研究科案内

研究科長挨拶

香川大学では、令和4年4月に従来の専門分野を軸とし、前例にとらわれず文理を複合した新大学院「創発科学研究科」を開設しました。21世紀は不確実で、複雑かつ曖昧な時代と言われます。地方は大都市と比べ複雑な課題が多いですが、その反面、創発的な思考を生かすチャンスの場になります。ご存知のように香川県は全国で面積最小ですが、多くの島々や複雑な海岸線を有し、面積あたりの海岸線の長さでは全国3位です。つまり、陸と海の際、沿岸空間には様々な経済活動が集中する場であり、同時に実践型研究の場として最適地となります。このような場の課題解決に向け、「事前の対応策」をプランニングかつデザインすることが創発思考を持つ新たな大学の役割、在り方ではないかと考えます。新大学院で掲げる「創発科学」について、本学では、既存の学問分野に閉じることなく、それらの組み合わせや異分野との相互作用によって画期的な知や新たな解決策が生み出される過程、あるいはそのような課題解決の志向性を指して創発科学を定義しています。このような学びや探究の規範としての創発科学は、教育学・保育学、法学、経済学、工学などの学問分野を基盤として展開されます。さらに、地域マネジメント研究科との連携による実践知のビジネスマインドの涵養やリカレント教育も推進します。

香川大学は新研究科を通じて、多様な切り口から現場の課題に至近距離からコミットし、学生一人一人に創発的な融合を促す、先駆的な学びの場を提供します。香川大学大学院創発科学研究科で、皆さんと共に!

創発科学研究科長 末永 慶寛

理念・目的

理念

本研究科では、社会構造が急激に変化する中、複合的で複雑な、また予見不能な変化にも柔軟に対応しながら、新たな社会課題を発見し、解決に向けて取り組むことで、持続可能な社会の実現に貢献することを理念としています。

目的

本研究科は、専門分野での具体的な課題解決方法を綿密にデザインでき、かつ複数の学問分野から得られた多様な知識や技術を協調的に組み合わすことのできる能力を有し、未来における新産業の創造や地域が直面する新課題の解決に貢献できる人材を輩出することを目的としています。

また、創発科学の視点に立って、大学を核とした地域において、さまざまな主体(住民、企業、官公庁、NPO/NGO等)との柔軟なネットワークを構築し、地域社会の望ましい産業や新たな地域社会の姿を築くことを目的としています。

創発科学

既存の学問分野を軸に、各分野の知見を組み合わせながら効果的に相互作用させることによって、各分野の総和にとどまらない画期的な知や解決策を導出することを目指す学習や研究活動の規範

こんな人におすすめ

専門分野(教育学・法学・経済学・工学)を深く掘り下げたい人

本学がこれまでの教育・研究活動において蓄積してきた専門性(教育学・法学・経済学・工学)を核とするユニットを複数設けています。ただし、いずれの専門領域においてもその専門性は確保しつつ複数の異なる分野にも精通することを目指します。

学際的な学びをしたい人

それぞれの研究分野だけでは解決が難しい課題や研究領域を超えた対象をテーマとした複数のユニットを設けています。持続共生社会をテーマにしたユニットや音楽を含むデザイン&アートを対象とするユニット、データサイエンスを対象とするユニットなど皆様の好奇心に沿ったユニットが複数存在しています。

修士(危機管理学)や災害・危機対応マネージャーの資格を取得したい人

本研究科では、修士(危機管理学)の学位を取得できる他、徳島大学と共同で実施する「四国防災・危機管理プログラム」において修了に必要な単位を修得した場合、民間資格である「災害・危機対応マネージャー」を取得することができます。

3つのポリシー

創発科学研究科の教育理念

本研究科における「創発科学」とは、特定の学問分野を示すのではなく、各分野の能力を組み合わせ、異分野と効果的に相互作用させることにより分野の総和にとどまらない画期的な知や解決策を導出することを目指す学習や研究活動の規範を意味しています。

本研究科では、このような「創発科学」の素養を持ち、豊かな人間性と高い倫理性の上に、幅広い基礎力と高度な専門知識に支えられた研究能力・応用力を備え、国際的な視野で地域社会においてリーダーシップを発揮できる人材の育成を行うことを教育理念としています。

創発科学研究科の3つのポリシー

ディプロマ・ポリシー(修了の認定に関する方針)

