香川大学瀬戸内圏研究プロジェクト

香川県内の主に東部島嶼地域の社会と文化の変化に関する調査研究

1.研究の目的・意義・解決すべき課題等
 今年度の香川県東部の島嶼地域は、瀬戸内芸術祭で脚光を浴びるであろう。地域と一体化したアートによる観光が考えている。行政当局はこれをきっかけにした地域おこしを期待している。このイベントにかかわって、改めて提起されるテーマがいくつも提出される。イベントによる地域おこしのポリシーやその方法にかかわる問題、イベント主催者と島の住民の関係の取り方、押しかける観光客への対処、島々を訪れる観光者の行動の軌跡、期間中も営まれる住民の暮らし、イベント終了後の住民生活の維持と、その後の発展の方向、などが思い浮かぶ。その中でも、この問題の根底にある瀬戸内海地域の観光と地域の歴史、観光と住民との関係、何が観光対象なのかという基礎的な議論も必要にもなってくる。自分たちの立脚する学問基礎をもとにこの問題にかかわってみたい。
 研究のアプローチは研究者の立脚している関心に大きくかかわるが、瀬戸内海地域の歴史にかかわる研究、当初の文化的基盤にかかわる研究、現在の瀬戸内海に住む人々の社会や文化にかかわる研究、島の観光の問題、観光地での観光者の行動にかかわる問題をそれぞれの研究者の目線で取り上げて、掘り起こしていきたい。
2.年度別の具体的な到達目標及び研究実施計画
平成22年度
【到達目標】
稲田:小豆島を中心とする香川県東部島嶼地域の観光の歴史
丹羽:先史時代のサヌカイトの流通に関する研究-金山遺跡の出土石器の整理・分析-
大賀:島嶼部における遍路道の実態把握・他の巡礼地との比較
室井:大規模観光イベントが離島の住民生活に及ぼす影響に関する調査
金 :島嶼部における外来者による観光行動の実態把握
【研究実施計画】
稲田:少し長い歴史な時間をとりあげ、その中で小豆島が観光地としてどのように注目され、その周辺の島々が観光の対象としてどのように扱われてきたのかを文献調査や、行政機関、観光協会、旅行社や長い間航路を運営してきた関西汽船などの交通機関への聞き取りをもとに、観光の変遷を考察する。学生と演習で取り上げている若い人が考える瀬戸内海の観光資源を報告書にまとめたい。
丹羽:サヌカイト原産地遺跡金山遺跡発掘調査出土資料のデータベースの作成と分析によって先史時代各期の瀬戸内海の流通を復元し、各期の特徴とその変遷を明らかにするのが本プロジェクト研究のテーマであるが、今年度は特に瀬戸大橋より東の岡山・香川東部沿岸島嶼部を中心に行う。
大賀:瀬戸内海の多くの島に島四国があったが、開発や近年の島の人口減少によって、従来の路道を維持できなくなっているところも多く見られる。島四国の遍路道が現在どのようになっているのか、調査し実態を明らかにしておきたい。また他の巡礼地との比較も行う。
室井:瀬戸内国際芸術祭が会場となる島々の生活に及ぼす影響について調査する。平成21年度から会場となる島での芸術祭の準備状況に関する調査に着手しているので、本年度はそれを継続し、実際の事業効果を検証する。そのような作業を通して、「観光による離島振興」の現状と課題について検討する。
:本年度には、「瀬戸内国際芸術祭2010」が開催される。その島々を対象に、外部からの来訪者による観光行動を明らかにする。そのため、アンケートおよびヒアリング調査、GPSを用いた行動調査を実施することを考えている。また、瀬戸内海の島々における先進事例地の踏査や現状調査をおこない、関連資料等を収集する。

今年度以降の研究の進め方については、以下のように計画している。     
平成22年度 香川県内の主に東部島嶼地域の社会と文化の変化に関する調査研究     
平成23年度 香川県内の主に西部島嶼地域の社会と文化の変化に関する調査研究     
平成24年度 日本の外海離島地域の島嶼社会との社会と文化の変化に関する比較調査研究     
平成25年度 外国の内海離島の地域社会との比較調査研究     
平成26年度 瀬戸内海の離島における少子高齢化社会での島の直面する問題     
平成27年度 島嶼社会の持続可能性を考える
平成23年度
【到達目標】
香川県内の主に西部島嶼地域の社会と文化の変化に関する調査研究
【研究実施計画】
 香川県の西部地域の島嶼部は人々の長い居住の長い歴史があるにもかかわらず、人口の自然減少によって島の活気が失われ、無人島になる恐れを島民自身が語るようになっている。アートによる地域おこしを考えている香川県島嶼部の東部地域と好対照である。     
 もともと瀬戸内海の島には長い歴史の中にせまい面積の場所に多くの人が暮らしを続ける知恵が編み出されていた。資源とりわけ水や燃料の少ない条件を克服する知恵、瀬戸内海という変化に富んだ海底地形で漁業を営む知恵、島という多くの傾斜地での農業をおこなうが知恵などが積み重ねられてきた。     
 今高齢化という現象の中で過去の知恵がまったく失われようとしている。過去の社会の知恵と現代という時代に島の人々が生きていくための知恵を調査によって明らかにしたいと考えている。将来にこれらの島が産業として取り組まなければならないのは観光、そして漁業と農業であろう。島への来訪者を獲得するためにどういう戦略があるのか、私たちは人文社会系の研究者がどういう形でそれへの参加ができるのか、共同で議論しながら研究を進めていきたい。
【研究組織】
 研究代表者:稲田 道彦    経済学部・教授
 研究分担者:丹羽 佑一    経済学部・教授
          大賀 睦夫    経済学部・教授
          室井 研二    教育学部・准教授
          金   徳謙    経済学部・准教授
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