学長閑話(2017.02)

ストレス耐性

この言葉を聞いた方もいるだろう。脳神経生理学ではよく知られた現象で、酸素不足や血流減少に最も弱い脳神経細胞は、その様な過酷な条件に一定期間さらされると、次に同程度のストレス環境におかれても神経細胞は生き抜く事が出来ることが分かっている。即ち、ストレスに耐えられるように細胞内環境が遺伝子レベルで変わり、耐性を獲得するとされている。

我々の生活に当てはめると思い当たる事はいくらでもある。学修・スポーツ・精神修行等すべてにおいて、最初は苦しい、辛い、耐えられないと思っても、極限状態を繰り返している間に、いつの間にか試練に耐える事が出来ることはよく聞く話だ。この現象は、ストレスを体験した個体のみ獲得できると思われていたが、最近ある大学で線虫を使った実験により、その形質は子孫にも受け継がれることが判明したという。ストレスを与えた線虫は、寿命やストレス耐性が20%も増加、子孫を調べるとストレスを与えないのに、寿命と耐性が10~20%増えていた。その機序について詳細は分からないが、我々が生活していく上で示唆に富む現象である。

人は生まれた時から、あらゆるストレスの中で生活を営んでいるが、耐え忍ぶ苦労が子孫にまで伝えられる可能性があるという事だ。自身の向上のみならず、まだ見ぬ子孫のためにもストレスに耐えなければ・・・特に若い君たちは。
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学長閑話(2017.1)

バトンタッチ

年末年始にかけて、高校生の都大路、大学生による箱根駅伝をゆっくりと視聴した。若者が先輩たちの歴史と汗が染みついた襷を、次の走者にひとつでも良い順位でバトンタッチするために必死で駆け抜ける姿にいつも感動する。バトンタッチと言えば、リオのオリンピックで、400メートルリレーで日本チームが銀メダルに輝く好成績を残したのも、バトンの受け渡しの成功と言われている。去年から今年へ、親から子供へ、日常の営みを含め世の移り変わりは、受け渡しの連続である。本学でも学生諸君が学生支援プロジェクトで地域活性や地域の問題解決に向けてそれぞれのフィールドで活動を行っている。また、文化系や体育系での学生サークルも日ごろの努力鍛錬の成果を発表して、地域の人々や社会に好感をもたれている。地域や社会は、諸君の活躍を期待し、活動の継続を希望している。すなわち、今活動している成果が評価される重要なポイントは、その継続性なのである。年余に渡り先輩から後輩へバトンタッチされている活動もいくつかある。それに対して地域の住民は、自分たちの社会の一員として心から受け入れている。日本のリレー技術は国際的にも定評のある所である。本学の学生諸君も現在の諸活動を屋根瓦方式でぜひ後輩に伝え、継続性のあるサークル活動や地域活性化プロジェクトであってほしいと願う。ポッと出で後が続かないのは評価されないのである。
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学長閑話(2016.12)

- 本日も多忙 -

はや年の瀬を迎えた。1年が短く感じられるのは私だけではないだろう。若い学生諸君もあれこれ計画を立てていたと思うが、どれくらい達成できただろうか?

振り返ると、この1年の間にもいろいろなことが起こった。熊本地震、阿蘇山の噴火、鳥取及び東日本の地震や津波、多くの台風襲来と集中豪雨など、自然の脅威は計り知れず一刻の容赦もない。 一方で、政治経済等に関わる人々の営みにおいても、予測できない事態が続出している。

私見ではあるが、世界の人々は国際協調を放棄し、自国や自分の生活が第一の内向き志向へと進んでいるように見える。人間の性として当然であるが、また過去の争いの世相に後戻りしないかと秘かに危惧している。先にも書いたが、あらゆる生活物資を自国で賄うことができない日本において、他国との協調なくしてどのようして生きていくのか。

世界に羽ばたく人材を育てることは本学の責務の一つである。学生諸君には、常々このことに想いを馳せ、その想いを育んでほしい。

さてお題であるが、今本学では創造工学部(仮称)、医学部臨床心理学科(仮称)の設置、経済学部や農学研究科の改組等に向け、申請書類やカリキュラム等の準備に教職員一丸となって取り組んでいる。設置準備委員会をはじめ関係教職員の努力には、感謝の言葉もない。

