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review-02

シャットネラ属
(genus Chattonella)
赤潮

香川大学 瀬戸内圏研究センター
本城凡夫

赤字の文献番号をクリックすると文献の著者名、発行年等が開きます。それを参考にして、各赤潮項目(例えば赤潮について、ヘテロカプサ)の文献リストを開けば、論文の掲載雑誌名等を知ることができます。

1.はじめに

 シャットネラはラフィド藻綱に属す微小藻類で、2 本の鞭毛を有し、泳ぎ回ることができる。熱帯から温帯域に分布し、夏季に赤潮を形成する。日本では静岡県の浜名湖、京都府の舞鶴湾を北限とする西日本の内海域で赤潮を形成し、赤潮の記録はないけれども、東京湾や能登半島海域で生息が確認されている。一方、外国ではインド(Subrahmanyan 1954 1)やオランダ沿岸(Vrieling et al. 1995 2)などで赤潮発生の報告や生息が記録されており、オーストラリアでは1996年に50cells/mlという低い密度の状況下でマグロ養殖への被害が報告されている(Hallegraeff et al. 1998 3)。日本では1969年から2012年までの被害額は約278億円に達していて、他の代表 的有害赤潮生物カレニア(1972年から2012年までの合計)、ヘテロカプサ(1988から2012 年)、およびコクロディニウム(1980から2012年)の被害額がそれぞれほぼ128、103、50億円であるのに比較して圧倒的に高い。

 この属の代表種はChattonella antiqua(シャットネラ・アンティカ)とChattonella marina (シャットネラ・マリーナ)である(両種の写真は「赤潮について」の項に掲載)。シャットネラ・アンティカは1968年広島湾で赤潮を形成し、Hada(1974 Hada Yoshine. The flagellate examined from polluted water of the Inland Sea, Setonaikai.Bull. Plankton Soc. Jpn., 20, 20-33.)によって Hemieutreptia antiqua と命名された。その後、安達(1978 安達六郎。昭和52年のHornellia属の同定.昭和52年度に発生したホルネリア属赤潮に関する総合調査報告書. 水産庁・香川県水産試験場他、31-34.)が Hornellia sp.と唱えたが、最終的に Ono and Takano (1980 Ono C. and Takano H.,Chattonella antiqua (Hada) comb. Nov., and its occurrence on the Japanese coast.Bull. Tokai Reg.. Fish. Res. Lab., 102, 93-100.)は Raphidophyceae の Chattonella antiqua(Hada)Onoに名称変更した。一方、シャットネラ・マリーナは安達(1978) が1977年7月に播磨灘から小型の Hornellia sp.と報告しているが、Hara and Chihara(1982 Hara Y. and Chihara M., Ultrastructure and taxonomy of Chattonella(Class Raphidophyceae) in Japan. Jap. J. Phycol. 30, 44-56.)によって Chattonella marina(Subrhamanyan)Hara & Chihara と命名された。

 近年、Chattonella ovata(シャットネラ・オバータ)などシャットネラ属の仲間の発生も報告されているが(Hara et al. 1994 4)、我国ではアンティカとマリーナによる発生件数と被害件 数が圧倒的に多い。シャットネラの総説として岡市(1987,「赤潮の科学」, 恒星社厚生閣)および Okaichi(Red Tides. Terra Scientific Pulishing Company/Kluwer Academic Publishers) や今井(2012,シャットネラ赤潮の生物学生物研究社)の「シャットネラ赤潮の生物学」がこれまでに出版されている。執筆に際して、シャットネラ・アンティカとマリーナを分ける必要のあるときを除いて、2種をまとめてシャットネラと総称して総説することにする。シャットネラは他の赤潮生物に比較して細胞が大きいので、光の方向に試験管を向けて覗くと、小さな粒として見ることができる。細胞の形態は紡錘形で、サイズはシャットネラ・アンティカが50~130μm(0.05~0.13 mm)で、マリーナが25~60μmである。我が国でシャットネラの赤潮が最初に記録されたのは広島湾で1969年のことである(村上彰男 1979 赤潮と富栄養化. 公害対策同友会. 東京.207p.)。

 モノクロナール抗体法で瀬戸内海のシャットネラ・マリーナと他の海域のマリーナの細胞表面における抗体反応の違いを調べたところ(Hiroishi et al. 1988 5, Hiroishi et al. 1989 6, Uchida et al. 1989 7)、鹿児島湾産を除く全ての株が瀬戸内海産と同じ反応を示した。この研究が行われた1980年代には、有明海や八代海においてシャットネラ赤潮の発生はまだ記録されていなかったことから、有明海産株や八代海産株が鹿児島湾産株と瀬戸内海産株のいずれに類縁なのかは 不明である。また、シャットネラ・アンティカとマリーナのシストの形態は類似している (Takayama 1980 8)。そして、この2種が同時に増殖して赤潮を形成することも多々ある。さらに、アンティカ、マリーナ、オバータの3種はこれまで形態的特性で分類されてきたが、遺伝解 析によれば、これらは非常に類似していることが判ってきている。すなわち、シャットネラ3 種類の104株を用いて、ITSrDNA領域、葉緑体やミトコンドリアのrbcL遺伝子を調べたところ、相異は種内レベルでの変化に留まるようである。マイクロサテライト法でもこれら3種類は単一地理的個体群であるという結果になった。形態や系統発生分類に基づくと、これら3種類は確かに大まかには区別できる。しかし、種のランクで分けるまでの違いはなく、Chattonella antiqua (Hada), Chattonella marina var. antiqua (Hada) Demura and Kawauchi , C. marina var. ovata (Y. Hara & Chihara) Demura and Kawauchi というように、3種類は変種としての取り扱いが最 近提案されている(Demura et al. 2009 9)。 

