工学研究科 知能機械システム工学専攻 博士後期課程1年
川嶋 なつみ さん
2019/3/20 掲載

HOPE ミーティングとは

HOPEミーティングは、ノーベル賞受賞者をはじめとする世界の知のフロンティアを開拓した人々と、アジア・太平洋・アフリカ地域から選抜された優秀な大学院生らが1週間の合宿形式で交流を深めるイベントで、同世代の研究者との交流、人文学・社会科学分野の講演や芸術プログラムを通じて、将来の同地域の科学研究を担う研究者として飛躍する機会を提供するものであり、日本国内からは25名程度しか選ばれない栄誉です。
川嶋さんは、文部科学省「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」4期生に選ばれ、ミュンヘン工科大学に留学、国際会議での発表や英字論文誌へ採択など、その国際性や研究実績が評価され今回の選出に至りました。

HOPEミーティング報告

沖縄県で開催された11th HOPE Meetingは、ノーベル賞受賞者による75分のLecture、45分のGroup Discussion、国際色豊かなチームメンバーとのTeam Presentation、個人ごとのPoster Presentation、沖縄県の文化を学ぶCulture Program、会場である沖縄科学技術大学院大学のLaboratory Tour、そして沖縄観光の時間となるExcursionで構成されていました。今回の研究交流会を通して、研究姿勢や進路選択に対する知見が得られ、また若手研究者同士のネットワークを構築することができました。

Lecture・Group Discussion

Prof. Takaaki Kajita、Prof. Hiroshi Amano、Prof. Aaron Ciechanover、Prof. Ada Yonath、Prof. Ben L. Feringa、Prof. Tim Hunt、そしてProf. Gunnar Öquistより講義を受けました。Lectureでは基礎科学の研究に携わってきた先生方がほとんどであったため、非常に専門的で他分野の研究者の自分には難しい内容も多かったです。しかし、生命科学関係のタンパク質等の分子に関する発表内容に対しては、振動分光学の分野に携わり医工連携を利用したヘルスケアセンサーの研究を行っている自分にとって有益な情報やインスピレーションを与えられました。先生方の研究内容の他に、失敗談やそれを克服し成果に結びつけた経験談、そして次世代の研究者に対する意味深長なメッセージが込められていました。そのため、博士後期課程1年生という研究者人生の最初期に今回の講義を聞くことができ、今後の研究者人生に生かせると思うと非常に幸運であったと思います。LectureとGroup Discussionでは特に若手研究者達から「進路選択先はポスドクか企業か」「研究テーマは基礎科学か応用科学か」に対する質問とコメントが多く、国を問わず大学のポスト不足や基礎科学研究における研究費不足が共通の問題となっているようでした。

大学教員になることを目指し、キャリア形成のために博士号取得後にポストドクター(任期付きの研究者、博士研究員)として働く、という進路を選んだ(今後選ぶ)者がHOPEミーティングでは非常に多かったです。私自身にも十分に可能性のある進路であったため、彼等に対する先生方からのあらゆるアドバイスを注意深く聞いていましたが、最終的には”Let’s enjoy your life.”というこの一言で尽きることが分かりました。グループディスカッションにおいてProf. Aaron Ciechanoverは”Post doctor’s experience is to establish own identity. Don’t hesitate to change. Develop your philosophy. Think about yourself. What do you want to do?”と仰っていたし、他の先生方も「研究分野に対する興味とやる気さえあれば何でもできる。お金は問題にはならない」と仰っていました。”Let’s enjoy your life.”という言葉は、以上の理由から上記で述べた進路選択と研究テーマ選択の両方において最も簡潔かつ明解な解答であると思います。研究費も生活費も苦しい中研究に対する情熱だけで学生時代を駆け抜けた先生方もいらっしゃったため、その言葉に宿る説得力は絶大でした。そして研究に対する情熱と自分の人生を最大限楽しむいう決意のもとでは、他人からのネガティブな言葉や評価も気にならないといいます。技術の出口が見えている応用科学とは異なり、基礎科学という一般では理解されにくい研究分野に携わっている研究者にとって他人からの評価は当然大きな問題となっていましたが、そんな彼等にとっても勇気付けてくれるような力強いアドバイスであったと思います。