私もあれこれ思索の毎日で、「閑話」をゆっくり書く余裕はない。さあ、また始めなくては・・・

新年には皆さんに良いことがありますように。
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学長閑話(2016.11)

近ごろの若いものは(2)

この題名で一文を書いた覚えがある。このフレーズは有史前の、ある洞窟の壁に書かれたものであり、いつの時代にもある、若者と大人の精神的ギャップを示唆するものとして、興味深い。9月の本欄に“新しい価値観・日本観を持った今の閉塞を打ち破る覚悟を持った若者が増えてきている”と書いた。

過日、ある講演で若者がどのような評価で就職先を決めるのかについて、拝聴する機会があった。講演者曰く、従来は職場の安定感・知名度(大会社)・給与・福利厚生などであったが、最近は、仕事内容・やりがい・職場の雰囲気などで決めるということであった。私の時代には、一般に名の通った大会社志向で安定した生涯が送れそうなところに人気があったように思う。しかし、現在ではそのような会社であっても、ある負のイベントが起きるとアッと思う間に縮減、極端には退場(廃業)する事案が頻発している。このような世相を反映してか、若者は大会社・組織の方針にフィットさせるということよりも、自分のやりたい領域・自分を生かせる仕事・すなわち自分にフィットする仕事を生涯続けていく賢明さを学修しているのであろう。一説には、将来会社組織は衰退し、極論すればなくなり、個人が自室でアイデアとITを駆使して事業を進める形態がむしろ一般的になるという。

若者はすでに将来を先取りしつつあるのか・・・。恐るべしである。

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学長閑話(2016.10)

香川大学の未来

去る7月13日、香川大学改革構想を発表した。骨子は、平成30年度に工学部を基盤とした新学部(創造工学部(仮称))の設置、経済学部を3学科制から1学科5コース制へとする改組及び、医学部への臨床心理学科の設置による全学改革を行い、新しい人材育成と地域活性化の中核拠点としての機能強化を図っていくものである。2年以上前から本学のあるべき姿について、学内で検討し、文部科学省との協議を経て、教育研究評議会や経営協議会で組織決定したもので、もう後戻りはできない。現在の社会はあらゆる組織が相互依存し、社会の多様なニーズに沿って大学も変革しなければ、取り残されるのは自明である。ここまで一緒に新しい大学の姿を真摯に語り合い、そして参画していただいた教職員の皆さんすべてに感謝したい。変革には痛みを伴うことは理解していても、各論に入ると多様な意見が寄せられる。今回の変革は、自分たちだけではなくむしろ後に続く後輩が本学でどのような人材として育つのがより良いのか・・そこに思いを馳せていただきたい。ある学外委員からは“今までの道のりを思うと、ここまで来たことは素晴らしい。この改革が成功するよう進めてほしい。”との言葉をいただいた。まずは、来年3月の新学部・新学科を設置するための重要な節目に向けて、すべては香川大学の未来・後輩のためにと、大局に立った構成員の賢明なご協力をお願いしたい。
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学長閑話(2016.09)

国のあり方を考えよう

すでにご存知のように、大方の予想を覆して英国の国民投票でEU離脱が決定された。今後2年間の複雑な手続きが必要のようであるが、大勢は変わるまい。今回の決定には、内向き志向が働いて、経済や外交などにかかわる懸念より、自分の生きる方が先という志向が優勢であったという。一方、都市対地方、若者対高齢者、自分の生活重視対グローバル社会重視、その他種々の内在する葛藤がこのような結果をもたらしたと解説されている。

これは、日本が直面しつつある諸問題に似通っているということに気付く。まさに、日本の将来について考える良い機会である。我が国は周囲を海に囲まれ、ヨーロッパのように人々の自由な交流は出来にくい立地条件がある。そして、最も決定的なのは、自国を賄える資源がない。国際協調主義で進む選択肢しか無いように思うが、諸国の経済低迷、軍事的脅威、外交上の諸問題等を抱え、八方ふさがりの感がある。

