浅海環境通信

第8号

浅海環境通信 発行 2009年5月
香川大学瀬戸内圏研究センター庵治マリンステーション
香川県木田郡庵治町鎌野4511-15
TEL/FAX:087-871-3001
■瀬戸内圏研究センターからのご挨拶  センター長 本城凡夫
 我が国において「地方分権制」が強くなり、大学には基礎研究に加えて、地域振興への貢献が期待されるようになってきました。これに応えるため、香川大学は平成21年3月1日、本部の研究推進機構の下に瀬戸内圏研究センターを新設し、これを機に4月1日に従来の農学部附属浅海域環境実験実習施設を庵治マリンステーションと名称変更して、瀬戸内圏研究センターの下に改組しました。瀬戸内圏研究センターはセンター長本城凡夫特任教授、副センター長(併任)多田邦尚農学部教授(庵治マリンステーション施設長兼任)、一見和彦センター准教授(庵治マリンステーション施設主任)、原量宏特任教授(センタープロジェクト遠隔医療部門担当)、濱垣孝司技術専門職員(船長)から構成されています。
 長年の飛沫に曝され老朽化していた庵治マリンステーションの本館を塗装し、取水ポンプを改修して配水機能を改善し、セミナー室の机と椅子を新しくしました。さらに、小型作業船も新ノープリウスⅡとして配備される予定です。庵治マリンステーションは学内の教育・研究活動の他に、小・中学生や地域住民のニーズに応えることのできる魅力ある企画を立案して、体験学習・研修等を活発に開催していきたいと考えています。また、調査艇カラヌスⅢと作業船ノープリウスⅡを駆使して、備讃瀬戸、播磨灘の中・長期的な環境変化を記録しつつ、これらの海域生態系内の生物生産過程を研究して、その成果を県民、国民の皆様に還元していきたいと思っておりますので、皆様のご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
■庵治マリンステーションからのご挨拶  施設長 多田邦尚
 上記の瀬戸内圏研究センター長・本城先生のご挨拶にありましたように、私たちの施設は瀬戸内圏研究センター庵治マリンステーションとして生まれ変わりました。現在、大学をとりまく状況は非常に厳しいものがあり、色々な意味で大学もその附属施設も変わっていかなくてはならない時です。近年の海洋基本法の制定あるいは、新しく提案された「里海」の概念に代表されますように、身近な海はますます注目されています。“海の環境屋”の私たちは、引き続き、庵治町鎌野をベースに、瀬戸内海の環境問題をはじめ、干潟の環境保全や水産養殖の富栄養化防止等の問題に取り組んで参ります。本施設が大学の学生のみならず、より多くの方々の瀬戸内海への興味あるいは意識を高めて頂く一助になればと考えております。今後とも、この瀬戸内圏研究センター庵治マリンステーションを宜しくお願い申し上げます。
■2008年度 香川大学農学部附属浅海域環境実験実習施設 教育・研究活動と地域貢献事業
 浅海環境通信の第8号では2008年度に当施設が行った教育・研究活動と主な地域貢献事業についてご紹介いたします。
■2008年度 浅海域環境実験実習施設 スタッフ
施設長   多田 邦尚 (農学部 教授)
施設主任  一見 和彦 (浅海域環境実験実習施設 准教授)
        浜垣 孝司 (浅海域環境実験実習施設 技術専門職員)
関係教官  山田 佳裕 (農学部 准教授)
        末永 慶寛 (工学部 准教授)
■教育・研究活動
【教育(卒業・修士・博士論文研究を除く)】
  5月7日  農学部応用生物科学・実習(1年生対象)
  5月14日 農学部応用生物科学・実習(1年生対象)
  8月4日  農学部応用生物科学実験・実習
   ~7日 (生物資源環境化学実験Ⅱ 海洋環境実験・実習:3年生対象)
  8月19日 生物学A(全学対象)
【博士論文研究:愛媛大学大学院連合農学研究科】
・Biogeochemical processes of biophilic elements in coastal environment
  生産環境学専攻 Nattapong Loassachan(多田研究室)
【修士論文研究:香川大学大学院農学研究科・工学研究科】
・新川・春日川河口干潟における動物プランクトン群集の出現パターンおよび二次生産量について
  生物資源生産学専攻 風間 健宏(一見研究室)
・河口干潟に生息する微細藻類群の増殖特性と一次生産性に関する研究
  生物資源生産学専攻 山本 昭憲(一見研究室)
・海砂粒子の移動機構と藻場造成に関する研究  
  安全システム建設工学専攻 太田 宏(末永研究室)
【卒業論文研究:農学部生命機能科学科・安全システム建設工学科】
・PAMを用いた干潟底生微細藻類の光合成活性測定に関する基礎的検討
  西山 恵理子(一見研究室)
・河口干潟と前浜干潟における生物・物理化学環境の比較
  中山 浩登(一見研究室)
・新川・春日川河口干潟域における親生物元素の収支
  山口 聖(一見研究室)
・新川・春日川河口干潟域における懸濁態リンの挙動
  朝日 俊雅(多田研究室)
・北九州・洞海湾から分離されたSkeletonema属の温度適応性
  田中 全(多田研究室)
・浅海域における底生付着微細藻類の増殖特性について
  川田 裕里亜(多田研究室)
・四国の瀬戸内地域における流域環境と河川水質
  浦西 洸介(山田研究室)
・水産資源生産力向上システムに関する研究
  網中 宗利(末永研究室)
・流出重油の移動機構に関する研究
  植田 拓朗(末永研究室)
・炭化FRPを用いた海域環境改善基質に関する研究
  上山 政広(末永研究室)
■2008年度 浅海域環境実験実習施設に関わる研究業績
【学術論文】
●宮川昌志・末永慶寛・山岡耕作・松島学・堀田健治:流動制御構造物による海域底質改善技術.Journal of Eco-Engineering, Vol.20, No.2,生態工学会論文集,第20巻,第2号,67~78(2008).
●一見和彦・山下裕明・澤山稔・多田邦尚・門谷茂:新川・春日川河口干潟域(瀬戸内海播磨灘)に生息する底生微細藻類の増殖ポテンシャル.日本プランクトン学会報,55(1),1-8(2008).
Ichimi, K., Tada, K. and Montani, S.: Simple estimation of penetration rate of light in intertidal sediments. Journal of Oceanography, 64, 399-404 (2008).
Ono, A., Tada, K. and Ichimi, K.: Chemical composition of Coscinodiscus wailesii and the implication for nutrient ratios in a coastal water, Seto Inland Sea, Japan. Marine Pollution Bulletin, 57, 94-102 (2008).
