教育(博士前期課程)

1.概要

本研究科では、共通科⽬、専⾨科⽬、特別研究から成る教育カリキュラムを編成しています。

まず、共通科⽬として理念を体現する上での基礎となり得る科⽬群があります。共通科⽬は必修科⽬あるいは選択必修科⽬として開講し、学⽣に共通の知識、技能の基盤を形成しています。また、こうした知的基盤の上に、専⾨知識の修得に関連する専⾨科⽬を開講しています。

専⾨科⽬は、社会的重要性の⾼い専⾨的なテーマや、解決すべき課題に即して構成された専⾨科⽬群(ユニット)として、体系だった形で提供します。学⽣は1つのユニットを中⼼的に学ぶとともに、⾃⾝の関⼼や研究テーマに応じて他のユニットの専⾨科⽬を履修することで、俯瞰性を⾼めることを⽬指します。これらの履修⽅法については⽬指す学位に応じて指導教員が適切に助⾔・指導することにより体系性等を担保します。

さらに、共通科⽬、専⾨科⽬で学んだ知を組み合わせ、学⽣が個々のテーマに沿った研究を進めるための研究活動の場として特別研究Ⅰ・Ⅱを必修科⽬として開講しています。特別研究では、実践的な研究能⼒を養成するために、主指導教員の指導のもとで、研究を遂⾏する上で必要となる能⼒とその応⽤⼒、研究倫理、コミュニケーション能⼒等を⾝につけます。

カリキュラムと教育の特色

2.共通科⽬群への配当科⽬と構成

創発科学の考え⽅を理解し、共通的な知識基盤の修得とマインドセットを形成するために、すべての学位に関連して共通して修得すべき科⽬として、共通科⽬を以下の12科⽬(各科⽬1単位)から構成しています。中でも特に修得が強く推奨される重要な科⽬を厳選し、必修科⽬(全学必修を含む)として6科⽬6単位を設定しています。

さらに、修得が推奨される科⽬は、柔軟な履修選択を考慮して、選択必修科⽬として6科⽬6単位設定し、2科⽬2単位以上(共通科⽬全体として計8科⽬8単位以上)の修得を義務づけています。

全学必修(1単位修得)

研究倫理

健全な研究・調査の進展のために、研究者や調査主体の⾏動規範となる研究倫理を修得する科⽬として提供します。

研究科必修(各1単位、計5単位修得)

創発の⽅法

異なった分野の知識の利活⽤⽅法や新たな価値の創造をおこなう際に必要となる素養(マインドセットを含む)を修得する科⽬として提供します。分野を横断する学際的な学びの意義と基本的な⽅法、課題発掘のための実務者(⾃治体⾸⻑・企業経営者等)による授業、アントレプレナーシップを基本内容としています。専⾨の異なる科⽬を効果的に学ぶための⽅法を修得させるために、途中で分岐する授業形式を採⽤しています。具体的には、個々の専⾨性に応じて以下のAまたはBどちらかの内容を選択して修得していただきます。

Aコース
⽂系出⾝者のための⼯学における数学的モデルの理解

Bコース
理系出⾝者のための社会科学における理論化・概念化

このような分岐形式により専⾨性を考慮した学びを提供しています。

創発の基礎(D)(Design thinking)

デザイン思考能⼒を育成する科⽬として提供しています。学⼠課程で培った知識基盤を基に、⾃分で考え、それを表現したり、他者に共感したり、アイデアや考えを実証したりするデザイン思考能⼒を育成します。

創発の基礎(R)(Risk management)

危機管理の基礎的知識や⽅法論を取得し、⽂理双⽅からのリスクマネジメント能⼒を育成するとともに、創発との関わりについて理解するための科⽬として提供しています。

創発の基礎(I)(Informatics)

数理・情報基礎⼒を育成する科⽬として提供しています。研究に必要な情報関連分野の概念や理論を理解するために、基礎的な数理・情報に関する能⼒を育成します。

創発の発展

「創発」の基盤となる学際的な⾒⽅・思考⼒を育成する科⽬として提供しています。持続可能な社会の実現にとって重要な課題(テクノロジーの変化、⾼齢化社会の進展、⾃然災害の多発、グローバル化等)の現状・課題・未来について多様な観点から学ぶとともに、その解決策を学⽣間でのディスカッションを通じて考えることで、学際的な⾒⽅・思考⼒を育成します。

