「船の祭典2010共催事業」香川大学瀬戸内圏研究センターシンポジウム
 高橋 毅氏 「景観の変遷とこれから」

【講演内容】
 皆さんお疲れさまです。今から美しい瀬戸内海を見てください。

 これは、香川県荘内半島の紫雲出山(しうでやま)の桜です。
 瀬戸内の11府県を回ってみて、1番美しく感じたのは、この紫雲出山です。紫の煙が出ると書く、浦島伝説の場所です。この紫雲出山から見るロケーションが、瀬戸内の中で私は一番ではないかなと思っております。これは2000年に、「夕焼け桜」として、全国へ発表しました。
 現在は、夕焼け桜の撮影に、朝からカメラの立てる場所がないぐらい、全国からお客さんが来ています。それだけ素晴らしい桜の場所です。

 これは、紫雲出山でも少し場所が違うのですが、「瀬戸の屏風園」と呼んでおります。これが詫間湾です。ここが善通寺山。
 これは朝靄に霞む、幻想的な夜明けです。

 これが同じ場所からの満月の日です。なぜ美しいかと言えば、ここの島の並びです。この顕在している並びとか、大きさ、形すべてが絵の世界になっています。それから、こういう場所というのは、他に瀬戸内ではありません。

 これが幻想的な今の同じ場所からの夜明けです。瀬戸大橋は、この辺にあります。これが高見島になります。高松はこの辺になります。
 こういう雲間から夜明けが始まる、ドラマチックな朝です。

 同じ場所からの写真です。この下が全部海です。霧の上に山が浮かんでいるのは天霧山(あまぎりさん」です。この左から、朝日が出ています。
 これは瀬戸内、香川独特の風景ですね。こういう霧に包まれた幻想的な夜明けというのは、他ではなかなか見られないです。

 これは、真っ赤に燃える粟島と高見島です。この風景の撮影を狙って、30年かかりました。これも紫雲出山の上からですけど、手前が粟島と高見島で、志々島はこっちになります。この絶景の場所で、真っ赤な朝焼けをなかなか見ることができませんでした。
 この時は朝焼けが素晴らしくて、粟島の上に雲がかかっているのが、なかなかのものです。朝焼けはあってもここへ雲を呼ばないんですね。

 東京展の時に、都会の人が「これが瀬戸内だ」と言ったのは、この作品でした。なぜかと聞くと、青い海、青い空に入道雲が出て、そしてこの漁港に船が帰る、都会の人が描いている瀬戸内というのは、こういう風景でした。
 この撮影に入って、入道雲をイメージした撮影までに、7年かかりました。なぜかというと、昔は、梅雨が明けて7月の下旬に、必ず入道雲は海にも山にも出ていたのです。それが最近は、夏が終わったらすぐ、秋の雲になってきます。こういう入道雲が出なくなりました。

 これが同じ時の入道雲ですけど、昔はこういう風に良く見れたのですが、今はほとんど見えません。

 これは荘内半島の雲と、詫間の海岸ですけれど大潮の時です。すごく美しい絵模様です。ここの場所は、鴨ノ越(かものこし)といいますが、夕日が右に入るために、ここの陰影がきれいに入ってくるんです。そんなに大きい間隔ではないですけど、美しい海岸です。

 これは、屋島の山頂から撮影した女木島です。正面が女木になります。こちらが高松港で、撮影のために約40分間露光しています。その間に備讃瀬戸には、これだけの船の往来があります。すごいです。

 これが観音寺の少し東に七宝山(しっぽうざん)いう山があるんですけど、その七宝山から見た瀬戸の海です。これが蔦島(つたじま)です。これが紫雲出山。少し見えにくいのですが、この真下ぐらいに父母ヶ浜(ちちぶがはま)があります。
 これは、雨上がりの夕日に染まる詫間湾の夕焼けです。

