
変革のために 学外からも意見を聞く「香川大学構想会議」
宮宇地 長尾学長の就任後すぐ、香川大学は「香川大学構想会議」を設立しました。これはどんな会議でしょうか。
長尾 今の大学の情報を、強みはもちろん、改善すべき事柄のデータもすべて明らかにして、目指す方向を探る場です。内部の人間だけでなく、学外有識者も委員に迎え、ご意見をいただいています。
清水 私も参加させていただき、議論がとてもオープンなのに驚きました。大学についての専門家でなくても遠慮なく発言できる雰囲気ですね。参加者が各々の立場から意見を出し合い、大学の新しい未来を作ろうとしています。
宮宇地 今日は浜田知事と清水支店長のお二人に、変革をかかげる香川大学が地域の課題や目標にどのように関わっていけばいいのか、お話しいただきたいと思います。今、大きな関心が集まっている防災に関して、知事は香川大学に何を求めておられますか。
浜田 昨年は先生方に、新しい県立中央病院の防災対策について専門家としてのご意見をいただき、県として取りまとめを行いました。現在は地震・津波の被害想定や、災害時の情報収集伝達についても研究を進めております。そのための委員会や検討会にも、香川大学の先生方にご参加いただき、調査研究でお力添えをいただいております。
長尾 工学部には危機管理研究センターがあり、香川独自の災害対策を研究しています。危機管理専門家の輩出も大学の努めであると震災以降強く感じていて、センターを核に、専門家としての人材育成にも取り組んでいきたいと考えています。
宮宇地 続いて、こちらも大きな課題である医療介護において、担ってほしい役割をお聞かせください。
浜田 地域や診療科目での医師・看護師の偏在問題、医療機関の連携強化、がん対策、ありがたくないことに受療率日本一の糖尿病の対策など、香川では医療分野の問題が山積しています。問題の解決のため、県では地域医療再生計画の検討会を立ち上げました。長尾学長に会長になっていただき、医学部、そして附属病院に、問題の解消に積極的に協力いただきたいと思っています。介護分野では、医学部附属病院に、県内に6病院ある認知症疾患医療センターの牽引役となっていただきたいです。
長尾 医学部附属病院の院長時代から、特に「地元に定着する医療人」を輩出したいと思っておりました。新医師臨床研修制度の施行で多くの新人医師が附属病院外に出て行く中、香川県にもご協力いただきハード・ソフトを整備した結果、定員の90%以上の研修医を確保。これは中四国でトップクラスです。地元に若い医師が残ることで、医療人が不足している地域や診療科目の解消にも役立つのではないかと思っています。介護については、初年次学生の介護現場での研修を検討しています。若い時に現場に出た経験がモチベーションとなって、介護の重要性を理解する学生が増えて欲しいと思っています。
清水 香川大学が全国で初めて構築した、全県での医療ネットワーク「K‐MIX」については、香川が誇るべき医療・介護現場の新たなインフラとして注目しています。
長尾 被災した岩手県で、K‐MIXを導入する動きがあります。タイのチェンマイでも在住日本人の健康管理にK‐MIXを用い、日本から健康状態のコンサルテーションをしています。香川で生まれたシステムが、全国、また世界に広がるのは嬉しいですね。
農業、医療介護、海
香川の素材活用を多面的にサポート
宮宇地 香川大学の特別講義では、清水支店長から「香川モデル」についての提唱があったと伺いました。
清水 地域が自律的に成長できる仕組み作りが重要となっており、全国に先駆けたモデルとして「香川モデル」の話を授業や講演などでさせていただいています。香川の成長分野として「農林水産業」、「医療介護」、観光も含めた「海」、をあげています。それぞれに香川には恵まれた素材があり、4つ目としてあげたいのが「人」。赴任後500人近い経営者とお話ししましたが、本当にすばらしい方が多いと感じています。
宮宇地 「香川モデル」にもあるように、産業振興で欠かせないのが農業を含めた食です。食に関して、香川大学に期待することは何でしょう。
浜田 農業試験場や産業技術センターと連携した品種改良・食品加工技術や機能性の研究は引き続きお願いしたいところです。香川大学には高く評価されている希少糖があります。昨年には、希少糖含有シロップが県内で先行販売され、希少糖を使ったお菓子もできました。
長尾 食べても血糖値の上がらないもの、脳の損傷に効果のあるものなどの研究も進んでいます。本格的に市場に出るにはまだまだ時間がかかるかもしれませんが、多種の希少糖が、さらに大きな可能性を含んでいます。
宮宇地 食といえば、昨年、「うどん県 それだけじゃない香川県」というキャッチコピーの宣伝映像が大好評でした。こういった観光プロモーションに学生が関われることはありますか?
浜田 インターネットでの情報発信は、若い人のセンスやアイデアが重要です。是非、様々な提案をしてください。もうひとつは、2013年の瀬戸内国際芸術祭です。前回もボランティアガイドである「こえび隊」として、多くの学生に活躍していただきましたが、さらに踏み込んだ形で携わってもらえると嬉しいです。
長尾 次回は、大学あげて参加する予定です。今、各学部や学生のキーパーソンに声をかけ、どのような形で参加するのがよいか、組織や運営について話し合っているところです。
国際的視点を持ち
地域とも一体となる
新しい香川大学を
宮宇地 経済の視点からは、香川大学のどのような地域貢献が考えられますか。
清水 大きく3つの役割があると思います。ひとつは学術研究のシンクタンクの役割。大学での様々な研究を、ビジネスに繋げていくことですね。2つ目は本来的な役割である人材育成。学生はもちろん、大学を使って県民全体に勉強の機会を作り、学び直しによる労働力の創造・向上にも繋げてほしいです。最後に、産業発展のために行政と企業を繋ぐ、中立的な立場としての「要」の役割です。
宮宇地 知事が求めるものとは。
浜田 香川大学には県内のリーダーとなる人材を育てていただきたい。そして、学生にもその気持ちを持ってほしいですね。将来を担う学生に、2つお願いしたいことがあります。これからは香川の企業も海外展開が必要になります。そのための国際的な視野を持ってほしいということ。また、学生時代から地域とのつながりも強めてほしいですね。
清水 私も、学生の方々には、香川の素材が世界に通用するという自信を持ち、世界市場を視野に勉強していただきたいです。また、地域のつながりで言うと、今後、香川大学という旗印のもとで、そこに行くと相談に乗ってもらえる、学生もプライドを持って地域づくりに関わるという、わかりやすい場があるといいですね。
長尾 今まさに、そのような場作りをしています。例えば県の東西に大学のサテライトオフィスを作り、教員と学生が定期的に講演や研究成果を発表し、地域の方と顔の見える交流の場としたいですね。早く実現して、皆さんに香川大学に親しみを持っていただきたいです。お話を伺い使命が浮き彫りになりました。さらに改革に励みたいと思います。