研究科選択必修(各1単位、2単位以上修得)

創発の視点

グローカルな視座を修得する科⽬として提供しています。グローカルな視座は、多⽂化共⽣、ダイバーシティ等についての理解を深めることで修得していただきます。また、多様性を尊重し、活⽤する新たな社会の在り⽅を模索・検討する授業を展開しています。

創発の思考

ロジカルシンキング、クリティカルシンキング等の思考法や他者との協働⽅法(チームビルディング、ファシリテーション)、アントレプレナーシップの素養等を修得する科⽬として提供しています。ケーススタディとワークショップでの思考実験等を通して、これらの内容を修得していただきます。

創発の実践

創発を実践する上での諸課題を理解し、アントレプレナーシップを修得する科⽬として提供しています。異なる専⾨分野の学⽣がチームとなって「実践型インターンシップ」へ参加することで、実社会の中での創発を体験し、これらを理解、修得していただきます。なお、「⾹川ビジネス&パブリックコンペ」等への参加とその振り返りを通して、実践型インターンシップへの参加に履修形態を変更することもできます。

ELSI

創発によって⽣み出された新たな技術が社会に導⼊されることによって⽣じる倫理的課題(EthicalIssue)・法的課題(Legal Issue)・社会課題(Social Issue)に的確に対応するための素養や、課題解決に資する知識を修得する科⽬として提供しています。

SDGs

SDGs(持続可能な開発⽬標)について理解を深める科⽬として提供しています。SDGsに関する具体的な活動事例を通して、学⼠課程で培った専⾨性に加えて実践的かつ科学的な知⾒に基づいて理解を深めるとともに、それらを⾃分⾃⾝がどのような形で応⽤して課題解決に貢献できるのかについて検討する授業を展開しています。

フィールドスタディ

問題解決の現場において創発の過程やマインドセットを実感・体得する科⽬として提供しています。特に、主ユニットで対象となる課題を意識しながら、創発すべき課題が集中する沿岸域を含む2〜3つの地域を対象に、調査研究と地域デザイン活動を共同実践することにより、持続可能な社会の実現の課題の具体例としての地域課題を対象に授業を展開しています。

共通科目について

全学必修

修了要件 8単位(開設科目数 12科目)  (各1単位)
研究倫理

健全な研究・調査の進展のために,研究者や調査主体の行動規範となる研究倫理を身に付けることを目的とする。

研究科必修

修了要件 8単位(開設科目数 12科目)  (各1単位)
創発の基礎 (D)

Design thinking:イノベーションを創出する「デザイン思考」

デザイン思考能力を育成する科目。学生が自分で考えそれを表現したり、他者に共感したり、アイデアや考えを実証したりする能力を育成する。

創発の基礎(R)

Risk management:レジリエンスやセキュリティ等に資する「リスクマネジメント」

リスクマネジメント能力を育成する科目。リスクとそれに対するマネジメント等の能力を育成する。

創発の基礎(I)

Informatics:専門分野を超えた「インフォマティクス」

数理分析・情報基礎力を育成する科目。基礎的な数理分析・情報に関する能力を育成する。

創発の方法

学際的な分野横断の方法論

課題発掘のための実務者(自治体首長・企業経営者等)による授業


アントレープレナーシップ

<出身学部によりいずれかを選択>
A:文系のための自然科学・工学における数学的モデルの理解
B:理系のための人文社会科学における理論化・概念化

創発の発展

持続可能な地方分散型社会

持続可能な地域分散社会の実現にとって重要な課題(テクノロジーの変化、高齢化社会の進展、自然災害の多発、グローバル化など)の現状・課題・未来について多様な観点から学ぶとともに、その解決策を学生間でのディスカッションを通じて考えることで、「創発」の基盤となる学際的な見方・思考力を育成する。 

