審査委員の講評

◆最優秀賞(1点)の講評

 四国新聞社編集局 次長兼論説副委員長 木原  光治

 “論文らしくない論文。18歳選挙権の意義を論理的に思考、それをより効果的に浸透させるため、仲間とサミットを立ち上げ、自ら実践した体験的論文だ。”

  論文らしくない論文。この作品を読んでそう評価する人がいるかもしれない。だがそれは本筋ではない。難解な言葉を労し、立派な論理を説いても、まず読んでもらえないと、いくら優秀な大先生が書いても評価はしてもらえない。この作品には読み手を引きつけるわかりやすさがある。18歳選挙権の意義を論理的に思考、それをより効果的に浸透させるため、仲間とサミットを立ち上げ、自ら実践した体験的論文だ。問題点を指摘して終わる、うわべだけの論文にはない、説得力もある。それは、留学で出合ったシティズンシップ教育で学んだ高校生らしい清新な視点が下地にあるからだろう。国政選挙であっても、半数の人たちが投票にもいかない30、40代の大人たちにもぜひ読んでもらいたい。10代の仲間たちだけでなく、選挙の棄権が当たり前のようになっているすべて世代への貴重な提言だ。ぜひ新聞にも載せてみたい。

  

◆優秀賞(3点)の講評

 香川県教育委員会 教育次長(兼)政策調整監 松原  文士

 皆さん共に独創性のある発想と主張のもと、説得力のある表現や展開で書かれており、レベルの高いものでした。

 優秀賞を受賞された3名の皆さん、おめでとうございます。まず、観音寺第一高校の松本三穂さんの「観音寺市の高潮被害に学ぶ今後の対策法」は、平成16年に観音寺市で起きた台風による高潮被害という身近な例を端緒にして、今後の震災に対する課題の考察に広げていく手法は鮮やかだと思います。テーマを的確にとらえ、震災時の行政や地域社会、個人の果たすべきことについて、具体的かつ独創性のある提言ができている点がよかったと思います。

 次に、観音寺第一高校の大山穂乃海さんの「橋を架ける」は、災害発生時において、「被災者」と災害を受けていない「非被災者」に何が起きているかを考察し、タイトルの「橋を架ける」の言葉どおり、両者の気持ちを結びつける行政の役割を説くとともに、それぞれの立場に必要な災害時教育とは何かについて論理的に述べられていると思います。また、これまであまり目を向けられなかった非被災者に対する災害時教育という視点が斬新であると感じました。

 最後に、大手前高校の眞田千明輝さんの「『家族革命、生き方革命』from香川」は、県教育長から出題したテーマの「これからの家族制度」について書かれたもので、核家族化を単に批判するのではなく、核家族というあり方を受け入れた上で、香川の少子化対策にも言及しながら、バランスの取れた柔軟な家族のあり方を提唱しています。多様化する社会を見据えた高校生らしい提言に感服します。参考文献一覧からも、しっかり調べられていることがわかる力作だと思います。

 皆さん共に独創性のある発想と主張のもと、説得力のある表現や展開で書かれており、レベルの高いものでした。忙しい学業生活の中で、与えられたテーマについてよく勉強し、自分の考えをしっかりと持って論文としてまとめ上げています。その果敢にチャレンジする勇気に心から敬意を表したいと思います。

 

◆受賞作品の総評

 香川県弁護士会 弁護士 山地淳仁

 “今回の論文のテーマ以外にも,社会的に重要なテーマはたくさんあります。懸賞論文にチャレンジした皆さんが,今後も,社会に目を向け続けてくれることを期待しております。”

 入賞された高校生の皆様,入賞おめでとうございました。私は,2年連続でこの懸賞論文の審査委員を務めたのですが,入賞した作品,入賞していない作品を問わず,全体的に,昨年よりレベルアップしており,入賞作品を選ぶのがとても難しかったです。

 18歳選挙権のテーマを選んだ多くの皆さんが,高齢化社会の中で,少数意見に留まってしまう若者が,政治的な意思表明をすることの大切さに気づき,自分の意見を表現することができていました。

 震災のテーマを選んだ皆さんは,実際に体験していない大地震をイメージし,論文を作成しなければならず,とても難しかったと思います。それにもかかわらず,過去の大地震の情報を集め,将来,被災した時,どうすれば被害を少しでも小さくできるのかを考え,論文を展開することができていたと思います。

 家族制度のテーマを選んだ皆さんは,家族の形が変遷してきた理由や価値観が多様化した現代における家族の在り方を考え,テーマに向き合うことができていたと思います。

 今回の論文のテーマ以外にも,社会的に重要なテーマはたくさんあります。懸賞論文にチャレンジした皆さんが,今後も,社会に目を向け続けてくれることを期待しております。

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