香川大学大学教育基盤センター

Higher Education Center

 FD(Faculty Development)用語の基礎知識
 FD・SD・PD

FD = Faculty Development …… 教授団の能力開発、教員開発。「個々の大学教員が所属大学における種々の義務(教育・研究・管理・社会奉仕等)を達成するために必要な専門的能力を維持し、改善するためのあらゆる方策や活動」:B. C. Mathis の定義(*)。本来はこのように広い概念だが、近年一般には、「授業内容の改善」「教える技術や方法の向上」(=狭義の FD)の意味で使われることが多い。(*) 一般教育学会編『大学教育研究の課題』(玉川大学出版部、1997年)253頁から孫引き。


FD義務化 …… 2007年までは大学設置基準においてFDは努力義務──「大学は、当該大学の授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究の実施に努めなければならない」(第25条の2)──とされていた。これが2008年に「…研修及び研究を実施するものとする」と改正され、FD実施は明確な“義務規定”に変更された。


SD = Staff Development …… 現在の日本の大学で、SD という略語は FD と対比して使われる場合にはふつう事務職員の能力向上(のための各種活動)を言う。ただし、職員+教員(=大学組織全体)すべてを含めて SD という名称を好む大学もあれば、FD と SD の重なりや融合を重視して、professional development(専門職業人としての能力向上、大学人能力開発)という言い方を提唱する人もある。なお、イギリスではそもそも、日米などで言う faculty development の内容を表すのに、staff development と言うとのこと。



PD= Professional Development ……FDは主に教員の、SDは主に事務職員の能力向上を言うことが多いが、近年、両者を連携・融合するものとしてPDという用語が提案されている。教員・職員の双方が協力し合い、大学で働く専門職業人としての能力向上を智に目明日ことが重要である、という考えが前提にある。

 INDEX

FD・SD・PD
授業改善と成績評価
カリキュラムについて
外国語教育
教員評価・大学評価


 外国語教育


TOEIC = Test Of English for International Communication
…… ご存じ「トーイック」。英語コミュニケーション能力を評価する世界共通のテスト。米国の Educational Testing Service が制作。テスト結果は10点から990点までのスコアで、問題は英文のみで構成されている。世界60か国で年間450万人が受験、日本では2005年度約150万人が受験。本学でも1年生のほぼ全員が授業の一環として年間二回試験を受験する。→ TOEIC 公式ホームページ


CALL = Computer Assisted Language Laboratory ……「コール」。コンピュータを使って学習できるマルチメディア語学演習室。「CALL 教室」などと使う。従来の LL 教室のオーディオ、ビデオなどの機器による「聞く」「見る」学習に加えて、コンピュータやネットワークを利用して、より幅広い外国語学習をおこなうことをめざしている。

 教員評価・大学評価


授業評価
…… それぞれの授業がうまく機能しているか、学生がどれだけ満足しているかを調査し、授業改善に役立てるために、多くの大学で「学生による授業評価アンケート」が実施されるようになり、一定の効果を上げている。しかし、「自分の授業が学生から点数をつけられる!」という導入初期の衝撃と緊張感が和らぐにつれ、こうした制度のマンネリ化が教員・学生双方にもたらす弊害も懸念される。さらに、学生による評価は授業評価の重要な指標であることはたしかだが、ひとつの指標にすぎないことは忘れるべきではない。


教員評価 …… 大学教員に対する評価をおこなって昇任や給与に反映させる試みもある。だが教員評価には、教育・研究・管理運営・社会活動・人徳 (?) などの多面的な要素が含まれているので、どこまで客観的で正当な評価ができるか、また、目に見えにくいものや、成果が出るのに時間のかかるものを切り捨てることにならないか、など問題点は多いと思われる。現在、「教員評価」と言えばもっぱらこのような意味であって、「教員による学生の成績評価」とは違うので注意。教員が評価することではなく、教員を評価することである。


大学評価 …… 各大学による自己評価に加えて、より客観的で厳しい判断や、社会との連携を考えた提言をおこなうために、外部の第三者機関による評価がおこなわれる。2001年6月の「遠山プラン」の柱のひとつが、第三者評価の導入によって大学に競争原理を持ち込むことだった。2002年11月「学校教育法の一部を改正する法律」において、学部新設などに関する規制緩和がおこなわれる一方で、すべての大学に第三者評価が義務づけられた。事前規制が弱められた代わりに事後評価が厳しく課せられたわけである。


