教育学部の教育理念

香川大学教育学部は、学校教員をはじめ教育者を養成し、広く教育界に貢献することを理念とします。今日の学校教育の現場には、急激な社会の変化の中で、教科に関する新しい学力をどのようにつけるか、子どもたち一人一人の自己実現をどのように支援できるかなど、人間形成に関するきわめて重要な課題があります。また急速な少子・高齢化、情報化社会の進展、切実さを増す環境問題、多文化社会における共生の在り方などの問題は、生涯にわたる教育の必要性と新たな教育的課題を生み出しています。このような教育に関する課題に柔軟かつ積極的に対処できるように、「人間の発達・形成に関する教育研究を基礎に、教育に関する総合的な教育研究を行い、教育実践力を有する学校教育教員及び広く教育界で活躍できる人材」の養成(教育学部規程 第1条2)を目指します。

教育学部学校教育教員養成課程の3つのポリシー

ディプロマ・ポリシー(卒業の認定に関する方針)

香川大学教育学部学校教育教員養成課程では、その教育理念に基づき、豊かな人間性と教職への強い使命感をもつとともに、社会の変化やニーズを適切に踏まえ、学校教育が抱えるさまざまな現代的教育課題に協働して対処することができる、専門的知識と実践的指導力を備えた教員を養成します。本課程を修了し、本学が送り出す学士(教育学)・21世紀型市民として身につけるべき能力・態度の到達基準は、次のとおりです。

①言語運用能力
*日本語の言語表現を適切に理解し、自らの見解を口頭や文章でわかりやすく伝えることができる。
*一つ以上の外国語において、基礎的な能力を身につけている。
*子どもをはじめ他者との共感的なコミュニケーションをとることができる。
*教育に関わる自らの専門領域の魅力や可能性について、専門用語を用いて伝えることができる。

②知識・理解(21世紀型市民及び学士(教育学)として)
*人類の文化、社会及び自然について幅広く基礎的な知識やスキルを持ち、論理的に考察できる学問的基礎を身につけている。
*教員として必要な教科及び教職に関する基本的な知識やスキルを身につけている。
*教員として必要な授業実践に関する基本的な知識やスキルを身につけている。
*子どもの多様性と教育プロセスの複雑性について理解している。

③問題解決・課題探求能力
*21世紀社会の現状を理解し、その課題と解決策を自己と関連づけて探求できる。
*学校や学級、子どもの実態、また様々な教育の現実から、課題を探り出すことができる。
*自らの教育実習等での授業実践を振り返り、自己の課題と可能性について探求できる。

④倫理観・社会的責任
*市民としての責任ある行動をとり、社会において自己の担うべき役割について探求する姿勢を身につけている。
*教員として必要な倫理観や道徳を身につけ、社会の創造的な形成者として、教育を担うことができる。

⑤地域理解
*国際的な視野を持ち、ローカルスケールから大陸スケールに至る重層的な地域の概念を理解している。
*地域の一般的な特性を理解するとともに、「地元」の独自性を説明できる。
*地域理解と自らの専門領域を関係づけることができる。

⑥教職に対する使命感
*教育への情熱をもち、教員としての資質能力を高め、自ら成長しようとする姿勢を身につけている。
*多様な教育論を踏まえて、教職の意義について理解している。

 

カリキュラム・ポリシー(教育課程の編成及び実施に関する方針)

 香川大学教育学部学校教育教員養成課程は、卒業の認定に関する方針(ディプロマ・ポリシー)に示した人材を育成するために、全学共通科目(32単位以上)と学部開設科目(109単位以上(幼児教育コース) 及び 103単位以上(小・中学校教育コース))から構成される教育課程を編成・実施します。学部開設科目の内訳は、専門基礎科目(2単位)、専門科目[基礎研究](16単位以上)、同[実践研究](42単位以上)、同[発展研究](24単位以上)です。進級に関する要件はありませんが、3年次の必修科目である「教育実習」を受講するには、2年次までに60単位以上習得している等が条件となります。卒業要件単位数は141単位以上(幼児教育コース)及び135単位以上(小・ 中学校教育コース)です.