本学大学院創発科学研究科(修士課程)では、その教育理念に基づき、以下に示す専門的な能力・態度を身につけた者に修士の学位を授与します。

①専門知識・理解
  • 主とする専門領域の高度な専門知識を修得するとともに異なる分野の知識と効果的に組み合わせる結合力を修得している。
  • 自らが用いた科学間、異分野間のコミュニケーションについてその限界や課題を説明できる。
②研究能力・応用力
  • 分野を横断して複合的、複雑、予見不能な社会課題に対する解決策を考え抜く思考力・研究を遂行する能力を修得している。
③倫理観・社会的責任
  • 新しい社会構造の変化(Society5.0、データ駆動型社会等)に柔軟に対応し、AI、IoT、オープンデータ等を活用しながら、高い倫理観を持って未来のあるべき社会を構想できる力を有している。また、それらを他者に対して説明することができる。
  • 自らが取組む課題を社会・制度といった多様な観点・文脈から捉えなおし、その意義や限界を説明できる。
④グローバルマインド
  • 異文化理解の重要性を認識し、地域から地球規模に及ぶ多文化共生の諸課題に対応可能な能力を有している。
  • 自らの研究テーマを、グローカルなスケールに位置づけ、文化・社会といった観点・文脈で捉えなおすことができる。

カリキュラム・ポリシー(教育課程の編成及び実施に関する方針)

創発科学研究科は、本研究科の学生としてふさわしい専門的な能力・態度や創発科学の素養を身につけた人材を養成するために、ディプロマ・ポリシー(DP)に示した4つの構成要素(①専門知識・理解、②研究能力・応用力、③倫理観・社会的責任、④グローバルマインド)で示した項目は、以下のような教育課程を編成し達成します。
創発科学研究科の教育課程は、すべての学生に本研究科の教育理念にある創発科学の考え方や素養を養うための共通科目を主に1年次で履修する授業科目として配置します。併行して、教育・人文、法学、経済学、工学の各専門分野の研究に必要な高度な専門知識や技能等を養う専門科目(基幹科目と応用展開科目)を授業科目として配置します。さらに、研究能力の養成のために、特別研究を授業科目として配置します。

①特定のテーマで紐づいた専門科目群をユニットとして多数用意することで、学生が希望する分野の履修や研究に必要な知識を学びやすい環境を提供します。主ユニットに配置した専門科目(基幹科目と応用展開科目)による専門知識の深化と関連科目の履修により、学びの幅を担保します。これにより、専門分野を体系的に学ぶことで専門能力を養うと共に、各自の探求するテーマに応じた関連科目を効果的に組み合わせて学ぶことで俯瞰力を養います。

②分野を横断して、異なる分野の知を学び結合をはかる学際的思考力を養成するために、研究科共通科目「創発の方法」等を配置します。これにより、創発科学を志向した学びと研究のための方法論を学び、分野を横断して知の結合をはかる上での基本的な能力や態度を養います。

③研究能力・応用力を養うために「特別研究Ⅰ・Ⅱ」を配置します。実践的な研究能力を養成するために、主指導教員の指導のもとで、研究を遂行する上で必要となる能力とその応用力、研究倫理、コミュニケーション能力等を身につけます。
特別研究では、研究倫理、アカデミック・ライティング、研究計画の作成手順や研究方法、国内外の文献(先行研究)の収集・整理の方法、データの収集・分析方法や分析結果の整理と考察、研究成果の取りまとめ方、学会報告・学会誌等への投稿等の方法などについての指導を受けます。専門分野によっては、これらに加えて、フィールドワークや各種調査、モデルの構築、プロトタイプの作成、実験、実習、作品の制作・発表等を行います。

④思考力を養成する基礎として、研究科共通科目に「創発の基礎(D)」、「創発の基礎(R)」、「創発の発展」、「創発の思考」、「創発の実践」を配置します。これにより、複合的、複雑な社会課題に対しても分野を横断しながら前例にとらわれることなく解決策を考え抜くことの必要性を学び、創発科学を志向する上での思考力や探求心を養います。また、研究に必要な情報関連分野の概念や理論を理解するために、「創発の基礎(I)」を配置します。

⑤社会構造の変化の理解と高い倫理観の形成をはかるため、研究科共通科目「研究倫理」、「創発の基礎(R)」、「創発の基礎(I)」、「創発の発展」、「ELSI」を配置します。これにより、社会構造の変化に柔軟に対応しながら、高い倫理観を持って課題解決のための諸活動に携われるような能力や態度を養います。

⑥地域マネジメント研究科(ビジネススクール)と連携した「創発の方法」、「創発の実践」を配置し、アントレプレナーの素養と地域課題発掘と実践知の学びの機会を確保ます。これにより、社会・地域課題の把握や研究成果の社会での展開の仕方(社会の中での実装)にかかわる能力や態度を養います。

⑦多文化を理解し、地域からグローバルに及ぶ多文化共生の課題を学ぶ「創発の発展」、「創発の視点」、「SDGs」、「ELSI」、「フィールドスタディ」を配置します。これにより、地域から地球規模に及ぶ範囲で発生している諸課題を理解し、自らの研究テーマと関連づけてそれらに対処する上での基本的な能力や態度を養います。