2.シストの形態と生活環

 シャットネラ生活環の解明は今井一郎博士の研究に負うところが大きい(Imai 1990 10)。 Imai et al.(1984 11)は83年4月に播磨灘から採取した泥(表面から3cm層までの泥を使用)を篩でサイズ分画して、分画した泥を培地に加え、異なる水温と光条件下にて培養し、出現したシャットネラの栄養細胞を計数して発芽に関する影響を調べている。そして、30~75μmの泥サイズ画分で80%の栄養細胞の出現を観察し、堆積物中のシスト(休眠胞子:陸上植物の種子に相当)のサイズがこの範囲にあることを示している。最高の発芽率は22°Cで得られ、光は発芽に無関係であった。その後、落射蛍光顕微鏡を用いて周防灘の堆積物からシストらしき細胞を63個分離し、小型容器に単離してこれらを培養し、その中から2個のシャットネラ細胞の出現を確認した。さらに、小型容器に残ったシストの殻と類似のものを52個分離・培養して、その中から12個のシストの発芽を得て、シストの形態を明らかにした(Imai et al. 1996 12)。
 シストは直径25-35μmで高さ15-25μmのほぼ半円形であり、黄緑から褐色を呈し、暗褐色の数個のスポット物質を有している。遊泳している栄養細胞(50~130μm)よりもかなり小さく、シスト表面に1μm厚の細胞壁を有しており、栄養細胞とはかけ離れた得意な形態をしている。次に、窒素制限培地にシャットネラ・マリーナの栄養細胞を接種して、1000lux以下の照度条件下で、シストを人為的に形成させることに成功した(Imai 1989 13)。シストはDAPI 染色や落 射蛍光顕微鏡による観察によれば、多くは単一核で、稀に2核の時があり、11°C暗所に4ヶ月以上保存したシストで効率良く発芽する。休眠細胞を含むシストは発芽能とは無関係に青色励気光 下で色素体の赤い自家蛍光を示し、大半のシストは珪藻の死殻や砂粒のような固形物の表面に付 着している(Imai and Itoh 1988 14)。シストの核のサイズは7~10μmで栄養細胞と同じサイズである。一方、細胞が発芽して抜け出ると発芽孔が生じる。そのサイズは約7μmほどである。 発芽に要する時間は数秒程である。シスト壁の成分をX線解析で調べるとケイ素(Si),マグネシュウム (Mg),アルミニウム(Al)から成っていて、ケイ素(Si)が全体の40%を占めるこ とが判っている(Meksumpun et al. 1994 15)。とにもかくにも、夏に海水中を泳いでいる大型の栄養細胞と冬に泥の中で眠っているシストの形態がこのように大きく異なるので、シャットネラシストの特定に困難を極めたのは言うまでもない。
 シャットネラの生活環を図1に示す(Yamaguchi and Imai 1994 16)。図には橙色と緑色で表した細胞がある。緑色の細胞は橙色細胞に比較して2倍量(複相)のDNA含量を有している。点線より下の緑色で示した中に小型の細胞がある。この細胞は単相小型細胞からDNA含量が倍加して複相化したが、細胞サイズはまだそのままで、その後、大きな栄養細胞(50~130μm)に変化する。この複相の大型の栄養細胞が夏季に細胞分裂を繰り返して赤潮を形成するのである。海水中の栄養が欠乏すると、大型細胞から小型細胞へと形態変化する。この時にDNAは減数分裂して半分量となり、シスト形成小型細胞(約30μm)になる。このシスト前駆細胞の形態はその後さらに変化して黄緑色から茶色の半円球のシストになる。低照度条件下での窒素制限がシスト形成の誘導に効果的であると報告されている(Imai 1989 13)。形成されたシストは底泥に沈み、シストの状態で冬を越す。晩春から初夏になると小型の細胞がシストの中から発芽して、海水中に泳ぎ出すが、この遊泳細胞はその後、次第に大きくなって2倍量のDNAを持つようになる(Imai 1990 10)。こうしたDNA含量の変化は山口ら(1994 17)によって発見された。植物プランクトンの教科書には、まずもって「シストは2個の栄養細胞が接合して形成されるので、シストのDNA量は栄養細胞の2倍量である」と書かれている。なぜシャットネラの場合にはこのように半分量なのか。図1に示すように、栄養塩の枯渇等を契機に、細胞内のDNA量が半減し、シストが形成される。すなわち、シストはふたつの細胞が接合することなく、細胞が小型化して、小型細胞から半円球のシストが無性的に形成されるというのが山口らの生活環に関する観察結果である。


図1.シャットネラの生活環(山口より改変)
 一方、Nakamura et al.(1990 18)もImai(1989 13)とほぼ同時期に、窒素とリン制限培地を用いた室内培養実験により、シャットネラ・アンティカのシストを形成させることに成功した。彼らは4株のクロス混合培養により、効率良くシストを形成させることに挑戦した。結果として、リン制限培地で大型の遊泳細胞が25~35μmの小型細胞(配偶子)になり、形態の異なる小型細胞が接合して三角型細胞(運動性接合子)を経て、シスト(休眠性接合子)に移行する有性生殖過程を観察し、さらには適切な株の掛け合わせで、小型細胞同士の接合中の107ペアから24個のペアが、再現実験では29ペアから14個のペアがシストを形成できたと報告している。さらに、彼らはシャットネラの単一株からもシストの形成に成功しており、無性生殖の可能性も指摘している。このことは本種が基本的に異株接合による有性生殖のプロセスを有していることを強く示している。このようにして形成されたシストの多くは5ヶ月間冷暗所に置くと死亡したが、生き残ったシストは発芽能力を有していたという。また、Nakamura and Umemori(1991 19)は窒素とリンを枯渇した培地でシャットネラのシストが形成されることを再確認し、シスト化は温度21.6~26.6°Cの暗所条件下で効率良く進行し、シストは栄養細胞密度に比例して形成されたと述べている。さらに、現場において、ブルーム形成で栄養が枯渇し、ブルームを形成した細胞から小型細胞が形成され、15m以深に沈降して接合し、シストが形成される過程を想定している(Imai et al. 1993 20)。近年、Demura et al.(2012, Phycol. Res., 60, 316-325.)は、暗所に長期間放置して得られた小型細胞を用いて、最新の遺伝子手法で小型細胞核のゲノム上に存在する数塩基の繰り返し配列(マイクロサテライト)の同質・異質性を解析することによって、シャットネラのシストが無性生殖(遺伝子座位が同質)か有性生殖(遺伝子座位が異質)のいずれによって形成されているのかの証明に挑戦した。残念ながら、この問題に明確な決着をつけることはできなかったが、彼らは、無性生殖の可能性も一部残しつつ、有性生殖による倍数のシスト形成の生活環の存在を主張している。このように、Yamaguchi and Imai(1994 17)、山口・今井(1994 16)とNakamura et al.(1990 18)との間の生活環の解釈に乖離がある。Imai(1989 13)はシャットネラ・マリーナのシストを人為的に形成させることに成功した際に、稀に2核を有するシストを観察しており、これがどのようにして生じたのか考察が加えられていないが、シャットネラが無性・有性生殖両方の様式で生活環を回していたとしても全く不思議ではない。クローン株培養において無性生殖で小型細胞からシストが形成されることは両者で確認されている。今後、異株混合培養で生じる小型細胞同士の接合実験を繰り返し試みて、有性生殖過程の存在を再検証する必要がある。もしシャットネラが無性生殖と有性生殖の生活環を有しているとしたら、都合の良い特性を持つように思える。赤潮にならない年に仲間が近くにいなくても、無性生殖で子孫を細々と残すことができる。一方、仲間と会う機会の多いとき(赤潮)に生じる有性生殖では自分の性質と異なった株とが交じり合うことによって、いろいろな遺伝的性質を持つシストができることであり、その結果、シャットネラは不都合な環境変化に幅広く対応できて生き残れる利点がある。