Loassachan, N., Meksumpun, S., Ichimi, K. and Tada, K.: Elemental composition of suspended particulate matter in Bangpakong River Estuary, Thailand. La mer, 46, 19-27 (2008).
Nakanao, T., Tayasu, I., Yamada, Y., Hosono, T., Igeta, A., Hyodo, F., Ando, A., Saitoh, Y., Tanaka, T., Wada, E. and Yachi, S.: Effect of Agriculture on water quality of Lake Biwa tributaries, Japan. Science of the Total environment, 389, 132-148 (2008).
●山田佳裕:水田から放出される濁った水.人と水,4,20-23(2008).
●宮川昌志・末永慶寛・山岡耕作・松島学・堀田健治:流動制御構造物による海域底質改善技術.生態工学会,Journal of Eco-Engineering,20(2),67-78(2008).
●山本敏哉・三戸勇吾・山田佳裕・野崎健太郎・吉鶴靖則・中田良政・新見克也:矢作川河口周辺海域(三河湾西部)におけるアユ仔稚魚の分布と底質との関係.日本水産学会誌,74,841-848(2008).
●田村隆雄・星川豪・末永慶寛・渡辺康之:地質の異なる2つの山地森林流域における大雨時のNO3-Nの流出機構の比較検討.土木学会,水工学論文集,53,499-504(2009).
Tada, K., N. Suenaga, S. Yoshimatsu, S. Matsuoka, T. Yamada, K. Ichimi, and M. Fujiwara:Bleaching of Nori (Porphyra) and Characteristics of Water Quality in Eastern Seto Inland Sea. WFC 2008 5th World Fisheries Congress, CD-ROM, Oct. 20-24, 2008, Yokohama, Japan.
Ichimi, K. and Tada, K.: Effect of a nutrients supply to upper layer on growth of natural phytoplankton community during summer stratification period. WFC 2008 5th World Fisheries Congress, CD-ROM, Oct. 20-24, 2008, Yokohama, Japan.
●佐々木智史・宮川昌志・神田優・阿部昌明・山岡耕作・末永慶寛:瀬戸内海伊吹島におけるキジハタ放流人工種苗と天然当歳魚の生態.生態工学会,Journal of Eco-Engineering,20(1),15-26(2009).
●小野哲・多田邦尚・一見和彦:大型珪藻Coscinodiscus wailesii の沈降に伴う生元素の鉛直輸送と沿岸海域の栄養塩環境への影響.沿岸海洋研究,46(2),153-160 (2009).
●山田佳裕・三戸勇吾・中島沙知・小笠原貴子:しろかき後の強制落水によって排出される窒素の生物地球化学的変化.香川大学農学部学術報告,61,35-38(2009).
【学会講演等】
●一見和彦・住元宏栄・多田邦尚:干潟に生息するホトトギスガイに対するオナガガモの捕食量について.2008年日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同大会(於熊本).
●多田邦尚:瀬戸内海の水域環境と低次生物生産. 公開シンポジウム「閉鎖性内湾水域環境の現状と今後への展望」, 2008年日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同大会(於熊本).
●一見和彦・林廣樹・宇佐見竜也・多田邦尚:播磨灘における成層海域と混合海域の環境特性.2008年度日本海洋学会秋季大会(於呉).
●多田邦尚・廣瀬敏一・西川哲也・吉松定昭・山田達夫・石塚正秀・一見和彦:播磨灘における植物プランクトンおよび栄養塩の季節変動.2008年度日本海洋学会秋季大会(於呉).
Suksomjit, M., Nagao, S., Ichimi, K., Yamada, T. and Tada, K.: Variation of dissolved organic matter characteristics before , during and after phytoplankton bloom. 2008年度日本海洋学会秋季大会(於呉).
●多田邦尚・松野美穂・一見和彦・藤原宗弘:アマモの栄養塩吸収量の測定.2008年度日本海洋学会秋季大会(於呉).
●山本昭憲・一見和彦・多田邦尚・門谷茂:干潟域に生息する微細藻類の生産性について-干出・冠水条件に対する季節変動-.2008年度日本海洋学会秋季大会(於呉).
●風間健宏・一見和彦・多田邦尚:新川・春日川河口干潟に出現する動物プランクトンの個体数、生物量およびサイズ組成の季節的・空間的変動.2008年度日本海洋学会秋季大会(於呉).
●多田邦尚・中野可織・一見和彦:干潟の優占生物と餌におけるタンパク質の栄養価.2008年度日本海洋学会秋季大会(於呉).
●多田邦尚・一見和彦:浅海域海底の微細藻類の活性と栄養塩循環. シンポジウムA 沿岸海洋シンポジウム「浅海域生態系における底生微細藻の役割」, 2008年度日本海洋学会秋季大会(於呉).
●多田邦尚:大型珪藻の栄養塩動態における役割. シンポジウムB「ノリ色落ちと内湾域の栄養塩動態」, 2008年度日本海洋学会秋季大会(於呉).
Ichimi, K. and Tada, K.: Seasonal retention and release of phosphorus in Shinkawa-Kasugagawa Estuary, the western Japan. EMECS-8 International Conference, Oct. 27-30, 2008, Shanghai, China.
■附属浅海域環境実験実習施設セミナー
2008年4月30日
演題:Trans-boundary ecological risk assessment of the Mekong river (Thailand and Laos PDR) using Bayesian Network approach(Bayesian Network を用いたメコン川、タイ-ラオス国境付近における生態リスクアセスメント)
演者:Dr. Santiwat Pithakpol(Naresuan University, Phayao, Thailand)
   (サンティワット・ピタクポル博士(タイ王国ナレスワン大学ファヤオ校講師))

