審査委員の講評

 

香川県教育委員会 次長 土岐 敦史

 受賞された3名の方、おめでとうございます。お祝いを申し上げたいと思います。私からは、優秀賞2編を中心に、若干の講評を申し上げさせていただきます。  

 まず、全体を通してです。今回応募のあった32編すべて読ませていただきましたが、どの論文もテーマについてよく勉強し、それを踏まえてよくまとめた努力のあとが見えました。高校生にとって、論文作成は、学校で教わる国語よりも少しハードルの高いものかと思います。皆さんが忙しい学業生活の中で、勇気をもって積極的にその壁に立ち向かわれたことに心から敬意を表したいと思います。正直に申し上げて未熟さが感じられるところも多々あったのですが、チャレンジする心を持ち続ければ、この論文を含め、あらゆることに上達していくことができますので、今後とも是非頑張っていいただきたいと思います。 

 その上で、今回私が評価のポイントといたしましたのは、自分の考えをしっかり持って、それを的確に表現できているかということです。論文とは、表現手段のひとつですので、表現すべき主張が確立されていることがまず必要です。特に高校生の皆さんには、高校生らしい、若々しい発想と主張に期待しました。そしてその主張が説得力をもって展開されているか。これが次に必要なことです。技術的な部分もありますが、読み手を意識して書かれているかどうか。ここに注目しました。受賞された3作品は、いずれもこのポイントを高いレベルで満たすものであったと思います。 

 優秀賞のうち、近藤慶明さんの「少年の更生に向けて」は、少年法、少年非行の問題のうち、いかにして罪を犯した少年を更生できるか、にテーマを絞って書かれています。主題をひとつに決め、その解決策の考え方を提示し、さらにその具体案を展開するという分かりやすい構成で、たいへんスムーズに読む進むことができ、かつ理解しやすいものとなっていると感じました。また、主張内容についても高校生らしい正義感に基づいて自身で考えたものとなっており、好感が持てました。実はこの方法論については、人権上の課題があるのでないかとの指摘も審査会の中ではあったのですが、結論の正否よりも自らの意見をしっかり持っていることの方を重視し、評価させていただきました。

 もう一点の優秀賞、田口若菜さんの「若者の多く、活気のある香川県にするために」は、県内大学への進学率を上げることが、県の活力アップにつながると考え、それをテーマとしています。田口さんは、この論文のために自ら企画して校内で200人を超える生徒を対象としたアンケートを実施していました。また、本県や他県の県庁の職員、大学生へのインタヴューも実施し、課題の分析に取り組む姿勢がまず素晴らしいと感じました。そしてそのデータから、進学には学部が大きく関係することを導き出し、それに対応した解決策が提示されて、順序立てた分かりやすい構成、結論となっている点も評価が高い点であったと思います。 

 以上2点について申し上げましたが、受賞作以外にもそれぞれユニークさや面白みを感じさせてくれる論文がいくつもあり、優劣をつけるのに審査員の皆様とかなり苦労をしたところもありました。今回奨励賞の皆さんや選に漏れた皆さんも是非次の機会に頑張っていただきたいと思います。  

 私にとりましても、高校生の皆さんの考えや文章に触れることができたのは、大変貴重な経験であったと思っております。この機会を与えていただいた香川大学法学部の皆様にお礼を申し上げ、講評とさせていただきます。

 

香川県弁護士会 弁護士 山地 淳仁

 入賞された高校生の皆さん,本当におめでとうございました。

  今回の論文のテーマは,①憲法,②少年法,③香川県における若者の定住化であり,高校生の皆さんにとっては,普段馴染みの薄いテーマだったと思います。それにもかかわらず,応募論文はいずれも,様々な文献を調査した上で自分の考えを述べることができており,皆さんの努力が伝わってくるものばかりでした。 

 必要な情報を集め,それに基づいて自分の考えを説得的に語る能力は,将来必ず重視されます。高校生の段階で,論文執筆に挑戦できるのは,とてもいい機会だと思いますので,ぜひ次回も懸賞論文に挑戦してみてください。

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