浅海環境通信

第10号

  
浅海環境通信 発行 2011年5月
香川大学瀬戸内圏研究センター庵治マリンステーション
香川県木田郡庵治町鎌野4511-15
TEL/FAX:087-871-3001
2010年度 香川大学瀬戸内圏研究センター庵治マリンステーション 教育・研究活動と地域貢献事業
■2010年度 庵治マリンステーションスタッフ
 瀬戸内圏研究センター長 本城 凡夫
 施 設 長  多田 邦尚 (農学部 教授)
 施設主任  一見 和彦 (瀬戸内圏研究センター 准教授)
 庵治マリンステーション技術専門職員 岸本 浩二 
 関係教官  山口 一岩 (農学部 助教)
         末永 慶寛 (工学部 教授)
2010年度に当施設が行った教育・研究活動と主な地域貢献事業についてご紹介いたします。
■教育・研究活動
【教育(卒業・修士・博士論文研究を除く)】
 5月19日 農学部応用生物科学・実習(1年生対象)
 5月26日 農学部応用生物科学・実習(1年生対象)
 8月2日~5日 農学部応用生物科学実験・実習
       (生物資源環境化学実験Ⅱ 海洋環境実験・実習:3年生対象)
 8月17日 生物学A(全学対象)
【修士論文研究:香川大学大学院農学研究科・工学研究科】
 ・鉄およびスラグ類の添加が沿岸性植物プランクトンの増殖に及ぼす影響に関する研究
   生物資源生産学専攻 李 仁恵(一見研究室))
 ・沿岸域における懸濁態リンを指標とした懸濁物の挙動に関する研究
   生物資源生産学専攻 朝日俊雅(多田研究室)
 ・波浪エネルギー吸収型動揺抑制装置に関する研究
   安全システム建設工学専攻 網中宗利(末永研究室)
 ・数値モデルを用いたノリ生産力向上システムに関する研究
   安全システム建設工学専攻 植田拓朗(末永研究室)
【卒業論文研究:農学部生命機能科学科・安全システム建設工学科】
 ・干潟域に繁茂する大型緑藻アオサ(Ulva sp.)の生態的機能
   江口結希(一見研究室)
 ・干潟域に生息する小型Chaetoceros属(珪藻)の増殖特性
   近藤未加(一見研究室)
 ・新川・春日川河口干潟域における新生物元素の物質収支
   竹本沙紀(一見研究室)
 ・干潟食物連鎖系におけるタンパク質の質的変化
   竹内健二(多田研究室)
 ・葉緑素計を用いた大型草・藻類の分解速度に関する研究
   久野花奈(多田研究室)
 ・夜光虫によるノリ養殖有害種(Eucampia zodiacus)捕食の可能性
   矢部千明(多田研究室)
 ・生簀の動揺抑制技術の開発と実用化に関する研究
   松内勇貴(末永研究室)
■2010年度 庵治マリンステーションに関わる研究業績
【学術論文】
●Nishikawa, T., Hori, Y., Nagai, S., Miyahara, K., Nakamura, Y., Harada, K., Tanda, M., Manabe, T. and Tada, K.: Nutrient and Phytoplankton Dynamics in Harima-Nada, Eastern Seto Inland Sea, Japan During a 35 Year Period from 1973 to 2007. Estuaries and Coast, 33, 417-427 (2010).
●帰山秀樹・朝日俊雅・中岡雅倫・一見和彦・橋本俊也・山田達夫・多田邦尚:秋季の広島湾における植物プランクトン群集のサイズ組成および海洋細菌現存量.沿岸海洋研究,48,65 – 74(2010).
●濱田建一郎・上田直子・山田真知子・多田邦尚・門谷 茂:栄養塩濃度が減少した洞海湾の貧酸素水塊と低次生産過程について.沿岸海洋研究,48,29 – 36(2010).
●濱田建一郎・上田直子・山田真知子・多田邦尚・門谷 茂:過栄養内湾(洞海湾)における粒子状物質の生化学的特長と鉛直輸送過程の季節変化.沿岸海洋研究, 48, 75 – 85(2010).