3. シストの発芽と休眠

 室内実験によるシストの形成、発芽条件について述べる。試験管の中でシストをつくる過程において、暗所や栄養塩類の無機窒素を欠乏させた時に大型細胞から小型細胞へと切り替わることは前述した。これらの条件が持続すると、小型細胞がさらに形態変化して半円球のシストになる。シストが形成された後、発芽能力を獲得して、成熟し、発芽細胞を生み出すには暗所で4ヶ月以上、11°C以下の温度条件下に放置する必要がある(Imai and Itoh 1987 21)。9°C付近の冷たいところに置くと1週間位の短期間でも発芽能力を獲得できるようになるが、20°Cの状態にシストを放置しておくと、シストは発芽能力を獲得できずに、休眠状態のまま、翌年まで底泥に溜まったままという事になってしまう(Imai et al. 1989 22)。このシストを改めて11°C以下に保存すると発芽能を獲得することができる。これらは瀬戸内海産株で試験が行われたが、九州の海域から採取したシストは11°Cよりも高い温度条件でも発芽能力を獲得できることが報告されており、海域毎に固有の発芽獲得のための水温が異なる可能性がある(Shikata et al. 2010 23)。瀬戸内海からの天然シストを用いて、発芽培養試験が実施された(Imai et al. 1991 24)。発芽は10°Cでは認められず、15°Cで初めて観察された。20°Cになると徐々に増加し、22°Cと25°Cで最高の発芽率を示すが、30°Cでは顕著に減少した。いずれにしても、シャットネラは寒さを感じることで冬の通過を体感し、発芽の準備をし、温度が高くなれば発芽する。この習性はチューリップなどと同じである。Imai and Itoh(1987 21)は現場における年間を通したシャットネラ生活環を、(1)初夏における栄養細胞は堆積物中のシスト発芽に由来する、(2)それらは赤潮が終了した夏にシストを形成する、(3)シストは次の春まで自発的休眠に入る、(4)シストはすでに春に自発的休眠を完了してはいるが、低温のために発芽を抑えられた後期休眠期は初夏まで続く、と要約している。同じラフィド藻類であるヘテロシグマの場合、シストからの発芽は水温に依存するが、発芽細胞が栄養細胞に発達する際の形態変化にある程度の強い光を必要とする(Shikata et al. 2008. Limnol. Oceanogr. 53, 2503-2518.)。しかし、シャットネラは暗所でも発芽可能で光がなくても栄養細胞に形態変化できるので、40mほどの水深に生息するシストも発芽して、栄養細胞に変化できる。しかし、底水温が発芽可能な15~17°C以上まで上昇するのは岸近くに比べるとかなり遅いので、まずは岸近くに生息するシストから発芽を開始すると考えて良い。周防灘や播磨灘のように深所に高密度で沈んでいるシストの発芽は相当に遅れて発芽してくることになる。浅いところで早く発芽した栄養細胞は海中で光合成をして分裂を始めて、細胞密度の高まりに寄与できるが、深所から遅く発芽した栄養細胞が夏季赤潮にどの程度の貢献しているのか、まだ不明である。

4.シストの分布

 Imai et al.(1986 25)は底泥堆積物中における休眠細胞の計数法を確立した後に、瀬戸内海におけるシスト密度を調査した。周防灘における冬のシストの分布をみると、灘循環流の中心部で水深の深い海域に高密度で沈積している。豊後水道を入ってきた海水は笠戸湾付近の湾岸にぶつかって東西に分かれる。西の方に分かれた海水は周防灘の岸沿いに反時計回りで流れて姫島の間を通り、別府湾の方へと流下する。シストは海水よりも少し比重が重い程度なので、徐々に深い所に沈降し、周防灘中央の最深部に高い密度で溜まる。東部瀬戸内海の紀伊水道や播磨灘におけるシストの分布も研究された(Itakura et al. 1991 26)。

図2.有明海におけるシストの分布
(瀬戸内海水産研究所赤潮環境部提供)
図2は有明海におけるシャットネラシストの分布パターンである。有明海の西側海域に大きな円が数多く存在し、最も大きな円(250個以上)は、流れが弱くて貧酸素水塊が形成されやすい塩田川河口域と諫早湾に分布している。このような流れの弱い場所でのシストの沈積は、周防灘と共通している。ただし、両海域では深さが大きく異なり、周防灘のシストの多くは40m深に、有明海では10m深に沈積していることになる。周防灘最深部は水温上昇が遅いため、シストはかなり遅れて発芽するが、有明海ではほぼ全てのシストが早めに発芽しているはずである。確かにシストが多く分布し、海水中に多くの栄養細胞が多く発芽するほど赤潮形成の確率を高めるが、発芽した栄養細胞が赤潮を形成するまでの期間にさらされる環境条件にその後の増殖は左右されるので、底泥に沈積しているシスト量が多いからと言って、一概に赤潮がその年にその場所で形成されるとは限らない。

5.栄養細胞の栄養要求特性

 Yamaguchi et al.(1991 27)は瀬戸内海産のシャットネラ・アンティカとマリーナの増速至適 水温、塩分および光強度を調べ、1)30μE/m2/s 以上の光強度で増殖し、110μE/m2/sで増殖は 飽和すること、2)飽和光強度120μE/m2/sの下で、温度10-30°Cと塩分10-35‰の範囲で30通りのシャットネラ属の組み合わせ増殖実験から、10°Cでは全く増殖できず、15-30°Cと塩分10-35‰の範囲で増殖すること、3)1日に約1回分裂の最高増殖速度を示す水温と塩分の組み合わせはアンティカが25°Cと塩分25‰、マリーナが25°Cと塩分20‰であることを報告している。これらに対して、長崎県薄香湾のアンティカでは、水温12.5~32.5°Cと塩分16~36の範囲で増殖し、最高増殖速度は30°Cと塩分24の条件下で得られた(Yamatogi et al. 2006 28)。培地の pH は 7.6-8.3を好み(Nakamura and Watanabe 1983 29)、培地のpH が 9-9.2 になると増殖は抑 制される(Miyashita et al. 1994 30)。このように、分離された株によって、増殖範囲や最高増殖速度を与える水温と塩分に差異があり、発芽獲得の水温条件と同様に、育った海域に見合った特異な特性を有するのではないかと思われる。シャットネラ・アンティカは窒素源として硝酸塩とアンモニウム塩を好んで利用するが、硝酸塩 よりアンモニアを優先的に利用する(Nakamura 1985 31)。しかし、高濃度のアンモニウム塩では逆に増殖は阻害される。尿素の利用も可能であるが硝酸塩などに比較すると利用効率は悪く、アミノ酸を利用することはない。一方、リン源としては無機リンであるオルトリン酸を効率良く利用する。シャットネラはアルカリ性フォスファターゼ酵素を有していないので、有機リンであるグリセロリン酸を活発に利用できない(Sakurada et al. 2008 32)。このように、シャットネ ラが高密度に増殖するためには、第一に海水中に十分な無機の窒素とリンが溶存している必要がある。東部瀬戸内海では窒素とリンの比が大きいので、シャットネラの増殖はこの海域ではリンで規制されているとの報告がある(Nakamura 1985 33)。 無菌培養でシャットネラを育てる場合、試験液にビタミンB12の他に、鉄やマンガンが存在しな いと生育しないことが分かっている。ビタミンB12は本種にとって必須物質であるが(岩崎秀雄 1976,赤潮-その発生に関する諸問題 126,海洋出版株式会社)、瀬戸内海の沿岸域や多くの海域には増殖を制限しない濃度でB12は溶存していることが報告されている(西島敏隆・畑幸彦 1997, 赤潮の科学 ビタミン類213-227)。一方、播磨灘における表面海水の溶存鉄は3.9から10nMという低い濃度である。海水中に無機の窒素とリンがある程度高い濃度で含まれていたとしても、この海水中の鉄濃度はシャットネラが高い速度で赤潮を形成するためには不足である(門谷茂・ 岡市友利 1997,赤潮の科学 鉄およびその吸収機構 227-239)。底泥と海水を混ぜて振り、一晩放置すると重い泥は沈積し、上の方に懸濁液ができる。この懸濁上澄み液を培養に添加するとシャットネラの増殖は促進される。この液による増殖促進には鉄が関係していたことが後になって確認された(本城凡夫. 1980. 「赤潮-発生機構と対策」, 25-37. 恒星社厚生閣)。また金属イオンと結合して溶解するキレート剤EDTAと鉄を試験管の培養液中に 入れると、非常に良く増殖する。他の栄養分がいくら十分であっても鉄がなければこの生物は高 い速度で増殖しない。このようにシャットネラは増殖に対して鉄を要求する生物である。そして 鉄濃度の増加に従い、増殖速度は高くなる。無菌培養による再現実験でも同じ結果が得られた(紫 加田・本城未発表)。シャットネラが活発に増殖するには鉄が不可欠であることが分かってきた ので、次に細胞の鉄摂取に関する研究成果を示す。