 これは、寛永通宝に雪が降った作品です。最近、香川にほとんど雪は降りません。ですから、雪の写真を香川で撮影しようと思うと、まず5年か10年ぐらいみておかないと、撮れないです。
 栗林公園でも雪の撮影をしたいのですが、なかなか雪は降らないです。

 これがマーガレットです。向こうが粟島です。

 直島の円覚寺のツツジです。僕が注目しているのは、7月の中旬過ぎ、国際芸術祭の時に、直島はこれだけのツツジの花が咲きます。

 これが五色台から見た大槌島(おおづちじま)です。ちょうどいいロケーションのところに、桜と島があって絶景の場所です。
 これも五色台です。30分ぐらい時間をかけています。これが、30分の間に船の通った航跡です。結構、船が通っています。

 これを私は、「瀬戸のオーロラ」と呼んでいます。風と雨とでですね。だから、上の方はオーロラのようになっています。大槌島がここにあります。ここが夕日です。

 小豆島の「エンジェルロード(天使の散歩道)」で、これは、夜の撮影です。夜、潮が引いて、ここにアベックが願掛けに行くんです。その時に、懐中電灯をつけて行ってるんですよね。少し高い丘の上からの撮影です。これが屋島で、これは高松の明かりです。
 これも、すごく幻想的な瀬戸内の美しいところです。

 これは「ダルマ夕日(だるまゆうひ)」といって、冬寒い季節になると、これが水面に入るか下がると、ダルマになるんです。
 ダルマは、太平洋側でもいろんなところで見えますが、島を抱き込んでダルマに見えるのは、瀬戸内海だけです。1年に2回、ここを通過していきます。これは3月5日の撮影なんですけど、3月と10月にここを通過するんです。
 こういうのは、快晴の日でなければ見えません。瀬戸内ならではのダルマ夕日です。

 これは大槌島です。約2時間半の露光です。相当な数、ここでも船が通っています、手前と向こう側と。この光の高さは、大型船の光の線になります。小型は下の線になります。

 仁尾の海岸の父母ヶ浜です。干潟としては素晴らしい場所で、遠浅になっています。これは、潮が引いたときの夕暮れです。夕暮れの長時間露光によって、波を動かしています。そのために、幻想的な映像になっています。向こうが蔦島の方になります。

 これはもう、1年に1回あるかないかの父母ヶ浜なんですけど、太陽が沈んで、しばらく時間がたって、真っ赤に焼けてくるんです。

 これが同じ父母ヶ浜です。向こうは虹なんですけど、鳥の楽園で、このように沢山の鳥が飛来しています。

 大潮の後は、こういうキレイな波模様ができます。ここは、現在、約800メートルの海岸線で、海から陸までが500メートルあるそうです。

毎月、地元の人が30人ぐらい出て、ゴミ拾いをして、この干潟の、この場所を守っています。だから、大潮のときでも美しいんです。こういう人の陰の努力が、この美しい海岸をずっと守ってるんだと思います。

 

 これは観音寺の有明浜です。平成の元年5月中旬ごろの撮影ですが、これが「ハマヒルガオ」です。ハマヒルガオの原生花園と間違うほどに美しかったです。これが、今から約10年前の撮影です。

 それが、今年はこんなになっています。ここも昔は、観音寺南小学校の生徒さんが、ずっとゴミ拾いをしていたのですが、最近それをしていないようで、もう荒れ放題ですね。海浜植物ですごく有名なんですが、おしいですね。こういう美しい有明が、無残な姿です。

 皆さん見た事ありますかね、北海道の能取湖にある「アツケシソウ」、「サンゴソウ」ともいうんですが、坂出の埋め立てに、これがあったんですよ。
 平成元年の撮影です。場所は、「王越(おおごし)」という所です。五色台の上がり口の、少し坂出寄りの下の引っ込んだとこなんです。
 アツケシソウは、昔、北前船が、塩を北海道へ運んで、帰りに積んだ砂の中にあったみたいです。このアツケシソウが、塩田跡で成長して、10月下旬には、こういう真っ赤になっていたんです。

