香川大学 微細構造デバイス研究開発センター
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植物 工連携 
MEMS植物センサ ”農業IoTプラットホーム・次世代植物工場の実現に向けて”
香川大学 工学部 知能機械システム工学科 下川研究室
(下川房男 教授)

MEMSセンサの農業IoT応用:MEMS植物センサ(超小型道管流/師管流センサ−)


研究の目的

現在,地球規模での気候変動等の環境問題や人口増加の問題が一段と深刻さを増す中,大幅な農業生産や環境保全の実現が緊急の課題となっている.作物,果樹等の生産性の向上には,植物の生育状態に合わせて最も適切な時期に灌水や施肥補給を行なう必要がある.そのためには,植物の生育に影響を与えず,生育状態を的確にモニタリングする植物生体情報計測が不可欠である. 本研究では,MEMS技術をベ−スに,非破壊で,水分・栄養物質動態をin-situ観察可能な超小型「維管束(道管流/師管流)センサ」を実現し,作物の生産性向上や高品質果実の安定生産に貢献する.そして、次世代植物工場を中心とする農業IoTプラットフォームの構築を目指す.
 更に,これらのセンサ情報を統合し,植物の生育に最も重要となる作物や果樹等の新梢末端や果柄の細部を含む植物全体での時空間的な水分・栄養物質動態の測定により,光合成等を含む植物環境と植物生理学との関係を解き明かす学術的な貢献も本研究における重要な課題としている.

研究成果の概要
図1に,従来の道管流センサ(グラニエセンサ)と本研究で提案する超小型道管流センサの構成を比較して示す.従来のセンサは,太い樹木(直径:10cm以上)を対象としたもので多くの使用実績があるが,最も重要となる植物の新梢末端や果柄等の細部の水分量を測定することはできなかった.本研究では,従来のグラニエセンサをベ−スに超小型化(従来センサとの寸法比:1/10)・1チップ上への機能集積化(凡そ5mm角のSiチップ上にマイクロプロ−ブ、薄膜ヒ−タ、温度センサ等のセンサの主要構成要素を一体形成)した新しいセンサ構造を提案した.

超小型道管流センサ
図1 従来の道管流センサ(市販品)と本研究提案の超小型道管流センサとの構成の比較

次に,図2に,製作した超小型道管流センサを用いて測定した流速測定結果と従来のセンサを用いて種々の植物で計測された流速測定結果とを対比して示す.本研究のセンサにおいても,従来のセンサと同様に,センサ出力の大小から流速(流量)を算出できることが明らかとなった.このことから,従来のセンサと組み合わせることで,植物全体での水分動態を,今まで以上に高解像度でモニタリングできる可能性がある.



図2 植物内の流速測定結果:(a)従来のセンサ、(b)超小型道管流センサ

図3は,サニ−レタスの葉の主脈に本研究のセンサを挿入して,流速の一日の変化を調べた実験結果である.この日変化の様子は,多くの樹木等で観察されている流速の変化や流速値のオ−ダ−とも良く一致しており,測定結果の妥当性を裏付けている. 更に,ここで記載した道管流センサを発展させ,維管束のもう一つの器官である師管について,(1)流れの向き,(2)流速,(3) 維管束(道管/師管)の位置情報,(4)師管液の採取・成分測定等を狙いに,Siのカンチレバ−上に,必要な素子を機能集積化した超小型師管流センサを考案した(図4).これまでに,センサのプロトタイプを製作して,疑似植物実験系において,これらの構成要素が概ね機能できることを確認した.今後は,植物での実験を開始する予定である.


図3 サニ−レタスを用いた流速の日変化 図4 本研究で提案した超小型師管流センサの構成 備考 科研費・基盤研究(B)「植物内の水分・栄養物質動態をin-situモリタリング可能な超小型維管束センサ」

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