博士前期課程

安全システム建設工学専攻

地球環境は人類社会の生命維持装置である。21世紀の課題は、我々がこの複雑なシステムをどう理解し、どう存続させていくかに集約できる。これらの課題の解決には科学技術が大きな役割を果たすことになるが、最も重要なことは科学技術と人間・自然・社会との関係を明確にしてその展開を図ることである。21世紀の科学技術に求められるものは、これらを総合的に評価(グロ-バルアセスメント)するツールと、評価した結果を適切に判断する人間の英知であると言える。

現在、社会基盤整備には正にこの視点が要求されている。「土木工学」は本来、人間・自然・社会を総合的に考える総合工学であった筈であるが、従来の社会基盤整備は、産業発展のための経済効率に主眼を置いてきた嫌いがあり、さらには社会構造の変化にもかかわらず開発そのものが目的化する側面も見られるようになってきた。したがって、今後は人間も地球環境システムの一部であるという視点で、自然と共生し、長い目で見ても安全・安心・快適な社会を持続することができる社会基盤整備が求められる。そのためには、マクロからミクロまで、地球環境システムを評価する手法の確立とそれらに基づく環境整備技術の開発が必要となる。

また、地震などの災害に対する安全性の確保は、複雑高度化した現代社会においては極めて重要であることは言うまでもないが、これまでの安全対策はどちらかというとハードそのもの、すなわち、構造物の破壊に対する考慮が中心であった。しかしながら、東日本大震災のように我々の予測を超える被害が起こり得る現実を見れば、ハードだけでなく防災をソフトの観点からとらえることも不可欠である。このように、今後は安全についても力学的な安全性だけでなく、防災をシステムとしてとらえる安全工学体系の構築が重要となる。

また、地震などの災害に対する安全性の確保は、複雑高度化した現代社会においては極めて重要であることは言うまでもないが、これまでの安全対策はどちらかというとハードそのもの、すなわち、構造物の破壊に対する考慮が中心であった。しかしながら、東日本大震災のように我々の予測を超える被害が起こり得る現時を見れば、ハードだけでなく防災をソフトの観点からとらえることも不可欠である。このように、今後は安全についても力学的な安全性だけでなく、防災をシステムとしてとらえる安全工学体系の構築が重要となる。

一方、社会基盤整備における時間の概念は、車や家電製品などとは異なる。重要な社会基盤施設の寿命は100年オーダーと考えられてきた。ところが、現在のような大規模に社会基盤が整備されたのはせいぜいここ半世紀であり、実は我々が考えてきた時間の概念はあまり裏づけのないものであった。実際、構造物の耐久性の問題が顕在化し、これまで蓄積されてきた膨大な社会基盤の維持管理が今後深刻な問題となることが予測されている。このような状況を考えると、今後の社会基盤整備における設計には、時間の関数をも考慮した性能評価が極めて重要となる。合理的な性能評価は、ライフサイクル評価も容易となり、限られた資源の効率的な利用に資することとなる。また、健全な社会を目指し、生活の質を改善・維持するためには、人が生活するうえでの快適性を、地域コミュニティーから個人の住宅に至るまで追求することが求められる。

このように、21世紀の社会基盤整備におけるキーワ-ドは「環境」・「安全」・「性能」であり、安全システム建設工学専攻はこれらを大学院教育研究の中心に据える。

四国は、古くから渇水や洪水あるいは地滑りなどの災害に苦しんできた。また、四国は社会基盤整備が他地域と比して遅れていた。それらに対処するために幾つかの機関が置かれている。安全システム建設工学科は、現在それらの機関や民間の企業とさまざまな形で連携を深めている。

信頼性情報システム工学専攻

情報化の急速な進展によって高度な情報・通信技術を備えた技術者が不足している。一方では、情報システムの信頼性、性能、利便性においてより高度な要求がますます強くなってきている。このような社会的要求と情報革命の進展に伴う情報化社会の高度化に対応するためには、実践的な情報システムの開発・研究を進めると同時に、情報システムが人間の活動や社会のシステムに密接に関係することから、これらを文理融合の概念でとらえる先進的な研究教育が必要である。

本専攻では、専攻名に「信頼性」を冠して高度情報化社会を支える情報技術における信頼性確保の重要性を示し、人間の生活を豊かにし、人に優しい技術のための教育研究を目的とする。本専攻は、情報環境および電子情報通信の二つの分野の教育研究を行っている。

