DRI能力を育成するための基盤的教育

DRI能力を育成するための基盤的教育の目的は、より多くの学生にDRI能力を身につけてもらうことです。そのために、全学共通科目の主題において「はじめて学ぶDRI」(2019年度以降)、「課題探求ベーシックス①~③」(2019年度以降)、そして「人を動かすロジカルコミュニケーション」(2020年度以降)という新たなDRI能力育成科目が開講されています。

授業紹介

ここでは、新たに開設した5つのDRI能力育成科目についてご紹介します。

  • はじめて学ぶDRI(全学共通科目・主題科目、第1クォーター、第3クォーター、1年生から受講可能)

    「はじめて学ぶDRI」の授業の目的は、DRIを地域活性化にどのようにいかせるか、考え、説明することができるようになることです。この授業は、DRI教育の入門の役割を担い、DRIイノベーター養成プログラムの必修科目にもなっています。授業は、次のような流れで進んでいきます。

    シラバスはこちら [PDF:472KB]

    1. グループで地域課題を確認し、その解決策を考えます
    2. D・R・I それぞれの専門家が、D・R・I を地域活性化にどのようにいかせるかを説明します
    3. グループで、最初に考えた地域課題の解決策をDRIの観点から捉え直し、新たな解決策を考えます

    2022年度の授業

    受講者数は、1クォーターでは67人、3クォーターでは399人で、合計466人でした。今年度も人数にばらつきがあるものの、すべての学部から学生が参加していました。 

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                             グループワークの様子 

    各グループは、次のような地域課題に取り組みました。

    地域における人口減少/住みやすい町作り/香川県の若者流出対策/若者が地方から都市に転出している問題/地方の企業に対するアピール支援/障がい者雇用/空き家対策

    受講者の感想
    • D、R、Iそれぞれが果たす役割を知ることができた。また、それを地域課題の解決に生かすことができたと思う。同じグループになった人が全員違う学部であったが、みんなと協力してパワーポイントを作ったり、発表のための準備をしたりすることで仲が深まったことも、この授業を受けてよかったと思える点である。(医学部1年生)
    • DRIを使って物事を考えていくことができるようになったと感じます。また、具体的な地域課題やその解決策を考えるにあたってグループワークを行なったおかげで、自分一人では考えつかないような意見や物の見方など、新しい視点を得ることができました。(経済学部1年生)
    •  物事を多角的に捉える力、またグループでの発表ではグループ全員の意見をまとめる力を養えた。グループ発表では、発表する側として、どのようなスライドを作ったらより自分たちの地域課題解決策が伝わるだろうかとスライドやスピーチ内容を考えながら作ることができた点において、将来他の講義でも必要な能力が培うことがきでた。また、発表を聞く側として、自分では思い浮かばなかったような解決策を聞けたこと、そして現代社会が抱える地域課題や地域活性化についてより多く知れたことが良かった。(教育学部1年生)
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    • 2019年度
    • 2020年度
    • 2021年度
  • 差別とマイノリティ(全学共通科目・主題科目、第2クォーター、1年生から受講可能、課題探求ベーシックス①)

    「差別とマイノリティ」は、「課題探求ベーシックス①」にあたります。この授業の目的は、日常から距離をとる態度、自分の中にある決めつけや思い込みから距離をとる態度を身につけることによって、マイノリティの人びとが抱えている問題を自分自身と関連づけて考察することができるようになることです。このことは、デザイン思考との関係でいうと、共感の技法を身につけることと同様です。

    シラバスはこちら [PDF:467KB]

    この授業では、LTD話し合い学習法(Learning Through Discussion)という小グループによる話し合いを中心に学習を進める技法を使います。LTD話し合い学習法は、課題文の予習と、予習をもとにした授業でのグループワークによって構成されています。課題文の予習は、筆者の主張を理解するという共感の技法を学ぶ手段にもなります。また、予習をもとにした授業でのグループワークは、他の受講者の主張を理解するという共感の技法を学ぶ手段にもなります。