図3は、横軸が溶けた鉄の濃度で、縦軸は一定期間培養した後に増殖した細胞数を示す。試験培各種植物プランクトンの鉄濃度別増殖 *本城(1983)を改変地には予め増殖に十分な無機窒素とリンが加 えられている。その培地の中で、鉄の濃度が高 くなればなるほど一定培養時間後におけるシ ャットネラの細胞密度は高くなっており、増殖 が促進されたことを示している。シャットネラ だけではなくて、ヘテロシグマもまたシャット ネラよりも低い鉄濃度で増殖が促進されている。それに反して、カレニア(ギムノジニウ ム)・ミキモトイは鉄濃度が高くなっても増殖 は全く促進されていない。シャットネラやヘテ ロシグマといったラフィド藻は、鉄を要求する特異的な生物のように思われる。ヘテロシグマはマンガンによっても増殖が促進されることが分 かっているが、シャットネラのマンガン要求に関する研究はない。
シャットネラは日周鉛直移動により、水深7~10mまで夜間に下降するということが室内実験 (Watanabe et al. 1991 34, Watanabe et al. 1995 35, Watanabe et al. 1990 36)や兵庫県 家島半島の野外観測で分かっている。また、諫早湾では夜間に躍層付近まで日周鉛直移動していることが報告されている(Nakano et al. 2006 37)。シャットネラの硝酸塩とリン酸塩の取り込 み速度は明所に比較して暗所では少し低くなるが、夜間でも栄養物質を吸収できることが証明されており(Nakamura and Watanabe 1983 38)、底泥上まで下降すれば、底泥の間隙水に含まれている十分な栄養物質をシャットネラは摂取することが出来る。有明海奥部のように浅くて、赤潮が発生する夏季に、還元化している底泥の間隙水には増殖に必要な栄養塩類や溶存鉄が豊富に含 まれている。しかし、水深が20-40mと深い海域では還元化された底泥に到達することはできない。このような場合、栄養物質を含む河川水の流入や貧酸素水の形成という特別な環境事象が増 殖のために関与していると思われる。
酸素を多く含み、pHが8付近に調整されている培養培地では鉄は酸化する。そのため、鉄をアルカリ性の培地で溶存状態に保つためにはキレート剤である EDTA を添加しなければならない。EDTAを添加しなければ鉄は凝集し、凝集を繰り返した鉄の集合体は次第にフワフワしたコロイド状になる。ところが、シャットネラはこうした溶存からコロイド状に変化した直後の鉄であれ ば利用できそうである(本城 1997.赤潮の科学 - ヘテロシグマ,255-264)。細胞のコロイド鉄 利用には細胞表面に存在する多糖・タンパク質複合体から成る粘液層(グリコカリックス、Yokote and Honjo 1985 39)が関係していると思われる。酸性多糖を含むグリコカリックスはカルボキシル基や硫酸基を有しているので負に荷電していて(Shimada 1995 40)、コロイド鉄を積極的に 吸着する性質があるので、細胞周辺の海水中のコロイド鉄を積極的に吸着していることは間違いない。グリコカリックスを抽出して、さらにその中に含まれる鉄を EDTA で抽出して測定してみると、かなりの量の鉄を含んでいることが明らかにされている(Okaichi et al. 1989 41)。ただし、細胞の中へのコロイド鉄取り込みを立証するためには、グリコカリックスの層に細胞の中からコロイド鉄を溶解する酵素が分泌される必要があり、今後この酵素の存在が証明されなければならない(Honjo 2008 42)。

6.赤潮発生のシナリオ

 瀬戸内海においてシャットネラ赤潮が頻度高く発生したのは1970年代である。環境保全特別措置法の施行による工場廃水などの規制で瀬戸内海の富栄養化が1980年代に入って改善されると、本種の赤潮発生件数は大きく減少している。このように、シャットネラの赤潮発生件数は海域の富栄養化の進行によって増加し、富栄養化の改善とともに件数は減少する傾向にあり、シャットネラ赤潮発生の基盤となる環境条件は溶存態無機窒素や無機リンの濃度によって決まっているように思える。事実、非発生年の無機三態窒素とリン濃度は低く、発生年には高い濃度を示しているという研究報告がある(Nakamura 1985 33)。紫加田ら(2011 43)は無機三態窒素とリンの濃度で八代海における赤潮形成の発生時期を絞り込めるとも述べている。富栄養化が最も進行し、シャットネラ赤潮が頻発していた1970~75年頃、東部瀬戸内海の備讃瀬戸と播磨灘北部海域(岡山県水産試験場と兵庫県水産試験場のデータ)における無機三態窒素(DIN)と無機リン(DIP)の平均濃度はそれぞれ約9μMと0.55μMである。一方、シャットネラ赤潮の発生件数が低くなってきた1980~1987年頃のDINとDIP濃度はそれぞれ4~5μMと約0.25μMであり、いずれも最高濃度期の 1/2~1/3 ほどまで減少し、1990 年代には極端に減少している。現在、東部瀬戸内海においてこれら栄養塩類は約1/3の濃度まで減少しており、シャットネラ赤潮はほとんど発生していない。こうしたシャットネラ赤潮発生件数の推移から、シャットネラ赤潮が発生しなくなるための溶存無機三態窒素(DIN)と溶存態リン(DIP)の濃度基準はそれぞれ3~4μMと0.2μM付近であろうと予想することができる。シャットネラが今もなお頻発しているのは、有明海と八代海である。佐賀県有明水産振興センターのデータによれば、有明海奥部の調査定点における6月から10月までのDINとDIPの平均濃度はそれぞれ約12μMと1.4μMである。一方、八代海の中北部に位置する上天草市樋島北の姫戸定点(熊本県立大学環境共生学部大和田研究室のデータ)のDINとDIPの平均濃度は、それぞれ6.4μMとDIPが0.23μMである。このように、瀬戸内海から推測されたシャットネラ赤潮が発生しなくなるであろうDINとDIPの濃度基準と照合すると、有明海も八代海もシャットネラ赤潮が発生するに十分な海域環境にあると言える。水産庁主導で国立水産研究所および水産試験場によって進められてきた瀬戸内海播磨灘北灘海域(香川県および徳島県沿岸域)と周防灘における赤潮研究の成果から想定される赤潮発生から終息までの過程を図4に示す。そのプロセスは次のようにまとめられる。1)泥の中には冬を越した半円球のシストが沈積しており、春になって水温が早めに上昇する海岸部に沈積しているシストから灘深部のシストの順に発芽し、小型細胞が海水に泳ぎ出る。2)小型細胞が大型の栄養細胞になる過程で核のDNAが倍加する。倍加したDNAをもつ大型細胞が水中に浮遊し、それらが次第に増殖して顕微鏡観察で細胞が認められるようになる、3)富栄養化した海域であれば大型細胞はさらに分裂しながら、海水中の細胞密度は高くなる、4)瀬戸内海播磨灘の北灘海域には大きな河川がないので陸上からの栄養供給はない、5)こうしたところに、台風や強風によって底泥が撹拌されると、海水中へ赤潮形成を支えるに十分な栄養物質が供給され、これをきっかけにしてシャットネラの増殖は一気に加速され、赤潮が形成される、6)赤潮で栄養を使い果たしてしまうと、小型細胞が形成され、最終的にシストになって海底へ沈む。