戦後70年以上経ち、戦争や戦後の混乱を知らない若い世代の人々の中に、新しい価値観・日本観が生まれ、この閉塞を打ち破る覚悟を持った人達が確実に増えており、彼らがドラスティックに日本のあり方を変えていくであろうと、最近耳にする。過去は過去として清算し、我が国が立ちいく将来像を若い世代に期待したい。18歳から政治に参加出来るようになったこの機会を生かして・・・。
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学長閑話(2016.08)

スポーツ

前号ではこの窮屈な社会をもっと余裕があるものにするため、日本的なお祭りで人々の繋がりを強めてはどうかという話をした。 人生にゆとりができるもう一つの工夫として、体を動かすスポーツで人との交流を深めてみてはどうだろうか。フルマラソンでゴールした選手が、爽やかなコメントを出されることが多い。体力気力を振り絞って必ずしも結果がついてきていない選手であっても、達成感と心の高揚感にあふれた名言を聞いたことがあるだろう。スポーツで体に一定の負荷がかかると、体内エンドルフィンが増えて、それが心の余裕と幸せ感をもたらすのだ。例えば、皆さんが苦しい練習を行った時や、対外試合で仲間と共に戦った時に、一定の達成感で心晴れ晴れとなることは、経験者であれば分かるだろう。サッカー・野球・柔道・剣道・空手道・バドミントン・バレー・水泳等々皆さんが常日頃親しんでいるスポーツが、世界をつなぐツールにもなっている。国際大会、その究極であるオリンピック大会等、それらが何故有史以来続いてきたか。それは、体力的競争以外に、共通のスポーツを通じエンドルフィン仲間としての連帯感が醸成されるからだと思う。前文部科学大臣は、ご存知のように元プロスポーツ家で、大学でさらなるスポーツ振興をと提言した。もと体育会系の私には、嬉しい話だ。皆さんも、大学の恵まれた環境の中、スポーツで心地良い汗を流し、多くの人と交流してみてはどうか。
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学長閑話(2016.07)

お祭り

前号でお話ししたように、窮屈になった社会を変える一工夫についてふれてみたい。

歴史は70年周期で巡っている(神田昌典著、『2022-これから10年、活躍できる人の条件(PHPビジネス新書)』より)という。その中で、フランス革命、ロシア革命、第二次世界大戦等では、何百万人という人が犠牲になっている。それに比し、明治維新は数万人で、静かな大改革が成功した。著者によれば、数か月続いた“ええじゃないか”狂乱(祭り)が時代の大混乱を収束に導いたという。私の知る限りでは、老若男女がコスプレし、・・・してもええじゃないかと乱舞し世相を風靡席巻した民衆運動であったようだ。金銭的・人的犠牲もなく、深刻な事態に至らず世相を変革させてしまった、全くの無血革命である。

現在に心を移すと、大震災の後遺症と相次ぐ自然災害への不安、人口減少(少子高齢化)、世界的経済の停滞など不安と閉塞感が満ちている状況で、地域の古き良き伝統を今に受け継ぐ日本式のお祭りが、意外と時代を変える力になるのではと思う。現在、本学ではオープンキャンパス、大学祭、地域では瀬戸内国際芸術祭をはじめ、里山、里海等の恵まれた自然環境のもとで多くのお祭りが企画され、そこでは地域や外国の方々との交流がなされ、人と人の様々な絆が生まれている。諸々の社会不安や新たな天災も危惧されている今こそ、人との繋がりがいざという時の危機対応に大きな力になると思うのだが・・・。

本学もさらに地域やグローバルな交流をメインとしたお祭り、フェスティバルを企画し、地域や他の組織の人々との繋がりを深めてはどうか。
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学長閑話(メールマガジン最終号 2016.06)

