田原梨珠さん(院卒業生)、田原圭志朗 准教授らの研究が英国王立化学会Dalton Transactions誌のBack Coverに選出されました。
2026年4月14日に、英国王立化学会より刊行されたDalton Transactions誌に、田原梨珠さん(2026年3月創発科学研究科博士前期課修了)、松浦孝平さん(2026年3月先端マテリアル科学コース卒業)、田原圭志朗教員(材料物質科学コース担当 准教授)の研究論文が掲載され、同誌のBack Coverに選出されました。
- 題名:A Pd(II) catecholato complex bearing 5,5'-divinyl-2,2'-bipyridine: synthesis, characterization, and electrochemical disproportionation in solutions and electropolymerized films(5,5'-ジビニル-2,2'-ビピリジンを有するPd(II)カテコラト錯体:合成、物性評価、溶液および電解重合薄膜中での電気化学的不均化)
- 著者:R. Tahara, K. Matsuura and K. Tahara
- 雑誌名:Dalton Transactions, 2026, 55, 5485–5494.

エレクトロクロミズムとは、電位の印加により物質の酸化還元状態が変化し、それに伴って色が可逆的に変化する現象です。電子ペーパーやスマートウィンドウなどへの応用が期待されていますが、所望の物質の色を維持するには継続的な電力供給が必要になります。そのため、低消費電力でのデバイス動作を実現するため、新しい仕組みで色が変わるエレクトロクロミック材料の開発が求められています。本研究では、「自己酸化還元反応(不均化反応)」に注目しました。通常、酸化還元反応は、酸化剤と還元剤という二つの異なる物質間で進行します。一方で、自己酸化還元反応は、同一の物質間で進行し、酸化された生成物と還元された生成物が50%ずつ生成します。このような同一の条件で二種類の生成物が安定に存在できる性質(双安定性)を活かし、電気化学的な制御によって片方の生成物に偏らせることができれば、その後はマイルドな電位や電力供給なしでも所望の色を表示することができると考えました。今回、具体的なエレクトロクロミック材料には、パラジウムを金属中心、カテコールを配位子とする金属錯体を選択しました。このパラジウム錯体は、自己酸化還元反応を起こすことが報告されていましたが、本研究では電気化学的な条件でも自己酸化還元反応が進行することを確認し、塩化物イオンの添加により反応が加速することを見出しました。さらに、電解重合により電極上にパラジウム錯体の薄膜を作製し、薄膜中で自己酸化還元反応を進行させることが出来ました。パラジウム錯体の酸化還元状態の変換に伴って、錯体の色が変化し、変化後の状態をマイルドな電位で読み取ることに成功しました。
本研究は、金属錯体化学分野、電気化学分野、デバイス関連化学分野の境界領域における研究成果であり、今後、化学反応を利用した不揮発性メモリへの応用展開が期待されます。本研究は、田原梨珠さんが中心となって本学大学院創発科学研究科博士前期課程在籍時に実施されました。また、松浦孝平さんが本学創造工学部先端マテリアル科学コース在籍時に本研究に参画しました。
論文URLはこちら
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2026/dt/d5dt03022f
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2026/dt/d6dt90060g
田原研究室HPはこちら
https://sites.google.com/view/taharalabo-kagawa-ams
<2026年4月、材料>









