サークル紹介(大学フォト)
7C1.jpg
7c2.jpg
7c3.jpg
このページの先頭へ

イベントフォト(大学フォト)

 

 

labo.jpg
国際希少糖学会が香川大学を本部として設立されたのは2001年4月10日で,農学部に赴任直後だった私は何もわからないながら、隣りの研究室の早川先生(後に第二代希少糖研究センター長)に誘われ、設立総会の会場(香川大学研究交流棟)に向かった。そういえば数日前の新入教員研修会で、木村副学長(当時)が、これから香川大学で力を入れて発展させたい研究分野として希少糖を挙げていた。翌月の5月末には第一回国際シンポジウムが高松市生涯学習センターで開催され、これにも参加した。「希少糖(rare sugar)とは何であるか」、「キシリトールは希少糖に入るのか」といったことが英語で議論され,「希少糖とはマイナーな単糖のことだな」と理解したが、希少糖生産のための酵素反応の研究発表はさっぱり解らなかった。

もともと私の専門分野はコロイド界面化学(物理化学の一分野)で、酵素や微生物のことはよく知らないし、単糖を扱ったことも無かった。「自分の研究とは関係ないな」と思っていたところ、何森先生(初代希少糖研究センター長)から声をかけられ、果糖を希少糖(D-プシコース)に変換する酵素反応についてじっくり話しをきくことになった。この時のメモが、香大赴任後の最初の実験ノートの1ページ目に残っていて(6月9日(土)付)、何森先生が描いたD-プシコースのフィッシャー投影図の紙片が貼り付けてある。話しをきいてわかったのは、「酵素反応で得られる生産物は果糖とD-プシコースの混合水溶液で、純粋なD-プシコース粉末を得るにはクロマト分離と溶液からの結晶化が必要」ということだった。「では、二種の糖が混ざったものの溶解度は一般にどのように表せるのか」、「果糖とD-プシコースの混合水溶液から純粋なD-プシコース結晶だけを取り出せないか」という疑問が浮かんだ。そしてD-プシコース粉末の試薬瓶をもらって溶解度の測定をはじめたのが、私の希少糖研究の出発点である。因みにこの年の10月、希少糖の生産と用途に関する研究を体系的に進める組織として「希少糖研究センター」が香川大学に設置され、2009年10月からは副センター長としてその運営に関わることになったのである。

 <ここからが本題> 香川大学は本年(2016年)4月、希少糖研究を更に強化し世界をリードしていくため、全学体制で研究推進ができるように既存の「希少糖研究センター」を再編整備して「国際希少糖研究教育機構」を設置した。これを期に新たな視点からの研究が進められることを期待したい。

私自身の希少糖研究は、停滞したり、意外な方向に展開したりしながら今に続いている。しかし「果糖とD-プシコースの混合水溶液からD-プシコース結晶だけを析出させる」という当初の目論見は実現していない。どうもこの二つの糖は分子レベルで混ざり合った「共結晶」を形成しやすく、一方のみの糖分子の析出を妨げているようだ。単糖の結晶化に関する研究は地味で基礎的な研究だが、理に適った実用化には基礎研究の中で蓄積される情報が必要となる(「正しい知識は必ず役に立つ」)という信念で今後も研究を進めて行きたい。

07prof.jpg


専門分野

生物物理化学・コロイド界面化学

最近のマイブーム  
電子書籍で昔の名作小説を読むこと(コトデンでの通勤中のみですが)

研究を始めたきっかけ
2001年4月に首都圏の某大学理学部から香大農学部に単身赴任し、右も左もわからない中で「これから何を研究しようか」と思案していた頃、何森先生(初代希少糖研究センター長)に声をかけてもらったのが私の希少糖研究のはじまり。

氏名: 深田 和宏
所属・職名:
農学部(国際希少糖研究教育機構併任)・教授