メンタルヘルスアップ・コーディネーター養成講座 第2回

日時
2011-10-07 14:00–16:00
場所
香川大学幸町キャンパス 研究交流棟5階 研究者交流スペース
参加者
51名
特別講演
秋田県三種町の自殺の現状と取り組みの実際、メンタルヘルスサポーター養成講座の紹介
小野 綾子 (秋田県三種町保健センター 保健師)
メンタルヘルスサポーター (コーディネーター) を経験して
津村 まゆみ (秋田県三種町「チーム山本」 ボランティア)

写真: 小野 綾子さん 写真: 津村 まゆみさん

メンタルヘルスアップ・コーディネーター養成講座 第2回は、秋田県三種町の保健師 小野綾子さんと三種町山本地域の「チーム山本」で活動されている津村まゆみさんをお招きし、三種町における自殺の現状と取り組みについてお話を伺いました。

はじめに、小野さんが三種町の自殺の現状と取り組みについてお話されました。秋田県三種町は、大規模な農業干拓地で知られる大潟村の北から東に位置する町で、人口は19,000人あまり。人口10万人あたりの自殺者数 (自殺率) は57.8人 (平成21年) で、全国平均の2倍以上, 秋田県全体の約1.5倍に相当します。

三種町 (旧山本町) では、平成17年度から秋田大学医学部と連携し自殺予防活動を開始。「心の健康づくり調査」とそれに伴う事前講演会, 事後説明会、広報誌による啓発や各種教室の開催、うつ病に対する知識の普及、ハイリスク者や遺族を対象とした相談などに取り組みました。平成21年度からは、シンポジウムや教室開催などの啓発活動、相談窓口一覧の配布, コーヒーサロン開催などの予防活動、心の何でも相談や多重債務相談などの相談活動、などを行っています。

続いて、三種町で平成19年度と平成21年度に実施されたメンタルヘルスサポーター養成講座の紹介。この講座は、他の自治体の活動や相談者との面接のポイントなどを講義やロールプレイ形式で解説し、事後研修などを行う、というものでした。講座修了者同士が集まってボランティア組織が設立され、その一つが、山本地区で活動する「チーム山本」です。小野さんは、チーム山本の特徴として、以下の点を挙げられました。

写真: 講義風景

ここで、演者がチーム山本の津村さんに交代。チーム山本の立ち上げ経緯などを紹介されました。コーヒーサロンでは、歌, 紙芝居, ハンドマッサージなど、様々な活動を展開されているそうです。いろいろな方と出会ってボランティアの方も大きく成長していく、地域と人、人と人が繋がることの楽しさ、コーヒーを提供される側より提供する側の方がより楽しいこと、などを発見しながら活動されているとのお話を伺うことができました。東日本大震災の被災地でもチーム山本のような組織を立ち上げるための支援を行うとのことです。


写真: 討論会風景

講習会の後半は、小野さん, 津村さんと香川大学医学部の鈴江准教授を中央に配し、受講者が円形に取り囲む討論会形式で質疑応答。講演を受けての質問、秋田県と香川県の現状に関する情報交換、私たちは何をしたらいいのか、を主題に議論が展開されました。

多くの受講生が、「高齢者の自殺については、一人暮らしや高齢者世帯よりも、多世代同居の方が多い」という秋田県の自殺の現状に驚きました。一人暮らしの方は、自分で生きていかなければならないため、比較的元気であることが多いそうです。一方、多世代同居の方は、家庭内で実戦を退いた感じを受ける結果、生きる気持ちややりがいが希薄になる、息子/娘夫婦に気を遣う、などが原因ではないか、というお話でした。病院へ行くにも、何をするにも、足がない。若い者が仕事を休んで病院への送迎をする。このような中で、負担をかける自分がいたたまれなくなるようです。

写真: 講習会参加者の質問に耳を傾ける鈴江, 小野, 津村の各氏

単身世帯では福祉サービスが充実しており、手を挙げれば利用できる。一方、同居世帯では、受けられるサービスが限定されるという問題点も指摘されました。例えば、三種町では一人暮らしの場合は病院や買い物などの移送サービスを受けられますが、同居世帯ではそれが受けられないそうです。

また、家庭でも個室化が進み家族での団欒が少なくなってきている、という問題も話題に挙がりました。家に人はいるが、寂しい。若者は携帯電話などで外部と繋がることができますが、高齢者にはややハードルが高い。こういった中で、地域で開催されるコーヒーサロンの果たす役割は大きい、とのことでした。

写真: 津村さんが発言

本日の講習会の感想を求められた津村さんは、「自殺予防は、『特別な人が特別な事している』と思われがちだが、『普通の人が自分達でできることをやる』という前提が重要。小さなボランティアグループがいっぱい立ち上がれば、弱っている人, 悲しんでいる人, つらい人と必ずどこかで繋がります。繋がったら、その人が困っている事を解決できる先に繋げてあげる。私たちは、自分たちが解決しようとは思わない。どこかに繋げて、その人達が幸せに暮らせるようにする。そのためには、いろんな人と繋がらなければならない」と述べられました。