サークル紹介(大学フォト)
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希少糖の寿命延長・抗老化効果

授業の終了後、熱心な学生が質問に来て、そのあと雑談になりました。

農子(N)「先生、今日のネットニュースに”カロリー制限はサルの寿命を延ばす”という記事が出ていたんですが、見ましたか?」
佐藤(S)「もちろん見たよ。実は、数年前にアメリカの独立した2つのグループが別々に研究発表をして、一方はサルの餌のカロリーを制限したら寿命が延びた、一方は伸びなかったと主張して論争になっていたんだ。で、今回、お互いのデータを見せ合って解析をやり直し、最終的に「カロリー制限はサルの寿命を延ばす」って結論を出した。この実験は1980年代に始まっているから、結論を出すのに30年以上かかったんだよ。実験に使われたアカゲザルの寿命は30~40年だからね。」
N「30年以上ですか!ところで、なぜカロリー制限をすると寿命が延びるのでしょうか?」
S「う~ん、それはまだよく解っていないのだけれど、カロリー制限によって体内がエネルギー不足の状態になると、体はそれをストレスとして感じて、体を守るいろいろな防御反応が起こると言われているんだ。その結果、寿命が延びるというわけ。」
N「だんだん難しくなってきたなぁ。ところで先生の研究室でも老化の研究をされていると聞いたのですが。」
S「ぼくの研究室では線虫という動物を使って、希少糖の寿命延長・抗老化(アンチエイジング)効果について研究しているよ。希少糖は知っているよね。」
N「もちろん!体脂肪を減らしたり、血糖値を下げたりする香川県発の夢の砂糖ですよね。線虫というのはどんな生き物なんですか?」
S「線虫は体長約1mmのミミズのような形をした生物で、大腸菌をエサにして簡単に飼育ができるから、実験動物として世界中で使われているよ。特に老化や寿命の研究では、マウスやラットなどの寿命が年単位であるのに比べて、線虫の寿命は約30日だから、よりすばやく結果を出せるメリットがあるんだ。」
N「希少糖には抗老化効果があったんですね?」
S「うん、希少糖の一つD-プシコースが線虫の寿命を約20%延ばすことがわかったよ。」
N「どうして、D-プシコースは線虫の寿命を延ばすのでしょう?」
S「さっき話をした“カロリー制限による寿命延長効果”が関係していると考えているんだ。代謝されず、ほぼカロリーゼロのD-プシコースは、代謝されてカロリーになる果糖(D-フルクトース)に化学構造がよく似ている。だから、D-プシコースが線虫の体内に入ると、まるでカロリー制限したような状態になると考えているよ。今、うちの研究室の学生が、希少糖を与えた線虫の体内でどんな反応が起こっているのか、必死になって調べている。線虫の結果を一気にヒトに当てはめる訳にはいかないけれど、もしかしたら、希少糖と線虫を使ってカロリー制限の抗老化メカニズムを明らかにでるかもしれない。そうなったら大発見だよ。」
N「面白そうですね。今度、研究室にうかがってもいいですか?」
S「いつでもどうぞ。」

私の研究室では、なぜD-プシコースは線虫の寿命を延ばすのか?D-プシコースによって起きるストレス応答反応とは?などを遺伝子、タンパク質のレベルで解析しています。また、 D-プシコース以外の寿命延長効果のある希少糖の探索も行なっています。「線虫」「希少糖」「老化」の研究のいずれかに興味のある人は、ぜひ一度、農学部の当研究室に遊びに来てください。大歓迎です。

   

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専門分野

生物活性化学

趣味  
歴史(城めぐり、刀剣鑑賞、帝国陸海軍の戦史など)

研究を始めたきっかけ  
私はもともと老化の研究者ではありません。学生時代の専門は農薬化学でした。偶然、「線虫」と「希少糖」の研究をすることになり、今回、紹介した研究を始めることになりました。アイデアというのは突然降りてくるわけではなく、自分の持っている「ネタ」をいかに組み合わせるかだと、最近つくづく思います。

氏名:佐藤正資( さとうまさし)  
所属・職名:農学部・教授