PDCAサイクル …… もとは製造業における生産管理などで用いられるビジネス用語で、Plan(計画)- Do(実施)- Check(評価)- Action あるいは Act(改善)のサイクルを言う。継続的なフィードバックと改善とをおこないながら、さらに次のステップへと取組みを進めていくための仕組み。外部からの大学評価においても、このような評価と改善のサイクルが制度的に整備されているかどうかという点は重要な視点のひとつとされている。


大学評価・学位授与機構 ……「大学等の教育研究水準の向上に資するため、大学等の教育研究活動等の状況について評価を行い、その結果について、当該大学等及びその設置者に提供し、並びに公表すること」などを業務とする独立行政法人。2000年にそれまでの学位授与機構から大学評価・学位授与機構へと改組され、2004年に独立行政法人化された。2016年4月改組により
(独)大学改革支援・学位授与機構に名称変更
大学評価・学位授与機構


JABEE = Japan Accreditation Board for Engineering Education ……「ジャビー」、日本技術者教育認定機構。大学などでおこなわれている技術者教育が、社会のニーズにかなっているかどうか審査・認定をおこなう非政府団体。1999年設立。主に工学部系の学部がその対象になる。→ JABEE ホームページ

 カリキュラムについて

くさび型カリキュラム
…… 新入生向けの専門教育+高学年向けの教養教育。「1年生から少しでも専門分野を学びたい」「3・4年生でも専門以外の広い分野にふれたい」という希望に応えるためのシステム。従来の、基礎を十分に固めてから初めて専門教育をという積み木型の教育理念への疑いや、教養課程と専門課程の断絶に対する反省から生まれてきた考え方。「教養教育と専門教育の有機的連携」(21世紀の大学像と今後の改革方策について:大学審議会答申)をめざして、各大学で様々なカリキュラムの工夫がおこなわれている。


導入教育・転換教育 …… どちらも高校と大学の接続に関して用いられる語。「導入教育」は、高校までの学習と大学教育とをスムーズにつなげるための教育。これに対して「転換教育」は、高校までの学習と大学教育とは根本的に違うことを意識させるという面に重点がある。学士課程における教育の質の保証、学力のバラツキや未履修問題、近年の大学生気質などを考慮したうえで、有効な初年次カリキュラムを開発することが急務と考えられる。


FYS = First Year Seminar …… 初年次ゼミ。その大学の一員であるという自覚をうながし学業意欲を向上させるために、新入生向けにおこなう少人数授業。その主な目的はたとえば、(1) 大学教育の体感、大学生活への順応、(2) 討論や共同作業のマナーの習得、(3) 基本的な読み書き能力の向上、(4) 他専攻の学生や教員との交流、などとされる。「導入教育」と「転換教育」の両面をもつと考えられる重要な授業群。初年次生向けの各種プログラムやガイダンスも広く含めて、FYE = First Year Experience と呼ぶこともある。


リメディアル教育 ……「補習授業」という言い方に含まれるマイナスイメージを避けるための用語。大学生の基礎学力の低下や、学部・学科間の学力差などが厳しく指摘されるようになって、脚光をあびるようになった。専門教育に不可欠な(特に理科系の)基礎知識、日本語の読解や表現、英語などの分野を中心にカリキュラムが組まれていることが多い。卒業単位外の枠で実施している大学もある。ただし remedial(治療用の、補修的)の英語らしいカタカナ表記は「リミーディアル」である。そもそも補習は補習でよいのではないか。→ 日本リメディアル教育学会


インターンシップ …… 在学中の学生が、企業やボランティア団体などで、自分の専攻や今後のキャリア(進路・職業)に応じた就業体験を一定期間おこなうこと。社会や異文化と直接ふれあうこのような機会を大学教育のなかに位置づけるためには、大学が、休学・留学・転学などの制度をより柔軟にし、「履歴書の空白」や「まわり道の人生」を前向きにとらえる発想の転換が必要だろう。


大綱化 …… 大学設置基準が1991年に改正され、従来の一般教育と専門教育の区分や、一般教育の科目区分(人文・社会・自然、外国語、保健体育)が廃止されたことを言う。細部に及んでいた縛りが外れ、カリキュラム編成の自由が与えられたのを受けて、各大学で教育課程や教育組織の変革が進み、多くの大学で教養部や一般教育課程の制度は崩壊した。設置基準大綱化の本来の意図がどこにあったにせよ、結果的にそのインパクトが教養教育をますます軽んじる傾向に拍車をかけたことは間違いない。

 授業改善と成績評価

シラバス …… 各授業の目標と内容、授業方針、テキストと参考図書、授業計画、成績評価の方法、教員との連絡方法などを記した文書。「学習指導、学術情報、事務連絡、法的契約」など様々な性格をもつべきものとされる。とりわけ、(1) 教員と学生の相互契約としてのシラバス、(2) 学生に教室外での学習の手がかりを与えるシラバス、(3) 授業の進行にあわせて加筆修正していくシラバス(=ゴーイング・シラバス)、(4) ウェブ・シラバスの充実、などの点を中心に各大学が取組みをおこなっている。