図4.播磨灘四国沿岸域において想定される
赤潮発生プロセス(本城原図)

ところが、有明海におけるシャットネラ赤潮への増殖開始は底泥撹拌による栄養物質の供給というよりも、河川からの栄養供給と塩分の低下やその後の塩分回復刺激との関係が強いように思える。有明海における2007年の発生経過を図(横軸は月日であり、上の図の縦軸はml当たりの細胞数を対数で、中の図は底層溶存酸素濃度mg/l)に示す。下の図は塩分の変化である。この年は6月に栄養細胞が低密度で稀に観察され、7月初旬に入ると細胞は相変わらず低密度ながら、常時観察されるようになっている。7月の中・下旬頃に細胞密度が急速に高くなり始め、8月の初旬に第一回目の赤潮が形成され、8月下旬に第二回目の赤潮が発生している(88)。図示していないが、2008年の赤潮への急速な増殖も7月21日から中・下旬に生じており、急速な増殖時期は両年とも共通していることから、両年の7月中旬頃にシャットネラの増殖を一気に加速させる環境条件が有明海の奥部海域で整ったことになる。図に示すように7月上旬に、底層の酸素濃度は僅かに低下しているにすぎない。大きな酸素濃度の低下は赤潮が終了した後の細胞分解後に観測されているので、貧酸素水塊の形成が増殖に関与したとは考えられない。急速な増殖開始期に関連して大きく目立つ環境事象を探してみると、むしろ7月上・中旬における河川からの栄養供給や塩分の低下とその後の塩分回復である(図5)。
次に、三重県五ヶ所湾におけるシャットネラの増殖期について述べる。五ヶ所湾では栄養塩濃度基準が低いので滅多に細胞が観察されることはない。本湾で観察されるのはシャットネラ・マリーナで、細胞密度は低く、1984年から1993年までの10年間で、本種の赤潮は一度も観測されていない。五ヶ所湾には大きな河川がなく、外洋に面しているため溶存無機窒素やリンの濃度が低いことに原因していると思われる。図6は三重県五ヶ所湾表層におけるシャットネラ細胞密度の秋から冬にかけての変化である。


増殖初期において塩分が低下している

図5. 有明海佐賀県沿岸域におけるシャットネラ細胞密度、底層水の酸素濃度および塩分の経日変化

五ヶ所湾は外洋に面しているのでこの時期でも、本種が増殖可能な15°Cを超えている。図の上段(A)で、左縦軸は細胞数(対数)、右縦軸が水温、塩分と降水量、横軸は1985年11月から12月までの月日である。また、図中の白丸太実線、黒丸点線、白丸細実線および黒棒はそれぞれ順にシャットネラ細胞数、水温、塩分および降水量の変化である。この図において、縦軸は1mlではなくて1l中の細胞数を対数で表示している。五ヶ所湾におけるこの観測結果は、約1週間で1lに数10個の細胞密度から数千個まで、劇的に細胞密度が3桁程の増加をしている。ただ、スタート密度が低かったために、赤潮を呈する細胞密度にまで到達してはいない。そして、シャットネラ・マリーナ個体群の劇的な細胞密度の増加は、11月6日の120mmに達する降水で塩分が11月6日と7日に21‰まで低下した後、塩分がほぼ回復した11月10日頃から始まっている。もし、10月10日頃に1ml当たり10個程度の細胞が生息していて、供給される栄養塩量が多ければ、10月23日には103cells/mlを超える赤潮になっている計算になるが、現実はそうならなかっただけのことである。このように五ヶ所湾での増殖の開始は塩分の低下から回復する時期と一致しており、有明海の場合と同じケースでの増殖であった(Honjo 1987 44)。このように、有明海、八代海および五ヶ所湾におけるシャットネラ赤潮の増殖開始には河川流入による塩分低下と栄養物質の供給、その後の塩分回復が強く関係し、その結果として高い細胞分 裂活性が培われる。しかも、塩分低下の程度と回復のタイミングがどうも微妙に本種赤潮の発生か、あるいは珪藻類の繁茂かを決めているようである。であれば、底泥の撹拌で生じる播磨灘の発生シナリオの見直しは必要なのか。また、浅い有明海奥部では、日周鉛直移動によって海底の栄養物質を夜間に利用できるはずなのに、なぜ、シャットネラは塩分低下を増殖開始のために必要とするのか。


図6. 三重県五ヶ所湾におけるシャットネラ
細胞密度、表層水温・塩分、降水量の経日変化
および細胞の分裂活性(12)