●帰山秀樹・一見和彦・多田邦尚:東部瀬戸内海内湾域の志度湾における物理環境、栄養塩濃度およびクロロフィルa濃度の季節変化および経年変動.海と空,86,25-33(2010).
●多田邦尚・藤原宗弘・本城凡夫:瀬戸内海の水質環境とノリ養殖.分析化学,59,945-955(2010).
●Yamada, M., Katsuki, E., Otsubo, M., Kawaguchi, M., Ichimi, K., Kaeriyama, H., Tada, K. and Harrison, P.J.: Species Diversity of the Genus Skeletonema (Bacillariophyceae) in the Industrial Harbor Dokai Bay, Japan. Journal of Oceanography, 66, 755-771 (2010).
●Suenaga, Y.: Technology for the Creation of Marine Habitat Using Numerical Model. Proceedings of ISE-2010, VOL.8, CD-ROM.
●一見和彦・住元宏栄・中山浩登・多田邦尚:人手と干潟の生物環境-干潟底生生物の現存量と種多様性に与え得る人間活動の影響-.沿岸海洋研究,48,109-116(2011).
●一見和彦・濵口佳奈子・山本昭憲・多田邦尚・門谷茂:新川・春日川河口干潟(瀬戸内海備讃瀬戸)におけるリンの収支.沿岸海洋研究,48,167-178(2011).
●Nishikawa, T., Hori, Y., Nagai, S., Niyahara, K., Nakamura, Y., Harada, K., Tada, K. and Imai, I.: Long time-series observations in population dynamics of the harmful diatom Eucampia zodiacus and environmental factors in Harima-Nada, eastern Seto Inland Sea, Japan during 1974-2008. Plankton Benthos Research, 6, 26-34 (2011).
【その他】
●多田邦尚・西川哲也・小野 哲:大型珪藻の栄養動態における役割. 海洋と生物,31,129-133(2009).
●石松惇・多田邦尚:1.水産実験所が直面する問題と将来展望.日本水産学会誌,75(5),898-899(2009).
●多田邦尚:播磨灘の低次生産環境,瀬戸内海,59,15―19(2010).
●滝川祐子・多田邦尚・一見和彦:香川県海域に生息するエビ・カニ等無脊椎動物相データの収集.香川大学21年度地域貢献推進経費による研究報告書,31-39(2010).
●吉松定昭・多田邦尚・一見和彦・結城勝久:河口干潟の珪藻類-高松市新川・春日川河口干潟で見られた珪藻類-,香川県赤潮研究所・香川大学農学部・香川大学瀬戸内圏研究センター編,p63(2011).
【学会講演等】
●一見和彦・東薗圭吾・奥村裕・多田邦尚:干潟域における植物色素群の濃度と組成. 瀬戸内海研究フォーラムin徳島(於徳島),講演要旨集p21.
●滝川祐子・多田邦尚・一見和彦:香川県海域の甲殻類生物試料と文化遺産を活用した魅力ある環境保全啓発の取り組み.瀬戸内海研究フォーラムin徳島(於徳島),講演要旨集p18.
●一見和彦・東薗圭吾・奥村裕・多田邦尚:河口干潟域における植物色素群の濃度と組成.平成22年度日本水産学会秋季大会(於京都),講演要旨集p63.
●山田真知子・大坪繭子・日高朋子・山本圭吾・一見和彦・多田邦尚:大阪湾における海産珪藻Skeletonema属の種多様性.平成22年度日本水産学会秋季大会(於京都),講演要旨集p26.
●一見和彦・李仁恵・多田邦尚:植物プランクトンの増殖に対するスラグの添加効果.2010年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会(於柏),講演要旨集p62.
●田代紗菜・山田真知子・大坪繭子・日高朋子・山本圭吾・一見和彦・多田邦尚:大阪湾における海産珪藻Skeletonema属の種多様性.2010年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会(於柏),講演要旨集p68.