(参考)1990年代半ばから、ニホン国全域で大学の一般教育科目の講義要綱(どういうわけか「シラバス」と呼ばれた)の類が軒並み肥 大化するという奇妙な現象が生じた。学生数の多い大学では、それはゆうに600ページを超え、もち運びに支障をきたしたばかりではなく、必要な情報を引き出すためにも、どこをどう読んだらよいのかわからないという事態を引き起こした。(中略)これら「シラバス」はその分厚さのゆえに「デンワチョウ」と呼ばれるようになった。しかも、中身の「授業内容」の項目などは、判で押したように毎回の授業のテーマが個条書きになっているという不気味な共振現象も同時に存在した。原因はどうやら、誰かが、北アメリカ地域の大学で当時「シラバス」と呼ばれていた、コースの初めに教員が受講者だけに配布する詳細な文書と、「bulletin」とか「course description」と呼ばれる、その年度に大学で開講されるすべての授業の内容を簡潔にまとめた冊子とを取り違えたことによるものらしい。── 池田輝政他『成長するティップス先生 授業デザインのための秘訣集』(玉川大学出版部、2001年)60〜61頁。


オフィスアワー …… 授業内容に関する学生の質問や相談に応じるために、教員があらかじめ指定しておく相談時間・面会時間。たとえば「月曜13:00〜15:00 ○○研究室」などとシラバスに明示したりする。本来、この時間帯なら事前のアポイントメントなしに受講生は遠慮なく来てよろしい、という性格のもの。


peer review(ピア・レビュー)…… 同僚(peer)による授業参観。教員どうしが授業を見せあい、意見交換や批評をおこなって授業改善につなげようとする試み。教室はもはや「密室」ではなくなった。従来は、学術論文審査、専門研究評価、行政機関の業績評価などに用いられる手法をこう呼ぶ。大学の場合、同僚間で授業改善の気運や具体的手法を共有するという側面と、個々の授業のチェックや評価をおこなうという側面の二面があると思われる。本学でも本格的取組みが始まったところ。


e-Learning(イー・ラーニング)…… コンピュータやインターネットなどの情報技術を使って作成・準備した教材によって受講者が(授業時間中または時間外に)学習する形態。学習効果の向上、自学自習の手助け、多様な学習機会の提供、分散キャンパス問題の解消、ピア・レビューや授業改善への利用などの目的で、各大学で実験的な取組みが進んでいる。もともとは、アメリカで、広大な土地での一般人も含めた授業をどうするかという課題のために盛んになった動き。


ティーチング・ポートフォリオ …… 授業の記録や配布物などをひとまとめにした集積資料。各々の授業について、たとえば、シラバス、授業での配布物、作成した教材、課題(テーマ・時期・提出物のサンプル)、成績簿、学生からの質問事項やアンケートのまとめ、学生による授業評価結果、その他のメモ類などが、講義の進行とともに組織的に集積されれば、授業の「やりっぱなし」を避けることができ、反省と計画の貴重な資料になる。もとはアメリカの大学で、教員が自分の教育活動に関わる根拠資料をひとつのファイルにまとめ、教育業績の評価を受けるためのシステムだが、意識的な資料の整理と保管は授業改善のための意義も大きい。


GPA = Grade Point Average …… ある学生の総得点数の合計を、履修登録単位数で割った数値。たとえば「優」3点、「良」2点、「可」1点と定める。24単位登録し、優を4単位、良を12単位、可を8単位とった学生の GPA は、(3×4+2×12+1×8) ÷24=1.83となる。より厳密な成績評価のために、また、ただ単位を取ればよいという学生の意識を改め学習意欲を向上させるために、この方法を導入する大学が増えてきている。もちろん、各授業の成績評価がでたらめだったり、授業ごとに成績基準がまるで異なったりする場合には、こんな面倒な計算をしてもあまり意味がない。


Cap(キャップ)制 …… 履修登録科目数に上限を定める制度。上限という帽子をかぶせるという意味か。大学設置基準に従えば、2単位の講義の単位認定には、本来、授業時間90分以外にその倍の時間の教室外学習(予習復習)が必要である。したがって、単位制度を厳密化・実質化するなら、同じ学期にあまりに多くの科目を履修することはできないはずである。Cap 制と上の GPA とを組合わせて、GPA の高い学生には登録単位数の上限を増やすなどの工夫をおこなっている大学もある。