細胞を固定して蒸留水処理してアルシャン青で細胞を染めるとシャットネラの細胞表面に存在するグリコカリックスが細胞周囲に幅広く広がることが観察される。蒸留水処理をしなければ広がることはない。河川水流入で塩分が低下した際に、細胞表面のグリコカリックスは幅広く広がることが予想され、カルボキシル基や硫酸基が海水中に伸びて鉄を吸着する機能性が一段と増し、鉄の細胞内摂取作用が高まることはないだろうか。塩分低下と回復の刺激について、シャットネラ細胞表面のグリコカリックスの物質摂取も含めた細胞生理学的側面からの研究が本種の発生シナリオを明らかにするうえで必要であると思われる。
発生予察のところで詳述するが、諫早湾では赤潮形成前10日間に塩分が比較的高くかつ珪藻類がこの間に増殖しないことがシャットネラ発生の鍵になっている。シャットネラ赤潮発生に塩分低下が大きく関係するようである。但し、32.5の塩分を0.5まで一気に下げる、すなわち塩分ショックを与えるとシャットネラ細胞は崩壊して死亡する。ところが、12までの低下であれば24時間以内に4割が死亡、18以上だと球形細胞に留まり、死亡することはなかった。一方、多くの珪藻類は塩分が10以下に一気に低下すると死亡するかまたは長いラグタイムを経た後に増殖することが観察されており、塩分10以下までの低下で、珪藻類は増殖できなくなってしまう(Shikata et al. 2008. J. Fac. Agr. Kyushu Univ. 53, 81-87)。例えば、シャットネラ赤潮 形成10日前に塩分が10以下まで急速に低下して珪藻類の増殖が終了すれば、天候が回復してもしばらく増殖は期待できない。この間にシャットネラは競争者のない海水中で円滑に増殖することができるはずである。珪藻類が塩分ダメージを十分に受けない場合、天候が回復すると珪藻が繁茂し、シャットネラは陰になって強い光照度を受けることができずに、あるいは他感作用(アレロバシー)によって、細胞を増加させることができなくなるのではなかろうか。
五ヶ所湾で低塩分からの回復期に増殖が始まり、3桁もシャットネラ細胞密度が高くなったことを図6で説明した。その際に、増殖前から増殖が終了するまでの細胞増殖活性の変化を図8の下段Bに示す。細胞の分裂活性の実験方法を、11月10日を例にして説明する。白い棒の上に小さく4と数字が書いてある。この数字は、この日の海水試料から4個のシャットネラ細胞が分離されたことを意味する。分離された細胞は塩分33.3のGuillard ‘f’培地が200μl加えられている小型容器に個々に接種され、3日間、室内培養された。白棒の高さは4個の細胞が3日後に増加した平均細胞数であり、白棒の上の細い縦線は分離された各細胞の増加のばらつきである。11月10日の4個の細胞は3日間で平均して12個に増殖しており3倍の増加を示したことになる。10月16日にも4個の細胞を分離して同様に個々に培養したところ、3日間で平均して20細胞と5倍にまで増殖した。降雨前の10月1日と5日の平均数が3-6細胞であるのに比較して、降雨後の塩分回復までの細胞増殖活性が3-5倍ほど高く、低塩分から高塩分状態へと環境が回復する期間に、高い増殖活性を有する細胞が培われて増殖態勢が整い、急速な増殖が始まったことが分かる。分離された細胞は十分な栄養物質を含む培地に接種されているので、白棒の高さの変化はシャットネラ個体群の最高の分裂能力が引き出されていることになる。にもかかわらず、11月20日前後の最高細胞密度から細胞密度が減少し始めた途中の細胞をGuillard‘f’培地に接種しても、高い増殖を示す細胞はなかった。本種の急速な増殖開始は細胞生理活性の整いによって生じており、培地中の物質とは異なる化学形態物質による細胞刺激や塩分の低下・回復の刺激効果を無視することはできないことを示している。
ごく最近、紫加田ら(2011、日水誌 77,40-52)は。八代海においてシャットネラが赤潮を形成する初期には溶存無機三態窒素と溶存無機リン濃度が高いときに一致していること、これらの栄養塩類の高い濃度は降水量と同期していることから、本種の増殖の引き金は塩分の低下すなわち河川水の影響であると判断している。また、八代海のシャットネラ株と八代海の表層海水を用いてバイオアッセイ試験を実施し、シャットネラの増殖は第一に溶存無機三態窒素に制限を受け、溶存無機リンと溶存鉄によって制限を受けていることを報告した。このように、有明海、八代海および五ヶ所湾の全てにおいてシャットネラは河川由来の塩分の低下、栄養塩類の供給、塩分回復といった環境事象に関連して増殖し、赤潮を形成している可能性がある。
シャットネラは夜間に分裂し、分裂のタイミングは明期の開始時間によって決まり(Nemoto and Furuya 1985 45)、分裂には9時間を有するので最高増殖速度は1日1回分裂を超えることはないであろうとされていた(Ono 1989 46)。図7の下段から11月10日と11月16日に分離した個々の細胞の毎日の増殖速度を図7に示す。小型容器は暗期にはアルミフォイルで遮蔽された。小型容器の塩分33.3のGuillard ‘f’培地に、11月10日に分離して接種した細胞の中で、培養1日目に1個の細胞が2回分裂している。11月16日の細胞は培養2日目に2個の細胞が、3日目に1個の細胞が1日で2回分裂している。2回分裂は1日に4倍に増加することを意味する。この結果はシャットネラが夜間に2回分裂する潜在的能力を持っていることを明示している。

図7. シャットネラの分裂速度(本城19・・より引用)

このような高い増速速度は細胞を分離して小型容器への接種から間もない期間で、細胞がまだ現場での生理状態を保っている時期に得られている。現場でシャットネラの発生過程を監視する場合、このような高い分裂活性が発揮されていることも配慮しておく必要がある。試験管培養とは異なり、普通、海水は動いているので、細胞が例え高い速度で増えても赤潮形成海域の外へ増殖した細胞は捨て去られる。にもかかわらず、九州環境管理協会は、2007年、有明海諫早湾における赤潮増殖期のシャットネラ・アンティカとマリーナ細胞数の倍加時間を算出するとそれぞれ18時間と18.3時間であり、1日(24時間)1回の分裂よりも短く、これは1日に1回以上分裂した細胞が個体群の中に存在していることを示唆している。
発生予察の項で詳述するが、夏の赤潮の場合、八代海におけるシャットネラ赤潮に対して、冬の気温が高くて、梅雨入りの遅い年に大規模な赤潮を形成する(Onitsuka et al. 2015, Fish. Sci., 81, 123-130.)シャットネラは、水温が15°C以上に上昇すると発芽を開始し増殖が可能であるので、冬から春にかけての気温が高ければ、海水温も温められ、早くから栄養細胞が出現し、個体群密度が高くなって発生の準備が整い易くなる。さらに、梅雨入りが遅いとその分だけ個体群密度はさらに高くなり、梅雨入りで栄養物質が川から海へと入ってくると、塩分の刺激も手伝って細胞の増殖活力が整い、一気に赤潮を形成できるのではないかというシナリオが想定できる。最近の研究で、シャットネラは連続の好天をその後の増速に必要とし、日照不足の天候を好むカレニアと対照的であることが分かってきている。

7.赤潮発生予察

 東部瀬戸内海の播磨灘において、大きな水産被害を与えてきたシャットネラ赤潮の中・長期及び短期予察システムの確立試験が、1986年に水産庁の委託予算で実施され、14年間に亘るデータを用いて、長年の検討を要して、下記する5種類(西風指数と黒潮流路、播磨灘20m層塩分ソプレットパタ-ンの位置、明石の水温・塩分、播磨灘の鉛直安定度と底層水温、紀伊水道水温分布)の予察指標が抽出された。これらに使われるデータの期間は指標毎に異なり、赤潮発生期から半年ほど早い時期の判定指標も含まれる。