●藤野佑美・大坪繭子・山田真知子・小倉久子・児玉真史・一見和彦・多田邦尚:東京湾の海産珪藻Skeletonema属の種多様性.2010年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会(於柏),講演要旨集p67.
●馬場千英・田代紗菜・大坪繭子・山田真知子・中野義勝・一見和彦・多田邦尚:我が国の沿岸海域に出現する珪藻Skeletonema属の形態学的特徴の検討.2010年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会(於柏),講演要旨集p119.
●Kuwae, T., Miyoshi, E., Hosokawa, S., Moriya, T., Ichimi, K., Ydenberg, R. C., and Elner, R. W.: Evidence of biofilm grazing in several calidris shorebirds. International Wader Study Group Annual Conference, Nov. 2010, Lisbon, Portgal.
●Miyagawa, M.: Research on the Artificial Habitat Optimized for Adult Rockfish. Pacific Congress on Marine Science & Technology, PACON INTERNATIONAL, June 2010, Hawaii, USA.
●Fujiwara, M.: Research on the Appropriate Condition for Zostera Bed in the Coastal Area. Pacific Congress on Marine Science & Technology, PACON INTERNATIONAL, June 2010, Hawaii, USA.
●Ueda, T.: The Zostera Marina Beds Creation with Detached Breakwater. Pacific Congress on Marine Science & Technology, PACON INTERNATIONAL, June 2010, Hawaii, USA.
●Aminaka, M.: Research on the Restraint Method over Structure Movement of Floating Aquaculture. Pacific Congress on Marine Science & Technology, PACON INTERNATIONAL, June 2010, Hawaii, USA.
●Nagatomi, T.: Research for the Fisheries Ground Creation using Artificial Reef with Current Control. Pacific Congress on Marine Science & Technology, PACON INTERNATIONAL, June 2010, Hawaii, USA.
●Suenaga, Y.: Technology for the Creation of Marine Habitat Using Numerical Model. 8th International Symposium on Eco-hydraulics 2010, September, 2010, Seoul, Korea.
【受賞等】
国際学会におけるベストポスター賞
 藤原宗弘(大学院工学研究科博士課程:末永研究室)
 “The Quantitative Evaluation on the Growth of the Natural Zostera Marina”The Best Student Poster Award (Saxena Award), PACON INTERNATIONAL, June 2010, Hawaii, USA.

日本化学会中国四国支部 支部長賞
 竹本沙紀(農学部応用生物科学科4年生:一見研究室)
■庵治マリンステーションセミナー
8月16日
 イタリア国立沿岸海洋環境研究所のパウロ・マーニ博士を庵治マリンステーションにお招きし、学術講演会を開催しました。マーニ博士は、かつて香川大学農学部の大学院生として学ばれ博士号を取得された大先輩でもあります。講演会では、マーニ博士の研究対象地である地中海のサルディニア島の地理・歴史の紹介に続き、サルディニア島沿岸海洋の環境変化やその原因など、研究の成果を英語で分かりやすく説明されました。講演に続く質疑応答では、学部生から大学院生、教員それぞれの質問に対し、マーニ博士は堪能な日本語と英語を交えて楽しく回答され、参加者が一体となって意見交換することができました。
パウロ・マーニ博士
■地域貢献事業
 2010年
  ・7月 9日  直島小学校環境学習
           直島小学校の児童を対象に、海と水産業への理解と親しみを深めてもらうための「水産教室」を香川県が開催
           しました。講師として庵治マリンステーションの一見准教授が参加しました。