特に印象的で私を大きく勇気づけてくれた、Prof. Aaron Ciechanoverの「現代の病気に対する“薬”は“技術”である」という言葉を紹介します。初日のLectureや昼食をご一緒させていただいた時に彼が言った言葉で、「現代の医療は科学の力無しでは進歩できない」という意味です。「顕微鏡やCT、MRIといった医療機器は大きく現代医療を前進させた。イメージングやモニタリングの技術の開発に携わっているのであれば是非頑張って欲しい」と激励の言葉を贈ってくださいました。日常生活空間での生体成分のモニタリング技術は未だ確立されておらず、人々が何気ない日々を過ごす中で起こっている病態の変化を我々はまだ明らかにできていません。非侵襲血糖値センサーを代表とする痛みを伴わないストレスフリーなヘルスケアセンサを開発して、発病予防や早期発見は勿論、日常的に進行する生活習慣病のような病の解明といった現代医療にも貢献していきたいと思います。

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                                                               Panel discussion

Poster Presentation

様々な研究分野の研究者達が集まる研究会であっただけに、他分野の研究者達でも理解できるように最も基本的なことから説明して応用研究の説明へと繋げる必要があったため、1人1人の対応がかなりタフな発表でした。Prof. Takaaki Kajitaもポスターを見に来てくださり、有益なアドバイスや激励のお言葉をいただきました。研究意欲の高い研究者達ばかりであったため、自分の研究分野とも絡めて話題を発展させ、異分野混合での共同研究の実現に向けて積極的に議論し合っていました。

Team Presentation

あらゆる国籍のメンバーで構成された10人程度のチームに分けられて4つのトピックの中から1つを選び、最終日に8分間のプレゼンテーションを行うプログラムです。私はTeam Bに割り振られており、国籍は日本・中国・台湾・インド・インドネシア・マレーシア・シンガポール・ケニアでした。トピックは”Science and global issues”に決定し、毎日数時間ずつ設けられた準備時間にメンバー達と机を挟んで議論し合いましが、国ごとに抱えている深刻な社会問題や頭を悩ませている環境問題に関してテレビや新聞等ではなかなか知り得ない現地民視点での話を聞くことができました。お互いの国についてよく知る良い機会ではあった一方、教育的背景や国民性、価値観の違いが問題となって頑なに意見を変えない者も出てきたためなかなか議論がまとまらず苦戦しました。Prof. Takaaki KajitaもLectureで仰っていたが、皆の意見をまとめ代表し導いていくリーダーシップは研究においても国際活動においても非常に重要である痛感しました。紆余曲折はあったものの、皆で力を合わせ納得のいくプレゼンテーションに仕上がり、かけがえのない理解者(チームメンバー)として仲を深めあうことができました。

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                Team presentation preparation

Laboratory Tour・Culture Program・Excursion

Laboratory Tourでは少人数グループに分かれて沖縄科学技術大学院大学内の研究室を見学して回りました。沖縄科学技術大学院大学は半分以上が留学生であるため、非常に国際的で大学内の会話や議論はほとんど英語でなされていました。授業や研究といった教育システムも含めた全体のグローバル化が進んでいる大学院大学の見学は初めてであったため、新鮮な気持ちで見学することができ、また世界基準の物事の考え方や議論の仕方はとても刺激的でした。Culture Programでは沖縄文化である「紅型」と「ぶくぶく茶」のどちらかを選択して体験できるシステムであったため、私は「紅型」を選択しました。全員初心者であったため塗り方や手順について話し合いながら基本的には皆黙々と作業をしていました。Excursionでは首里城と国際通りに訪れ、特に首里城は華やかで色鮮やかであったため興奮気味に写真を撮り合っていました。それぞれの出身国の観光地に関する話題や沖縄・日本文化に関する話題で、観光中も大いに盛り上がっておりお互いの国への訪問を約束している人達もいました。

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                         Laboratory tour

    excursion.jpg                       Excursion

最後に、非常に有意義で実りある11th HOPE Meetingという機会を提供・主催してくださった日本学術振興会の皆様、本研究交流会のあらゆるマネジメントを担当してくださった東武トップツアーズ株式会社の皆様、会場を提供してくださった沖縄科学技術大学院大学の皆様、そして申請書やポスター等の添削・ブラッシュアップに協力してくださった香川大学の石丸伊知郎先生とその研究室の皆様に心からの感謝の意を表します。

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