館長挨拶

香川大学博物館 館長
寺林 優

 香川大学博物館が四国初の大学博物館として2008年4月に開館してから15年が経ちました。これまでに学内外からのご支援ご協力を得ながら行った活動を、この要覧「香川大学博物館15年間の歩み」でご紹介いたします。当館は、大学博物館等協議会の会長校を昨年度まで2年間務めました。これまでの会長校は旧帝大の博物館がほとんどであり、地方大学にある小規模な当館が、リーダーシップを発揮したといえるでしょう。博物館が担う三つの役割「収集・保管」「教育・普及」「展示・交流」から、当館の将来像を具体的に考えてみたいと思います。
 一つ目の「収集・保管」では、従来からの標本資料の収集・保管に加え、データベース化の推進と、DX化の進行による研究資料や展示のアーカイブ化が求められています。当館でも、これまでのライブ感ある実物展示とデータベースシステムで収蔵品を広く公開し、さらに展示空間のVR化を進め、ハイブリット型の展示を目指しています。データベース化とアーカイブ化によって、香川大学およびその前身校の研究資料は、どこからでも目にすることができるよう になります。また、災害多発時代における学術資料・標本散逸問題が課題となっていますが、地方分散 型社会では、膨大な学術標本資料を地方の大学博物館が分担して保管することが有効で、さらに新たな発展が生まれると考えます。
 二つ目の「教育・普及」では、当館もコロナ禍を乗り越え、アフターコロナでの活動が本格的に再開しています。令和5年度は、本学のダイバーシティ推進室と連携して、いくつかの行事を実施します。そのうちの一つは、女子中高校生対象の理系進路選択プロジェクトです。一方で、性別、国籍、人種、 障害の有無、性的指向など多様性が大切であるという視点から、社会の中での全ての人々が、それぞれの個性や能力を活かし、活動できることが求められつつあります。多様性を活かすことで、さらなる発見と可能性を導きだすことができると考えます。これからの未来を担う世代への周知は、最も大切であり、少子高齢化が加速し、社会はさらに価値観の違う者同士を支え合う体制が必要です。当館は、新た な学びのきっかけとしての役割を担うことができると考えます。
 三つ目は「展示・交流」です。当館では、さまざまな展示やイベントを開催して来ました。第15回企画展「カメの不思議」では、日本固有種のニホンイシガメをクサガメやミシシッピアカミミガメと比較し、外来種問題の現状と対策について考えました。また、第25回企画展「発酵のめぐみ」では、日本初の縦型乾式メタン発酵施設での体験教室を実施しました。ゴミからエネルギーを作りカーボンニュートラルを目指す地元企業の挑戦は、SDGsへの取り組みによる持続可能な社会へと繋がります。その企業では、本学を卒業した若手社員が何人もおり、博物館が活躍の場を与えることで卒業生のアフターケアと なったと思います。さらに、令和5年度は、医学部学生企画として特別展「ホスピタルアートの世界」を開催予定です。長期入院している子どもたちがアートを介して外部と繋がることが目的です。このように、様々な課題を広く周知することで、皆で共有し、考察し、解決できる「大学の窓」としての機能を果たすことができると考えます。
 自然史系博物館が設置されていない香川県では、当館にかかる期待と役割はますます高まっていると感じます。大学博物館だからこそできる活動は、公立の博物館とも異なるポテンシャルの高い施設であると言えるでしょう。地方の発展に欠かせない学びを、学生や教職員との協働で地域と連携し、発信することが求められています。本学でもイノベーションデザイン研究所、ダイバーシティ推進室、地域人材共創センターなど、知の拠点としての大学だからこそできる活動が進められています。今後の活動を通して、魅力ある大学づくりに努め、香川大学と地域の発展を目指します。