  ・7月18日  干潟ウォッチング(香川県・エコライフかがわ推進会議)
           生き物観察や小実験などの「生きた体験」を通して瀬戸内海など身近な自然環境への関心を促すとともに、環
           境保全への理解を増進させることを目的として開催しました。午前中に新川・春日川河口干潟で生物採取など
           を行い、午後は庵治マリンステーションにて生物観察や小実験を行いました。
  ・7月22日 教育課題研修「理科実権Ⅰ」(香川県教育センター)
           新川・春日川河口干潟において実習研修として開催され、一見准教授が講師を担当しました。
  ・12月 4日 香川大学瀬戸内圏研究センター講演会in塩飽本島
           瀬戸内圏研究センターが進める「瀬戸内圏研究」に関連した講演を通じて、島民の方々が直面する問題を、香
           川大学瀬戸内圏研究センターが主体となって解決していくための足掛かりになればと考え実施したものです。
           本城凡夫瀬戸内圏研究センター長、原量宏特任教授、丹羽佑一教授がそれぞれの演目で講演を行い、質疑
           応答では会場の参加者らから活発なご質問やご意見をいただきました。あわせて実施した講演に関連する
           展示においても、瀬戸内圏研究センターに関わっている学生さんに協力いただきました。
■その他

  ・6月9日 船の祭典2010共催事業 香川大学瀬戸内圏研究センターシンポジウム
          「水圏環境の変化と水産」多田邦尚 農学部教授
          「干潟の重要性」一見和彦 瀬戸内圏研究センター准教授
                           庵治マリンステーション
                                    (於サンポート高松)
  ・10月1日 第2回 里海創生シンポジウム【里海作りの展開策 次の一歩は?】
          「人手と干潟」一見和彦 瀬戸内圏研究センター
                           庵治マリンステーション
          「漁場づくりの事例」末永慶寛 工学部教授
                                    (於サンポート高松)
『瀬戸内圏の干潟生物ハンドブック』 2011年3月 発刊
  “まえがき”より
 私たちが調査のために干潟に出てみるとたくさんの生物たちに出会います。でも、私たちは生物学者でも分類学者でもありません。「よく見かけるけれども、これは何という生物だろうか?」「地元でかんたんに観察できる生物くらい名前は知っておきたい」いつも、そう思っていました。また、私たちは、小中学生やその保護者、あるいは中学・高校の理科の先生方を対象に公開講座を行っています。とくに子供たちと干潟に出たときには、無心に生物を追いかける彼らの姿に感動すら覚えます。しかし、「この生物の名前は?」と質問されても、答えられないことが多々あります。そんな時はいつも、「一緒に図鑑を見てみましょう」と答えるのですが、図書館や書店で探してきた図鑑は、やたら分厚かったり、私たちにとってはあまり見かけない生物がたくさん載っていたり、逆に、この辺りでよく見かける生物が載っていなかったりと、なかなか適当なものがありません。子供たちが「これだ!」と見つけた図鑑の解説を読むと、「九州以南に分布」などと書いてあったりして、彼らのがっかりした顔を見たこともありました。その度に、「我々の住んでいる瀬戸内周辺で目にする生物を中心にした図鑑が欲しい」と痛感し、このハンドブックの作成を思い立ちました。その時から、干潟へ調査に出掛ける時にはいつもデジタルカメラを携帯し、生物の写真を撮り続けました。そんな写真を編集して本書はできあがりました。まず、近くの干潟にすんでいる生物たちの名前を調べてみませんか。そうすれば、もっと彼らの生き様に興味がもてるでしょうし、彼らの生きている環境にも関心がわいてくるはずです。本書を手にした一人でも多くの方が、干潟の生物と、干潟という特殊な環境に興味を持ってくだされば幸いです。
干潟生物ハンドブック
カラヌスⅡ
■インタラクティブコーナー
皆様と自然科学の研究者とで創るコーナーです。
皆様がこの通信の中で興味を持たれたこと、また疑問に思われたこと、身近な自然の中で不思議に感じられたことがありましたらどしどしお便りください。このコーナーで取り上げさせていただいて、読者の方々の自然に関する興味や知識を深めることが出来たらと思っています。特に投稿規程はありません。お便りお待ちしています。
投稿先:〒761-0130 香川県木田郡庵治町鎌野4511-15
香川大学瀬戸内圏研究センター 庵治マリンステーション 一見 和彦 宛
電子メール:ichimi@ag.kagawa-u.ac.jp
庵治マリンステーションホームページ http://www.kagawa-u.ac.jp/setouchi/index.html
◆浅海環境通信のバックナンバーも上記ホームページからご覧いただけます。

編集:庵治マリンステーション利用者グループ

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