図8. 瀬戸内海播磨灘四国沿岸域におけるシャットネラ赤潮発生の予察

 指標毎に毎年の発生と非発生を照合し、発生と判別された予察指標の数を合計した値が3を超えると発生年であるとする予察手法が開発された(図8)。これで得られた的中確率は9割5分という驚くべき高い精度であり、シャットネラ赤潮の予察が可能になるところまで辿り着けた。ところが、播磨灘の富栄養化が改善されたことにより、シャットネラ赤潮は形成されなくなり、この予察手法が播磨灘で十分実用されることはなかった。
各予察指標について以下に解説したい。
1)西風指数・黒潮流路:西風指数とは11月から翌年1月までの福岡と大阪の月平均気圧差であり、3ヶ月の平均値でみて1.6mb未満の時に発生年、それ以上の時には非発生年と判断する。すなわち気圧差が1.6mb未満と弱いということは、福岡から大阪に向かって吹く西風が弱く、それによって生じる西から東への貫流形成が弱い年ということになる。黒潮流路というのは、11月から翌年3月までの室戸岬と潮岬を結ぶ線から黒潮流軸までの平均距離である。平均距離が短い年(接岸年)には紀伊水道から瀬戸内海水が流出し、長い年(離岸年)には外海水が瀬戸内海に流入する傾向にある。そして、離岸年を発生年とし、この両者を合わせて、発生・非発生の判別をする。
2)播磨灘20m層塩分のイソプレットパタ-ンの位置:1月から4月を通じて、燧灘からの塩分の低い場所が香川県の観測定点4を越えて播磨灘に張り出さない時は発生年とする。
3)明石海峡の水温・塩分:4月中旬から5月中旬までの水温・塩分が平年値に比較して高水温かつ高塩分であれば発生年とする。
4)播磨灘の鉛直安定度・底層水温:灘中央部における2月から7月までの底層水温平均平年偏差と7月の鉛直密度差の関係から、鉛直密度差が小さい場合を発生年とする。また、底層水温が平年より高い年であっても、あるいは最低水温を示す3月の灘中央部の底層水温が9°Cを超えるか8°Cであっても、その後急速に水温が上昇する場合も7月の鉛直安定度は小さくなるが、この年も発生年とする。
5)紀伊水道水温分布:7月に紀伊水道の北緯33°付近に暖水塊域が出現する場合は発生年とする。非発生年は逆に冷水域が出現する年である。
以上の播磨灘の中・長期予察から、どういう環境状態の年に赤潮が発生しているかを要約すると次のようになる。冬の播磨灘で西風が弱いということは、博多の方から大阪へと吹き抜ける西風が弱いために、燧灘や備讃瀬戸から播磨灘への低水温かつ低塩分の海水の流れ込みが少ないこと、さらに冬に黒潮流軸が離岸状態であることは、紀伊水道から瀬戸内海へと黒潮海水が入り易く、冬の播磨灘が高水温、高塩分傾向で経緯することを意味している。次に、冬から春にかけて備讃瀬戸から塩分の低い水塊が播磨灘に流れ込まない(ソプレットパタ-ン)。これは冬から春に西風が弱いという事にも連関しているが、春になっても播磨灘で高塩分が持続すること、明石海峡の水温と塩分が春から初夏にかけて高いということ、さらに、7月に入っても暖かい高塩分の外洋水が紀伊水道から流入し、7月に灘中央部の水温が高くて撹拌され易い環境になっている年にシャットネラ赤潮は発生し易いことを示している。すなわち、冬から初夏までを通して播磨灘は高水温で高塩分状態にあり、初夏に水塊が撹拌されやすい年にシャットネラ赤潮は発生することを明示している。
次に、播磨灘の赤潮を25日以内で予察しようという短期予察について説明する。まず、25日前にシャットネラ大型栄養細胞が確認され、表面水温が24°C以上になって、栄養細胞が増殖する。発生の1週間前に悪天候と気温の低下で一時的に水温が低下し、強風が吹き、短期間の混合が生じる。これは海底からの栄養塩の供給を意味している。発生の1日から2日前に好天になり、表面の水温が急激に上昇して成層が発達し、それまでに少しずつ数を増していた栄養細胞が一気に増殖して大規模な赤潮になる。これが短期予察のまとめである。播磨灘におけるこの短期間の混合、すなわち発生前に水温が低下し、強風(台風)が吹くという環境事象が特徴である。冬から夏にかけて高水温でかつ高塩分であるという環境がシャットネラの発生とどのように関連しているのか、その謎が探求されなければならない。
最近、Onitsuka et al. (2015, Fish. Sci., 81, 123-130.)は八代海におけるシャットネラ赤潮に対して、冬の気温が高くて、梅雨入りの遅い年に大規模な赤潮が発生するという予察手法を開発した(図9)。播磨灘と八代海で開発されたふたつの発生予察で、冬季から春季までの水温が共通して高いという点に注目しなければならない。しかし、有明海にこの予察手法は適用できないようである。おそらく、冬の高い気温の反映を持続できるある程度深い内湾にのみ適用できる手法ではないかと思われる。

図9.八代海おけるシャットネラ赤潮の発生と冬~春の気温・梅雨入り時期の関係(1988~2014)
水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所 鬼塚 剛博士提供

有明海奥部に位置する諫早湾におけるシャットネラ赤潮発生予察について次に述べる(中嶋・他 2009環境管理, 38, 37-45. 九州環境管理協会)。解析に当たって、農林水産省九州諫早湾農政局の自動観測装置で得られた調査結果が主であり、2008年に限って長崎県総合水産業普及センターおよび長崎県総合水産試験場赤潮発生状況のデータを使用している。8月初旬から中旬に発生した植物プランクトン相の特徴を整理してみると、2002年はセラチュウム・フルカなどの渦鞭毛藻類と珪藻類、2003年と2006年は珪藻類、2004年はシャットネラと渦鞭毛藻類、2005年はヘテロシグマと渦鞭毛藻類、2007年と2008年はシャットネラが赤潮を形成した年であった。大別すると、2004年、2007年、2008年はシャットネラ発生年、2002年、2004年、2005年は渦鞭毛藻類の発生年、2003年、2006年は珪藻類の発生年となり、諫早湾でのこの調査期間中にシャットネラ赤潮は8月初旬・中旬に発生している。
殊に、7月26日から31日までの期間に珪藻類が発生した年は、8月に入ってシャットネラなどのラフィド藻類やセラチュウムなどの渦鞭毛藻類は発生していない。そこで、この僅か1週間ほどの環境変化に注目してみると、2003年と2006年では表層から底層にかけて塩分が20未満と低くなっており、この両年は珪藻類赤潮の発生年である。一方、シャットネラ赤潮が発生した2003年、2006年と2008年はこの期間の塩分は高く経過しており、シャットネラはこの期間に陸域からの淡水の影響の比較的少ない年に発生している。
このような結果を踏まえて7月26日から31日までの水温(縦軸)と塩分(横軸)の関係を図10に示す。僅か1週間程度であるにもかかわらず、水温と塩分の回帰直線傾きは年によって大きく異なる。

図10. 2002年から2008 年までの7 月26 日から31 日までの期間において諫早湾一定点でクロ ロフィル-a 値(10分間隔)の鉛直分布のピーク値を示す層の水温(縦軸)と塩分(横軸)の 関係および傾き(水温/塩分比)

図11. 発生した赤潮プランクトンと
傾き(水温/塩分比)との関係および 7月15~25日の間の平均降水量と水温の変化

シャットネラの発生年は塩分が低下しないでなおかつ水温が高くなっているので傾き係数が高く、珪藻類が赤潮を形成した年は傾き係数が低くなっている。傾きが中間である年は渦鞭毛藻類の発生年にほぼ相当した。7月26日から31日にかけての塩分低下はその10日前(7月16~25日)の淡水流入量に応じて変動する傾向にあり、有明海の奥部に流入する主要5河川からの淡水流入量が4x108m3・10 days-1 を下回る年は諫早湾にはシャットネラ赤潮は発生しやすくなる(図11)。論文には記載されていないが、この5河川からの淡水流入量は80mmの雨が降るか降らないかで決まってくるようで、降水量からおおよその非発生・発生年の判定ができることになる。7年間という少ないデータでの解析であり、今後も検証していく必要があるが、これは発生直前の塩分変化を指標とした、短期予察手法として活用することができる。一方、松原ら(2009 47)は有明海奥部の8月のシャットネラ赤潮が7月上旬の合計降水量と平均全天日射量の値で80%以上の確率で発生予察が可能であるとしている。これらを統括して発生の有無を論ずることはなされていないが、有明海奥部や五ヶ所湾と同様に諫早湾でも塩分低下の時期、低下の程度、塩分回復期などが本種赤潮の発生を微妙に左右しているように思えてならない。