研究科選択必修

6科目のうち2科目以上履修
創発の視点

多文化共生、ダイバーシティなどについての理解を深めることでグローバルな視座を身に着けるとともに、多様性を尊重し、活用する新たな社会の在り方を模索する。

オムニバスを含める講義

創発の思考

ロジカルシンキング、クリティカルシンキングなどの思考法や他者との協働方法(チームビルディング、ファシリテーション)などの素養を身に着ける。

オムニバスを含める講義

創発の実践

異分野の学生がチームとなって「実践型インターンシップ」へ参加することで、実社会の中での創発を体験し、創発を実践する上での諸課題やアントレプレナーシップを身に着ける。

グループワークとフィールドワークを中心

SDGs

SDGsについて具体的な活動事例を通して理解を深めるとともに、授業を通して、自らはどのような形で課題解決に貢献することが出来るのかについて検討する。

オムニバスを含める講義

ELSI

創発がもたらす新たな産業創造や生活様式の変容に伴い発生する倫理的課題(Ethical Issue)・法的課題(Legal Issue)・社会的課題(Social Issue)に対するガイドラインや諸問題に対する研究内容について学び、的確に対応するための素養、課題解決に資する知識や技術の創出を身に着ける。

オムニバス講義

フィールド
スタディ

それぞれのバックグラウンドとしてのユニットの課題を意識しながら、2~3つ の地域を対象に、調査研究とデザインを実践する。豊島直島のペアを考える研究実践、香川側の里海と岡山側の里海での研究実践等を通して瀬戸内圏における課題の発見とその解決に資する知識や技術を身に着ける。

オムニバス講義(フィールドワーク含む)

全学・研究科必修科⽬は、第1、第2クォーターを中⼼に、選択必修科⽬は第2、第3クォーター(集中講義を含む)を中⼼に配置し、学⽣が⼊学以降の早い段階で、これらの科⽬を履修することにより、本研究科の共通的な知識基盤と創発のマインドを形成できるようにしています。

また、これらの科⽬を通して修得される知識、技能、マインドセットは、学⽣を在学中に創発科学へと誘うだけではなく、本研究科修了後に地域社会や企業・⾃治体・NPO等のさまざまなフィールドにおいて、知を結合・深化させ、他者と協働しながら未来のあるべき社会を構想し、課題解決をはかるための創発的な活動をする上での基本的な素養となります。

3.専⾨科⽬とユニット制

1研究科1専攻として教育活動にあたる本研究科では、ユニット制を採⽤しています。本研究科におけるユニットとは社会的重要性の⾼い専⾨的なテーマや解決すべき課題に即して設定した専⾨科⽬群を表し、多彩な専⾨科⽬を複数のユニットとして整理した上で、体系だった形で学⽣に提供しています。

ユニットは、専⾨テーマの深化や分野横断かつ複合的である多種多様な社会課題の解決(課題の中には、SDGs(持続可能な開発⽬標)として定められている⽬標も含まれる)に貢献するべく、これまで教育学研究科、法学研究科、経済学研究科、⼯学研究科等が保有してきた教育・研究資源を効果的に組み合わせてデザインされた科⽬群となっています。

本研究科が設ける22のユニットの概要と開講される専⾨科⽬については、以下のとおりです。⼀部科⽬は複数のユニットにおいて開講されています。

学⽣は22のユニットの中から1つのユニットを選択し、当該ユニットの提供する専⾨科⽬を履修することでユニットがテーマとする専⾨内容や課題についての学びを深めています。これに加え、学⽣は、⾃⾝の関⼼や研究テーマに関係のある他のユニットの科⽬を「関連科⽬」として履修し、俯瞰⼒を⾼めます。関連科⽬の幅広さと組み合わせの多様さは、専⾨分野の異なる多数の教員が参加する本研究科ならではの強みです。本研究科が提供する分野の壁を越えた複合的な学びは、専⾨性を補完したり、新たな視点や気づきを与えたりすることで、学⽣が創発科学の意図する新たな知の結合や知の組み替えを⾏う素地となります。なお、これら科⽬の履修⽅法については、⽬指す学位に応じて指導教員が適切に助⾔・指導することにより体系性等を担保しています。

