かがわ健康関連製品開発地域

無動力で階段昇段できる高機能大腿義足

香川大学工学部、立命館大学

■バイオメカニクスに基づいた膝継手の機構と制御を研究開発中
「かがわ健康関連製品開発地域」（立命館大学情報理工学部　和田隆広　教授、香川大学工学部　井上恒　助教）は大腿切断者が健常者と同様の階段昇段動作を再現できる義足の実現を目指して、バイオメカニクスに基づいた膝継手の機構と制御に関する開発・設計を行っています。

LATEST REPORT 2016/2017

RESEARCH
■平地歩行時の膝折れ防止機構と階段昇段時の膝伸展機能を実証しました（２号機）。
従来、本テーマで研究開発されてきた階段昇段可能な大腿義足（LKJ初号機）は、平地歩行時の膝折れの防止が不十分でした。そこで、階段昇段機能（LKJ）と4節リンクによる平地歩行機能を1つの膝継手で達成する機械式膝継手（２号機）を開発しました。この膝継手によれば、平地歩行における意図しない膝の急激な屈曲（膝折れ）を防止できます。

■さらに、階段昇段時の膝折れ防止機構を付与して基本動作を実証しました（３号機）。
膝継手の平地歩行と階段交互昇段を実現する機能の阻害をすることなく昇段時の膝折れ防止機能を新たに付与することで，大腿切断者の階段昇段動作をより安全に行うことができる膝継手を開発しました。

図．膝継手機構（２号機）

図．膝継手機構（２号機）の基本動作：平地歩行（左）→階段昇段（右）

BASIC ISSUE 　　　
■独自の膝継手機構
現在研究開発中の義足は、荷重による並進変位を、床半力、屈曲制限を介して伸展動作に変換する独自のバイオメカニクス機構を膝継手に用います。自重を活用する機構を用いて、普段は自由に屈曲・伸展が可能であり、義足に体重を掛けると機構の力で膝が伸展します。また、モーターなどの動力を必要とせず、低コストでの製品化が可能となります。
詳細な動作は下記の通りです。
①普段は自由に屈曲・伸展が可能
②過度な屈曲を防ぐ機構
③義足に体重を掛けると膝継手内に並進変位
④屈曲を防ぐ機構が伸展の力を発揮

図．義足（左）と膝継手機構（右）

図．膝継手機構の動作メカニズム

■世界で初めて無動力の階段昇段を実証
世界で初めて無動力の膝継ぎ手で手すり等の補助器具を用いない階段昇段が可能であることを実証しました（模擬義足を用いた健常者実験、下図）。人間機械系評価であるバイオメカニクス解析により床反力などのデータから動作を評した結果、健足側が特段無理な動作をすること無く階段昇段が可能であることがわかりました。さらに切断者（片脚切断）での階段昇段にも成功して、研究開発成果である膝継手機構が正常に動作することもわかりました。

■発展途上国に低コスト・高機能性義足を供給
アジア・アフリカの発展途上国では毎年10,000人以上の人が地雷等で足を失っています。彼（彼女）らの生活には、農作業などのために坂道や平坦でない土地で作業できる高い機動性がある義足が欠かせません。現状の高機動性義足は5,000から50,000米国ドルと非常に高価で、発展途上国の下肢切断者の多くが満足できる義足を使えない状況です。かがわ健康関連製品開発地域は、発展途上国の下肢切断者に政府開発援助（ODA）、民間資金による国際支援等を介して低コスト・高機動性義足を供給することも検討しています。

■協力企業を探しています。ご興味があれば是非ご連絡ください。
かがわ健康関連製品開発地域
事務局（担当：永冨）
TEL: 087-864-2550　FAX: 087-864-2537　e-mail: nagatomi@eng.kagawa-u.ac.jp