの。中期計画は、 大学が、中期目標を達成するための計画を作成し、文部科学大臣から認可を受けたもの。現在は第三期の中期目標期間に入っている。
PDCA サイクル もとは製造業における生産管理などで用いられるビジネス用語で、Plan(計画)− Do(実施)– Check(評価)– Action あるいは Act(改善)のサイクルを言う。継続的なフィードバックと改善とをおこないながら、さらに次のステップへと取組みを進めていくための仕組み。外部からの大学評価においても、このような評価と改善のサイクルが制度的に整備されているかどうかという点は重要な視点のひとつとされている。
ルーブリック

米国で開発された学修評価の基準の作成方法。評価水準である「尺度」と、尺度を満たした場合の「特徴の記述」で構成される。記述により達成水準等が明確化されるため、 パフォーマンス等の定性的な評価に向くとされ、評価者・被評価者の認識の共有、複数の評価者による評価の標準化等が期待される。『大学入門ゼミハンドブック』では、情報整理の方法、レポートの書き方、日本語技法、プレゼンテーションの方法についてルーブリック表のサンプルを掲載しているので参照されたい。