ユニット制を採⽤した背景として、今⽇の社会が抱える課題は、テクノロジーの急速かつ継続的な変化、少⼦⾼齢化・⼈⼝減少の進⾏、社会の多様化・分極化、各種災害の多発といった⾃然環境の変化への対応、地域循環共⽣圏の創造、グローバル化が進んだ社会への対応等、分野横断かつ複合的であり、課題を明確に捉えることが難しく、その課題も短い時間で変容してしまうことが挙げられます。

既存の研究科におけるカリキュラムは、ディシプリンを基本として既知の社会課題を解決することを⽬的に設計されており、専⾨性の深化には強みを有していました。しかし、専⾨に閉じたカリキュラム体系であるがゆえに、選択可能な科⽬の幅が制限され、これまで述べたような複合的な社会課題に⼗分に対応しきれないという弱点を持っていました。

これに対して、研究科の再編により幅広い専⾨科⽬の開講が可能となった本研究科においては、ユニット制という新しい仕組みをとることで、専⾨科⽬を柔軟に組み合わせることで、分野複合型のカリキュラム編成を⾏い、変わりゆく社会課題に対応したより適切な学びのパッケージとして提供することが可能となります。また、関連科⽬の組み合わせ⽅は多彩なものとなります。

本研究科では、ユニット制を時代の変化に適応して、ユニットの改廃を含め、構成科⽬の組み換えをはかっていくことが出来る柔軟な仕組みとして捉えています。このような仕組みは、「創発科学」のもとに、専⾨分野の垣根を越えて知を結合するとともに、専⾨的なテーマや解決すべき課題の探究と深化をはかりながら前例にとらわれない新たな解決策を導こうとする本研究科の構想に合致しています。

本研究科では、中⼼となる学問分野となる教育学、法学、経済学、⼯学などの専⾨分野を基盤とする延べ250科⽬以上(各2単位、1・2年次配当)の科⽬を専⾨科⽬として開設しています。学⽣は、選択したユニットの専⾨科⽬を6科⽬12単位以上、他のユニットの専⾨科⽬を関連科⽬として2科⽬4単位以上、計8科⽬16単位以上を履修します。また、学位の授与に必要となる専⾨性を担保するため、修了要件とは別に、科⽬ナンバリングコードを⽤いて学位取得のための専⾨科⽬の単位修得要件を定めています。

近接領域の関係図

養成する人材の具体例

出身学部:教育学部
主ユニット:人文的実践知ユニット
関連科目でデータの数理分析手法を学び、教育の視点を含む人文知と数理データ解析力を駆使して地域社会の持続に貢献する人材養成のあり方を提案
就職先:民間企業、公務員、NGO/NPOなど

出身学部:法学部
主ユニット:政策法務ユニット
関連科目で環境学やリスクマネジメントについて学び、住民のニーズを反映するだけでなく、地域に調和し、防災技術にも裏打ちされた災害に強いまちづくりを提案
就職先:公務員、NPO職員など

出身学部:経済学部
主ユニット:観光地域戦略ユニット
関連科目で建築学と都市計画について学び、古い町並みを新たな観光資源として再生させる地域資源を効果的に活用するプランを提案
就職先:公務員、不動産関連企業、コンサルタントなど

出身学部:創造工学部
主ユニット:人工知能・通信ネットワーク
関連科目で政策法務を学び、AI技術の法的リスクを洞察しながら有効活用
就職先:IT企業、ロボティクス産業、公務員など

地域の諸課題を多様な切り口の融合により解決する上では、アンカーとなる専門の軸を持ったうえで、「こうではないか、これと組み合わせたら解決できるのではないか」と考え抜き、前例のない課題解決を創発する人材が不可欠です。

地域をモチーフとしてこうした人材が育成できれば、当該地域にとどまらず、他の地域・都市部やグローバルにも活躍の場は広がっていくものと考えています。

4.各ユニットの紹介

各ユニットの紹介 をご覧ください。

5.学⽣に対する履修・研究指導について

学⽣に対する指導は、履修指導と研究指導から成ります。本研究科では、学⽣の研究指導(学位論⽂の作成等に関する指導)や授業科⽬の履修等の指導を⾏うため「主指導教員」を置きます。また、副指導教員(2名以上)が研究指導に参加し、専⾨分野の異なる副指導教員を含む複数指導体制を実現することで学修・研究上の⽀援を⾏います。