    2022年度の授業

    グループワークでは、毎回グループを変更しました。これは、自分以外の様々な受講者の主張を理解するための仕組みでもありました。 

    受講者の感想
    • 今まで、ここまで深く差別を考えたことがなく、差別は自分とは関係ないと思っていたことに改めて気づいた。授業の中で扱った書籍は、日常生活のなかに潜んでいる差別を多く扱っており、自分は差別とは関係ないというスタンス改めようと思った。身近にある差別に自ら関心をもち、向き合う必要があることがわかった。また、グループワークを通して、同じ書籍を読んでいてもそれぞれ考え方や捉え方が違うことに気づき、多くの人の意見や考えを聞くことで視野を広げることができるとおもった。(農学部1年生)
    • 差別をする人というものに特別な感じがあって、自分は差別などしないから大丈夫だと思っていた。しかし、この授業を受けて、差別は日常生活のなかで必然的に起きてしまうものだということを学んだ。他者を理解しようとする中で、自分が持っているカテゴリーで人を判断してしまっていたり、誤った情報から得た知識でマイノリティの人びとを理解したような気持ちになっていたりと、自分で気づかないうちに他者に対して思い込みや決めつけをしていることがあると知った。この授業を受けて、こうした「差別する可能性」に気づくことができた。(医学部1年生)
    • この講義を通じて、差別とは何なのかについてや、自分と差別という行為の関係性について学ぶことができた。また、本を読んだりグループ活動を経験したりして、差別とは身近に存在するものであることを実感した。理解していないだけで、まだ自分の中には決めつけや思い込みがあると思うので、今後生きていく中で少しずつ決めつけや思い込みから距離をとる態度を身につけていきたい。(教育学部1年生)
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  • マイノリティのライフヒストリー(全学共通科目・主題科目、第3クォーター、1年生から受講可能、課題探求ベーシックス②)

    「マイノリティのライフヒストリー」は、「課題探求ベーシックス②」にあたります。この授業の目的は、マイノリティの人びとの多様な人生を知り、マイノリティの人びとが抱えている問題を自分自身に関連づけて理解し、そしてマイノリティ問題の具体的な課題を発見・見つけだすことができるようになることです。このように人やモノ等に対する見方や考え方を再構築し、適切な課題を発見することは、デザイン思考の共感から課題発見にいたるプロセスにあたります。

    シラバスはこちら [PDF:468KB]

    この授業では、ジグソー学習法というメンバーごとに担当を決めて教え合う技法を使います。この技法では、自分に割り当てられた知識をグループのメンバーに教える責任が生じるため、受講者の主体的な授業参加が促されます。また、グループの他のメンバーが持っている知識を理解する必要があるため、他者が伝えたいことを聴き理解するために必要な能力も身につきます。ちなみにもともとジグソー学習法は、異文化間の対立を克服するために開発された技法です。

    2022年度の授業

    グループワークでは、各グループで取り組みたいマイノリティ問題を決め、マイノリティの方々のライフヒストリーをもとにして、具体的な課題を発見しました。なお、各グループで取り組んだマイノリティは、性的マイノリティ、視覚障害者、身体障害者、発達障害者、ハンセン病者、被差別部落出身者、アイヌ民族、在日外国人、貧困者でした。

    受講者の感想
    • 歴史的背景やライフヒストリーを深く知ることができる良い機会になった。また、他のグループの発表でも性差別や人種差別、貧困など今もなお問題となっていることのバックグラウンドが意外なものもあり、興味深かった。マイノリティの人々が抱える問題を自分自身に関連させて今まで以上に理解することができた。いろいろな面で成長することができる授業だった。(創造工学部1年生)
    • 様々なテーマのマイノリティについての知識を得ることができました。それと同時に、誰もが生きやすい世の中を作っていくには、まだまだ課題や問題がたくさんあるのだと感じました。それぞれのグループのテーマに沿ったマイノリティの人々の歴史的背景やライフヒストリー、そこから考えられる課題や解決策を発見することができたので良かったです。(教育学部1年生)
    • マイノリティや差別の問題について詳しく学ぶことができただけでなく、ジグソー学習法など様々な学習の方法も学ぶことができ、良い経験になった。他者のライフヒストリーから課題を見つけるというのは難しいと感じる部分もあったが、回数を重ねるにつれて、ライフヒストリーを徐々に読み解くことができるようになっていくのを感じ、楽しかった。(法学部1年生)
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  • 社会デザインとマイノリティ問題(全学共通科目・主題科目、第4クォーター、1年生から受講可能、課題探求ベーシックス③)

    「社会デザインとマイノリティ問題」は、「課題探求ベーシックス③」にあたります。この授業の目的は、共生社会について理解したうえで、マイノリティの人びとの視点に立ち、マイノリティの人びとが生きやすい社会のためのアイデアを出し、共感という技法にもとづいて社会をデザインできるようになることです。このことは、デザイン思考におけるデザインのプロトタイピングおよび検証のプロセスを身につけることと同様です。

    シラバスはこちら [PDF:459KB]

    この授業では、少人数グループによる課題解決型学習=PBL(Problem Based Learning)の技法を用います。課題を解決する過程で、基礎的な知識だけでなく、応用できる知識や知識を応用する力を身につけることができます。また、少人数グループなので、グループワークでは主体的な関与が必要となり、コミュニケーション能力を育成することができます。