図12. 2004 年八代海におけるシャットネラ細胞分布の経日変化

八代海では北部海域で本種の細胞は初認されることが多く、球磨川の影響で塩分が低下し易い北部海域で発達した赤潮が北側から吹く風によって南部海域へ移送され、鹿児島県に到達して消滅する傾向が図から読み取れる。すなわち、シャットネラ細胞数を示す赤丸印が北部海域に現れ、時間の経過と共に南側へ移動して、消滅している。今後、本種細胞の初認に関して地場発生と有明海からの細胞の流入の両面から十分検討する必要があるけれども、鹿児島県は熊本県の赤潮発生の経過を監視することによって、地元への来襲を予察することができそうである。
有明海、八代海、五ヶ所湾において、シャットネラ赤潮の発生開始は塩分の低下と強く関係している証拠が積み重ねられてきている。これは播磨灘でこれまでに研究されてきた高水温・高塩分環境下での撹拌による底泥からの栄養供給での発生と大きく異なる点である。しかし、播磨灘北部海域(兵庫県)から南部海域(香川県)へと河川水からの栄養物質やシャットネラ細胞そのものが流れてきて赤潮を形成している可能性もあり、播磨灘における発生直前の発生シナリオは異なる視点から研究する必要があるように思われる。

8.斃死機構と防除対策

シャットネラは魚類を斃死させる。しかも、大きな被害がハマチ養殖で発生したことから、我が国ではハマチを使用した研究が多くなされてきた(Hishida et al. 1997 48,Ishimatsu and Oda 1994 49,Ishimatsu and Oda 1998 50,Ishimatsu et al. 1996 51,Ishimatsu et al. 1996 52, Ishimatsu et al.1991 53,Jenkinson et al. 2007 54,Kim et al. 2000 55,Kim et al. 2001 56,Shimada et al. 1983 57,Tanaka et al. 1994 58,Tanaka et al. 1992 59,Toyoshima et al. 1989 60,Tsuchiyama et al. 1992 61 図15)。これらの研究成果を総合すると、斃死機構はシャットネラ細胞と鰓の接触、各種活性酸素と鰓との反応による鰓の損傷、シャットネラ細胞の変形に伴う細胞表面のグリコカリックスの剥離とそれらの鰓詰り等が関係した窒息死であるとまとめることができる。シャットネラはO2-, H2O2, OHといった活性酸素を生成し海水中に発散していることが判っており(Oda et al. 2001 62,Shimada et al. 1991 63,Shimada et al. 1989 64)、シャットネラの細胞懸濁液に魚の粘液を加えるとシャットネラのスパーオキサイドの生成が促進され、粘液の中に含まれる熱に安定な成分が活性酸素の生成に関与していると考えられている(Nakamura et al. 1998 65)。魚種によって斃死作用は異なり、ハマチが全滅する条件下でも、タイの死亡率は33%、ヒラメは0%に留まった。これは魚種による酸素要求量や窒息に関する生理的応答の違いによるものと考えられている(Hishida et al. 1998 66)。これに対して、鰓における血液循環減少による貧血が生じ(Ishimatsu et al. 1990 67)、神経毒が迷走神経を脱分極させるために心拍数の減少が起こって死亡する(Endo et al. 1989 68, Endo et al. 1992 69)、神経毒そのものが原因である(Khan et al. 2001 70)、活性酸素と神経毒の相乗効果とする報告もある(Imai et al. 1984 71)。シャットネラはアサリには有害である(Kim et al. 2004 72)。しかし、カキには無害であり、10~100cells/mlの細胞密度では最高の速度でシャトネラ細胞をろ過して、摂餌することや、カキの組織に何等の損傷もなく、免疫学的手法により消化管からシャットネラ細胞組織の消化片の存在、すなわちシャットネラが摂食されていることが証明されている(Nagasoe et al. 2011 73)。さらには、カイアシ類(コペポーダ)もシャットネラの密度が低い時には摂食することが観察されている(Uye 1986 74)。

鰓の表面がヤケドのようにただれたり、粘液が詰まって呼吸ができなくなる
図15 シャットネラによるハマチ(ブリ)の斃死機構概略図
(水産総合研究センター西海区水研究所 松山幸彦氏提供)

ハマチはシャトネラの濃厚層を避けて泳ぐ
非常に効果的な対策だがまだ全国的には普及していない

 一方、斃死防除対策の研究もなされている。香川県は、漁師に対するアンケート調査を行い、赤潮期間中に生簀の移動や網の継ぎ足しを行うとかえって被害は増大すること、被害率は放養密度、餌料の種類と量、および小割生簀の形態によって異なることを知った。さらに、魚探による魚の群生層の観測とシャットネラ細胞の細胞密度の分布の計測から、ハマチは赤潮の濃密な水深を避けて泳いでいる(忌避行動)ことが判った。結果として、香川県は大型小割生簀の使用を推奨し、収容密度の低下に繋がること、ハマチは赤潮から逃れる場所ができることで被害が軽減されることに加えて、長期の餌止めを実行することによって、被害防止に大きな効果があると結論した(Hamamoto et al. 2005 75 図16)。その他に、過酸化水素や界面活性剤(Kagoshimaken 1993 76, Murata et al. 1989 77,Murata et al. 1991 78)、アクリノール(Muhammad et al. 1991 79)、通電(Shimada 1996 80)による被害防止の検討がこれまでになされてきた。
我が国において、本格的な赤潮の研究は1960年代に始まり、今日に至るが、その間に開発され、実践されている被害防止技術として、1)イケスの避難(移動に時間を要する、海域移動と借料でコストが高い)、2)大型小割イケス(大規模赤潮では被害軽減は無理)、3)絶食(大規模赤潮では限界あり)、4)活性粘土(日本は入来モンモロロナイト、韓国は赤土粘土)の散布(生物によって効果が異なる)を挙げることができる。1)から4)までの技術には()の中に記載しているような短所もあるので、実施に際しては適切な策の選択が必要である。残念ながら、長い間、これら以外の実践的な技術は開発されなかった。最近になって、ブリの完全養殖の成功に伴い、早期出荷が可能となってきた。人工ふ化によって3ヶ月早く採卵して得た稚魚を、冬期の低水温期に暖かい種子島で越冬させ、それを春から鹿児島県の漁場に移して養殖する。赤潮に比較的耐性のある小さいサイズでまずは最初の赤潮期を乗り越え、翌年の6月には出荷サイズとなるので、赤潮発生期前に販売することができるようになった。この技術はシャトネラ赤潮に悩まされ続けてきたブリ養殖業界にとって朗報である。

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