研究指導は、主指導教員が定めた時間に研究内容、経過等に関する学⽣との個別指導により⾏われます。また、研究の進捗状況等は、2年次の修⼠論⽂中間報告会及び修⼠論⽂発表会において報告していただきます。

6.教員⼀⾔

⾼⽊ 由美⼦YUMIKO TAKAGI

近年は、新規磁性イオン液体に関する研究やイオン液体の合成とその溶解特性に関する研究など、イオン液体に関する研究を続けてきました。イオン液体は、ユニークな溶解性を持つ液体であるのみならず、揮発しない、燃えない溶媒で、グリーンケミストリーのコンセプトに合う物質であり、機能を持った新しい液体として、ますます注⽬を浴びています。

また、物質の不思議と、環境に優しいマイクロスケール化を進めた教材化を⾏なっています。

マイクロスケールケミストリーは、実験室でなくても実施することができ、3密を回避することができるなど、その有⽤性が⾼まっています。 新型コロナウイルス感染症が蔓延し、ワクチンや特効薬を先が渇望する中、幅広く、すべての⼈々に⼗分な薬を届けるためには、化学の底⼒が⽋かせません。 何かを成し遂げるために真摯に努⼒する経験を積み、多様な問題やこれからの社会に対して適応する⼒を培い、⾃然科学の⾯⽩さを⼀緒に体験してみましょう。

寺尾 徹TORU TERAO

モンスーンアジアの⽔⽂気候条件の変動に関する研究をしています。地球温暖化は、⽔⽂気候条件の変動を通じてどのように⽇本やアジアに住む⼈々に影響を及ぼすのでしょうか?

瀬⼾内地⽅に住む私たちも、地球温暖化に対する可能な緩和適応策をデザインし、展開していく必要があります。気候変動は災害の深刻の度を加えており、防災科学や⼼理学等の研究者との協働が必要でしょう。持続可能な循環型社会を創造するためには、環境経済学や政策科学等を通じて実現可能な社会のビジョンを確⽴する必要がある⼀⽅、ジオパーク運動など環境と親しむ⼈⽂社会科学的な観点や学校現場の協⼒も重要です。循環型環境デザインユニットを軸に、アジアモンスーンの気候変動メカニズムに関するビッグデータも⽤いた研究と創発科学研究科の先⽣⽅の多様な研究との創発のなかで、多くの意欲的な⼤学院⽣との研究活動ができることを楽しみにしています。

堤 英敬HIDENORI TSUTSUMI

私は、有権者は何を基準に投票しているのか、政党や候補者は選挙でどのように有権者から⽀持を得ようとしているのかを、選挙結果や世論調査などのデータの分析を通じて明らかにする研究を⾏っています。

近年、⽇本の国政選挙では、およそ半数の有権者しか投票していないのが実態です。こうした状況を改善するための⼀つの⽅法として、情報通信技術(ICT)の活⽤が考えられます。SNSなどを通じて選挙に関する様々な情報が効果的に提供されるようになれば、あるいは、インターネットを通じてどこからでも投票できる仕組みがあれば、より投票しやすくなることが期待できます。他⽅で、選挙でICTを活⽤する上では、セキュリティや情報の正確さの問題などに⼗分な注意を払わなくてはなりません。いずれにしても、情報科学と政治学の知⾒を組み合わせることで、すなわち「創発」のアプローチをとることで、選挙という場⾯においても、課題解決のヒントが⾒えてきます。

岡⽥ 徹太郎TETSUTARO OKADA

「経済政策デザイン」を担当する岡⽥徹太郎です。

何となくうまく回っていない⽇本の経済政策。まず、種々の課題を科学的視点によって的確に⾒つけ出し、さらに次の段階として、課題解決としての新しい政策を考え出します。 知恵を出し合い、そのアイディアを吸収する。出すにも吸収するにも「共感」が出発点になります。そして、問題を解くとき、その鍵を、経済学のなかだけでなく、⼯学や歴史学や物理学や社会学など、⽂理を問わず、分野横断的・学際的(interdisciplinary)な視点から、創発の起点を⾒つけ出していきます。