    2022年度の授業

    グループワークでは、各グループで取り組みたいマイノリティ問題を決め、各自で調べたことや共生と社会についての学びをいかし、マイノリティの人びとが生きやすい社会をデザインしました。つぎに、それぞれの発表に対して、他のグループのメンバーがコメントをしました。最後に、これらのコメントをもとにして、改めて社会デザインを考えるレポートを作成しました。なお、各グループで取り組んだマイノリティは、性的マイノリティ、身体障害者、特定分野に特異な才能のある児童生徒、被差別部落出身者、外国人でした

    受講者の感想
    • 3Qの「マイノリティのライフヒストリー」から考えてきたセクシャルマイノリティに関する課題の解決策を考えることができた。この授業を通してその他のマイノリティの人々が抱える問題について詳しく知ることができた。また、各グループの解決策を踏まえて自分がこれから生きていく上でマイノリティの人々が住みやすい社会にするためにできることは何なのかについて考えるよいきっかけになった。(創造工学部1年生)
    • マイノリティの過去やライフヒストリー、共生の視点から物事を捉えて考えるという形式は、調べ学習をする際や授業づくり(教育学部のため)でも活かせるのではないかと思いました。あまり見知った人のいない授業で、グループワークがどうなるか最初の頃は心配していましたが、無事にグループ発表を終えることができたのではないかと思います。(教育学部1年生)
    • 語りを分析する視点や共生の考え方が大きな学びだった。私は講義を受講する前は差別される人と差別する人、普通の人間と無意識にカテゴリー化してしまっていた。しかし、今回グループ発表を聞いて、自分も当事者として差別に向き合わなくてはならないと思った。自分のグループ発表については、KJ法での付箋ごとの関連づけが上手くできたため、いつもよりよい構成でグループ発表できた。(創造工学部1年生)
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  • 人を動かすロジカルコミュニケーション(全学共通科目・主題科目、第4クォーター、1年生から受講可能)

    この授業の目的は、聴き手を意識しながら論理的で説得力のあるコミュニケーションができるための基本的な考え方を身につけることです。人に動いてもらう説得力のあるコミュニケーションを行うには、客観的な視点で物事を構造的に考え、伝えるといった論理的に考えるスキルと聴き手の感情にも配慮して伝えるスキルの両面が必要です。相手を動かすコミュニケーション能力は、デザイン思考を行うにあたっての土台となる能力ともいえます。

    シラバスはこちら [PDF:464KB]

    この授業では、小グループによる話し合いを中心に学習を進めます。前半でロジカルコミュニケーションの基本を学び、ミニレポートを記載し発表を行うことで実践力を高めます。さらに、後半では、書籍(「人を動かす」)を用いながら、感情や非言語も含めた論理以外の観点も含めた人に動いてもらうためのコミュニケーション能力を養います。予習をもとにしたグループワークにより、他の受講者の主張を理解するという共感の技法も学ぶことができます。

    受講者の感想
      • クラスの方針を毎回最初に説明されることもあり、グループのメンバー間の雰囲気もよく、非常に話しやすいクラスでした。毎回、論理的に物事を考え、人と共有し、意見交換をするなど社会に出てから役に立つ情報を得ることができ、有意義な時間を過ごすことができました。
      • 班での発表はもちろん、ブレインストーミングによって、自分では考えもしなかったよう個性のある意見やアイデアが出てくるところもよかったです。班のメンバーを知ると同時に自分がどういう意見をする人なのか俯瞰して捉えることもできました。
      • コミュニケーションを行う上で、今まで意識したことがない内容やテクニックも学べました。学生生活だけでなく、社会に出た時も学んだことを意識して使ってみよう思っています。
      • ピラミッドストラクチャーと相手の立場に立つということを特に意識していきたいと思います。クラスを通して、論理と感情の両面から人を動かすための新しい学びが得られてとてもよかったです。
      • クラスで学んだゆっくり話すことを意識すると効果は抜群でした。焦ることもなくなり、心も連動し、落ち着いて話すことができるようになりました。人の話をきちんと聞けるようになりと言葉のキャッチボールができるようになりました。
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主題科目の実質化とDRI教育

主題科目(2021年度以前は主題B)は、21世紀を生きる学生が将来市民として直面する社会的課題の発見とその課題解決力を育成する科目です。この主題科目は共通教育スタンダードのうち主として「③21世紀社会の諸課題に対する探求能力」に対応しており、これまでこのスタンダードにさらに沿うような授業改善や様々な工夫が試みられてきました。

主題Bの授業改善や様々な工夫が試みられている際に本学では、DRI教育を全学的に展開させるという課題が追加されました。DRI能力育成科目のD科目(デザイン思考能力の育成に関する科目)では課題発見、課題解決能力も育成されます。全学共通科目として開講されている主題科目の課題発見・解決型授業を充実させることで、D科目の全学波及が進むと考えられています。