以上の学習成果の評価は、シラバスに記載している方法によって、各授業科目の到達目標の達成度で評価します。

研究計画の遂行に対する指導及び学位論文の評価

研究指導は、本研究科が作成する「研究指導計画」に基づいて実施します。「研究指導計画」は学位取得までの流れを定めています。また、分野の特性に配慮し、系領域ごとに定めています。
本研究科の研究指導は、学生の専攻分野の研究を指導するため、学生ごとに指導教員を置き、学生は、1名の主指導教員と2名以上の副指導教員による複数の教員による研究指導の下で修士論文を作成します。
修士論文の研究指導には、指導教員及び副指導教員はもとより、研究科として実施する「中間報告会」、「修士論文発表会」などを通じて、研究科の複数の教員が関与していきます。

修士論文では、本研究科の教授会で選出された主指導教員を含む3名以上の審査委員(本研究科の教授会が必要と認める場合は、他の大学院又は研究所等の教員等)による当該論文についての審査を行います。また、研究成果の内容や当該研究分野に関する高度な専門知識、関連する研究分野に関する知識等を問う最終試験を行います。審査にあたっては、本研究科が定める学位論文審査基準に基づき審査を行います。最終試験は、筆答又は口答で行われます。審査及び最終試験が修士論文発表会を兼ねる場合もあります。

アドミッション・ポリシー(入学者の受入れに関する方針)

入学者に求める学力・能力・資質等

大学院入学までに以下のような学力・能力・資質等を備えている学生を求めています。

①知識・技能・理解力
異なる分野の知識を組み合わせて行う研究の基盤である専門分野に関する大学卒業程度の基礎的知識・技能・理解力

②思考力・判断力・表現力
社会構造の変化などによって引き起こされる複雑で複合的な課題の探究やその解決方法について、多角的な観点から論理的に思考・判断できる力、また、それらを説明できる表現力

③研究能力・応用力
異なる分野の知識を組み合わせた専門的な研究を深化させるための研究能力・応用力

④探求心・意欲・態度
関連する諸分野や異分野の知識を専門分野の知識に組み合わせながら相互作用させるための方法について学び、専門的かつ多角的な研究を志向する意欲・態度と創造的な探求心

⑤倫理観・社会的責任
社会構造の変化などによって引き起こされる複雑で複合的な課題を見出し、それらの解決を志向する責任感、人間尊重の態度と他者と共感できるコミュニケーション力、他の分野との協働を志向する姿勢及び倫理的態度

⑥グローバルマインド
主とする専門分野に加え、関連する諸分野に関する国内外の情報を理解する基本的言語能力と、国際的な視野・多文化理解の視点から、地域や社会における諸課題の発見と解決方法を考えることができる発想力

選抜方法の趣旨

創発科学研究科では、3つの試験方法、受験対象者の組合せにより4つの選抜方法を採用します。

【試験方法】

①総合試験

多角的な観点から論理的に思考・判断できる力や、それらを説明できる表現力を論述形式の小論文(事前課題)で問います。

②専門分野別試験

  • 筆記試験
    系領域(*)ごとに、各専門分野に関する基礎的知識・技能・理解力を評価します。なお、系領域によっては筆記試験を課さない場合があります。

  • 口述・面接試験
    提出書類(志望理由書、研究計画書等)を参考にしながら、各専門分野に関する基礎的知識・技能・理解力、研究に対する意欲・態度・探求心、研究を遂行するために必要な能力、自分の考えを論理的に構築し伝達する思考力・判断力・表現力、社会的責任を理解できる能力や国際的な視野、多文化理解を評価します。
    (*)受験する系領域については、末尾の「系領域について」を参照してください。

③外国語能力評価

提出された語学能力テストのスコア等により、基本的言語能力について評価します。

【選抜方法】

  • 推薦選抜
    受験対象者は、主として、本学学部学生、他大学学部学生です。入学者の選抜は、総合試験、専門分野別試験、外国語能力評価を総合して行います。ただし、専門分野別試験では、口述・面接試験のみを課します。

  • 一般選抜
    受験対象者は、主として、本学学部学生、他大学学部学生です。入学者の選抜は、総合試験、専門分野別試験、外国語能力評価を総合して行います。ただし、専門分野分野別試験では、筆記試験及び口述・面接試験を課します。
    なお、系領域によっては筆記試験を課さない場合があります。

  • 社会人特別選抜
    受験対象者は、主として、大学を卒業し、社会的経験を積んだ人や現に就業している人です。入学者の選抜は、総合試験、専門分野別試験を総合して行います。ただし、専門分野分野別試験では、筆記試験及び口述・面接試験を課します。
    なお、系領域によっては筆記試験を課さない場合があります。