 ディプロマ・ポリシーの各項目の達成は、以下に示す体系的教育をもって実現します。

①言語運用能力
  全学共通科目のコミュニケーション科目によって基礎となる語学力向上を図ります。2年次及び3年次配当の専門科目の「保育実習」「保育実習指導」(幼児教育コース)、「教職実践プレ演習」(小・中学校教育コース)、「教育実践演習」「教育実習」(共通)では、コミュニケーション能力やプレゼンテーションスキルを修得し、4年次配当の「卒業研究」「保育・教職実践演習」においては、専門分野における言語運用能力を修得します。

②知識・理解(21世紀型市民及び学士(教育学)として)
  教養及び基礎的知識獲得のため、全学共通科目の学問基礎科目を学び、教育的視野・視点を涵養するため、1年次配当の専門基礎科目「発達支援論」及び専門科目[基礎研究]の「教職概論」を履修します。「教職概論」ではグループワークが取り入れられ、教職に関する知識・理解を深めます。主に2年次及び3年次には、専門分野に関する基礎知識を修得するため、専門基礎科目や、専門科目[基礎研究]、[実践研究]、[発展研究]の幼児・小学校・中学校教育関連科目を履修します。PBL(Project Based Learning)型教育も取り入れられている[発展研究]の各教科の教科指導法や指導法の科目(2~4年次配当)、[実践研究]の各科目(1~3年次配当)、「卒業研究」では、それぞれの専門分野の総合的学力を培います。

③問題解決・課題探求能力
  全学共通科目の主題B「現代社会の諸課題」や「大学入門ゼミ」においては、基礎的な問題発見・解決の方法を学びます。2年次配当の「保育実習」「保育実習指導」「教育実習プレ演習」では、教育現場における専門分野に関する問題解決・課題探求についての理解を深めます。3年次及び4年次配当の「教育実践演習」「教育実習」では演習や学校現場等での実習を通じて、また「保育・教職実践演習」では具体的な課題を考察し、探求力を養います。4年次の「卒業研究」では、PBL型教育を通して、学生がそれぞれの具体的な課題に取り組み、総合的学力を高めます。

④倫理観・社会的責任
  全学共通科目の主題A「人生とキャリア」において21世紀型市民としていかに生きるかを学び、全学共通科目「大学入門ゼミ」と学部開設科目「教職概論」をはじめとする諸科目で教職における倫理観・社会的責任を学びます。2年次の学部開設科目「保育実習」「保育実習指導」(幼児教育コース)、「介護実践演習」「教育実践プレ演習」(小・中学校教育コース)では、現場に接することによって、より深く倫理観・社会的責任を自覚します。更に、3年次及び4年次の「教育実践演習」「教育実習」「保育・教職実践演習」では、インターシップにより、倫理観・社会的責任を身につけ、社会人としての役割を担うことを学びます。「ボランティア活動」は全学年で履修可能であり、倫理観・社会的責任を体験的に学びます。

⑤地域理解
  全学共通科目の主題C「地域理解」で地域理解への動機づけがなされ、一定の学部専門教育を受けて重層的な地域の概念を理解した上で、高年次配当の実習科目「社会研修」「教育実践演習」「教育実習」「特別教育実習」を履修し、地域と専門領域との関連についての理解を深めます。全学年を通じて履修可能な「ボランティア活動」「多文化交流実践研修」では体験的に地域理解を深めます。これらの科目では、実習、PBL、グループワークなど様々な教授方法が取り入れられ、より実践的に地域や教育現場の課題を理解します。

⑥教職に対する使命感
  1年次配当の学部開設科目「教職概論」では学校理解を、2年次配当の「保育実習」「保育実習指導」(幼児教育コース)、「介護実践演習」「教育実践プレ演習」(小・中学校教育コース)では子ども理解を、3年次配当の「教育実践演習」「教育実習」では授業理解を、4年次配当の「保育・教職実践演習」「特別教育実習」では教職理解を、それぞれ増進させます。1年次の「教職概論」は4年間の教職に関連した科目全体を俯瞰する授業を行い、4年次の「保育・教職実践演習」は締めくくりとして卒業後の教職を見据えます。これらの授業をはじめとする教職関連の各授業は、キャリア教育の内容を含みます。全学年で履修可能な「ボランティア活動」でも、教職に対する使命感が涵養されます。