過剰反応社会

ICTの発展により、意思、情報伝達が以前に比し格段に速く容易にかつ広範(全世界)に及ぶ時代となった。ツイッタ―社会ではいわゆる炎上なるものが頻発し、社会の正義(?)が第三者の意見に沿って形成されるという。その結果、対象となった者は委縮してしまい、息苦しい社会となり日本は均一な社会になる雰囲気だそうだ。特にメディアの委縮がひどく、もの言えば唇寂し・・・の傾向があるという。十人十色と言うが、個人の価値観、道徳観や正義感等は千差万別で、それを非常に身近で簡単にツイッタ―として発信できる時代の生き方を考えさせられる。書き込む者にとって、回数が増えればそれはもう自分の存在を誇示するツールを超え、義務感・確信に変わり、脳生理学的にはアドレナリンがふつふつと発生する世界であるらしい。アドレナリンはご存知のようにストレスでも放出され、裏を返せば書き込む者は、義務感でツイートしなければならないと自分自身を追い込んでいるとも考えられるのだが、皆さんはどうだろうか。一つの社会潮流が形成されると、少数派の意見にはバッシングが行われることもある。今の日本人は熱しやすく冷めやすい傾向が強まり、このグローバル時代に必要な多様性の力がむしろ減じているように思える。

次回は、そのような窮屈な社会を変えるひと工夫についてお話ししよう。
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学長閑話(メールマガジン第209号 2016.05)

奇妙な静けさ

奇妙な静けさ 前回の「学長閑話」では、人生に幸福をもたらす秘訣は、良い人間関係を作るに尽きるとのレポートを紹介した。家族・友達・コミュニティと良く繋がっている人ほど、人生の幸福度が高いという。

相手の表情や態度、雰囲気、心情が伝わらないスマホの中だけの関係は、バーチャルな世界に閉ざされたものであり、あたたかい人間関係は作れないのではないだろうか?

若者よ、時にはスマホを置いて、face to faceで語り合おう。
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学長閑話(メールマガジン第208号 2016.04)

人生を幸せにするのは何?

人は常に幸せを求めて日々を過ごしている。その秘訣は何かと問われると様々な答えが返って来るであろう。この主題で“ハーバード成人発達研究”が発表された。この研究は、1938年に始まり75年間に亘る世界で最も長い研究であり、さらに続いている。ハーバード大学の2年生とボストンの極貧環境で育った少年たち724人を2グループに分け、年次ごとに質問票・インタビュー・医療記録・血液検査・脳画像診断を行い、その家族も参加している。彼らの中には工場労働者・弁護士・煉瓦職人・医師・大統領になった人たちが含まれている。その結果は、私達を健康で幸福にするのは、富でも名声でも無我夢中で働く事でもなく、良い人間関係を作る事に尽きるという事であった。すなわち、家族・友達・コミュニティと良く繋がっている人ほど、幸せで身体的に健康で脳機能も守られており、それに反して孤独は害になるというのが結論だ。

新入学生を含め本学で大学生活を送っている学生諸君にも、日々の人間関係の形成が如何に大切か示唆を与えてくれている。まず、友人・先輩・教職員を始め地域の皆さんと、信頼できる良い人間関係を作っていただきたい。
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Message~香川大学へようこそ~

新入生の皆さん、入学おめでとうございます。

これから皆さんが香川大学で過ごそうとする学生時代は、人生の中で最も自由に時間を使うことができる貴重な時期です。漫然と毎日を送るのではなく、自らの意思で行動し、時には額に汗することもよいでしょう。多くのことを経験し、感動を味わってください。この限りある時間を有意義に過ごせるかどうかは、皆さんの覚悟と決意にかかっています。それに応えるべく、教職員が一丸となって皆さんを支援します。

「地方創生」という言葉を少なからず耳にしたことがあると思います。各地域・地方が、それぞれの特徴を活かした魅力あふれる持続的な社会を形成することです。そのためには、次世代を形造る皆さんが常にグローバルな視点を持って、地域社会の人々や文化に接し、新鮮な感性と柔軟な発想でこの地域をこうしたいという情報を発信し行動に移すことが肝心です。幸い、香川県は瀬戸内国際芸術祭の舞台でもあり、自然に恵まれ、芸術文化、歴史、遺産などの地域資源が豊富です。また香川大学でしかできない香川県内外での学修やフィールドワークのプログラムも準備しています。大いに活用し、チャレンジしてください。

時には挫折・失敗もあります。様々な苦難や失敗を乗り越えて、初めて自分の血となり肉となります。志を高く持ち、ベストを尽くすことを期待しています。

皆さんの健闘を祈ります。
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メッセージ

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