 いまこれだけのものが残っていれば、これだけで観光資源になったと思うんですけど、おしいかな、これが平成10年の現実です。もうほとんどなくなっていました。5年前に見たときには、影も形もありませんでした。なんとしてでも守ってほしかったですね、あのサンゴソウの美しさを。

 これは女木島の桜です。私はこの桜を植える会の会長をしているんですけど、平成13年に、観光協会の会長でJR四国の梅原さんのバックアップがありまして、女木島に現在まで1,400本の桜を植えています。
 今年で、最初に植えてから8年になります。これが契機となって、今ではいろんな島に植えています。

 これが、瀬戸大橋の与島の鍋島灯台に、一木で見せろということで、京都の庭師から譲ってもらった「しだれ桜」です。灯台の横に、海上保安庁の許可を得て植えました。7メートルあったんですけど、環境のすごく悪い所で、最近、花もだいぶ悪くなりました。やはり、雨の影響と潮風の影響で、いつまで元気に生きるかな、と心配しています。

 これは男木島です。男木島は地元の方、高校生の方、いろんな方の協力で、今では30万個までなったでしょうか。スイセンが、灯台の周囲から丘の上まで、きれいに咲いています。2月上旬ぐらいが見頃です。
 みなさん一度行ってみてください。すばらしいスイセンの島になっています。

 先ほど、稲田先生が話された志々島の1988年の写真です。キンセンカで、私はパッチワークの島と呼んでいます。このようにパッチワークになっているんです。すごく美しくて、当時は何度も行っていましたが、これが港側から写したものです。

 これが4年前の姿です。

 稲田先生の写真にもありましたけど、これは昨年5月に撮影しました。
 私もメンバーで、オーナー制で、ここへこういう風にマーガレットを植えています。
 今年も5月30日に手入れだったんですけど、とにかく、1年に2回3回手入れしていても雑草に負けるんです。雑草はすごく勢いがあって、これだったら、木の花の方が手入れが少なくて済むのでいいんじゃないかなって、最近そんなことを思っています。以上です。



【質疑・応答】
Q.伊吹島の三好です。有明浜の海浜植物ですが、一度ですね、高潮に遭って、全滅したんですよ。その前の写真ではないかなと思うんですよ。その時は、資料館まで水が来まして、古文書関係も、だいぶ潮に遭って被害を受けたんですよ。小学生たちと一緒に復活、復元しようとして活動しています。

A.確かに高潮の前の作品ですね。

Q.そうです。だから全滅になって、また復元しようということで、今活動しています。


Q.高橋先生、素晴らしい写真どうもありがとうございました。それで私の質問は、先生はこの1枚の写真を撮るのに、30年通われたとか、7年かかったとかおっしゃっていたんですけど、普段先生は、1年で例えると、どのくらい撮影の時間に使われているのでしょう?

A.ほとんど毎朝です。今ごろは最も朝が早いので、3時頃に起きて、日の出の4時頃には、もう現場に行きます。それで撮影が終わって、9時には自宅に帰り、1日中スタジオの仕事をして、夜7時ぐらいから、また夜の撮影に出かけます。もうその繰り返しです。それで、その場所場所に、頭の中でイメージを作って、ここは霧が似合う、雨が似合う、太陽が似合う、そのイメージを作って、天気図を見ながら、その現場現場へ行っています。そういう風にして撮影場所に行くんですけど、なかなかいい表情というのに巡り会えません。


Q.先生、海の方であればそれで良いのですが、先生には、山の写真もありますよね?そうしますと、スタジオの方はどうなってるんですか?

A.スタジオは息子もいますからその辺は大丈夫なんです。山へ入る場合、モンゴルあたりの天気図を参考にしています。それによって1週間後に山はこうなると判断し入山しています。
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