  以上の学修成果については、厳格な成績評価(5段階評価、GPAの活用)を行います。基本的に講義科目では修得した知識の理解度で、演習・実習科目では知識を教育現場に応用出来る能力や教育現場での対応力で、卒業研究では課題の設定や解決の実践的能力の総合評価で実施します。令和4年10月1日以降は、シラバスに記載している方法によって、各授業科目の到達目標の達成度で評価します。また、⑥「教職に対する使命感」に関して、各学生に冊子「教師になるための学びの計画と履歴」が配布され、学生は、1年次から4年次にかけて必要事項を記入していくことで、教師に求められる資質の修得状況を自己評価します。

gakumu.jpg

アドミッション・ポリシー(入学者の受入れに関する方針)

◇入学者に求める学力・能力・資質等
  大学入学までに、以下のような学力・能力・資質等を備えている学生を求めています。

①知識・技能
*高等学校等における幅広い学習に裏付けされた知識・技能の総合力と学ぶ力

②思考力・判断力・表現力
*学校教育において、問題解決するための論理的思考力や判断力、根拠に基づいた科学的思考力や批判的思考力
*多面的な視点から思考し、自分の考えを他者にわかりやすく伝える表現力

③主体性・多様性・協働性
*主体的に多様な他者とかかわり、他者の意見や価値観を尊重し相互理解に努めようとする協働性やコミュニケーション能力

④関心・意欲・態度
*学校教育に高い志と強い関心を持ち、継続して意欲的に課題に取り組むことができる能力
*様々な課題にチャレンジする積極性を持ち、経験の積み重ねを通して将来へのビジョンの構築に努める能力

⑤倫理観・社会的責任
*教育者として、また社会の構成員としての自覚と責任を持ち、自己が果たす役割や倫理観・社会的責任を理解できる能力

◇大学入学までに修得が期待される内容
ボランティア活動や学校内外での諸活動で教育に関する何らかの実践を経験するなど、子どもの理解と教育に携わる意欲を持ってください。

教育者として他者の意見や価値観を尊重し、他者を思いやることができるコミュニケーション能力が必要とされるので、幅広い視野と主体性・協働性を養い、自分の考えを表現できるような力を身につけておいてください。

◇選抜方法の趣旨
○一般入試
一般入試では、高等学校での教科面における学習の達成度をみるため、大学入試センター試験5教科7科目又は6教科7科目(理科の選択科目によっては5教科8科目又は6教科8科目)を課しています。

*前期日程
幼児教育コース及び小学校教育コースでは、個別学力検査(国語、英語、数学、理科)又は実技検査(音楽、美術、体育)から1科目選択し、得意な教科に関する達成度(知識・技能、及び思考力・判断力・表現力)を評価します。

中学校コースについては、受験教科によってA系(国語又は英語)、B系(数学又は理科)、C系(実技:音楽、美術又は保健体育)の三つの系を設けて教科の専門性(知識・技能、及び思考力・判断力・表現力)をより重視して評価します。

*後期日程
いずれのコースとも小論文が課せられ、大学生に求められる資質としての論述の能力(理解力、思考力・判断力・表現力など)を総合的に評価します。

○特別選抜
*推薦入試
大学入試センター試験は課さず、小論文及び面接を課すとともに、志望する区分によっては口頭試問又は実技検査を行います。小論文は大学生に求められる資質としての論述の能力(理解力、思考力・判断力・表現力など)を総合的に評価します。面接・調査書等においては大学生としての資質、創造的な探求心や勉学意欲、人間性(倫理観・社会的責任など)、学校教員をめざす者としての適性(主体性・多様性・協働性など)を評価します。口頭試問、実技検査においては各教科の基礎的な知識や技能を評価します。

*私費外国人留学生入試(幼児教育コースを除く)
面接及び提出された書類を審査し、日本語の能力、大学生としての資質、創造的な探求心や勉学意欲、人間性(倫理観・社会的責任など)、学校教員をめざす者としての適性(主体性・多様性・協働性など)を総合的に評価します。(音楽、美術、保健体育の各領域を志望する場合は、面接に実技検査を含みます。)

○編入学
論述試験(筆記試験)と面接及び提出書類で審査します。論述試験では、志望するコース・領域に関連した問題が出題され、知識・技能及び思考力・判断力などを評価します。面接・提出書類では人間性(倫理観・社会的責任など)、学校教員をめざす者としての適性(主体性・多様性・協働性など)の他、専門的素養も評価します。