例えば、少⼦⾼齢化の進展は、私たちにとって、真剣に取り組まなければならない課題の⼀つです。⼈⼝法則が深く関わってきますが、⾃然科学的な⼈⼝法則と経済学的⼈⼝法則のアプローチは異なります。それらを融合させて解決策を考えていく必要があります。それが、課題解決の創発(emergence)や新機軸(innovation)による経済政策のデザインとなっていきます。そんな研究を私たちとともに実践してみませんか。

髙橋 悟SATORU TAKAHASHI

⼯学系の知能ロボティクス、⽂理融合型の数理データサイエンスの各ユニットで「マシンビジョン」、「データ解析基礎数学」を担当します。 学⽣時代、純粋数学である代数学の環上の課題から応⽤数学の制御理論を⽤いた実世界のモデル化を勉強しました。また、企業では実践的な制御⼯学を深め、モデル化した世界と実応⽤の世界を結び付け、半導体を製造する露光装置の研究開発に挑んできました。このように、私⾃⾝、⽂理融合や分野の垣根を越えた「創発」の必要性を体感しています。 現在、SDGsの医療・海洋環境への貢献に向け、「創発科学の思考」から新たなロボット開発の世界へ⾶び込み、ロボットの⽬となる視覚センサー情報を応⽤し、例えば医療装置の内視鏡データや海中ロボットの海底データから⾃律的に装置やロボットが位置する環境の計測・観測を⾏い、⼈の⽀援を担うロボットシステムの構築を⽬指しています。 科学技術の進歩は著しいですが、まだまだ安全・安⼼・幸福が満たされた社会ではありません。様々な環境で⼈を⽀援・補助するロボットが求められています。「創発科学」の能⼒を養い、社会貢献となるロボットの研究開発を⼀緒に始めませんか︖

松下 春奈HARUNA MATSUSHITA

⼯学系のユニット「⼈⼯知能・通信ネットワーク」を担当いたします。私はこれまで、計算知能技術の⾮線形⼯学への応⽤に関する研究に取り組んできました。

計算知能とは、⼈⼯知能(AI)研究の⼀分野であり、脳や遺伝⼦、⽣物の集団⾏動など、⾃然界の現象を取り⼊れたアルゴリズムを指します。この計算知能技術を最適化問題や⼒学系解析へ応⽤することで、脳、経済、気象現象に代表される我々の社会における諸問題の解決や最適化、制御、予測に繋げることができるのです。

近年の⼈⼯知能技術の応⽤先は、⼯学だけでなく、経済学、⼈類学、社会学まで様々な分野に広がっています。既存の分野にとらわれない視点、つまり「創発科学」の考え⽅が今まさに必要とされています。⼯学を軸に創発の考え⽅を養い、今まで解明できなかった実社会で起きている様々な謎を解き明かしましょう。

梶⾕ 義雄YOSHIO KAJITANI

これまでの研究では、⾃然災害を対象にリスクマネジメントの視点から社会基盤の整備や地域計画の問題を取り扱ってきました。まずリスクを評価し、対策の効果を計測しながら効率性だけではなく衡平性も考えて対策を。。。と理想論はありますが、基本的にチャレンジングな問題です。私の研究では過去の災害を観察しながら、被災後の⾏動(救助、避難、節電等)、社会基盤の復旧(道路、電⼒等)、経済への影響(企業、物流、サプライチェーン⼨断等)に関する評価モデルを構築してきました。⼀つ⼀つ丁寧に、繋ぎ合わせてさらなる発展を、と思いますが、まだまだ道半ば、課題がたくさんあります。災害は⾃然現象と社会現象の相互作⽤であり、異なる専⾨分野の融合が不可⽋です。各分野の良さを知り、溶け込ませることが創発につながるでしょう。なぜ⽇本の災害対策は進まないのか、得意分野を軸にして何か貢献できないか、と思った⽅は是⾮いらしてください。

7.教務情報

時間割・学⽣便覧・様式・規定等

学生生活 をご覧ください。

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