極微量潤滑による環境に優しい切削加工(若林 利明)

極微量潤滑による環境に優しい切削加工

材料創造工学科 若林 利明

環境問題への関心が高まる中、ものつくりの現場においても環境負荷の低減が急務となっています。
切削加工はものつくりを担う中核技術のひとつであり、従来から、高品質の製品を効率よく作りだすため、切削油と呼ばれる高性能の潤滑油が大量に使われてきました。一方で最近、極微量潤滑(Minimal Quantity Lubrication)によるMQL加工と呼ばれる切削法が注目を集めています。これは切削油をミクロンサイズに微粒子化し、圧縮空気で加工部に供給する方法で、油剤使用量を従来の数千から数万分の1にまで削減でき、大幅な省資源、省エネルギーを実現する画期的な技術です。

極微量潤滑・MQL加工
▲環境に優しいMQL加工と従来給油の湿式加工

 

このMQL加工に用いる切削油は、極微量でも高い切削性能をもつことはもちろん、環境や健康面に配慮し、生分解性、酸化安定性、安全性にも優れる必要があり、これに応えて、すべての要求性能を満足する「MQL加工油剤」を開発しました。この開発は、合成エステルをベースにした、通常の切削油とは異なる着想のものであり、MQL加工法の実用化に大きく貢献しています。その結果、たとえば自動車製造ラインのある工程にMQL加工を導入したところ、全体として、切削油84%削減、エネルギー消費量75%削減、廃潤滑油80%削減といった驚くべき環境負荷の低減効果につながりました。

極微量潤滑・自動車製造ライン
▲自動車製造ラインへのMQL加工適用時における環境負荷の低減効果例

 

大手製造ラインではここ数年でスチール加工のMQL化が定着してきていますが、中小、町工場では未だ大量の切削油が使用されているのも現実です。そこで現在、スチール加工で完成させたMQL技術を普及させる活動とともに、今後、アルミニウム合金やステンレス、難削材のチタン合金等へ適用拡大すべく、この技術のさらなる高能率化、高性能化を図るための研究開発に取り組んでいます。

極微量潤滑・作用メカニズム解明
▲MQL加工油剤の作用メカニズム解明に用いる雰囲気制御切削試験機
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