2008年6月5日
演題:干潟に飛来するシギ・チドリの食性
演者:桑江 朝比呂 博士(港湾空港技術研究所 海洋・水工部)

2008年7月1日
演題:湖沼・海洋における微生物ループ ~細菌と原生生物の生態学はおもしろい~
演者:中野 伸一 教授(愛媛大学農学部 物質循環生物学研究室)
■地域貢献事業
2008年
・ 7月26日 干潟ウォッチング(於:新川・春日川河口干潟)
      (香川県・エコライフかがわ推進会議)
・ 9月23日 香川大学シニアカレッジ2008:浅海体験実習
      (香川大学・JTB)
・10月10日 第4回瀬戸内海環境シンポジウムin高松 瀬戸内海海洋環境研究セミナー
      基調講演:「瀬戸内海の低次生物生産環境」多田邦尚
      (於:国土交通省四国地方整備局 サンポート高松合同庁舎2階アイホール)
・10月16日 三木町平井小学校 研究室訪問
・12月 2日 講演:「瀬戸内海の低次生物生産環境について」多田邦尚
      香川県高等学校教育研究会 水産部会 秋季研究会(於:香川県立多度津水産高等学校)
・12月12日 三本松高校スーパーサイエンスハイスクール(講義及び実験)
      香川大学農学部コース別研修「瀬戸内海の生物環境と環境問題」 多田邦尚・一見和彦
2009年
・ 3月23日 ラジオ番組出演 中部日本放送CBCラジオ「多田しげおの気分壮快!!」
      ノリの色落ちに関する情報コーナー 多田邦尚
干潟ウォッチング シニアカレッジ実習風景
干潟ウォッチング シニアカレッジ実習風景
■その他
3月3日  香川大学瀬戸内圏研究センター設立記念シンポジウム
     (於:香川県社会福祉総合センター コミュニティホール)
     【研究報告】「干潟を含めた浅海域の生態系研究」
     【パネルディスカッション】「瀬戸内圏に豊かな社会を築くために」
■インタラクティブコーナー
皆様と自然科学の研究者とで創るコーナーです。
皆様がこの通信の中で興味を持たれたこと、また疑問に思われたこと、身近な自然の中で不思議に感じられたことがありましたらどしどしお便りください。このコーナーで取り上げさせていただいて、読者の方々の自然に関する興味や知識を深めることが出来たらと思っています。特に投稿規程はありません。お便りお待ちしています。
投稿先:〒761-0130 香川県木田郡庵治町鎌野4511-15
香川大学 瀬戸内圏研究センター 庵治マリンステーション 一見 和彦 宛
電子メール:ichimi@ag.kagawa-u.ac.jp
庵治マリンステーションホームページ http://www.kagawa-u.ac.jp/setouchi/
◆浅海環境通信のバックナンバーも上記ホームページからご覧いただけます。
編集:庵治マリンステーション利用者グループ
ノープリウス2世

小型調査船ノープリウス。平成21年度でノープリウス2世に引き継ぐことになりました。

▲ 上に戻る
閉じる