  • 外国人留学生特別選抜
    受験対象者は、外国の大学を卒業した外国籍の人です。入学者の選抜は、総合試験、専門分野別試験を総合して行います。ただし、専門分野分野別試験では、筆記試験及び口述・面接試験を課します。
    なお、系領域によっては筆記試験を課さない場合があります。

系領域について

本研究科では、教員組織かつ学生組織として以下の4つの系領域を置いています。

  • 教育・人文系領域
  • 法学系領域
  • 経済学系領域
  • 工学系領域

本研究科の入学者選抜では、系領域ごとに入学者選抜を実施します。出願者は、志望する指導教員の所属する系領域が実施する試験を受験します。そのため、出願に先立って志望する指導教員と連絡をとり、研究分野や研究内容の確認を行ってください。

※ 希望する指導教員の選択や連絡にあたって相談・助言等が必要な場合は、大学院教学センターまでご相談ください。

学生組織・教員組織の編成の考え方及び特色

I.学生組織

本研究科の学生は、教員組織に基づき、以下の4つのグループに分けられます。
各学生組織は、研究科全体または学生組織ごとに定めるルールに基づいた履修・研究活動を行います。また、研究科全体または学生組織ごとにガイダンス等の研究科行事を行います。

  • 教育・人文系領域
  • 法学系領域
  • 経済学系領域
  • 工学系領域

II.教員組織

(1) 教員構成

本研究科は様々な分野を専門とする教員によって構成されています。具体的には、これまで研究科(教育学、法学、経済学、工学)を担当してきた教員や大学教育基盤センター等の学内組織から、本研究科を担当する専任教員を再配置しています。

また、基本的に、本研究科で開講するすべての科目は専任教員が担当し、研究科における教育の質を確保しています。本研究科は1研究科1専攻の体制とし、教育、研究における教員間の分野横断的(教育学、法学、経済学、工学)な連携を促進します。

(2) 組織編制

「創発科学」と「専門性」の双方を同時に担保する教員組織は、多重な構成をもって編成する必要があります。そこで、「創発科学」、「専門性」の涵養を実践する上で必要な教員構成を図るため、これまでの本学の実績、諸制度を活用しました。

まず、共通科目の「創発の基礎(D)」、「創発の基礎(R)」、「創発の基礎(I)」の展開においては、これまでの学部における DRI 教育や危機管理教育の実績や検討組織を活用しています。本学は、2018 年度の学部再編にあたり、デザイン思考を専門とする教員を採用し、教育効果を全学へ波及させました。また、全学組織に検討部会を設けています。危機管理教育は、全学組織を立ち上げ、分野間連携を推進しています。創発科学研究科においては、これらの全学組織を活用します。

次に、実践性の高い科目については、地域マネジメント研究科とも連携し、ゲストスピーカーとして、地方自治体の首長や機関・団体の経営・管理責任者等を招へいしています。

本研究科の組織としては、教育学研究科、法学研究科、経済学研究科、工学研究科や学内のセンター組織から新研究科に参画する教員を、創発科学研究科を通じて一組織(教授会)として編成し、下位組織として以下の4つの系領域(教員組織の単位)を設けています。

    
組織単位教育研究分野
教育・人文系領域 哲学・倫理学・芸術・心理学・社会学・教育学・保育学・歴史学・数学・地球科学・物理学・化学・生物学・地理学など
法学系領域 法学・政治学など
経済学系領域 経済学・経営学・地域研究など
工学系領域 総合工学・情報科学・機械工学・電気電子工学・材料工学・土木工学・建築学・危機管理学など

他方、専門分野間の連携推進の方策としては、異なる分野の教員を1名以上含む主・副指導教員制と専門テーマや解決すべき課題に応じて専門科目を科目群として構成するユニット制を用いることで、組織体制に縛られない柔軟な研究指導やカリキュラムの編成を可能とし、柔軟な教員のネットワークを構築します。

(3) 校地の往来について

本学は、幸町キャンパス(主に人文・社会科学系の教員の本務地)と林町キャンパス(主に自然生命科学系(工学分野)の教員の本務地)を有しており、キャンパス間の往来が必要になります。

両キャンパス間の移動には、公共交通機関(徒歩移動を含む)を利用する場合、約1時間程度を要します。授業や会議のための移動が必要となる場合には、教員に過度な負担が生じないよう会議時間帯や時間割の編成に十分な配慮を行うと共に、2キャンパス間の物理的距離の影響を低減するために ICT を利活用した遠隔通信システム等を利用した教育研究を実施しています。また、時間割に配置しないオンデマンド型 e-Learning を活用して、キャンパス間移動による時間割の制約をできる限り減らしています。

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