香川大学 微細構造デバイス研究開発センター
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MEMS研究
            
サンプル写真 工連携(医療用MEMS) 
MEMS内視鏡センサ ”超低侵襲内視鏡医療技術の実現に向けて”
香川大学 工学部 知能機械システム工学科 高尾研究室
(高尾英邦 教授/微細構造デバイス統合研究センター センター長)
香川大学 医学部 消化器内科・神経内科
(森 宏仁 講師/kagawa-NOTESプロジェクト主催者)

医療用MEMSセンサ:MEMS内視鏡用圧力センサ


■研究の目的
超低侵襲手術・医療技術NOTES(自然開口部越経管腔的内視鏡手術)*の実現に向けて、香川大学工学部の研究成果である半導体マイクロマシン技術(MEMS)を融合して新しい内視鏡センサを研究開発する。内視鏡下で小型MEMS触覚センサを用いて臓器等の体内情報を「触覚」することを目的とする。この第一段階として腹腔内(胃内)の圧力をMEMSセンサにより測定する技術を確立する。

* NOTES(自然開口部越経管腔的内視鏡手術):内視鏡手術において術具などを口・肛門・膣などから消化管腔内を経由、消化管壁を穿孔、腹腔内に到達させて、手術の施行、消化管壁の縫合、口・肛門・膣などから病巣の取り出しを行う超低侵襲手術。

■医療現場ニーズ
現在、内視鏡検査・手術では視野の確保のために気腹(CO2送気で約8-10mmHgの定圧CO2を腹腔内に送気し腹壁と臓器に空間を作る)をするが、気腹時の腹腔内(胃内)圧力をモニタリングできないという課題がある。この課題を解決するために、腹腔内(胃内)の圧力を小型MEMSセンサにより測定する技術を確立する。

■本機器の特徴
・複合型シリコン皮膚触覚センサをアレイ状センサ画素の集積化により開発:シリコンを10μm(髪の毛の約5分の1以下)まで薄膜化して、空気圧をかけて全体を膨らますことにより、弾力性を有するシリコン面を実現。集積化された個々の力覚センサーが人間の指先よりも高感度であり、神経細胞よりも高い密度で形成されている。
・体内情報のモニタリング可能な内視鏡実装型超小型センサを実現:内視鏡手術・診断において軟性内視鏡先端に装着される内視鏡フードに超小型MEMSセンサを実装(MEMSフード)。このMEMSセンサは内視鏡視野を確保するためにフード側壁に埋め込まれて実装されている。

内視鏡実装型超小型センサー

   図.センサ実装断面図      図.センサ実装内視鏡フード(MEMSフード)

■動物実験結果

動物実験において、内視鏡先端に実装したMEMSセンサ(MEMSフード)により胃内圧力を測定できることを実証した。左下図に胃内圧力測定結果を示す(青:MEMSセンサにより測定された胃内圧力、緑:実際の胃内圧力(参照圧力)、赤:MEMS温度センサにより測定された胃内温度)。
内視鏡送気による圧力上昇に伴いMEMSセンサによる測定値も上昇する。測定波形に現れる微細波形は、動物(犬)の呼吸に伴う胃の動きによる圧力変化に起因するものである。このように、MEMSセンサにより胃内圧力の変化を高精度で測定できることがわかった。

内視鏡実装型超小型センサー(動物実験)
         図.胃内圧力測定結果             図.動物実験の光景

■新しい医療技術への展開

この内視鏡センサを用いた医学的実験により、がん治療の方針判断に必要ながんの大きさの測定を所定の胃内圧力下で行うことの必要性を明らかにした(H.Mori et.al.;” Precise tumor size measurement under constant pressure by novel real-time micro-electro-mechanical-system hood for proper treatment”, Surgical Endoscopy, 2015)。下図に測定される胃内領域サイズの胃内圧力依存性を示す。MEMSにより測定される胃内圧力が増加すると、医療的に測定される胃内領域サイズ(例えば、がん組織のサイズ)も増加する。このことは、がん治療の方針判断に必要ながんの大きさを測定するときには測定時の胃内圧力を把握すことが重要であることを示唆する。換言すれば、所定の胃内圧力下でがんの大きさを測定する必要があることを示す。この結果が医療現場に導入されれば、この内視鏡センサが新しい医学技術を切り拓くともに、この内視鏡センサの市場も拡大することが期待される。

胃内領域サイズの胃内圧力依存性
    図.測定される胃内領域サイズの胃内圧力依存性
(引用文献:H.Mori et.al.;” Precise tumor size measurement under constant pressure by novel real-time micro-electro-mechanical-system hood for proper treatment”, Surgical Endoscopy, 2015)
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工連携 超低侵襲内視鏡医療技術の実現に向けて

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