【情報環境分野】
・人間・社会情報システム:先端技術に支えられる新世紀では、高度化・複雑化に伴う落ち着きのない不安定な社会を招きかねない。精神的にも安定する豊かな社会実現のためにも、人に優しいシステムの構築が肝要である。そのために、自然言語処理、高度教育システム論、知識情報シテスム論、ネットワークメディア論、ソフトコンピューティングなどの科目を用意し、人間としてふさわしい情報システムの在り方を教育研究する。
・計算機科学:高度情報社会の中核となるコンピュータ技術は目覚しく進展している。超並列や分散処理を支えるアーキテクチャ、データベースやソフトウェア開発におけるオブジェクト指向技術、集合論や論理学、代数学といった基礎理論に基づくプログラミング言語や方法論などの先進的な技術に対応する教育研究の必要性は高い。ソフトウェアプロジェクト、組込ソフトウェア工学、大規模データベース論、コンカレントプログラミング論、システムソフトウェア特論、プログラミング・パラダイム、プログラミング言語意味論などの科目を用意している。
・信頼性工学:信頼性そのものは、これまで物、すなわちハードウェアとの関連において実用化されてきている。しかしながら、情報システムが普及・拡大するに従い、その構成要素としてのソフトウェアや情報システムそのものの高信頼化が必要になってきている。さらには、信頼性を含めた多くの指標に基づく設計の最適化が実践的な技術者を育成する上で不可欠である。セキュリティデザイン、情報セキュリティ特論、ビジュアライゼーション、応用統計解析特論などの科目を用意し、セキュリティと信頼性に関する教育研究を行う。

【電子情報通信分野】
・高度情報ネットワークシステム:インターネットの急速な普及に伴い、その性能や安全性の向上のための研究・開発及びネットワークを実践的に構築し運用できる技術者が必要とされている。これと併せて無線や光などの伝送メディアへの対応、データ・動画などの表現メディアにおけるマルチメディア化への対応が必要となる。これらを実現するための通信ネットワーク信号処理、光応用工学、感性メディア信号処理などに関する教育研究を行う。
・情報電子システム:高度情報化社会を支えるハードウェアを扱う情報電子システム分野での開発も極めて重要である。電子・光デバイスの高機能化や生体の巧みな機能に対応したデバイスの開発と、コンピュータと一体化したシステムの開発が望まれる。この分野では、回路設計、非線形システム工学、生体情報工学、量子電子工学、エネルギー電子工学等の教育研究を行う。

知能機械システム工学専攻

本専攻は、安全で快適な人間環境を構築するための、生活支援技術、生産支援技術に関する基礎から応用までの一貫した研究教育を行うことを特徴とする。生活支援技術の研究教育においては、地域でより先導的に進行する高齢化社会の進展に対し、人間の運動や感覚機能を工学的に解析・シミュレーションし、機能を維持し改善するアシスティブ工学や生体機能論、運動制御論に関する研究教育を行う。また、マイクロメカトロニクス関連工学の教育研究により、高齢化に伴う各種体調の不具合を早期に発見、健康維持に努める携帯センサーの開発を目指す。生産支援技術の開発においては、複合センサー制御技術や作業支援工学などの教育研究により知的生産機器の実現を目指すとともに、ネットワーク生産システムなどの展開により、地域を越えた生産構造を実現、競争力のある製品の生産を可能にする。

これらの目標に向けた教育研究として、その基礎に、学部レベルの人間支援ロボティクス、バイオメディカルエンジニアリングの各授業科目に加え、専攻での基礎教育として、知能ロボット工学、機械システム設計工学、マイクロプロセス工学を置く。知能ロボット工学では、ロボット工学に関する先進的研究教育はもちろん、その構成要素である知能画像計測、触覚センシング、そしてアドバンス制御に関しても十分な教育研究を行う。機械システム設計工学では、信頼性や機械構造の解析シミュレーションに関する教育研究を行う。そして、次世代機器のための新しい技術として、マイクロテクノロジー、マイクロプロセスに関する教育研究にも力を入れる。

これらの教育研究を通じて、地域産業界とは、生産技術や品質管理技術などの技術支援を共同研究などの形で実施する。また、病院などの医療・福祉機関と協力し、それらの施設や一般の家庭で使用するためのセキュリティ機器や携帯医療センサーの開発・ベンチャー企業への展開を目指すことで、新たな福祉産業分野を創生、地域に貢献する。

材料創造工学専攻

21世紀の工学は、地球規模で問題となるエネルギー、環境マネジメントなどを見据えた革新的科学技術の構築が急務である。そのためには科学技術の発展を支える材料に、より高度な機能を付与させることが厳しく要求される。なぜなら、新しい物質の発見が新しい材料を生み、先端技術に革新をもたらすからである。新しい技術の展開には材料の研究・開発が不可欠である。

従来、材料の研究開発は、主として経験を集積する形で進められてきた。しかし、近年、材料科学の基礎的学問としての物理、化学、生物学などが相互に結びついた境界領域での学問の進展、さらにビーム技術、解析・評価技術などの材料研究手段の著しい発展につれて、材料を原子・分子レベルで制御することが可能になりつつある。その結果、ガイディング・プリンシプルに基づいた系統的研究開発で、機能を理論的に予測した材料の創造ができるようになる。また、その新機能材料を用いた種々のデバイスも、その構造から特性や性能が理論的に予測できるようになるであろう。

このような材料創造研究の新しい潮流を勘案し、本専攻では、環境材料化学、機械材料科学、光・電子材料科学の3つの教育研究領域を置き、それらを相互に有機的に結合させることにより、革新的機能を有するスマート・マテリアルの創造を目指した教育研究を行うとともに、この分野で活躍できる有為な人材を養成する。

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