障害のある学生の防災対策に関する研究

障害のある学生の防災対策

~大学の多様な構成員に配慮したインクルーシブ防災~

2024年4月より全ての高等教育機関において合理的配慮の提供が義務化されるのに伴い、多くの大学が障害学生支援体制の構築や修学支援の充実に向け対応しているものと思われます。障害のある学生が学生生活を安全に送るために、「防災対策」が重要であることは誰もが理解しているところではありますが、目の前の修学支援に追われ、なかなか手が付けられていない大学も多いのではないでしょうか?

障害のある学生の防災対策について検討することは、大学の多様な構成員の防災対策を考えることにつながります。障害のある学生の防災対策の充実には、教職員だけでなく、障害のある学生の皆さんの協力も重要です。このページを参考に、できることから始めてみませんか。

このホームページは、JSPS科研費JP19K23317「障害のある学生を対象とした防災対策におけるネットワーク構築に関する研究」、JP16H07023「高等教育機関における発達障害の特性に配慮した災害時避難支援システムの構築」の助成を受けて行った研究成果をまとめたものです。

教職員の皆さんへ

大学において、障害のある学生の支援といえば、まずは授業に関する支援になります。現在、障害のある学生が在籍する大学では、様々な修学支援が行われています。

障害のある学生の防災対策について検討することは、障害のある学生が安全に学生生活を送るうえで重要な事項ですが、日頃の修学支援と比較すると対応の優先順位が低くなりがちです。

授業中に災害が発生したら大学としてどのような対応をとるか、緊急時の対応マニュアルは、ほとんどの大学が作成しているものと考えられます。その中に、障害のある学生や教職員への対応は記載されているでしょうか?

障害のある人への災害時対応は、個別性の高いものもありますので、是非、在籍する障害のある学生と防災について話し合ってみましょう。

障害のある学生の防災対策に関する研究の一環として、障害学生支援部署でできる防災対策についてまとめた「障害のある学生に配慮した防災対策の一歩~日常業務に取り入れやすい対応のヒント~」を作成しました。人手や予算が多くなくても取り組みやすい対応事項をまとめていますので、是非ご参考にしてください。

  • 「障害のある学生に配慮した防災対策の一歩 ~日常業務に取り入れやすい対応のヒント~」(準備中)

障害のある学生を支援する方の参考となる情報

障害のある学生の皆さんへ

大学は高校までと異なり、時間ごとに使用する教室、一緒にいるメンバーが変わっていきます。緊急時には自ら周囲に助けを求めなければならない場面も出てくるかもしれません。いつ来るか分からない「災害」ですが、「自分のこと」と認識し、平時から備えることが重要です。

災害発生時や緊急時の対応について相談したい時は、大学に障害学生支援部署がある場合は、そちらに相談してみましょう。支援の専門部署がない場合は、学生担当の窓口に、まず相談してみると良いでしょう。

平時にできる防災対策

家族と災害時対応について話をしてみよう

家族と同居している場合は、災害発生時や緊急時の連絡の取り方や避難場所や避難所および避難経路などについて一緒に確認してみましょう。

大学に進学するにあたって、一人暮らしをしている方は、住んでいる地域の防災の情報について集める必要があります。一人で行うことが難しい場合は、家族にも手伝ってもらうのも1つです。自宅に備蓄する必要のある物品などについても家族と相談してみましょう。

大学と災害時対応について話をしてみよう

大学に入学する前から、災害時に必要な対応がはっきりとしている方は、入学決定後から大学に情報提供していきましょう。特に、車いすを利用されている方は、緊急時にエレベーターが使えない時など、どのような移動の支援が必要か伝えておく必要があります。車いすも様々なタイプがあります。階段を降りる必要がある場合に、車いすに乗ったまま降りた方が安全なのか、車いすはおいて、自分だけ搬送してもらう方が安全なのか等について伝えられるようにしておきましょう。高校までと異なり、自分のことを知らない人に搬送をお願いしなければならない事態も想定されますので、安全な方法について周囲に伝えられるようにしましょう。自分では判断が難しい場合は、主治医に安全な搬送方法についてアドバイスをもらったり、オーダーメイドで車いすを作成している場合は、業者の方に相談してみるのも1つです。

大学の防災訓練・避難訓練に参加してみよう

大学によっては、防災訓練・避難訓練への学生の参加が任意の大学もあります。学生の参加者が少ない大学では、自身が参加するかどうか悩む場合もあるかもしれません。大学は規模が大きいため、キャンパスによって避難場所が複数ある場合もあります。しかしながら、防災訓練・避難訓練に参加したことのない学生の多くは、学内の避難場所を知らないまま学生生活を送っています。

障害のある学生が防災訓練・避難訓練に参加することは、大学が障害のある学生の防災対策について考えるきっかけを作ることになりますので、可能な範囲で参加してみましょう。防災訓練・避難訓練の参加にあたって、配慮や支援が必要な場合は、障害学生支援部署や学生担当の窓口に相談をしてみましょう。

大学の安否確認の方法について確認しよう

大学ごとに学生の安否確認の方法は異なります。事前に登録しておく必要がある場合もありますので、対応を忘れずにしましょう。

障害のある学生の皆さんの参考となる情報